インプラントのメンテナンス方法:歯科医院とセルフケアに分けて解説

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歯科コラム/2022年11月11日

インプラントのメンテナンス方法:歯科医院とセルフケアに分けて解説

インプラントは、失った歯を歯根から回復できる素晴らしい治療法です。見た目が自然で、噛み心地も天然歯に近いため、自分自身の歯と思い込んでしまう方もいらっしゃいますが、そこは注意が必要です。インプラントはあくまで人工物であり、治療後のメンテナンスを怠るとさまざまなトラブルに見舞われます。今回はそんなインプラントのメンテナンスについて詳しく解説します。

インプラントのメンテナンスを行うメリット

インプラント治療後のメンテナンスを行うと、次に挙げるようなメリットが得られます。

メリット①インプラント周囲炎を予防出来る

インプラントのメンテナンスを受けると、装置の周囲にたまった歯垢や歯石などを一掃することができます。その結果、歯周病菌の繁殖が抑えられ、インプラント周囲炎の発症を予防することが可能となります。インプラント周囲炎は、インプラントが脱落する主な原因であり、それを予防できることは非常に大きなメリットといえます。

メリット②他の歯の寿命を延ばせる

インプラントが汚れていると、隣の歯が虫歯になってしまうこともあります。インプラントは虫歯になるリスクがゼロであるため、患者さまも油断しがちなのですが、周囲の天然歯は虫歯になるということを忘れてはいけません。歯科医院での定期メンテナンスで受けられるプロフェッショナルケアは、こうしたトラブルを回避し、他の歯の寿命を延ばすことにつながります。

メリット③メーカー保証を受けられる可能性が高くなる

インプラントには、メーカー保証が付いています。「5年保証」や「10年保証」と呼ばれるもので、その期間内のトラブルであれば無償で再治療を受けられます。ただし、条件が細かく定められており、その中のひとつに「メンテナンスの受診」が含まれているのです。つまり、定期的なメンテナンスの受診を怠ると、インプラント保証が受けられなくなることがあるため、十分に注意しましょう。

歯科医院で行うインプラントのメンテナンス方法

スケーリング

歯科医院で行うインプラントのメンテナンスでは、主に次のような処置を受けられます。

歯科医院①定期的なお口の状態チェック

◎お口全体のチェック

歯科医院のメンテナンスではまず始めに、お口の中全体をチェックします。インプラントは独立して機能しているわけではなく、全体の歯並び・噛み合わせの中のひとつの歯車として存在しているからです。そのため、インプラントのメンテナンスだからといって、インプラントだけを診査するわけではなく、お口の中全体をチェックします。当然、その他の歯に虫歯や歯周病が見つかれば、それらの治療を優先することになります。ですから、インプラントの定期的なメンテナンスを受けることは、お口全体の健康維持にもつながるといえます。

◎インプラントのチェック

続いて、インプラントのチェックを行います。具体的には、次のようなポイントに着目して診査を進めます。

・インプラントの衛生状態
・歯茎の腫れや炎症
・歯周ポケットの深さ
・上部構造の破損、ネジの緩み
・噛み合わせの状態
・インプラントの動揺度(ぐらぐらしないか)
・歯ぎしりや食いしばりの有無

歯科医院②歯磨き指導

インプラントや周囲の歯に異常がなければ、歯磨き指導に入ります。磨き残しが多い部位を指摘し、効率よく汚れを落とすブラッシング法をご提案します。インプラントは歯茎との境目が特殊な構造をしており、汚れがたまりやすくなっているので、歯ブラシやデンタルフロスの上手な使い方を身につけることが大切です。必要に応じて歯間ブラシなども活用していただきます。この時、歯磨き指導させていただくのはインプラントだけではありません。天然歯も含めた歯列全体のブラッシング法をお伝えしますので、虫歯・歯周病予防にお役立てください。

歯科医院③スケーリング

インプラントのメンテナンスでは、歯石を除去する「スケーリング」も受けられます。歯石は、歯垢が石のように固まった物質で、セルフケアでのブラッシングでは取り除けません。しかも、インプラントの天敵である歯周病菌の温床となることから、定期的に歯石ゼロの状態とすることが何よりも重要といえます。

歯石を取り除くためのスケーラーは、薬局などで販売していることもありますが、一般の人が取り扱うとインプラントや歯茎を傷付けるリスクが高まります。ケースによっては、深刻な外傷を負うこともありますので、スケーリングはプロフェッショナルに任せるようにしましょう。歯科医院のメンテナンスであれば、安全な形でインプラント周囲の歯石を取り除くことができ、インプラント周囲炎の予防にもつながります。

歯科医院④バイオフィルムや着色の除去

自宅でのセルフケアで落とせない汚れとしては、歯石以外にもバイオフィルムや着色(ステイン)などが挙げられます。バイオフィルムとは、歯周病などの細菌の集合体を指し、プラーク(歯垢のかたまり)もバイオフィルムの1種です。
これらも歯ブラシを使った歯磨きで除去することは難しいため、歯科医院のプロフェッショナルケアに任せましょう。インプラントのクリーニングで、しつこい汚れも安全に取り除けます。その結果、インプラントの衛生状態が良好に保たれ、人工歯根の寿命を延ばすことにもつながります。

通院頻度と費用

医療費

◎メンテナンスを受ける頻度

インプラントのメンテナンスは、年に2~4回程度受けるのが一般的です。つまり、3~6ヵ月に1回くらいの頻度で通うのが最適といえます。これは通常のメンテナンスの通院頻度とほぼ同じです。3~6ヵ月というと、期間にかなりの幅が見られますが、基本的には患者さまのお口の状態によって頻度が決まります。お口の衛生状態があまり良くなく、歯周病のリスクが高いようなケースでは3ヵ月に1回程度の通院が適しています。お口の衛生状態が良好で、歯周病のリスクも低い方は、6ヵ月に1回程度の通院でも十分であることが多いです。その点は主治医と相談した上で決めましょう。

◎メンテナンスの費用

インプラントのメンテナンスにかかる費用は、歯科医院によって大きく異なります。全国的な相場としては、1回あたり5,000~10,000円程度となっています。お口の中の状態が悪かったり、メンテナンスの内容が異なったりする場合は、同じ歯科医院内でも費用にばらつきが生じることがあります。

セルフで行うインプラントのメンテナンス方法

デンタルケアグッズ

インプラントのメンテナンスは、歯科医院だけでなく自宅でも行うことが大切です。以下の4つの清掃器具を正しく使って、自宅でのセルフケアを充実させましょう。

セルフ①歯ブラシ

インプラントのセルフケアに使う歯ブラシは「やわらかめ」を選んでください。かたい歯ブラシを使うと、インプラントを傷付けてしまうことがあります。上部構造の表面はもちろんのこと、歯茎との境目もしっかり歯磨きして、歯垢がたまらないようにしましょう。ちなみに、インプラントをブラッシングする際には、歯磨き粉を使っても良いのですが、研磨剤が入っていないものを選ぶようにしてください。ホワイトニング効果のある研磨剤入りの歯磨き粉は、汚れの除去効果は高いものの、インプラントを傷付ける恐れがあります。

セルフ②歯間ブラシ

インプラントと隣の歯との間に広いすき間がある場合は、歯間ブラシをご活用ください。先端がブラシ状になっている小さな清掃器具で、歯間部の汚れを効率よく取り除けます。

セルフ③デンタルフロス

インプラントと隣の歯との間にすき間がなく、歯間ブラシが入らないような場合はデンタルフロスを活用しましょう。糸状の清掃器具なので、すき間が狭い歯間部にも挿入することが可能です。歯間部に歯垢がたまるとインプラント周囲炎のリスクが高まるため、毎日しっかりフロスを通すようにしてください。

セルフ④タフトブラシ

タフトブラシとは、毛先が一束しかない小さな清掃器具です。標準的な歯ブラシよりも小回りが利くため、インプラント周囲の仕上げ磨きにおすすめのブラシです。

インプラントのメンテナンスを怠るとどうなる?

インプラントのトラブル

ここまで、インプラントのメンテナンスを受けるメリットや具体的な方法について解説してきました。おそらく、インプラントのメンテナンスの重要性については、ご理解いただけたかと思いますが、適切なケアを怠った場合のリスクも知っておきたいですよね。

◎インプラント周囲炎の発症

インプラントのメンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎の発症リスクが高まります。インプラントの周りの歯茎や歯槽骨が感染し、炎症反応によって徐々に破壊されていきます。その結果、歯周組織がインプラントを支えきれなくなって人工歯根が脱落します。ですから、インプラント治療後にはメンテナンスを定期的に受けて、歯周病菌の温床となる歯垢や歯石がたまらないようにする必要があるのです。

◎噛み合う天然歯にダメージを与える

インプラントは、一見すると天然歯そのものですが、歯根と歯冠をアバットメントでつないだ複雑な構造を呈しています。それぞれの連結部分に異常が生じると、噛み合わせが高くなるなどのトラブルが起こり、噛み合う天然歯にダメージを与えることがあります。上部構造が破損している場合も要注意です。そうしたインプラントを構成するパーツの修理は、メンテナンスでなければ行えません。

まとめ

今回は、インプラントのメンテナンスの方法について、プロフェッショナルケアとセルフケアに分けて解説しました。インプラントの寿命を長く保つために、歯科医院での定期メンテナンスや、毎日のセルフメンテナンスはとても大切です。
インプラントをこれから受ける方やもうすでに受けた方は、治療後のケア方法として参考にしていただけたら幸いです。そんなインプラントのメンテナンスについてさらに詳しく知りたい方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。