インプラント治療が可能になる骨造成のメリット・デメリット・種類を解説

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歯科コラム/2022年12月14日

インプラント治療が可能になる骨造成のメリット・デメリット・種類を解説

インプラントは、誰でも受けることができる治療ですが、顎の骨の状態が悪いと適応が難しくなります。けれども、「骨造成」という特別な処置を行える歯科医院であれば、インプラント治療が可能となることもあるのです。今回はそんなインプラント治療における骨造成が必要になるケースや施術に伴うメリット・デメリットをわかりやすく解説します。

骨造成とは

骨造成とは、その名の通り「骨を造る」処置です。何らかの理由で溶けたり、退化したりした骨を高度な医療技術を使って再生させます。インプラント治療においては顎の骨の状態が何より重要となることから、さまざまな理由で失われた顎の骨を人工骨や専用の薬剤を使って再生させ、人工歯根(インプラント体)を安全に埋め込める状態を作ります。骨造成は、インプラント手術と同時に行うこともあれば、事前に行うこともあります。

インプラント治療の際に骨造成が必要なケース

インプラント治療で骨造成が必要となるケースは、以下のような理由から顎の骨の量が不足している場合です。

ケース①歯周病が進行している

歯周病は「歯肉炎」と「歯周炎」に分けられます。歯周炎まで進行すると、歯茎だけでなく顎の骨にまで炎症が広がり、歯を支える骨が溶けてしまいます。重症化した歯周病では歯がグラグラと動き始めるのはそのためです。天然歯を支えることが難しくなるのですから、人工歯根であるインプラント体はより不安定となることでしょう。そうしたケースでは根本的な原因となっている歯周病をまず治療して、病態が安定したら骨造成を行います。

ケース②歯が抜けた所を治療せずに放置している

骨折した時に足の筋肉や骨が痩せていくのと同じように、歯が抜けたところを治療せず放置していると顎の骨が吸収されていきます。顎の骨は噛んだ時の力が加わらないと、どんどん退化していってしまうのです。そうしたケースにも骨造成は有効です。

ケース③合わない入れ歯を長年使っている

適合の悪い入れ歯を使っている場合も顎の骨に適切な刺激が加わらず、徐々に痩せていきます。とくに「入れ歯安定剤」を長期に渡って使用しているケースでは、顎の状態が悪くなりがちです。入れ歯安定剤というのは、あくまで一時的に使用するものであり、常用するものではありませんのでその点はご注意ください。これからインプラント治療を受けようかどうか検討している方は、今お使いの入れ歯が合っているか、改めて確認してみてください。

骨造成のメリット

インプラント治療における骨造成には、以下に挙げるようなメリットがあります。

メリット①インプラント治療のリスクを軽減できる

顎の骨の厚みや深さが不足した状態でインプラント手術を実施すると、インプラント体が骨や歯茎から露出した状態となるリスクがあります。また、インプラント体と骨との結合が上手く進まず、治療そのものが失敗に終わる可能性も出てきますので、骨造成を行う必要があります。骨造成によって十分な骨の量が確保できれば、そうしたリスクを軽減することができます。

メリット②インプラントの安定性が高くなる

インプラントの人工歯根も骨の量が少ない環境では、安定性を維持することが難しくなりますが、骨造成によって足りない骨を補填するこができれば、自ずとインプラント体の安定性も高まります。
合わせて、定期的なメンテナンスを行うことで、安定したインプラントを長期間維持することができます。

メリット③歯茎の審美性が高くなる

骨造成は、インプラントの審美性の向上にもつながります。なぜなら、美しい歯茎というのは健全な骨がなければ成り立たないからです。骨造成によって顎の骨がしっかりすると、その周りを覆う歯茎の形も美しく、健康的になります。その結果、より自然な仕上がりが期待できるようになるのです。

骨造成のデメリット

骨造成は、とても素晴らしい施術法ですが、以下に挙げるようなデメリットを伴うことも忘れてはいけません。

デメリット①治療期間が長期にわたる

インプラント手術の前に骨造成を行う場合は、治療期間が長くなる点に注意が必要です。患者さまの顎の骨の状態にもよりますが、顎の骨が再生するまでには4~6ヵ月、場合よっては1年以上かかることもあります。ただし、インプラント手術と骨造成を同時に行う場合は、治療期間が極端に長くなることはありません。
仕事や生活に合わせて、治療を検討する必要があるでしょう。

デメリット②痛みや腫れが生じる場合がある

骨造成は、いわゆる外科手術の一種です。歯肉をメスで切開したり、必要に応じて他の部位から骨を採取したりするため、術後にはある程度の痛みや腫れが生じます。もちろん、術中は局所麻酔が効いているので不快な症状が現れることはありませんが、術後にダウンタイムがある点に注意しなければなりません。また、外科処置に伴う感染リスクも骨造成のデメリットのひとつとして理解しておく必要があります。

骨造成の主な種類

歯科医の解説

骨造成には、いろいろな種類があります。ここではインプラント治療で実施される骨造成の種類を5つ取り上げ、それぞれの特徴などを詳しく解説します。

種類①ソケットリフト法

上顎の奥歯の部分の骨が足りない場合は、上顎洞挙上術(じょうがくどうきょじょうじゅつ)と呼ばれる方法で骨を造ります。上顎洞挙上術には、ソケットリフトとサイナスリフトの2種類があり、前者のソケットリフト法は、骨の高さが3~5mm以上あるケースに適応されます。インプラント体を埋め込む方向から専用の器具を使って骨補填剤を注入して、骨の再生を促します。手術から4ヵ月程度経過すると、インプラント手術を安全に行えるだけの骨が再生されます。

種類②サイナスリフト法

サイナスリフト法も上顎洞挙上術の一種であり、上の奥歯の部分の骨が足りない場合に実施されます。顎の骨の高さが3~5mmに満たない場合に、ソケットリフトではなくサイナスリフトが適応されます。サイナスリフトは、ソケットリフトよりも多くの骨を再生させなければならないため、インプラント体を埋め込む方向からではなく、側面からアプローチします。具体的には、歯肉を切開して骨を造るためのスペースを作り、骨補填剤を注入します。ソケットリフトより負担の大きい術式ですが、骨を広範囲で造成することができます。

種類③GBR法

GBR(Guided Bone Regeneration)法とは、日本語で「骨誘導再生法」と呼ばれる術式で、インプラント体の埋入と同時に実施するのが一般的です。インプラント体を埋入して、骨が不足している部分に自家骨や人工骨、骨補填剤を注入します。仕上げに「メンブレン」と呼ばれる特殊な膜を設置することで、骨の再生が誘導されていきます。骨が再生されるまでには4~6ヵ月程度を要しますが、インプラント体(人工歯根)の埋入も同時に行うため、治療期間が大幅に延びるようなことはほとんどありません。

種類④遊離骨移植

遊離骨移植とは、患者さまご自身の骨をブロック状に採取して、骨が不足している部位に移植する方法です。自家骨移植となるため、拒絶反応が起こるリスクは極めて低くなっています。4~6ヵ月程度で骨が生着し、インプラント治療を安全に行えるようになります。

種類⑤ソケットプリザベーション

ソケットプリザベーションとは、抜歯後の骨の吸収を防ぐために行う方法です。抜歯した穴に骨補填剤などを入れ、骨の再生を促します。4~9ヵ月程度経過すると、抜歯後の穴が硬い骨で埋まるので、適切な時期にインプラントを埋入します。

まとめ

今回は、骨が不足していてもインプラント治療が可能となる「骨造成」について解説しました。ひと言で骨造成と言ってもその種類はさまざまで、それぞれに異なる特徴があります。また、骨造成にはメリットだけでなくデメリットも伴う点にも注意が必要です。そんなインプラント治療における骨造成についてさらに詳しく知りたい方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。