インプラントと歯列矯正はどっちを先に始めた方がいい?

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歯科コラム/2023年1月16日

インプラントと歯列矯正はどっちを先に始めた方がいい?

失った歯の治療である「インプラント」と歯並びの治療である「歯列矯正」の両方を検討中の場合は、どっちを先に始めた方が良いのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。歯科治療を行う順番というのは、患者さまの症状やご要望によってその都度、大きく変わるものですが、治療の性質を踏まえると推奨される順序は自ずと決まってきます。そこで今回はインプラントと歯列矯正を行う順番について詳しく解説します。

インプラント治療の特徴

インプラントと歯列矯正は、目的も施術方法もまったく異なる治療法です。冒頭でも述べたように、インプラントは失った歯を回復させるために行うもので、基本的には歯列の一部分だけが治療対象となります。もっともスタンダードなのは、虫歯や歯周病、外傷などで失った歯を補うケースで、顎の骨にチタン製の「人工歯根」を埋め込むケースです。その上にセラミックで作られた「上部構造」を装着して、失った天然歯の見た目や機能を回復させます。その結果、噛んだ時の力を顎の骨で受けとめられるようになり、硬い物でもしっかり噛めて食事が楽しくなります。
ですから、インプラントの比較対象となるのは、歯列矯正ではなく、入れ歯やブリッジなどの補綴装置であるといえます。ただ、インプラントでもすべての歯を失った症例に適応される「オールオンフォー」や「インプラントオーバーデンチャー」などがあり、歯列全体を治療することも可能です。そうした治療法であれば、当然ですが歯列矯正は不要となります。

歯列矯正の特徴

歯列矯正は、今存在している歯の並び方や噛み合わせを改善するための治療です。出っ歯や受け口、乱ぐい歯といった歯並びの乱れに悩まされている方が治療を希望して来院されます。
ワイヤー矯正やマウスピース矯正など、いくつかある治療法の中からひとつ、あるいは複数を組み合わせて歯並びを改善していきます。歯列矯正は極めて専門性の高い分野なので、知識や実績豊富な歯科医師に治療を任せると良いです。矯正の専門家であれば、歯並びの見た目だけではなく、噛み合わせまでしっかり治してくれることでしょう。そうすることで、咀嚼能率も上がり、お口や全身の健康維持・増進にも寄与します。

インプラントと歯科矯正

インプラントは、1本あたりで高額な費用がかかる治療法であり、本数が多くなるほど経済的な負担が大きくなります。外科手術を伴うことから、心身にかかる負担もそれなりに大きいため、可能な限り埋入する本数を減らしたいものです。
実は、患者さまのお口の状態によっては、歯列矯正を併用することでインプラントを埋入する本数を減らしたり、より美しく、健康的に仕上げたりすることが可能となります。そこで重要となるのが今回のテーマでもある「インプラントと歯列矯正の順番」です。
両方の治療に対応している歯科医院であれば、主治医の判断に委ねることができますが、別々の歯科医院を受診する場合は、まずご自身で考える必要が出てきます。“何となく”で治療の順番を決めてしまうと、最終的な結果に大きな悪影響が生じることもありますので、そこは慎重に進めていきましょう。
一般的には、歯列矯正を先に始めた方が良いといえます。

歯列矯正を先に始めた方がいい理由

インプラントは、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込み、固定させる治療法なので、それ以降は動かすことができません。天然歯の歯とは構造が少し異なるため、歯列矯正によって位置の調節を行えないのです。
また、歯列矯正を先に始めることで、不要なすき間を埋めたり、歯を適切な位置に移動したりすることで、インプラントを埋めやすい環境に整えることができます。
先に始めるのが歯列矯正であっても、どのタイミングでインプラントを行うかはケースによって異なります。場合によっては、歯列矯正の真っ只中でインプラント治療を実施して、人工歯根が埋入された状態で奥歯や前歯の歯並びを調整していくこともあるでしょう。
歯列矯正が完全に終了した時点でインプラント治療を行うこともあり、タイミングの見極めは非常に難しくなります。どちらが患者さまにとって有利となるかはケースによって変わるからです。いずれにせよ歯列矯正を先に行う点においては共通しています。

既にインプラントが入っていても歯列矯正が先

過去にインプラント治療を受けていて、もう既に人工歯根が顎の骨に埋入されている場合でも、原則として歯列矯正を先に始めることになります。歯科医師もインプラントが入った状態で検査・治療計画の立案を行っていくことから、苦労する場面も多々あることかと思いますが、遠慮せずに相談することが大切です。今後もインプラントを追加することもしっかり伝えた上で、最善といえる歯列矯正の方法を提案してもらいましょう。
ちなみに、インプラントは顎の骨と強固に結合しており、状態が良ければ、ある特定の歯だけを動かす際の固定源として活用できます。

例外的にインプラント治療を先に始めるケース

あくまで例外的ではありますが、歯列矯正よりも先にインプラント治療を始めるケースもあります。これは歯を失った状態を長く放置できないような場合です。そのままの状態で数ヵ月過ごすと、「食べ物が噛めない」「言葉をきちんとしゃべれない」「呼吸がしにくい」などの症状に悩まされる場合は、先にインプラント治療を行って、失った歯を回復させます。
もちろん、こうした方法を採るのは、歯列矯正で不利に働かないケースに限られます。また、上述したように、インプラントは状態が良ければ歯を動かす際の固定源となることから、歯列矯正に有利に働く面もあります。
とはいえ、インプラント治療を先に始める場合は、極めて難易度の高い歯列矯正となるため、インプラント治療を担当する歯科医師と歯列矯正を担当する歯科医師の密な連携が必須となることでしょう。連携が上手くいっていないと、期待するような結果が得られなくなります。その点も踏まえた上で、治療を任せる歯科医院選びは慎重に行うようにしてください。
インプラント治療を任せた歯科医師におすすめの矯正医を紹介してもらうと連携もスムーズに進みやすいでしょう。インプラント治療の実績豊富な歯科医師であれば、歯列矯正を併用するケースも経験しており、連携しやすい矯正医ともつながっていることが多いからです。

終わりに

このように、歯列矯正とインプラントは目的も治療法もまったく異なるものであり、両方受ける場合は「順番」が大切になります。治療を受ける順番を間違えると、経済的な負担が大きくなるだけでなく、最終的な仕上がりに大きな悪影響が及ぶことも珍しくありません。どちらも治療を終えるまでにたくさんの苦労をしなければならないものなので、思い描いていた結果が得られなかったら残念ですよね。
そうした悲しい思いをしないためにも、歯列矯正とインプラントを受ける歯科医院選びは慎重に行うようにしましょう。最善といえるのは、両方に対応した歯科医院ですが、どちらも専門医レベルの治療を提供できる場所は極めて稀といえます。ですから、現実的には歯列矯正とインプラントは別々の歯科医院を受診し、それぞれで治療計画を立案することになります。お口や歯並びの状態によって治療期間も大きく変わるため、2つの歯科医院での連携も重要になってくる点にもご注意ください。