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インプラントのアバットメントとは?種類・役割・装着のタイミング等を解説

インプラントには「アバットメント」という部品が存在しています。一般的な詰め物や被せ物はもちろん、インプラントと同じ“失った歯を補う装置”であるブリッジや入れ歯にも見られないパーツなので、どのような役割があるのか気になっている方も多いことでしょう。

インプラント治療を成功させ、正常に機能させるために必須となるパーツ。それがアバットメントです。ここではアバットメントの種類や役割、装着のタイミングなどを詳しく解説します。

インプラントの構造

失った歯を補うインプラントは、以下に挙げる3つの部品で構成されています。

  • 上部構造
  • アバットメント
  • インプラント体

上部構造は人工歯、インプラント体は人工歯根としての役割を果たします。それらを連結するのがアバットメントです。インプラントには数多くのメーカーが存在しており、それぞれに異なるシステムや製品を提供しているのですが、基本となる構造は共通しています。ですので、インプラントを理解する上では、まず上部構造・アバットメント・インプラント体という3つの部品の存在について知っておく必要があります。インプラント治療ではどうしてもチタン製の人工歯根やセラミック製の人工歯根に意識が行きがちですが、実際には、これらを連結するアバットメントも非常に重要な役割を果たす部品です。

【関連記事】インプラントにまつわる様々な種類:構造から材質まで徹底解説

アバットメントとは

アバットメントは、人工歯根であるインプラント体の上に装着する部品です。上部構造の土台は、インプラントにアバットメントを装着することによって、ようやく完成にすることになります。つまり、人工歯根にあたるインプラント体と人工歯に当たる上部構造を直接、連結することはできないのです。

インプラントの2回法では、2回目の手術でアバットメントを装着し、歯茎の中に埋め込まれた状態となります。アバットメントと上部構造は、ネジで固定するタイプとセメントで固定するタイプの2種類があり、それぞれに異なるメリットとデメリットがあることから、どちらかが絶対的に優れているとは言い難いです。

例えば、ネジで固定するタイプは、専用のドライバーがあれば自由に取り外せますが、審美性がやや低いのが欠点といえます。それはネジの部分をレジンなどでカバーしなければならないからです。

一方、セメントで固定するタイプは審美性に優れているものの、上部構造やアバットメントに不具合が生じた際の修理が難しくなります。いざアバットメントが故障して修理する必要性が出てきた場合は、上部構造を壊さなければならなくなることも珍しくありません。ちなみに、ワンピーススタイプと呼ばれるインプラントは、アバットメントとインプラント体が一体となっているため、手術を2回で終わらせることが可能です。

アバットメントの種類

種類①チタン合金

チタンやアルミニウムなどから構成されたチタン合金を使ったアバットメントです。強度や耐食性に優れるというチタンの特長を残しつつ、耐久性の高さも追求することができる材料です。金属としての性能が高いため、角度をつけたアバットメントの製作にも向いています。費用に関しては、純チタンよりもやや高くなります。

種類②金合金

金(ゴールド)は、生体親和性と展延性(てんえんせい)に優れた金属です。展延性とは、材料を柔軟に伸ばせる性質で、アバットメントの適合性を高めることができます。その一方で、金合金のアバットメントは、上部構造との連結部分で金属色が目立ちやすかったり、費用が高くなったりするなどのデメリットを伴います。

種類③ジルコニア

酸化ジルコニウムで構成されたジルコニアは、金属に匹敵する硬さを備えたセラミックです。詰め物や被せ物などにも使用される白色の材料で、アバットメントに使用する場合も高い審美性を確保できるというメリットがあります。金属アレルギーのリスクをなくす目的で、インプラント体とアバットメントの両方をジルコニアで製作することも可能です。

種類④純チタン

純チタンは、99%程度がチタンで占められている材料です。費用はチタン合金よりも比較的安く、加工もしやすいというメリットがある反面、チタン合金よりも耐食性や強度に劣るというデメリットも伴います。このように、同じチタン材料でもチタン合金とは違いが見られることから、インプラント体を純チタンで作っている場合は、アバットメントも純チタン製のものを選択するのが望ましいといえます。具体的には、同じ組成の金属で合わせることで、ひずみなどの異常が生じにくく、装置としての寿命も延ばしやすくなります。

アバットメントの役割

インプラントのアバットメントには、以下に挙げる5つの役割があります。

役割➀インプラント体を目立ちにくくする

人工歯根であるインプラント体はチタン製のものが一般的です。つまり、金属色がむき出しとなっているのです。歯周病で歯茎が下がったりしてその一部が露出すると、口元の審美性が大きく低下します。アバットメントに目立ちにくい材料を使用すれば、そうした審美性の低下を防ぐことが可能となります。

役割②人工歯とインプラント体を連結する

人工歯である上部構造とインプラント体の連結は、アバットメントが担う最も重要な役割です。上部構造とインプラント体の間にアバットメントが介在することで、高さの微調整が可能となります。アバットメントがインプラント体と一体となっているワンピースタイプだと、上部構造が破損した際に、インプラント体まで大きなダメージを負うことがありますが、ツーピースタイプならそうしたリスクを最小限に抑えられます。

役割➂上部構造の傾きを補正する

患者さんの顎の骨の状態によっては、チタン製のネジであるインプラント体を真っすぐ埋め込めないことがあります。インプラント体に角度をつけて埋入することになるため、そのままの状態では上部構造も傾斜してしまいます。そんな時に有用なのがアバットメントです。アバットメントの形態を調整すれば、上部構造の傾きを補正することができます。その結果、審美性も機能性も正常な仕上がりが期待できるでしょう。

役割④噛み合わせの高さを調整する

上部構造の高さは、インプラント体だけではなく、その他の歯にも大きな影響を与えます。例えば、上部構造の噛み合わせが高すぎる場合は、インプラント体に過剰な負担がかかり、顎骨との結合が失われてしまうことがあるのです。その前に上部構造が欠けたり、外れたりすることもあります。逆に、上部構造の噛み合わせが低すぎると、周りの歯に大きな負担がかかることになります。そうしたインプラントの噛み合わせは、アバットメントである程度、調整することが可能です。もちろん、アバットメントだけでなく、上部構造で噛み合わせの高さを調整することもできます。どちらで調整するかはケースによって変わってきます。

役割⑤インプラントの強度を高める

人工歯根と上部構造の間にアバットメントが介在することで、インプラントの強度を高めることができます。これはアバットメントがクッションのような役割を果たすからです。インプラント体とアバットメントが一体となっているワンピースタイプでは、そうした効果は期待できません。アバットメントの部分が破損した時点で、インプラント体も撤去しなければならなくなります。どちらかというとワンピースタイプの方が天然歯の構造に近いのですが、人工的な装置であるインプラントの場合は、歯を3つの部品に分けて装着した方が予後も良くなりやすいのです。

アバットメントを装着するタイミング

人工歯と人工歯根の連結装置ともいえるアバットメントは、インプラントの2回法における2回目の手術で装着することになります。

1回目の手術では、歯茎をメスで切開し、顎の骨にドリルで穴を開けて人工歯根であるインプラント体を埋め込みます。手術の最後には傷口を縫合して、3~6ヵ月程度、待機します。この期間にチタン製の人工歯根と顎の骨が結合する「オッセオインテグレーション」が起こるのです。

オッセオインテグレーションが正常に起こったことを確認したら、2回目の手術で改めて歯茎を切開して、インプラント体の上にヒーリングアバットメントを装着します。これはあくまで仮のアバットメントで、歯茎の状態が落ち着いてきたら、最終的なアバットメントを装着することになります。

アバットメントの装着で起こるトラブル

アバットメントは、インプラント体と上部構造をつなぐ部品ですが、その装着によってトラブルが起こることもあります。一般的には、以下の3つのトラブルが考えられます。

トラブル➀噛み合わせが悪くなる

アバットメントの装着に不具合があると、噛み合わせが悪くなる場合があります。そのためアバットメントの装着は適切に行う必要があるのです。噛み合わせが悪い状態は、上部構造やアバットメント、インプラント体に過剰な圧力がかかるため、早期に改善しなければなりません。ですからアバットメントと上部構造の装着が完了したとしても、噛み合わせの不快感などの症状が現れた場合は、早急に主治医へ相談しましょう。多くのケースでは、アバットメントや上部構造を調整することで、不具合を取り除けます。

トラブル②痛みが生じる

アバットメントの装着後に痛みを感じる場合は注意が必要です。
装置のどこかに何らかの異常があって、顎の骨にダメージが及んでいる可能性が高いからです。多くのケースでは、アバットメントの緩みが原因となって痛みが生じています。アバットメントが緩んでいると、噛み合わせが悪くなって人工歯根や顎の骨に大きな負担がかかるからです。その状態で噛み続けていると、上部構造やインプラント体が壊れたり、顎の骨に炎症が起こったりします。ちなみに、アバットメントの緩みは専用の器具を使うことで容易に改善できます。

トラブル➂インプラント体の脱落が起こる

アバットメント装着後に起こる最も深刻なトラブルは、インプラント体の脱落です。
顎の骨に埋入したチタン製の人工歯根が抜け落ちる現象で、インプラント治療そのものが失敗に終わったことを意味します。こうしたトラブルは、アバットメントの緩みや破損などが原因となりやすいです。やはり、連結装置であるアバットメントに何らかの異常が生じると、それが上部構造や人工歯根へと波及していってしまうのです。インプラント治療におけるアバットメントは、それくらい重要な部品であるということを知っておいてください。

まとめ

今回は、インプラント治療で使用するアバットメントという部品の種類や役割、装着のタイミングなどを解説しました。アバットメントは、上部構造とインプラント体とをつなぐ連結装置で、それらを守る役割も果たしています。本文でも解説した通り、アバットメントに不具合が生じると、それが人工歯根や顎の骨にまで深刻な悪影響を及ぼしかねないため、十分な注意が必要といえます。

これからインプラント治療を受ける人はもちろん、すでに治療を終えている人も、アバットメントの重要性についてはしっかり理解しておくようにしてください。インプラント治療後に上部構造やアバットメントの不具合が生じたら、できるだけ早く主治医に相談することが大切です。当然ですが定期的なメンテナンスも必ず受けるようにしてください。

インプラントと差し歯の違いとは?各々のメリット・デメリット・治療の流れも解説

人工歯を被せる治療法には、インプラントと差し歯があります。この2つは混同されやすいですが、実際はまったく異なる治療法と言っても間違いではありません。
ここではそんなインプラントと差し歯の違いやそれぞれのメリット・デメリット、治療の流れなどを詳しく解説します。

インプラント治療と差し歯治療

インプラント治療とは

インプラント治療とは、何らかの理由で失った歯を歯根から再生する治療方法です。歯が抜けた部分に、フィクスチャーと呼ばれるチタン製の人工歯根を埋め込みます。最後は上部構造と呼ばれる人工歯を装着することから、天然歯そっくりに仕上げることが可能です。

差し歯治療とは

差し歯治療は、天然の歯に被せ物やクラウンなどとも呼ばれる人工歯を装着する治療方法です。インプラント治療とは異なり、最低でも天然の歯根が残っていなければなりません。つまり、天然の歯根に差し込んで装着することから、差し歯と呼ばれるようになったのです。差し歯の素材は、レジンやセラミック、金属など、いろいろなものが用いられます。

インプラントと差し歯の違い

違い①費用

費用面においては、インプラントと差し歯で大きな違いが見られます。そもそもインプラントには保険が適用されず、自由診療となりますのでその点はご注意ください。一方、差し歯には保険適用されるため、費用を比較的安く抑えられるのです。それぞれの費用相場は以下の通りです。

インプラントの費用相場

インプラント治療は、1本あたり300,000~500,000円程度が一般的な費用です。これは世界的にもメジャーなインプラントシステムの費用なので、マイナーなインプラントを選んだ場合はもう少し安くなることがあります。ただし、費用の安いインプラントは、実績が乏しく、安全性や確実性が保証されていないことから、広く推奨できるものではありません。

差し歯の費用相場

差し歯治療を保険適用で受けた場合は、1本あたり3,000~8,000円程度の負担にとどまります。これは保険の3割負担を想定した場合に患者さんが実際に支払う金額です。差し歯で自由診療を選択した場合は、1本あたり50,000~200,000円程度の費用がかかります。費用相場に大きな幅があるのは、人工歯の素材で値段が大きく変わるからです。

【関連記事】
差し歯の特徴や費用:保険適用と保険適用外に分けて解説
インプラント治療はいくら?1本当たりの費用相場や高額な理由等を解説

違い②治療期間

インプラントには、人工歯根(インプラント体)を顎の骨に埋め込む外科手術を伴うため、治療期間が比較的長くなっています。標準的なインプラント治療を想定した場合は、3~6ヵ月程度の期間を要します。不足している骨を補う骨造成などを伴う場合は、全体で1年程度の期間を要することも珍しくありません。一方、差し歯治療は、1~2ヵ月で終わるのが一般的です。もともと天然の歯根が残っている差し歯治療は、人工歯を被せるだけなので、それほど長い期間がかからないのです。

【関連記事】インプラントの治療期間は平均どれくらい?治療の流れ等も解説

違い③寿命

寿命という観点では、差し歯よりもインプラントの方が優れています。ただし、自由診療で装着した差し歯の場合は、インプラントの寿命と大差はないことでしょう。それぞれの装置の寿命の目安いは以下の通りです。

  • インプラント:10~15年以上
  • 差し歯(保険):6~8年程度
  • 差し歯(自費):10~15年程度

インプラントに関しては、治療後のメンテナンスとセルフケアをしっかりと継続させていけば、15年以上使い続けることも難しくはありません。実際、過去には40年程度、インプラントを使い続けた症例があるのです。

【関連記事】
インプラントの寿命はどれくらい?縮める原因や延ばす対策等を解説
インプラントの寿命がきたらどうする?平均寿命やそれを短くする原因等も解説

違い④メンテナンス

インプラントは、メンテナンスが必須の治療法です。治療後のメンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎にかかったり、装置が故障したりするため十分な注意が必要といえます。差し歯は、天然の歯根に人工歯を被せるシンプルな治療法なので、インプラントほど、きめの細かいケアやメンテナンスは必要ありません。

【関連記事】
インプラントのメンテナンスの費用相場・寿命・必要な理由等を解説
インプラントのメンテナンス方法:歯科医院とセルフケアに分けて解説

違い⑤見た目

インプラントと差し歯の見た目は、人工歯の素材によって変わります。インプラントではほとんどのケースでジルコニアやセラミックを用いることから、見た目は天然歯そっくりです。保険適用の差し歯では、レジンや金属などを用いるため、見た目はインプラントに劣ります。自由診療の場合は、インプラントと同じような素材を使用できるので、見た目に大きな違いはないといえるでしょう。

インプラントのメリット・デメリット

インプラント治療には、次に挙げるようなメリットとデメリットを伴います。

メリット
  • 見た目が自然で美しい
  • 天然歯のようにしっかり噛める
  • 周りの歯を削る必要がない

インプラントは、失った歯を歯根から再生できる治療法です。そのため、歯根のない入れ歯やブリッジよりも見た目が自然で美しいです。噛み心地も天然歯に近いといえるでしょう。周りの歯を削ったり、残った歯に大きな負担をかけたりするようなこともありません。

デメリット
  • 治療にかかる費用が高い
  • 治療にかかる期間が長い
  • 外科手術が必要
  • メンテナンスを怠ると装置の寿命が縮まる

インプラント治療には、チタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込む外科手術が必須です。そのため、費用が高く、治療期間も長くなるというデメリットを伴うのです。また、インプラントは歯根から歯冠まですべてが人工物で構成されていることから、治療後の定期的なメンテナンスを欠かせないというデメリットも伴います。

【関連記事】インプラントのメリットとデメリットとは?それぞれ解説

差し歯のメリット・デメリット

差し歯治療には、次に挙げるようなメリットとデメリットを伴います。

メリット
  • 治療期間が比較的短い
  • 治療費が安い
  • 外科手術が不要

差し歯治療にかかる期間は、短ければ2~3週間、長くても1~2ヵ月程度となっています。保険診療を選択すれば、数千円の負担で差し歯を作れます。差し歯治療では、天然歯の歯根が残っていることが前提であることから、人工歯根を埋め込む外科手術も不要です。

デメリット
  • 保険の差し歯は見た目が良くない
  • 自費の差し歯は費用が高い

差し歯は、保険適用を選択した場合にデメリットが目立つようになります。なぜなら保険の差し歯では、主に歯科用プラスチックであるレジンや銀色の金銀パラジウム合金を使うことになるからです。これらは自由診療で使用できるセラミックより審美性が低くなっています。もちろん、自由診療を選択することで審美面のデメリットは解消できますが、その場合は費用が高くなってしまいます。素材によっては差し歯1本あたり200,000円程度の費用がかかる場合もあるのです。

インプラント治療と差し歯治療の流れ

インプラント治療と差し歯治療は、治療の流れも大きく異なります。それぞれの治療の流れは以下の通りです。

インプラント治療の流れ

  1. カウンセリング
  2. 検査・診断
  3. 前処置・事前治療
  4. 人工歯根の埋入手術(1次手術)
  5. 治癒期間
  6. アバットメントの装着(2次手術)
  7. 人工歯(上部構造)の装着
  8. メンテナンス

インプラントでは、施術する部位の周囲に虫歯や歯周病などの異常が見つかった場合、先にそれらの治療を行うことがあります。これが上記の前処置・事前治療に該当します。骨が足りない場合の骨造成もこれに含まれます。1回目の外科手術では人工歯根であるフィクスチャーを埋め込み、3~6ヵ月の間、顎骨と結合するのを待ちます。2回目の外科手術では、上部構造の土台となるアバットメントを装着します。最後は人工歯を装着して治療は終了です。

差し歯治療の流れ

  1. 虫歯になっている歯質を削る
  2. 歯の神経を抜いて根管内を無菌化する
  3. 差し歯の土台を作る
  4. 差し歯を装着する

差し歯の治療では、はじめに必ず虫歯菌に侵された歯質を削ります。歯の神経まで感染が広がっていない場合は、そのまま差し歯の製作・装着へと進むことができます。歯の神経まで感染が広がっているケースでは、抜髄(ばつずい)と根管治療が必要となります。根管治療が終わったら、差し歯を装着して終わりです。

まとめ

今回は、インプラントと差し歯の違いについて解説しました。インプラントは、歯を丸ごと1本失った症例が対象となる治療法なので、天然歯の歯根が残っている歯が対象となる差し歯とは根本的に異なります。本文でも比較したように、費用、治療期間、寿命、メンテナンス、見た目という5つの観点からも大きな違いが見られる治療法なので、その点は正しく理解しておく必要があります。ごく稀にではありますが、インプラントと差し歯のどちらにすべきか迷うケースも存在しています。そうしたケースでは、それぞれの治療実績が豊富な歯科医師に相談することが大切です。

インプラントのオールオン4と総入れ歯では費用・寿命はどう違う?各々のメリット・デメリット等も解説

インプラントは、すべての歯を失った症例にも適応することができますが、人工歯根を埋め込む本数が多くなるというデメリットを伴います。具体的には、片側の顎だけでも8~14本の人工歯根を埋め込まなければならず、経済面はもちろんのこと、心身への負担も相応に大きくなります。

そうした通常のインプラントの欠点を解消できる方法が「オールオン4」です。ここではオールオン4の特徴やメリット・デメリットを、総入れ歯と比較しながら詳しく解説をします。

インプラントのオールオン4とは

オールオン4とは、4本のインプラント体(人工歯根)を使用して、総入れ歯のような形をした上部構造を装着する治療法です。人工歯根の埋入本数はケースによって少し変動することがあるため、厳密には4~6本のインプラント体で上部構造を支えます。すべての歯を失った場合の通常のインプラント治療と比較すると、人工歯根の埋入本数を極端に少なくすることが可能です。その結果、患者さんの心身および経済面の負担を大きく減らせるでしょう。

オールオン4のメリット・デメリット

オールオン4は、保険診療の総入れ歯と比較すると、以下のメリット・デメリットが考えられます。

オールオン4のメリット
  • 天然歯に近い咬合力を獲得できる
  • 顎の骨が痩せにくい
  • 装置がズレたり、外れたりしない
  • 見た目が自然で美しい
  • 装置が長持ちしやすい
  • 口元や顔貌の印象が若くなる

オールオン4では、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋入することから、硬い食べ物でもしっかり噛めるようになります。噛んだ時の力が顎に伝わり、骨も健康に保たれることが期待されます。
固定式の装置であるオールオン4は、食事や会話の際にズレたり、外れたりすることもありません。また、総入れ歯と比較すると装置が小型であるため、見た目が自然で美しく、若々しい印象を与えます。

オールオン4のデメリット
  • 治療期間が長い
  • 外科手術が必須となる
  • 保険が適用されず、費用が高い

保険診療の総入れ歯は1~2ヵ月で治療が完了しますが、オールオン4の場合は外科手術が必要となるため、治療期間は半年程度に及びます。また、保険が適用されないことから、総入れ歯よりも費用は高くなります。

【関連記事】オールオン4のメリット・デメリット:総入れ歯やインプラントと比較して解説

総入れ歯とは

総入れ歯とは、すべての歯を失った症例に適応される入れ歯です。おそらく、皆さんが「入れ歯」と聞いて頭にイメージする装置が総入れ歯です。義歯床(ぎししょう)というレジンで作られた土台の部分と人工歯で構成されており、すべての歯がきれいに並んだ状態で装着できます。部分入れ歯と比較すると装置が大きくなりますが、設計がシンプルで取り扱いやすいというメリットもあります。

総入れ歯のメリット・デメリット

総入れ歯は、インプラントのオールオン4と比較すると、次に挙げるようなメリット・デメリットを伴います。

総入れ歯のメリット
  • 保険が適用されて費用が安い
  • 外科手術が必要ない
  • 治療が早く終わる

総入れ歯は、保険が適用される代表的な装置です。1~3割負担で装置を作れることから、治療費が安く、経済面におけるメリットが得られやすい治療法といえるでしょう。また、総入れ歯ではオールオン4で行うような外科手術が不要となっているため、心身への負担を軽減できます。治療期間も自ずと短くなります。

総入れ歯のデメリット
  • 見た目があまり良くない
  • 咬合力の再現性は高くはない
  • 噛んだ時にズレたり、外れたりする
  • 装置の寿命が比較的短い
  • 装着する手間がかかる

総入れ歯を装着してみてまず感じやすいのが装置の違和感です。総入れ歯は、お口の粘膜に吸着させて固定するため、装置が大きくなる傾向にあるからです。この点はオールオン4のスリムな上部構造との大きな違いといえるでしょう。また、総入れ歯はオールオン4のような固定式ではなく着脱式なので、噛む力の再現性はあまり高くありません。噛んだ時にズレたり、外れたりすることもあります。総入れ歯は装置の寿命が比較的短いというデメリットも伴います。

オールオン4と総入れ歯の違い

ここからは、オールオン4と総入れ歯を「費用」と「寿命」という観点から比較していきます。

違い①費用

インプラント治療の一種であるオールオン4と総入れ歯では、費用面に決定的な違いが見られます。

まず、オールオン4に関してですが、保険が適用されないことから、治療にかかった費用は全額自己負担となります。全国的な相場としては片側の顎で2,000,000~4,000,000円程度かかるのがオールオン4です。保険が適用されない、手術が必要、特別な材料を使用する、専門的な知識・技術・設備が必須である、という多くの理由から、治療費が高額になっています。

一方、保険が適用される総入れ歯は、片側の顎で5,000~15,000円程度で作れます。保険の総入れ歯は義歯床も人工歯も歯科用プラスチックであるレジンで作られているため、このような安価で作成できるのです。ただし、総入れ歯は寿命が短く、経年的に劣化が起こりやすいため、数ヵ月ごとの調整や数年ごとの作り直しが必要となります。その点も踏まえると、総入れ歯がオールオン4よりも極端に安いというわけではないことがわかります。

【関連記事】オールオン4 の治療費:相場や費用が抑えられる理由等を解説

違い②寿命

オールオン4と総入れ歯には、寿命という面でも大きな違いが見られます。顎の骨に人工歯根を埋め込むオールオン4の寿命は、標準的なインプラントと大差はなく、10~15年程度、持つものと考えられています。もちろん、治療後のケアとメンテナンスをしっかり継続すれば一生涯使い続けることも難しくはありません。

一方、保険診療で作った総入れ歯の寿命は、一般的に3~4年程度といわれています。総入れ歯はお口の中に装着するだけの装置なので、年月が経過するとともに合わなくなってくるのです。それはお口と装置の両方に変化が見られるからです。そういう意味でまったく同じ症例であっても、オールオン4と総入れ歯とでは、装置の寿命に大きな違いが表れますので、その点にはご注意ください。

オールオン4と総入れ歯のケア

オールオン4は固定式で、総入れ歯は着脱式の装置であることから、ケアの方法にも違いが見られます。

ケア➀オールオン4

オールオン4は、少し特殊な形をしている装置ですので、毎食後10~15分程度かけてしっかりケアするようにしましょう。その際、硬い歯ブラシを使うと人工歯を傷つける恐れがあるため、ふつうかやわらかめの歯ブラシで、やさしくブラッシングするよう心がけてください。

また、オールオン4は歯科医院でのメンテナンス・クリーニングが必須ですので、3~4ヵ月に1回は定期検診を受けるようにしてください。治療から2年以上経過してオールオン4の状態が安定している場合、定期検診の頻度を半年に1回程度にしても問題ありません。

ケア②総入れ歯

総入れ歯は、必ず装置をお口から外した状態でケアするようにしましょう。使用するのは水道水と入れ歯専用の歯ブラシ(義歯ブラシ)です。熱湯で煮沸消毒すると、総入れ歯が変形してしまうため、絶対に避けてください。夜眠る前に「入れ歯洗浄剤」を使うことで、ブラッシングでは落としきれない汚れを化学的に除去できます。

入れ歯は、一見するとあまり汚れていないように見えるかもしれませんが、お口に入れた時点で細菌が付着しています。歯と同じように歯垢や歯石も堆積することから、天然歯と同様、あるいはそれ以上のきめ細やかなケアが必須となります。不潔な入れ歯を使い続けると、義歯性口内炎や口腔カンジダ症といったお口の粘膜の病気を引き起こしてしまうため、十分にご注意ください。

まとめ

今回は、オールオン4と総入れ歯の違いについて、費用や寿命の観点から比較しました。両者は似たような装置に見えますが、さまざまな点で違いがあります。どちらにしようか迷われている方は、ぜひ当院までお気軽にご相談ください。費用や寿命以外の面についても、両者の違いをわかりやすくご説明します。当院はオールオン4と総入れ歯の両方に対応している歯科医院ですので、患者さんに最適な治療法をご提案いたします。

インプラントの寿命がきたらどうする?平均寿命やそれを短くする原因等も解説

インプラントは、外科手術を必要とする歯科治療です。従来法よりも手間や時間、お金がかかる分、装置としての寿命も比較的長いことで知られています。それでもやはり、インプラントにも寿命はやっていきます。寿命を迎えたインプラントを使い続けることはとても危険です。ここではそんなインプラントの平均寿命やそれ短くする原因、寿命がきた場合の対処法などを詳しく解説します。

インプラントの平均寿命

外科手術で顎の骨に人工歯根を埋め込むインプラントは、10~15年くらい持つのが一般的です。保険診療で作る入れ歯は3~4年、ブリッジは7~8年と言われていることを踏まえると、インプラントの平均寿命はかなり長いと言えます。そもそも、インプラントには「10年保証」が付いていることがほとんどであり、少なくとも10年は持つものと考えて良いでしょう。ただし、それはインプラント治療後のセルフケアと、プロフェッショナルケア(メンテナンス)を適切に続けることが前提となります。

インプラントの寿命を短くする原因

インプラントの寿命を短くする原因

上段で述べたように、インプラントの平均寿命はかなり長いですが、いくつかの理由で短くなることがあります。とりわけ以下に挙げる5つの原因には十分な注意が必要です。

原因①メンテナンスの不足

インプラント治療後には、歯科医院で定期的なメンテナンスを受ける必要があります。メンテナンスは人工歯根であるインプラント体や歯茎を始めとした歯周組織、上部構造の異常を早期発見する上で重要です。定期的なメンテナンスを怠ると、インプラントの異常に気付かないだけでなく、保証も受けられなくなるためご注意ください。そうしたプロフェッショナルケアを継続的に受けることで、インプラントを長持ちさせることが可能となります。

原因②インプラント周囲炎

インプラントの寿命を縮める主な原因は「インプラント周囲炎」です。インプラント体を埋め込んだ周りの歯茎や顎の骨に炎症が起こる病気で、一般的な歯周病よりも進行が早いのが特徴です。「インプラント周囲粘膜炎」という、通常の歯肉炎に当たる段階で治療を行えば、比較的容易に治せますが、インプラント周囲炎まで発展してしまうと、人工歯根が脱落するリスクも高まります。

原因③質が低いインプラントの使用

いわゆる“格安インプラント”では、質が低いインプラント体を使っていることが多いです。一見すると標準的なインプラントに見えたとしても、実際は劣化しやすい素材であったりします。質が低いインプラントはそもそも顎の骨との結合も悪く、早期に寿命を迎えることになるでしょう。

原因④歯ぎしり・食いしばり

インプラントは、見た目も噛み心地も天然歯にそっくりな装置といっても間違いではありませんが、あくまで人工物であることを忘れてはいけません。とくに顎の骨との結合に「歯根膜(しこんまく)」というクッションの役割を果たす組織が介在していない点には注意が必要です。インプラント治療後に歯ぎしりや食いしばりといった悪習癖が残っていると、顎の骨へ過剰な負担がかかって炎症を引き起こします。その結果、インプラントの定着が悪くなり、寿命が縮まります。

原因⑤喫煙

喫煙は、インプラントにトラブルを引き起こすリスク因子となります。タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は、インプラントを取り巻く歯周組織の血流を悪くし、感染症リスクを高めます。具体的には、インプラント周囲炎のリスクが大きく上昇するのです。喫煙習慣がある人がインプラント周囲炎を発症してしまうと、完治させることが極めて難しくなるため十分な注意が必要です。

インプラントの保証期間

標準的なインプラント治療には、5~10年の保証が付きます。メジャーなインプラントメーカーの場合は10年保証が付いていることが多いです。保証期間内であれば、再治療を無償で受けられます。ただし、インプラント体と上部構造では、保証期間や保証内容が異なる場合もあるため、事前にきちんと確認しておくことが大切です。

インプラントの寿命がきたらどうする?

インプラントに何らかのトラブルが発生して寿命を迎えた場合の対処法としては、3つの選択肢が存在しています。
それは「インプラント治療をもう一度行う」「入れ歯を作る」「ブリッジを装着する」の3つです。どの選択肢が最善であるかは患者さんのお口の中の状態によって変わります。顎の骨に大きな問題がなく、保証期間も過ぎていない場合は、インプラント治療を再度行った方が良いでしょう。

寿命が過ぎたインプラントを使い続けるリスク

寿命が過ぎたインプラントを使い続けるリスク

寿命を過ぎたインプラントは、適切な機能を発揮できなくなります。そのまま使い続けると、次にあげるようなリスクを伴うため十分な注意が必要です。

リスク①インプラントが脱落する

寿命を迎えたインプラントは、いつ脱落してもおかしくありません。脱落した際に、上部構造やインプラント体を飲み込んでしまうリスクが生じます。噛んだ時の力は周りの歯で支えなければならなくなり、残存歯の寿命まで縮めることになるのです。

リスク②痛みが生じる

インプラント周囲炎などが原因で寿命を迎えたインプラントは、そのまま使い続けると痛みが生じます。放置すると病巣が広がり、歯茎や歯槽骨といった歯周組織に深刻なダメージを与えることもあります。

リスク③再治療ができなくなる

寿命を迎えたインプラントは、歯茎や顎の骨に大きな負担をかけます。その結果、再治療が難しくなるほど、歯周組織が破壊されてしまうこともあるのです。インプラント治療を再び行うという選択肢を失わないためにも、早期に対処することが大切です。

リスク④隣接する歯に悪影響を及ぼす

インプラントは独立した装置ですが、寿命を迎えた場合は、隣接する歯に悪影響をもたらします。噛んだ時の力が隣の歯に集中したり、歯並び・噛み合わせを悪くしたりする場合もあります。

ポイント

インプラントの寿命を延ばすためのポイント

以下のポイントに留意することで、インプラントの寿命を延ばしやすくなります。

ポイント①セルフケアを丁寧に行う

インプラントの周りは、天然歯よりも汚れがたまりやすいです。毎日のセルフケアでは、丁寧にブラッシングすることを心がけましょう。そうすることで、インプラントの天敵である歯周病を予防できます。

ポイント②定期的にメンテナンスを受ける

インプラントの寿命を延ばす上で、定期的なメンテナンスはセルフケアと同じくらい重要となります。メンテナンスでは、インプラントの清掃や歯科医師による精密な検査などを受けることができます。当然ですが、定期的なメンテナンスはインプラント治療を受けた歯科医院を受診するようにしましょう。ひと言でインプラントといっても採用しているメーカーやシステムが異なりますし、そもそも治療過程がわかっているのとそうでないのとでは、メンテナンスの精度も大きく変わってきます。

ポイント③噛み合わせのチェックを受ける

インプラントの噛み合わせが悪くなっていると、顎の骨や人工歯根に過剰な負担がかかってしまいます。そうしたトラブルを未然に防ぐためにも噛み合わせのチェックは定期的に受けるようにしましょう。

ポイント④減煙・禁煙

喫煙習慣は、インプラントの寿命を確実に縮めます。ですから、インプラントの寿命を延ばすためにはタバコを吸う本数を減らしたり、完全に禁煙したりすることが大切です。

まとめ

今回は、インプラントの寿命や寿命がきたあとについて解説しました。インプラントの平均寿命は10~15年程度といわれていますが、治療後のケア次第で20年、25年と延ばすことは十分可能です。
それでもインプラントが寿命を迎えてしまったら、無理に使い続けることはせず、適切な治療を受けましょう。インプラントをもう一回埋め込む、ブリッジを装着する、入れ歯を入れるといった治療の選択肢が提示されるかと思いますので、ご自身のお口の環境や予算に合った最善といえる方法を選ぶようにしてください。

奥歯2本のインプラントの費用相場:歯科医院を選ぶ際のポイント等も併せて解説

奥歯は虫歯や歯周病などで失いやすい歯といえます。そのため奥歯のインプラント治療を希望される方は比較的多いです。
今回は奥歯2本をインプラントで治療する場合の費用相場や歯科医院を選ぶポイントなどを詳しく解説します。

インプラントとは

インプラントは、失った歯を補うための治療法です。植え付ける・移植するといった意味の「implant(インプラント)」という名前からも想像できるように、顎の骨にチタン製の人工歯根(インプラント体)を埋め込みます。歯を支えている歯茎や歯槽骨(しそうこつ)といった歯周組織の状態が極めて重要となる治療法です。インプラント体の上には、人工歯にあたる上部構造を装着して、見た目や噛む機能を回復させます。
インプラントは人工関節にも使われる言葉であるため、失った歯の治療法に関しては「デンタルインプラント」と区別して表現されることもあります。

奥歯2本のインプラントの費用相場

治療費

インプラントには、原則として保険が適用されません。いわゆる“自由診療”となることから、どのくらいの費用がかかるのか心配な方も多いことでしょう。
ここでは奥歯2本をインプラントで治療する場合の費用相場を簡単にご紹介します。

検査・診断料(20,000~50,000円程度)

インプラント治療では、歯科用CTも含めた精密検査が必要となります。診断料も合わせると20,000~50,000円程度になるのが一般的です。
インプラントは専門性の高い治療分野であり、検査や診断にもそれ相応の知識や技術が必須となります。そのため、検査・診断料も比較的高くなっています。

手術費用(300,000~700,000円程度)

奥歯2本のインプラント手術にかかる費用は300,000~700,000円程度です。相場に大きな幅があるのは自由診療だからです。
抜歯や骨を増やす処置、静脈内鎮静法などが必要なケースでは、手術費用もさらに高くなります。

人工歯の費用(100,000~400,000円程度)

人工歯にあたる上部構造は、セラミックで作るのが一般的です。
その他にもいろいろな材料を選択できることから、100,000~400,000円程度が費用相場となっています。

つまり、奥歯のインプラントを2本埋め込む治療の総額としては800,000~1,000,000円程度が相場といえます。かなり高額にはなりますが、高いコストをかけても余りあるほどのメリットが得られるのも事実です。

インプラントの費用を確認する上で押さえておきたいポイント

ポイント

内訳と総額を見る

インプラント治療にかかる費用を確認する際には、上段で解説した3点に着目しましょう。
具体的には、検査・診断料、インプラント手術の費用、人工歯の費用です。
この3点が内訳に含まれていない場合は、インプラント治療にかかる総額が提示されていないことになります。そのまま治療を開始すると、費用面でトラブルが生じかねませんので十分にご注意ください。

提示されている金額が税込であるかどうかもきちんと確認しましょう。標準的な治療に加えて、抜歯や骨造成、静脈内鎮静法などが必要となる場合は、それらの費用がいくらになるのかも正確に把握しておくことが大切です。カウンセリングの段階では相場しか提示されなかったり、「100,000円程度」といった曖昧な表現がなされたりするかもしれませんが、検査・診断が終わった段階では正確な金額も判明していることでしょう。

費用のみで歯科医院を選ぶとリスクがある

奥歯2本をインプラント治療する場合、総額としては800,000~1,000,000円程度かかるのが一般的です。それを「当院なら300,000円で行えます」と提案する歯科医院も中には存在しています。費用の面だけ考えると、間違いなくその歯科医院がおすすめといえますが、そこにはたくさんのリスクが潜んでいることを知っておいてください。

どんな医療やサービスでもそうですが、費用の相場にはそれなりの意味があります。そもそもインプラントは原材料費の高い部品を使うため、一定以上のコストは必ずかかるものなのです。いわゆる「格安インプラント」と呼ばれるものは、そうした原材料にかかる費用を無理に削ったり、安全性や確実性が保証されてないマイナーなインプラントシステムを採用したりしているものです。その他、インプラントの経験が浅い歯科医師が治療を担当する、歯科医院に十分な設備が整っていないなど、値段が極端に安いインプラントにはさまざまなデメリット・リスクを伴うことがある点にご注意ください。

歯科医院を選ぶ際のポイント

歯科医の解説

インプラント治療を任せる歯科医院を選ぶ際には、次に2点に着目してください。

インフォームドコンセントを徹底している

インプラント治療では外科手術が必須となっているため、さまざまなリスクを伴います。全体の診療プロセスも通常の歯科治療と異なる点が多く、事前の説明が極めて重要となります。インプラントに伴うメリットだけでなく、デメリットもきちんと説明した上で治療の同意を求めるような歯科医院を選ぶようにしてください。とくに検査・診断の結果説明をていねいに行ってくれる歯科医院が望ましいです。

注:「インフォームドコンセント」とは、「医療側からの十分な説明を受けて患者側が納得した上での同意」という意味

歯科医師のインプラント手術の経験が豊富

医療技術は経験を重ねるごとに高くなっていきます。とりわけ、インプラントのような専門性の高い治療技術は、経験が豊富であるほど精度も高まることでしょう。インプラント手術は人工歯根を埋入する位置が1mmでズレてしまうと結果に大きな悪影響が及びます。そこで歯科医院のホームページ等で、以下の点をチェックすることをおすすめします。

  • 日本口腔インプラント学会の専門医や指導医の資格を持っている
  • インプラント治療を行う診療科での勤務経験が長い

この2つに当てはまるのであれば、インプラント手術が経験豊富な歯科医師であることに間違いはありません。それに加えて、歯科医院の設備も十分に整っているかどうかも確認してください。歯科用CTが完備されていることは必須条件です。インプラント手術を安全に行える診療環境かあるかどうかもチェックしましょう。

インプラントの費用を抑える方法

ここまでは奥歯2本をインプラントで治療する場合の費用について解説してきましたが、比較的高額であることから、なかなか一歩踏み出せないという方もいらっしゃるかもしれません。そんな方に向けてインプラントの費用を抑える方法をご紹介します。

医療費控除を利用する

医療費控除とは、1年間に支払った医療費の総額が100,000円を超えた場合に、還付金という形でその一部が戻ってくるという制度です。インプラントは自由診療ではあるものの、歯列矯正やセラミック治療と同じように、医療費控除の対象となります。その他に支払った医療費と併せて、総額で数万円から数十万円戻ってくることも珍しくありませんので、インプラント治療を受けた際には積極的にこの制度を活用しましょう。

高額療養費制度を利用する

高額療養費制度とは、月の始めから終わりまでに一定以上の医療費を自己負担した場合に払い戻しを受けられる制度です。この制度は医療費控除とは異なり、原則として保険診療が対象となります。そのため自由診療でインプラント治療を受けた場合は、対象外となる点に注意が必要です。インプラント治療は一部のケースで例外的に保険が適用される場合があり、その際に高額療養費制度を利用することが可能となります。

まとめ

今回は、奥歯2本のインプラントの費用相場と歯科医院選びのポイントについて解説しました。奥歯2本のインプラント治療を受ける場合は、総額で800,000~1,000,000円程度が全国的な費用相場となっています。信頼できる歯科医院を選ぶ際のポイントは、「インフォームドコンセントを徹底している」「歯科医師のインプラント手術の経験が豊富」であることです。費用相場よりも極端に安い価格でインプラント治療を提供している場合は注意が必要です。奥歯2本のインプラントというのは、あなたの人生を大きく変える重要な治療となることから、歯科医院選びは慎重に行うようにしてください。

インプラントのメリットとデメリットとは?それぞれ解説

外傷や虫歯などが原因で歯を丸ごと失ってしまうと、日常のさまざまな場面で不都合が生じることになります。私たちの歯というのは、それくらい重要な役割を担っています。昨今、喪失歯の治療法としては、インプラントに注目が集まっています。

人工歯根を顎の骨に埋め込む治療法で、入れ歯やブリッジにはない特長があります。その有用性については、皆さんの耳にもすでに入っていることでしょう。ここではそんなインプラントのメリットとデメリットを専門家の立場から詳しく解説します。

インプラントのメリット

まずはインプラントのメリットからご紹介しましょう。この治療法には、従来法にはないメリットが驚くほどたくさんあります。

入れ歯よりも咀嚼能力に優れている

インプラントや入れ歯といった補綴装置(ほてつそうち)は、失った歯の“噛む機能”を回復させるのが主な役割です。入れ歯は短期間で安価に作れる装置ですが、噛んだ時にずれたり、外れたりすることがあります。これは着脱式の装置の宿命ともいえる難点です。一方、顎の骨にチタン製の人工歯根をしっかりと埋め込む固定式のインプラントは、硬いものでもしっかり噛むことができます。入れ歯のみならず、ブリッジと比較した場合も、インプラントの方が咀嚼能力に優れているといえるでしょう。

審美性が高い

インプラントは、入れ歯やブリッジよりも高い審美性が期待できます。人工歯根があるインプラントは、天然の歯とほぼ同じ構造を採ることができるため、余計なパーツを付随させる必要がないからです。ブリッジもシンプルな構造ではあるものの、人工歯を複数連結させなければならず、インプラントよりも見た目の違和感が大きくなりがちです。

他の健康の歯に負担がかからない

失った歯をブリッジで治療する場合は、両隣の歯を大きく削らなければなりません。支えとなる歯を削る量は、一般的な被せ物治療と同等なので、かなりの歯質を失います。治療後も噛んだ時の力を、支えとなる歯が受けとめなければならず、残存歯の寿命は自ずと短くなります。入れ歯も、クラスプやレストといったパーツを当てる部分に切削処置を施したり、噛んだ時の力を残存歯と歯茎が支えなければならかったりするため、お口全体の健康維持には不利であると言わざるを得えません。その点、インプラントは独立した状態でお口の中に設置できることから、残った歯に大きな負担がかかることはありません。

骨が痩せるのを防ぐことができる

何らかの理由で失った歯を放置すると、その部分だけ徐々に骨が痩せていきます。これは私たちの身体の性質上、避けては通れない変化です。仮に、入れ歯やブリッジで失った歯を補ったとしても、この現象を抑えることは難しいでしょう。なぜなら、入れ歯やブリッジには人工歯根がなく、欠損部のあごに噛んだ時の力が加わることがないからです。あごの骨としっかり結合した人工歯根が手に入る治療法なら、そのリスクを最小限に抑えられます。つまり、インプラント治療では、骨の退化現象を抑制することが可能なのです。

健康と精神の両面にプラスにはたらく

インプラントによる治療を受ければ、食べ物をしっかり噛めるようになります。歯を失う前と同じように、好きなものを好きなだけ食べることができるのは、健康と精神の両面に良い影響をもたらしてくれるでしょう。しかも、インプラントは天然の歯とそっくりな見た目に仕上げられるため、笑顔に自信が持てて、物事にも積極的に取り組めるようになります。人と会話をしたり、食事をしたりすることが楽しくなるのは、この上ない幸せと言えます。つまり、インプラントはQOL(Quality of Life=人生の質)を大きく向上してくれる治療法でもあるのです。

インプラントのデメリット 

ここまでは、インプラントのメリットについて解説してきましたが、この治療も決して万能ではありません。その他の治療法と同様、デメリットも伴います。

治療費が高額

インプラント治療は、原則として自費診療となります。治療にかかった費用は全額自己負担となるため、保険診療のブリッジや入れ歯よりも経済的負担が大きくなります。また、インプラント治療には手術が必要であったり、高度な技術や先進の医療設備が必須であったりすることもあり、治療費はそれなりに高くなる点に注意しなければなりません。ですから、経済性を最重要視する場合は、インプラントではなく、保険診療の入れ歯やブリッジが推奨されます。

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治療期間が長い

保険診療の入れ歯やブリッジは、1~2ヵ月程度で治療が完了します。一方、インプラント治療では、チタン製の人工歯根と顎の骨が結合するまでに数ヵ月を要することから、一般的には半年以上の治療期間が必要となります。ただし、インプラントはその他の治療法と比較すると、装置の寿命が極めて長く、お口全体の健康維持にも大きく寄与するため、治療期間が長いという点だけに着目するのは賢明ではないといえるでしょう。

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手術が必要になる

繰り返しになりますが、インプラント治療には外科手術が必須となります。この点だけは避けることができません。とはいえ、インプラント治療の外科手術に伴う痛みや術後のリスクというのは、親知らずの抜歯と大差はないので、過剰に心配しすぎるのも良くないでしょう。手術時の不安や恐怖心を和らげる方法も複数用意されていますし、そもそも手術が失敗するリスクも極めて低くなっているのが現実です。

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術後のメンテナンスが必要になる

インプラントは術後のメンテナンスが重要となる治療法です。インプラント手術が無事に終わったからといって、メンテナンスを怠っていると、歯周組織に炎症が生じる「インプラント周囲炎」を発症してしまいます。その他、上部構造が欠けたり、アバットメントが緩んだりするなどのトラブルも想定されることから、術後も定期的に歯科へ通う必要があります。ちなみに、インプラントには5年保証や10年保証が付くのが一般的ですが、術後のメンテナンスを継続的に受けることが必須条件として課されています。

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感染症のリスクがある

インプラントは、術中・術後・すべての処置が終わった後にも感染症のリスクを伴います。これはあごの骨に人工歯根を埋め込む治療ならではのリスクといえます。とくに治療が終わった後のインプラント周囲炎には十分に気を付けなければなりません。なぜなら、インプラント周囲炎はインプラントの寿命を縮める、あるいは終わらせる主な原因となっているからです。

まとめ

このように、インプラントには従来法にはないメリットとデメリットがあります。素晴らしい結果が得られる治療法だけに、それなりのデメリットを伴うことも正しく理解しておく必要があります。そんなインプラントの特徴についてもっと詳しく知りたい、カウンセリングを受けてみたいという方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。当院は、インプラントに力を入れている歯科医院です。

インプラント治療で歯がない期間はある?その期間や仮歯を入れる理由等を解説

インプラント治療には、従来法とは異なる点が多々あります。その中でも治療期間の違いに関しては、不安を感じる方が多いようです。標準的な症例でも半年以上の期間を要するため、その分、歯がない期間も長くなります。ここではそんなインプラント治療で歯がない期間や仮歯を入れる理由などを詳しく解説します。

インプラント治療中に歯がない期間はある?

冒頭でも触れたように、インプラント治療には歯がない期間が存在します。それは人工歯根である「インプラント体」を顎の骨に埋め込むという処置が必要だからです。チタン製のインプラント体が顎の骨と結合するまでにはそれ相応の期間が必要であり、その間は仮歯で過ごすこととなります。きちんと噛める歯がない状態が続くため、治療中は不便さを感じる場面も多くなりますが、最終的には綺麗な人工歯(上部構造)を装着できますのでご安心ください。

インプラント治療の流れ

インプラント治療全体の流れを理解すると、歯がない期間がどのプロセスに当たるのかもわかりやすくなります。ここではインプラント治療の大まかな流れをご紹介します。

流れ①カウンセリング

インプラント治療もはじめはカウンセリングからスタートします。インプラント手術に伴うリスクや治療期間、入れ歯やブリッジとの違いなど、気になることがあれば何でも質問しましょう。カウンセリングの段階で、インプラントへの疑問や不安を解消しておくと、その後の治療もスムーズに進めることができます。治療にかかる費用の内訳も詳細に確認しておきましょう。

流れ②精密検査

口腔内検査やレントゲン撮影、CT撮影などを行って、お口の中や歯周組織、顎の骨の状態を精密に調べます。その上でインプラント治療が適しているかどうかを判断します。インプラント治療が行えるケースであれば、治療計画を立案して、患者さんに説明します。この段階でもいろいろな質問を行えますので、気になることがあれば尋ねてください。精密検査および治療計画の立案が終わったからといって、インプラント治療を必ずスタートさせなければならないということではありません。最も重要なのは患者さんの意志です。

流れ③インプラント手術

お口の中や顎の骨に問題がなければ、インプラント体を顎の骨に埋め込む手術を実施します。歯茎をメスで切開して視野を確保し、顎の骨にドリルで穴を開けます。その中にチタン製のインプラント体を埋め込みます。手術を2回に分ける「2回法」の場合は、歯茎を縫合して手術を終えます。現状は、この方法が主流となっています。

流れ④待機期間

顎の骨に埋め込んだインプラント体は、ゆっくりと時間をかけて顎骨と結合します。この現象を「オッセオインテグレーション」と呼び、一般的に2~6ヵ月程度、待つ必要があります。待機期間中は、今回のテーマである「歯がない状態」となります。

流れ⑤2回目のインプラント手術(2回法の場合)

インプラント体と顎の骨が結合したら、連結装置であるアバットメントを装着する手術を行います。1回目の手術で縫合した部分を再び開いてインプラント体を露出させ、アバットメントを装着します。2回目の手術は比較的シンプルで、心身にかかる負担も少なくなっています。

流れ⑥被せ物の型取り・装着

アバットメントと歯茎の状態が安定したら、最後に被せ物の型取りを行って、上部構造を製作します。いよいよ本番の人工歯の登場です。インプラントの被せ物は、セラミックで作ることがほとんどで、天然歯にそっくりな見た目に仕上げられます。仮歯との違いに驚かれることでしょう。このように、インプラントでは治療の最終段階になるまでは、歯がない状態もしくは仮歯を着けている状態が続くと言えます。

歯がない期間はどれくらい?

インプラント治療で歯がない期間は、2~6ヵ月程度です。つまり、人工歯根を埋め込むインプラント手術後から、上部構造を装着するまでの期間が「歯がない状態」となります。ただし、これはあくまで目安であり、ケースによっては仮歯の期間がもっと長くなることも珍しくありません。とくに骨の状態が悪くて「骨造成」を行ったり、インプラント体を埋入する本数が多かったりする場合は、歯がない期間も比較的長くなると言えるでしょう。

歯がない期間に仮歯を入れる理由

インプラント手術後の歯がない期間中は、基本的に仮歯を入れることになります。それは次に挙げるような理由からです。

理由①審美性・発音を保つため

仮歯を入れる理由として最もわかりやすいのは、審美性の維持です。歯列というのは、完全に埋まっている状態が正常なので、1本でも欠損があるとものすごく目立ちます。そうした見た目の悪い状態で数ヵ月過ごすのは良くありませんよね。また、前歯のインプラント治療では、歯がない状態を放置すると発音に悪影響が出やすいということもあり、仮歯を着けるようにしています。もちろん、奥歯の場合も審美性の維持・発音障害の回避という観点から、仮歯を入れます。

理由②歯並び・噛み合わせを変化させないため

歯列内に歯がない部分があると、その周りの歯がすき間を埋めるように移動を始めます。それに伴い全体の噛み合わせも変化することから、手術を終えた後には仮歯でスペースを塞ぐ必要があります。待機期間中に歯並び・噛み合わせが変化すると、その後の処置を適切に進められなくなるリスクが生じるため、十分な注意が必要です。具体的には、スペースが狭くなって適切な大きさ・形の上部構造を装着できなくなるかもしれません。あるいは、噛み合わせが変化することでインプラントに過剰な負担がかかる状態にもなりかねないのです。

理由③傷口への刺激を防ぐため

インプラント手術を実施した部位は、傷口を負った状態となります。もちろん、そのままでもきれいに治癒させることは可能ですが、仮歯を装着することで、傷口への刺激を最小限に抑えられます。その結果、歯茎が守られて次のプロセスへと移行しやすくなるのです。ただ、仮歯があるからといって、普段通りに生活して良いということにはなりませんので、その点はご注意ください。次の章でもご説明する通り、治療中はいくつかの注意点があります。

仮歯を入れている期間中の注意点

インプラントの仮歯を入れている期間中は、次の2点にご注意ください。

注意点①仮歯に強い力をかけ過ぎない

インプラントの仮歯は、あくまで“仮の歯”です。一般的な被せ物とは強度や使用目的が大きく異なります。仮歯に対して強い力をかけすぎると、脱落するリスクが生じます。また、仮歯の期間中は、インプラント体が顎の骨に定着しておらず、不安定な状態となっていることから、強い力をかけると骨との結合が上手く進まなくなってしまいます。その結果、インプラント治療自体が失敗に終わる可能性も出てきますので、十分にご注意ください。

注意点②仮歯の周囲に汚れを溜めない

インプラントの仮歯は、歯科用プラスチックであるレジンで作られています。それもかなり質が低く、表面も粗造であるため、汚れが付きやすくなっている点に注意しなければなりません。仮歯の周囲に汚れを溜めると、歯茎に炎症が起こったり、傷口に細菌感染が生じたりします。そうなるとインプラント治療が失敗に終わる可能性も高まります。だからといって極端に強い力で磨くと歯茎などに過剰な負担がかかってしまいます。インプラント治療中の口腔ケア方法については、歯科医師および歯科衛生士のアドバイスを参考にして、上手に行うことが大切です。

まとめ

このように、インプラント治療では歯がない期間があります。それは人工歯根であるインプラント体が顎の骨に定着し、上部構造を装着するまでの期間です。一般的には2~6ヵ月程度の期間は仮歯で過ごすことになります。仮歯の期間が長い治療法なので、不安に感じることも多いかと思いますが、そこは歯科医師・歯科衛生士と一緒に頑張って乗り切りましょう。歯がない期間中に心配なことが出てきたら、すぐに歯科医院に相談すると良いでしょう。

インプラントをやめたほうがいいと言われる理由とは?

失った歯の治療法としては、ブリッジ・入れ歯・インプラントの3つが挙げられます。
この中で「人工歯根」があるのはインプラントだけです。従来法にはないたくさんのメリットを享受できることから、多くの人に選ばれています。しかし、一方では「インプラントはやめたほうがいい」という声もよく耳にします。
今回はそんな「インプラントはやめたほうがいい」と言われる理由について、詳しく解説をします。

インプラントはやめたほうがいいと言われる理由

理由①外科手術が必要

インプラント治療では、外科手術が必須となっています。顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込むことがこの治療法の要となるため、「外科手術は絶対に受けたくない」という人にはおすすめできません。これは「インプラントはやめたほうがいいと言われる」主な理由です。とはいえ、インプラント手術はみなさんが想像する病院での外科手術とは異なり、もっと小規模です。人工歯根を埋め込む処置自体は15分程度で終わり、全体でも1時間程度で手術が完了します。

理由②顎の骨が少ないと治療の対象外になる

インプラントはすべての人に開かれた歯科治療ですが、顎の骨が少ないと治療の対象外になる場合があります。ただし、不足した骨は「骨造成(こつぞうせい)」と呼ばれる方法で補えば、インプラント治療が可能となることがあります。

理由③全身疾患がある方は治療の対象外になる

手術中に全身状態が急変するような病気を患っている場合は、インプラント治療の対象外となることがあります。具体的には、重度の高血圧症や糖尿病にかかっていたり、過去に脳梗塞や心筋梗塞を発症して、血液が固まりにくくなる薬剤を服用していたりすると、外科手術を安全に遂行できない可能性が出てきます。この点は、かかりつけ医と相談しながらインプラント治療の可否を決定することになります。

理由④治療費が高い

インプラントは原則として自費診療となるため、保険が適用される従来法よりも治療費が高くなります。使用する素材の原価も高く、高度な技術を要する治療でもあることから、1本あたり300,000~500,000円程度の費用がかかるのが一般的です。ただ、インプラントはブリッジや入れ歯よりも寿命が圧倒的に長く、お口の健康維持・増進にも寄与します。その点も考慮すると、作り替えや頻繁に通院する必要のあるブリッジや入れ歯と比べて、単純に「治療費が高い」とは言い切れません。

理由⑤治療期間が長い

ブリッジや入れ歯のように、治療を1~2ヵ月で終わらせたいという方には、インプラント治療はおすすめできません。インプラント治療では、チタン製の人工歯根と顎骨が結合するまでに、下顎の場合は3ヵ月以上、上顎の場合は6ヵ月以上かかるのが一般的です。その他、連結装置であるアバットメントの装着や上部構造の製作期間も加わることから、全体で6~12ヵ月程度の治療期間を要します。ただし、通院する回数はそれほど多くはありません。

理由⑥治療後のメンテナンスが必要

インプラント治療後には、定期にメンテナンスを受ける必要があります。3~6ヵ月に1回くらいのペースで通院していれば、インプラントを10年、20年と使い続けていくことも難しくなくなります。大切にケアすれば、一生涯使うことも不可能ではないでしょう。

理由⑦強く噛みすぎてしまう

インプラントは見た目も構造も天然歯そっくりではありますが、歯根の部分に違いが見られます。それは「歯根膜(しこんまく)」の有無です。インプラントには噛んだ時の圧力を調整したり緩和したりする歯根膜が存在していないため、強く噛みすぎてしまうことがあります。その結果、インプラントや顎の骨に過剰な力がかかり、装置の破損および顎骨の炎症を引き起こすリスクが生じます。とはいえ、どのくらいの強さで噛めば良いのかは、インプラント治療から1週間も経過すれば判断できるようになります。強く噛みすぎてインプラントをダメにしてしまうケースは極めて稀といえるでしょう。

理由⑧金属アレルギー

人工歯根であるインプラント体には「チタン」という金属が使われます。チタンは生体安全性の高い金属で、心臓のペースメーカーや人工関節にも使われているのですが、金属アレルギーのリスクがゼロというわけではありません。その限りなくゼロに近いリスクが怖いという方には、標準的なインプラントはおすすめできません。セラミックの一種である「ジルコニア」を使ったインプラント治療なら、金属アレルギーのリスクをゼロにできます。

理由➈再治療が困難

手術の失敗や外傷、細菌感染などによって人工歯根が脱落した場合は、インプラントで再治療を行うのは困難です。もちろん、顎の骨の状態が良ければインプラントで再治療可能なこともありますが、多くのケースではブリッジや入れ歯による治療へと移行します。人工歯である上部構造や連結装置のアバットメントが破損・故障した場合は、比較的簡単に再治療できます。

理由➉感染症のリスクがある

インプラント治療では、手術中と手術後に感染症のリスクが生じます。感染対策をしっかり行っている歯科医院であれば、手術中の感染リスクを最小限に抑えられます。手術後の感染リスクは、患者さんご自身でコントロールしなければなりません。とくにインプラントの歯周病である「インプラント周囲炎」は、インプラント治療が失敗する主な原因となっているため十分な注意が必要です。

インプラント治療を受けるかどうかを判断するポイント

ここまでは、インプラントに伴うリスクやデメリットについて解説してきましたが、実際に治療を受けるかどうかは以下の3点を考慮して判断すると良いでしょう。

ポイント①自分が求めていることがインプラントで叶う

失った歯の治療法に、見た目の美しさ、天然歯に近い噛み心地、お手入れのしやすさなどを求めているのであれば、インプラントがおすすめです。それらは、従来法であるブリッジ・入れ歯で叶えることが難しいからです。

ポイント②インプラントのデメリットを受け入れられる

前段でも述べたように、インプラントには外科手術が必要、費用が高い、治療後もメンテナンスを定期的に受けなければならない、といったデメリットを伴います。また、治療を担当する歯科医師によって仕上がりが大きく変わってきます。そうしたインプラントの欠点を受け入れられるのであれば、ブリッジ・入れ歯を選ぶ必要性は低いといえます。

ポイント③受診した歯科医院で適切な治療が受けられる

インプラントに伴う多くのリスクは、適切な治療を行える歯科医院・歯科医師を選ぶことで解消できます。ですから、インプラント治療の歯科医院選びは慎重に行う必要があるのです。インプラントのカウンセリングを受けた段階で不安や疑問を感じるようなことがあれば、その他の歯科医院も受診してみると良いでしょう。もうすでに精密検査と診断を受けている場合でも、セカンドオピニオンを受けることを推奨します。

インプラント治療を避けた方がよい人の特徴

特徴➀ホームケアを行う習慣がない

インプラントは、見た目も構造も天然歯そっくりな装置ですが、あくまで人工物です。天然歯よりも汚れがたまりやすい部分があり、適切なホームケアを行えていないとインプラント周囲炎のような歯周疾患にかかってしまいます。普段からホームケアを行う習慣がない場合は、今すぐインプラント治療を受けるのはおすすめできません。ホームケアを適切に行えるようになってから、インプラント治療を検討しましょう。

特徴②定期的なメンテナンスに通えない

仕事や勉強が忙しくて、定期的なメンテナンスに通えるか不安という方は、インプラント治療を避けた方が良いです。インプラント治療では、3~6ヵ月に1回のメンテナンスが必須となっており、それを怠るとさまざまなリスクが生じます。仕事や勉強が落ち着いてメンテナンスに通える環境が整ったら、改めてインプラント治療を検討すると良いでしょう。

特徴③手術に対する恐怖・不安を払拭できない

外科手術に対して恐怖心や不安感を抱かない人は皆無に等しいです。自分の体が傷付くことは、誰にとっても怖いものです。ただ、その恐怖心や不安感が極端に強い場合は、インプラント治療をいったん保留にしましょう。そのままの状態でインプラント手術に臨むと、良くない結果を招くことがあります。

ただ、インプラント手術への恐怖心や不安感は、カウンセリングを丁寧に受けることで軽減されていきます。また、笑気麻酔や静脈内鎮静法を併用さすることで、怖いという気持ちを直接的に軽くできます。その点も含めカウンセリングで相談してみましょう。

まとめ

このように、「インプラントはやめたほうがいい」と言われる理由はさまざまですが、そのほとんどは解決できます。インプラント治療で必須となっている外科手術はそれほど大掛かりなものではなく、術中の恐怖心や不安感を取り除く方法もあります。手術中の感染リスクも適切な治療を実施できる歯科医院なら最小限に抑えられます。インプラント治療後に必要となるメンテナンスは3~6ヵ月に1回程度となっており、年間で計算すると2~4回程度なので、実際はそれほど大変ではありません。

ですから、インプラント治療を真剣に検討されている方は、まず信頼できる歯科医院に相談するのが良いでしょう。「インプラントはやめたほうがいい」というネガティブな意見だけに流されず、正しい情報を歯科医師から提供してもらうことが大切です。

インプラント治療で歯並びが悪いのは治せる?インプラントの基礎知識等を解説

インプラントは、天然歯にそっくりな見た目と噛み心地を手に入れられる治療法です。治療後はどこにインプラントを入れたのかわからないくらい自然な仕上がりが期待できるため、歯並びが悪い症状も治せそうだと思われることが多いようです。
そこで今回は、インプラントで悪い歯並びを治せるのかどうかや、この治療法の基礎知識についてわかりやすく解説をします。

インプラント治療は歯並びが悪いのを治す治療法ではない

結論からいうと、インプラント治療で歯並びが悪いのを根本から改善することはできません。なぜなら、インプラント治療は歯列矯正ではないからです。あくまで失った歯の審美性および機能性を回復させるための治療法であることから、悪い歯並びを治す目的でインプラントを選択しないようにしましょう。

もちろん、ケースによってはインプラントが矯正治療に相当するような結果をもたらしてくれる場合もありますが、歯並びの改善は副次的な効果とお考えください。インプラント治療によって歯周組織の状態も良くなるため、お口全体の見た目も改善することは間違いありません。

インプラント治療と外科手術

インプラント治療は、歯を失った部分にチタン製の人工歯根を埋め込むことで、天然歯に近い人工の歯を手に入れられます。これはブリッジや入れ歯といった従来法にはないプロセスであり、外科手術が必要となります。そのため歯茎や歯槽骨(しそうこつ)といった歯周組織だけでなく、全身状態も良好でなければなりません。とくに重篤な全身疾患を患っている場合は要注意です。

インプラント治療ができない人

次に挙げる病気や条件に当てはまる人は、インプラント治療ができないこともあります。

  • 糖尿病
  • 白血病
  • 血友病
  • 高血圧症
  • 骨粗しょう症
  • 重症度の高い歯周病
  • 免疫機能に深刻な異常がある
  • 妊娠している
  • 未成年
  • 喫煙習慣がある
  • チタンアレルギーがある

上記に当てはまるものがあったとしても、それぞれ対処する方法が用意されていますので、不安な方はまずカウンセリングで相談しましょう。
ただし、妊娠中の女性や未成年の方は、原則としてインプラント治療を行うことができません。妊婦さんは出産してから、お子さんは成人してから改めてインプラント治療を検討するようにしてください。

歯並びを整えるためのインプラント治療は避けた方がよい

インプラントには人工歯根があるため、ブリッジや入れ歯よりも噛む力が強いです。例えば、天然歯の噛む力を100%とすると、入れ歯は30%程度、ブリッジは60%程度まで回復できると言われています。第2の永久歯とも呼ばれるインプラントは、70~85%程度まで噛む力を回復させることが可能であると考えられています。その上、歯並びを整える治療法としても活用できたら言うことはありませんが、現実としてインプラントには歯列矯正の効果を期待することはできません。インプラントは歯並びを整えるためではなく、失った歯を回復させる治療法として選択することが重要です。

矯正治療で歯並びの改善ができる

出っ歯や受け口、乱ぐい歯といった歯並びの問題は、矯正治療で改善することができます。マルチブラケット装置やマウスピース型矯正装置を使い、歯を物理的に動かすことで、歯並びのコンプレックスを解消できます。歯並びの重症度が高いと、矯正に抜歯が必要となる場合もありますが、正常な歯並び・噛み合わせを手に入れるために受け入れましょう。悪い歯並びを根本から解決できる治療法として、歯列矯正は極めて有用です。

インプラント治療と矯正治療の違い

繰り返しになりますが、インプラント治療で歯並びが悪い症状を改善することは難しいため、出っ歯や受け口などを治すのであれば、矯正治療を選択しましょう。インプラント治療と矯正治療には、以下のような違いが見られます。

治療目的

インプラントは、虫歯や歯周病、外傷などで失った歯を回復させるための治療法です。治療対象となる歯は1本とは限らず、複数本に及ぶこともありますが、歯列全体の歯並びを改善するために行う方法ではありません。インプラントの治療期間は、下顎の場合で6ヵ月程度、上顎の場合は1年程度かかります。

矯正治療は文字通り歯並びの乱れを矯正するための治療法です。当然ですが、失った歯の機能や審美性を回復させることはできません。マルチブラケット装置やマウスピース型矯正装置を1~3年くらい装着して、歯を動かします。

治療方法

インプラントは、チタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込みます。人工歯根と顎骨が結合するまで数ヵ月待機して、その後は連結装置であるアバットメントと人工歯に当たる上部構造を装着します。

矯正治療は、ワイヤー矯正とマウスピース矯正の2つに分けられます。ワイヤー矯正は、ブラケットとワイヤーを歯列に固定する方法で、幅広い症例に適応できます。マウスピース矯正は、透明なマウスピースを装着して歯を動かす方法で、歯並びの矯正を快適に進めることが可能です。

治療にかかる費用

インプラントは、1本当たり300,000~500,000円くらいの費用がかかるのが一般的です。矯正はワイヤー矯正で1,000,000円前後、マウスピース矯正の場合は800,000円前後の費用がかかります。インプラント治療も矯正治療も原則として保険が適用されないため、治療にかかった費用は全額自己負担となります。これは一般的な歯周病治療や虫歯治療との大きな違いといえるでしょう。

適応条件

インプラントは、前段でご紹介した「インプラントができない人」に当てはまらないのであれば、誰でも受けることができます。矯正治療も原則としてすべての人に適応できます。ただし、小児矯正は子どもの時期にしか受けられません。また、歯や顎の骨に深刻な症状を抱えている場合も矯正治療を適応できないことがありますので、その点はカウンセリングで確認する必要があります。とはいえ、よほどの理由がない限り、矯正治療が適応外となることはないでしょう。

終わりに

このように、インプラント治療は失った歯の機能性と審美性を回復させるための治療法なので、歯並びの問題を解決する矯正治療とは分けて考える必要があります。また、「歯の色をきれいにしたい」「歯の形がいびつで嫌だ」「前歯が1本だけ小さいことがコンプレックスになっている」といった悩みもインプラント治療で解決するのは賢明ではありません。

もちろん、インプラント治療を実施することで歯の色や形、大きさまできれいにできるのですが、そのためには天然歯を抜かなければなりません。それならもっと負担の軽いホワイトニングやラミネートベニア、セラミッククラウンによる被せ物治療などで対応した方がメリットも大きくなります。いずれにせよ、歯に関するお悩みを抱えているのであれば、まず歯科医院に相談しましょう。当院であれば、インプラントを始めとしたほぼすべての歯科治療に対応しておりますので、患者様お一人おひとりに最善といえる方法をご提案することができます。

インプラントができない人とは?その対処法と難しい症例に有効な治療法も併せて紹介

インプラントは、失った歯を歯根から回復できる優れた治療法です。近年はブリッジや入れ歯といった従来法ではなく、インプラントを選ぶ人が増えてきていますが、それはこの治療法によって得られるメリットがあまりにも大きいからです。

ただ、そんなインプラントも決して万能ではなく、適応できないあるいは適応が難しい症例というものも存在しています。今回はそんなインプラントできない人の特徴や対処法、インプラントが難しい症例に有効な治療法について詳しく解説します。

インプラントができない人

できない➀骨が薄い(骨粗鬆症である)

骨が薄かったり、骨密度が低かったりする場合は、インプラントできない可能性が高いです。インプラント治療には、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込む外科処置を伴います。人工歯根は長さが10mm程度あり、周囲に健全な骨が十分に存在していないと適切に埋入することができません。とくに骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を患っている場合は要注意です。骨粗鬆症は、骨の密度が低下してスカスカになる病気なので、重症度が高い場合はインプラントできません。

対処法:骨造成術を行う

加齢や骨粗鬆症などで歯槽骨が薄くなっている場合は、骨造成術で症状の改善をはかります。GBRソケットリフトサイナスリフトなどを実施することで、インプラント治療が可能となる場合もあります。

できない②年齢が低い

インプラント治療は、一部の例外を除いて未成年に適応することができません。成長期にチタン製の人工歯根を埋め込んでしまうと、顎の発育を阻害する可能性があるからです。

ただし、先天性の病気を患っていたり、事故で大きな外傷を負ったりした際には、年齢が低くてもインプラントすることもあります。また、インプラント治療の年齢は厳密に制限されているわけではなく、歯科医院によっても「18歳以下」や「20歳未満」といった異なる形で区切りをつけているのが現実です。

対処法:顎骨の成長が止まるのを待つ

インプラント治療は、顎の骨の成長が止まってから開始するのが一般的です。そのタイミングは精密検査等を行ってみなければわからないため、気になる場合は歯科を受診しましょう。基本的には、顎の骨の成長が止まる大人になってから治療を始めることになります。

できない③歯周病や虫歯がある

重症度の高い歯周病や虫歯がある場合は、インプラントできないケースがほとんどです。とりわけ歯周病は、インプラントを失敗させる主な要因となっていることから、そのままの状態で治療をスタートさせる歯科医師は稀といえるでしょう。もちろん、歯周病が軽度であったり、インプラントを埋め込む部位とは近くなかったりする場合は、そのまま治療を行うこともありますが、その判断は歯科医師に委ねられます。

対処法:歯周病・虫歯の治療を先に終わらせる

歯周病や虫歯といった口腔疾患がある場合は、それらの治療を優先します。歯や歯茎を健全にした状態で、インプラント治療を開始します。

できない④糖尿病を患っている

糖尿病にかかっていると、血糖値が上がりやすく、免疫力や抵抗力は低下します。そのため糖尿病患者さんは傷口の治りが遅かったり、歯周病にかかりやすかったりするのです。これは外科手術が必須となるインプラント治療において、非常に大きなリスクファクターとなることでしょう。仮にインプラント手術が成功したとしても、インプラント周囲炎という歯周病にかかってしまったら、治療そのものが失敗に終わります。

対処法:血糖値をコントロールする

糖尿病患者さんでインプラント治療を検討されている方は、まず内科の主治医に相談しましょう。病気の状態によっては、お薬などで血糖値を許容範囲内にコントロールする方法があります。インプラント手術はそこまで大掛かりな外科処置ではないことから、必ずしも糖尿病を完治させる必要はありません。インプラント手術可能な状態に血糖値をコントロールできれば、歯科医師もゴーサインを出すことでしょう。

できない⑤妊娠中である

妊娠中の女性は、インプラントできないことはありませんが、避けた方が望ましいです。インプラント治療には、レントゲン撮影・CT撮影・外科手術・投薬などを伴うだけでなく、治療期間が半年以上、長ければ1年近くかかることもあります。そうした治療を妊娠期間中に受けるのは賢明ではありません。そのため多くの歯科医院は、妊婦さんにインプラント治療をおすすめすることは少ないでしょう。

対処法:出産後にインプラント治療を受ける

妊娠中の女性は、出産後にインプラント治療を受けると良いでしょう。出産直後は、母子ともに不安定な状態となるため、いろいろな面で落ち着いてから歯科を受診するのがおすすめです。妊娠中は歯がないことで不便を感じる場面も多くなるかと思いますので、その間は着脱式の入れ歯で対応すると良いでしょう。入れ歯は妊娠中でも作れます。

できない⑥ヘビースモーカーである

タバコは、歯周病のリスクを大きく上昇させます。インプラントの天敵である歯周病にかかると、苦労して埋め込んだ人工歯根が脱落してしまうことから、ヘビースモーカーの人はインプラント治療を諦めた方が良いといえるでしょう。毎日たくさんのタバコを吸っている場合は、そもそも歯周組織の状態が悪くなっており、インプラント手術自体、失敗に終わることも珍しくありません。

対処法:禁煙する

ヘビースモーカーの人でインプラント治療を希望されているのであれば、今日からでも禁煙しましょう。タバコを吸う習慣を改善できない限り、インプラント治療を行うことは難しいと考えるべきでしょう。

できない⑦腎疾患があり血液透析を受けている

腎臓に病気にあって血液透析を受けている人は、基本的にインプラント治療できないといえます。重度の腎疾患を患っていると、免疫力が低下し、傷の治りも悪くなっているからです。細菌感染のリスクも高くなっており、インプラント手術に耐えることが難しいです。

対処法:他の治療法を検討する

血液透析を受けている腎疾患患者さんは、インプラント以外の治療法を検討すると良いでしょう。一方で、比較的軽度の腎疾患であれば、インプラント治療できるかもしれませんので、内科の主治医と相談してください。歯科医師と連携した上で、対処法を考案します。

できない⑧麻酔を使用したくない

注射に伴う痛みなどが不安で麻酔をしたくないという場合は、インプラント治療はできません。麻酔なしで外科手術を行うことは不可能だからです。

対処法:痛みの少ない麻酔法を選択する

歯科麻酔は、工夫次第で痛みを和らげられます。事前に表面麻酔を施すことで、注射による痛みは取り除けます。極細の針を使用したり、電動麻酔器で注入速度を一定に保ったりことでも麻酔処置に伴う痛みは軽減可能です。

できない⑨メンテナンスに通えない

仕事が忙しくて治療後のメンテナンスに通えないという人は、インプラントをおススメできません。インプラントには、3~6ヵ月に1回メンテナンスが必須となっているからです。治療後のメンテナンスを怠ると、装置の故障やインプラント周囲炎の発見が遅れるだけでなく、インプラントの保証も受けられなくなります。

対処法:頑張ってメンテナンスを受ける

インプラントのメンテナンスは、それほど高頻度に受けるものではないため、頑張って時間を作りましょう。メンテナンス自体は1時間程度で終わることがほとんどです。メンテナンスでは、インプラントのクリーニングを受けたり、正しいセルフケア方法を学んだりすることもできます。インプラントを長持ちさせるためにも、定期的なメンテナンスは欠かさないようにしてください。

難しい症例に有効な治療法

顎の骨が薄かったり、少なかったりするなどの難しい症例では、次のような処置を施すことでインプラント治療ができるようになります。

治療法ソケットリフト

上顎の奥歯に軽度の骨量不足が認められるケースで適応されます。骨が不足している部分に人工骨や補填剤を入れて、骨の再生をはかります。インプラントを埋め込む方向からアプローチします。骨造成のためだけに歯茎を切開したり、顎の骨に穴を開けたりする必要がないので、心身にかかる負担も比較的少ないです。

治療法サイナスリフト

ソケットリフトよりも骨の不足量が多いケースに適応される施術法です。顎の側面からアプローチする点は、ソケットと異なります。骨造成のために歯茎の切開などが必要となるため、心身への負担が大きくなります。ただ、重症度の高い症例でも骨をしっかりと再生できる点は、非常に大きなメリットといえます。骨の不足が大きくてインプラントは無理と断られた場合でも、サイナスリフトに対応している歯科医院なら、適応可能となるケースも珍しくありません。

治療法GBR(骨組織誘導再生法)

いろいろな部位の骨不足を解消できる治療法です。特殊な材料を不足部位に填入して、骨の再生をはかります。汎用性が高く、さまざまな症例に適応可能です。

治療法ソケットプリザベーション

歯を抜いた部分に人工骨や骨補填剤を填入する治療法です。身体への負担が少なく、抜歯後の骨吸収を防ぐこともできます。

治療法スプリットクレスト

前歯の顎の骨の厚みが不足している症例に適応される手術法です。顎の骨を分割してすき間を作り、そこにインプラントを埋め込み、骨補填材を填入します。その他の治療法と比較すると、心身への負担が軽いといえます。インプラントの埋入を骨造成と同時に行う点もやや特殊な施術法といえるでしょう。

治療法エクストルージョン

歯を引っ張り上げて、骨を増加させる方法です。一般的な歯科治療では、引っ張り上げた歯に被せ物を装着しますが、インプラント治療を行う場合は、顎の骨の状態が整ったら抜歯をして人工歯根を埋入します。もちろん、引っ張り上げた歯が十分に活用できるのであれば、インプラント治療を行う必要はありません。

¥110,000(調整料¥3,300/回)

治療法CTG(結合組織移植術)

加齢や歯周病などで歯茎が下がっている場合に適応される治療法です。お口の中から結合組織を採取して、歯茎が下がっている部分に貼り付けます。その結果、見た目が美しくなると同時に、インプラントを歯茎で支えることが可能となります。

まとめ

今回は、インプラントが出来ない人の特徴と難しい症例に有効な治療法について解説しました。今現在、インプラントできない状態であっても、適切な処置を施すことでインプラントできるようになることも珍しくありません。他院でインプラントできないと診断された方は、お気軽に当院までご相談ください。精密に検査した上で、最善といえる解決方法をご提案します。

インプラント治療が怖いといわれる理由とは?その恐怖心を軽減させる方法を解説

インプラントが優れた治療法であることはわかっていても、トラブルやリスク、痛みなどが怖くてなかなか一歩踏み出せない人も多いようです。確かにインプラント治療は、従来法の入れ歯・ブリッジとは異なる点が多々あるため、不安や恐怖心を抱いてしまう気持ちもよく理解できます。また、インプラント治療に対して、漠然とした恐怖心を持っている方もいらっしゃることでしょう。
そこで今回は、インプラント治療が怖いといわれる理由と、恐怖心を軽減させる方法について詳しく解説します。

インプラント治療が怖いといわれる理由

世間でインプラント治療が怖いといわれる理由としては、次の9点が挙げられます。

怖い➀外科手術がある

インプラント治療が怖いと感じる人の多くは、外科手術への不安感があります。顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込む手術では、歯茎をメスで切開したり、ドリルで骨に穴を開けたりするなどの処置が必要となります。そうした外科手術への不安感が恐怖心へと変わり、インプラント治療から遠ざけてしまっているようです。実際、外科手術に伴うリスクをゼロにすることは不可能なので、それに対する不安感や恐怖心も完全に拭うことはできません。ただし、静脈内鎮静法などを実施することで、不安感や恐怖心を軽減することは可能です。

怖い②インプラントに馴染みがない

インプラントは比較的新しい歯科治療です。近年、日本でもかなり普及してきてはいますが、まだインプラントに馴染みがないという方も多いことでしょう。馴染みのないものに対しては、誰しも不安感や恐怖心を持ってしまいます。ただ、インプラント治療が日本で始まったのが1983年なので、もうすでに半世紀近く経過していることを考えると、信頼できる歯科治療と捉えても良いのではないでしょうか。

怖い③歯科医院・医師に対するイメージがよくない

昔から歯科医院は「痛い思いをするところ」というイメージがあるため、歯科医師・歯医者と聞くだけでも拒絶反応を示してしまう人もいらっしゃいます。そこに、外科手術が必須となるインプラントのネガティブなイメージが重なると、より一層、怖いという感覚が強くなることでしょう。

怖い④年齢的な不安

インプラント治療で年齢的な不安を抱える人は、若年者と高齢者の2つに分けられます。若年者に関しては「若いうちからインプラントをするのは恥ずかしい」という感情が生まれ、高齢者は「手術に耐えられるか心配」という健康への不安からインプラント治療が怖いと感じるようです。現実的には、20歳前後や80歳を超えてからインプラント治療を受ける人はたくさんいらっしゃいます。

怖い⑤治療費が高くなりそう

インプラント治療は、費用面においても不安を感じる人が多いようです。保険が適用されず、専門性の高い処置が必要となる治療だけに、費用も高額になるイメージが強いのでしょう。実際、インプラント1本当たりの費用は300,000~400,000円が全国的な相場となっているため、従来のブリッジや入れ歯と比較した場合は、治療費が高くなります。

怖い⑥長持ちしなさそう

インプラントでは、さまざまなトラブルによって装置の寿命が縮まる場合があります。とはいえ、一般的な症例では少なくとも10年以上、長ければ40年以上持つこともあるくらいなので、インプラントは長持ちしなさそうというのは、少し偏った見方と言わざるを得ません。保険で作った入れ歯は4~5年で寿命を迎えるといわれていますから、インプラントだから装置が長持ちしないというのはまずありえないでしょう。ただし、治療後のメンテナンスを怠ると、保険の入れ歯やブリッジより長持ちしなくなることもありますので、その点はご注意ください。

怖い⑦手術の痛み・腫れ

インプラント手術後に現れる痛みや腫れが怖いというお気持ちはよく理解できます。術中は麻酔が効いているので痛みを感じることはありませんが、術後はそれなりの痛みと腫れが現れます。治療後の腫れがどのくらいになるからは、手術を担当した歯医者の腕や採用した治療法によっても大きく変わります。とはいえ、インプラント治療では必ず術後に痛み止めと腫れ止めが処方されますので、それらを歯医者の指示通りに服用すれば、極端な症状が現れることも少なくなります。

怖い⑧インターネット上の声

インターネット上の口コミや感想を読んで、インプラント治療が怖いと感じる人は意外に多いものです。インターネット上では、インプラント治療で失敗した体験談やトラブルなどが理由も含めて強調されていることもあり、ネガティブな印象を持ちやすくなっているのでしょう。経験者による感想を見聞きすることはとても大きなメリットとなりますが、偏った情報ばかり頭に入れてしまうと、適切な判断が下せなくなることもありますので、その点は十分にご注意ください。

怖い⑨実際に起きたトラブル

過去には、インプラント治療でトラブルが起きた例もいくつかあります。とくにメディアでも報道されるような大きなトラブルがあると、「インプラント治療は怖いもの・危険なもの」という認識が固定されてしまいますよね。現実として、不適切なインプラント治療を実施する歯科医院は少なからず存在していることから、歯医者選びは慎重に行う必要があるといえるでしょう。

インプラント治療に対する恐怖心を軽減させる方法

インプラント治療に対する恐怖心が強い人は、以下に挙げる9つの方法を実践してみてください。インプラントが怖いという気持ちが和らぐとともに、より精度の高い治療を受けることも可能となります。

方法①治療前にカウンセリングを受ける

インプラント治療に対する恐怖心や不安感がある人は、カウンセリングでそのことをしっかり伝えましょう。信頼できる歯医者なら、カウンセリングの段階でそうした心理面の不安要素をていねいに取り除いてくれます。インプラント治療に伴うリスクやデメリットもきちんと説明した上で、トラブルを回避する方法や痛みを軽減する手段も提案してくれることでしょう。

方法②インプラント治療の流れを把握する

前段で取り上げた「インプラントが怖いといわれる理由」の大半は、治療の流れを正確に把握するだけでも解消されます。インプラント治療にかかる期間や費用、手術内容などを知ると、漠然とした不安や恐怖心も嘘のように和らぐことでしょう。ちなみに、インプラント手術で人工歯根を埋入する処置自体は30分以内に終わり、施術全体でも1~2時間程度で完了します。手術の前後で入院する必要もないため、皆さんが想像しているよりも気軽に受けられる治療法なのです。

方法③静脈内鎮静法を検討する

インプラント手術中の痛みは、麻酔を作用させることで取り除くことができますが、それでも不安感が拭えない、手術がどうしても怖いという方は、静脈内鎮静法を検討されてみてはいかがでしょうか。静脈内鎮静法とは、腕の静脈から鎮静剤を投与する麻酔処置で、半分眠ったような気分のまま手術を受けられます。静脈内鎮静法を併用した治療に対応しているかどうかは歯科医院によっても異なりますが、インプラント手術へのネガティブなイメージが強い人にはおすすめですので、カウンセリングを受ける際に相談してみましょう。

方法④手術後もカウンセリングを受ける

インプラント治療のカウンセリングは、手術前だけでなく、手術後も受けることが大切です。インプラント手術後は、顎の腫れや痛みが生じるため、歯科医師の指示した通りに薬を飲み、安静に過ごす必要があります。チタン製の人工歯根と顎の骨とが結合するまでにはそれなりに長い期間を要するため、アバットメントや上部構造を取り付けるまでの間の過ごし方や注意点についても、きちんと聞いておかなければなりません。すべての処置が終わった後のメンテナンスも継続的に受けるようにしましょう。

方法⑤インターネット上の声を鵜呑みにしない

インターネット上に流れている情報は、必ずしも正しいとは限りません。インプラント治療では、辛い思いや怖い思いをした人の意見が強調されたような形で掲載されていることも珍しくないからです。もちろん、インプラントにもデメリットはありますが、術後のリスクや失敗する可能性などは、歯科医師の口から聞いた方が正確な情報が得られることでしょう。

方法⑥豊富な実績を持つ歯科医院を選ぶ

インプラントへの不安や恐怖は、ご自身にとって未知の治療法である点が大きく関係しています。インプラントがそもそも先進的な医療なので、そうした感情を抱くのも当然ですが、歯科医師まで経験が浅かったら、この治療法への不安や恐怖は解消されないでしょう。手術中に体調が悪くなったらどうなるのか。万が一、失敗したらこの歯科医院でリカバリーできるのかなど、不安要素を考え出したらきりがなくなります。これは従来法の入れ歯やブリッジには伴わない悩みですね。そんな時、豊富な実績を持つ歯科医院なら、インプラントに関するあらゆる疑問に答えてくれますし、万が一、トラブルが発生したとしても適切に対処してくれることでしょう。

方法⑦インプラント治療は特別なものではないと知る

インプラントは歯科治療で唯一、人工歯根から回復できる治療法であり、画期的な技術であることに間違いはないのですが、過剰に特別視する必要はありません。とくにインターネット上の信憑性に欠ける情報を鵜呑みにすると、インプラントという素晴らしい治療を受ける機会を逃してしまうこともあり得ます。ちなみに、インプラントには「10年生存率」という有名な統計データがあり、治療を受けた人の90%以上が10年経過してもインプラントを正常なまま使い続けていることが分かっています。

まとめ

今回は、インプラント治療が怖いと言われる理由や恐怖心を軽減させる方法について解説しました。本文でも述べたように、インプラント治療は決して特別なものではありません。適切な方法で実施すれば、ほとんどのケースで成功するどころか、従来法とは比較にならないほど、長い期間使い続けることも可能なのです。また、インプラント手術への不安感や恐怖心を取り除く方法もいろいろと用意されていますので、インプラントにネガティブなイメージを持っている人はまずカウンセリングを受けてみましょう。

奥歯をインプラントにするデメリットとは?メリットや歯科医院の選び方等も解説

インプラントは前歯にも奥歯にも適応できますが、それぞれでメリットとデメリットがどのように異なるのか気になりますよね。奥歯は強い力がかかる部分なので、何となくデメリットが大きいように感じている方も多いことでしょう。そこで今回は、奥歯をインプラントにするデメリット・メリットや歯科医院の選び方について詳しく解説します。

インプラントとは

虫歯や歯周病を重症化させると、歯そのものを失うリスクが高くなります。お口全体の健康を維持するため、抜歯することになるのですが、その後の治療法としてはこれまで「入れ歯」と「ブリッジ」という2つの選択肢しかありませんでした。どちらも保険が適用され、短期間に欠損部を補える優れた治療法ではあるものの、歯の頭の部分である歯冠(しかん)しか回復できないため、いろいろなリスクやデメリットを伴います。そこで登場したのが「インプラント」です。

インプラント治療では、歯冠だけでなく歯の根っこの部分である歯根(しこん)まで回復できることから、入れ歯やブリッジの欠点の多くを解消できます。歯科医院での外科手術が必須となりますが、審美性・機能性・耐久性に優れた人工歯+人工歯根を手に入れることができるので、近年ではインプラント治療を受ける人が増えています。

奥歯の範囲

私たちの歯は、前歯と奥歯の2つに大きく分けられます。前歯は食べ物を噛み切るための歯で、前から3番目までの歯が該当します。つまり、奥歯というのはそれ以降、7番目までの歯を指すことになります。厳密には4~5番目を「小臼歯(しょうきゅうし)」、6~7番目を「大臼歯(だいきゅうし)」と呼び、上下左右の合計で16本が奥歯に当たります。前歯の総数が12本ですので、奥歯の方がやや多いですね。ちなみに、一番奥に生えてくる“親知らず”は専門的に「第三大臼歯」と呼ばれており、これも奥歯に含める場合もあります。そうした奥歯の主な機能は、食べ物をすりつぶすことです。

奥歯をインプラントにするデメリット

奥歯をインプラントにする場合は、まずデメリットが気になる方が多いようです。インターネット上にも、奥歯のインプラント治療のデメリットに関する書き込みをよく目にします。ここでは、そんな奥歯のインプラント治療のデメリットについて、正しい情報を提供します。

デメリット①治療費用が全額自己負担

インプラント治療は、原則として全額自己負担となります。それは奥歯だけでなく、前歯も同様です。インプラントは1本当たり400,000円前後の費用がかかる治療法なので、保険が適用させてしまったら国の医療費も大きくかさんでしまいます。そもそも現状では、ブリッジや入れ歯といった必要最低限の見た目や機能を回復できる治療が保険で受けられることから、先進的なインプラント治療まで国で補助する必要はないと考えられているのでしょう。

デメリット②インプラント周囲炎を起こす可能性がある

インプラントは、歯冠から歯根まですべてがチタンやセラミックで構成されているので、どんなにケアを怠っても虫歯になることはありません。けれども、インプラント体やアバットメントの周りにあるのは生きた歯茎や歯槽骨(しそうこつ)なので、不潔になることで歯周病は発症します。とくにインプラントと歯茎の境目には汚れがたまりやすく、「インプラント周囲炎」というインプラント特有の歯周病が存在しているくらい、歯肉炎・歯周炎のリスクが高くなっています。このリスクは奥歯でも前歯でも変わりはありません。

手術によって顎に埋め込んだインプラント体(=人工歯根)は、歯茎や歯槽骨によって支えられていることから、インプラント周囲炎でそれらが破壊されると、装置が脱落してしまいます。それだけにインプラントでは歯周病を予防することが何よりも重要となるのです。

デメリット③顎の骨を増やさなければならない場合がある

インプラント治療の可否は、顎の骨の状態によって決まることが多いです。顎の骨が足りないとチタン製のネジを安全に埋め込めないからです。そのため歯科用CTによる精密検査で顎骨の不足が認められた場合は、「骨造成(こつぞうせい)」という手術を行う必要が出てきます。具体的には、GBR法、ソケットリフト、サイナスリフトなどを実施して、不足した骨を増やし、人工歯根を安全に埋め込める環境を整えます。

デメリット④治療期間が長い

インプラント治療には必ず「治癒期間」が設けられます。人工歯根と顎の骨が結合するまで待つ期間を指します。下の顎であれば3ヵ月くらい、上の顎の場合は6ヵ月くらい待つことになります。その後はアバットメントの装着や上部構造(=人工歯)の作製も行うため、全体としては6~12ヵ月程度の期間を要します。従来法のブリッジは3~4週間、入れ歯は1~2ヵ月で治療が完了することから、インプラントは治療期間が長くなる治療法と言わざるを得ません。

デメリット⑤コンディションが良好でないと治療を受けられない

インプラント治療には外科手術を伴うことから、患者様のコンディションが重要となります。高血圧症や糖尿病、心疾患など、全身状態が大きく変化しやすい病気を患っている場合は、投薬によるコントロールが必要となります。患者様のコンディションが手術前や手術中に大きく悪化した場合は、治療を中断せざるを得なくなります。

もともと大きな病気にかかっていなくても、手術への恐怖心や不安感が強いと治療が受けられなくなることもあります。いわゆる“歯科恐怖症”です。そうした精神面におけるコンディションの問題は、笑気麻酔や静脈内鎮静法で解決できます。歯科恐怖症ではない人でも、初めての外科手術が怖い場合は静脈内鎮静法で対応することも珍しくありません。

デメリット⑥治療後のメンテナンスが必須

上述したように、インプラントは歯周病リスクが高い治療法です。使用していく中で上部構造が破折したり、アバットメントのネジが緩んだりすることもあるため、治療後のメンテナンスが必須となっています。インプラント保証を受ける条件として、治療後のメンテナンスが課せられている場合も多いです。

デメリット⑦CT撮影が必須

ブリッジや入れ歯は、レントゲン撮影だけで治療を進めていくケースがほとんどです。どちらも肉眼で確認できる部分だけに処置を施す治療法あることから、歯科用CTによる精密検査までは必須となっていないのです。一方、顎の骨という肉眼では確認できない部分への処置がメインとなるインプラント治療では、歯科用CTによる精密検査が必須となっています。顎の骨の厚みや幅、密度などを正確に把握することで、インプラント手術を安全に行えるようになります。

奥歯をインプラントにするメリット

ここからは奥歯のインプラント治療のメリットに関する解説です。

メリット①残っている歯を傷つけずに機能を取り戻せる

ブリッジは、短期間かつ安価に欠損部を補える方法ですが、支えとなる歯を大きく削らなければなりません。入れ歯もクラスプを引っ掛ける部分やレストと呼ばれるパーツを設置する部分の歯質を一部削らなければならない場合もあります。そもそもこれらの装置には歯根がないため、噛んだ時の力を残った歯で受けとめなければならないのです。

その点、インプラントは歯根まで回復できる治療法であることから、残っている歯を削ったり、傷付けたりする必要はありません。噛んだ時の力もインプラントと顎の骨でしっかり支えることができます。

メリット②顎の骨が弱くなるのを防止できる

私たちの骨は使わなければ弱くなっていきます。骨折をしてギプスを巻き、松葉杖で歩いていると、折れた方の足がどんどん痩せていきますよね。それと同じ現象が顎の骨でも起こるのです。インプラントには、顎の骨に根差した人工歯根があることから、天然歯と同じような咀嚼(そしゃく)機能を発揮できます。その結果、顎の骨が弱くなるのを防止できるのです。これは目に見えてはっきりとわかるメリットではありませんが、お口の健康維持・増進という観点において極めて有益です。

メリット③噛み合わせを調整できる

残っている歯に引っ掛けたり、被せたりする入れ歯やブリッジは、装置の安定性や噛み合わせを精密に調整することはなかなか難しいです。その点、インプラントは、何もないまっさらな場所に人工歯根を埋め込んで、上部構造を装着する治療法なので、噛み合わせまでしっかり調整できます。

メリット④審美性に優れている

近年、過去に入れた入れ歯やブリッジをインプラントに代えたいと希望される患者様が増えています。これは従来法の見た目があまり良くないからです。いろいろなパーツが付随する入れ歯は言うまでもなく、複数の人工歯が連結しているブリッジも歯列に調和しにくい面が多々あります。装置に使用されている金属が目立つこともあるでしょう。一方、インプラントは天然歯とほぼ同じ構造であり、金属部分も目立ちにくいことから、従来法よりも審美性に優れているといえます。適切な方法で装着した人工歯根+上部構造なら、天然歯列と調和するため、どの部分を治療したのかわからなくなります。

メリット⑤食事を楽しめる

入れ歯は安定性が低く、食事の時にずれる・外れることがよくあります。ブリッジも歯根の部分がないため、天然歯のような噛み心地は再現できません。ここでもやはり重要となるのは「歯根」なのです。インプラントには顎の骨と結合した人工歯根が存在しており、食事中に装置がずれる・外れるリスクはゼロに近いです。硬い食べ物もしっかり噛むことができ、本物の歯があったときと同じように食事を楽しむことができます。

メリット⑥発音を維持できる

入れ歯やブリッジはその構造上、発音を邪魔することが多いです。とくに入れ歯はしゃべっている時にずれるため、発音しにくいと感じやすいことでしょう。繰り返しになりますが、インプラントは天然歯とほぼ同じ構造を採っており、しゃべっている時にずれることもないため、歯を失う前と同じ発音状態を維持することができます。

メリット⑦入れ歯・ブリッジより痛みを感じにくい

装置が不安定であったり、残った歯に大きな負担がかかったりする入れ歯やブリッジは、使っていく中で痛みを感じやすいです。それに対してインプラントは、複雑なパーツは付随しておらず、噛んだ時の力も人工歯根と顎の骨でしっかり支えられることから、日常的に痛みを感じることはまずありません。虫歯になるリスクもなく、歯を削ったりするような処置も必要となることはないでしよう。

インプラント治療のメリット・デメリットは奥歯も前歯も変わらない

ここまで奥歯のインプラント治療について解説してきましたが、ほぼすべての項目を前歯のインプラントの特徴やメリット・デメリットに置き換えることができます。つまり、インプラント治療におけるメリット・デメリットというのは、奥歯も前歯も大差はないのです。インターネット上には「奥歯のインプラントには危険が伴う」といった書き込みがあれば、「前歯のインプラントは失敗しやすい」といった表現でそのリスクを強調している文章も目にします。結局、どのような治療法にもメリット・デメリットを伴うため、ご自身にとって最善といえる方法を選ぶことが何よりも大切だといえます。

インプラント治療を受ける場合の歯科医院の選び方

インプラント治療は、外科手術を伴うという点において、従来法とは異なります。ブリッジや入れ歯より専門性の高い治療だけに、歯科医院選びには細心の注意を払う必要があるのです。そこで今現在、インプラントを検討中の方は、少なくとも以下の2点に着目して治療を任せる歯科医院を選ぶようにしましょう。

選び方①事前の説明を丁寧に行っているかどうか

インプラントは、多くの人にとって未知の治療法です。治療にどのような器具を使うのか、どのくらいの期間で治療が完了するのか。そもそも「インプラント」とは何なのか。そうしたインプラントに関する多くの疑問を解消するのが事前の説明の目的であり、歯科医師が果たすべき役割でもあります。その説明をおざなりにするような歯科医師は論外として、専門用語が多くて説明がわかりにくい、こちらの質問の意図を上手く汲み取ってくれないなど、カウンセリングの段階で相性の悪さを感じた場合も、慎重に考えた方が良いと言えます。インプラントはある意味で“一生もの”の治療なので、心から信頼できる歯科医師に任せるべきでしょう。

選び方②実績・知識が豊富かどうか

専門性の高い治療ほど、高度な技術や知識、豊富な経験が求められます。それは先進的な医療であるインプラントで顕著に見られる傾向です。これまで経験してきたインプラント治療の数や症例のバリエーションで、その歯科医師の知識・技術・実績をある程度、推測することができます。その他、カウンセリングでは歯科医院の設備についても確認しておくと良いでしょう。歯科用CTが完備されていることはもちろん、衛生管理が徹底された環境で、インプラント手術を行えることも必須条件といえます。

まとめ

今回は、奥歯をインプラントにするメリット・デメリットや歯科医院選びのポイントについて解説しました。本文でも述べたように、インプラント治療のメリット・デメリットは、奥歯も前歯も大した違いはありません。奥歯だから入れ歯の方が良いとか、前歯だからブリッジの方が良いということにもなりませんので、その点は正しく理解しておくことが大切です。インプラントの歯科医院選びについては、上記の2点を押さえておけば大きく失敗することもなくなるかと思います。
インプラント治療について、他の歯科医院で説明を受けたがよくわからないという方は、一度当院までご相談ください。当院は、インプラント治療の実績が豊富な歯科医院です。

インプラントかブリッジかどっちがいい?徹底比較とおすすめの人を解説

ケガや虫歯などで歯を失った場合は、インプラント・ブリッジ・入れ歯の3つから治療法を選ぶことになります。それぞれに異なる特徴があり、適した症例も違ってきますが、今回は比較的類似点の多いインプラントとブリッジの2つを比較しながら、それらの違いについて解説します。

インプラント治療は、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込み、その上にアバットメント(土台)と上部構造(人工歯)を装着する方法です。ブリッジ治療は、欠損部の両隣の歯を大きく削って土台とする装置で、3本以上からなる連結した被せ物を装着する方法です。どちらも固定式の治療方法ではありますが、異なる点も多々見受けられます。

インプラントとブリッジの比較早見表

インプラント

ブリッジ

歯を削るかどうか

削らない

削る

治療箇所の周囲の状態から受ける影響

あり

なし

外科処置の要否

必要

不要

トラブルの有無

外科手術に伴うトラブルあり

通常の歯科治療と同様のトラブルあり

最大咬合力と咀嚼能率

天然歯に限りなく近い

天然歯の60%程度

周囲の歯への負担

なし

あり

違和感

なし

なし

審美性

極めて自然で美しい

装置の設計によっては審美性が悪くなる

平均寿命

10年以上

7~8年(保険診療)

メインテナンス方法

少し特殊

天然歯とほぼ同じ

費用

やや高い(保険適用外)

安い(保険適用)

治療期間

最短でも6ヵ月以上

3~4週間

インプラントとブリッジの比較

比較①歯を削るかどうか

インプラント

顎の骨に埋め込む人工歯根が土台となり、被せ物の支えとなるため残った歯を削る必要はありません。

ブリッジ

欠損部の人工歯を橋渡しするために、両隣の歯を全周にわたって1.0~1.5mm程度削らなければなりません。失った歯の本数が増えるほど、削る歯の本数も増えていきます。

比較②治療箇所の周囲の状態から受ける影響

インプラント

顎の骨にチタン製のネジ(=人工歯根)を埋め込む必要があるため、骨の状態は良好であることが前提となります。治療箇所の周囲に分布する神経や血管の位置にも最新の注意を払わなければなりません。

ブリッジ

欠損部の両隣の歯が健康であれば適応可能です。周囲の骨や歯周組織、神経の状態などに影響を受けることはありません。

比較③外科処置の要否

インプラント

すべてのケースにおいて外科処置が必須となります。歯茎をメスで切開し、顎の骨にドリルで穴を開けるなどの処置を実施するため、重度の高血圧症や糖尿病などを患っている場合は、インプラント治療を適応できないことがあります。

ブリッジ

出血を伴うような外科処置は不要です。歯茎や顎の骨に手を加えることはまずありません。重篤な全身疾患を患っていたとしても、基本的には施術可能です。

比較④トラブルの有無

インプラント

人工歯根の埋入手術を行う際、重要な神経や血管を傷つけるリスクがあります。術前・術後に細菌感染を招いたり、人工歯根が顎の骨に定着しなかったりするなどのトラブルも起こり得ます。

ブリッジ

支えとなる歯を大きく削ることで、歯が脆くなる・歯の寿命が縮まる・虫歯のリスクが高まるといったトラブルが起こり得ます。

比較⑤最大咬合力と咀嚼能率

インプラント

インプラントには人工歯根があることから、食べ物を噛み砕く「咀嚼(そしゃく)能率」は、天然歯の80%程度まで回復できると言われています。噛む力の最大値(=最大咬合力)は、天然歯とほぼ同じです。

ブリッジ

ブリッジには人工歯根がなく、欠損部には歯の頭の部分である歯冠(しかん)だけが配置されるため、咀嚼能率は天然歯の60%程度にとどまります。最大咬合力は、天然歯とほぼ同じです。

比較⑥周囲の歯への負担

インプラント

失った歯を歯根から回復できるインプラントは、独立した補綴(ほてつ)装置であるため、周囲の歯に負担を強いることはありません。噛んだ時の力は、上部構造と人工歯根、顎の骨でしっかりと受け止めます。

ブリッジ

ブリッジ治療では、欠損部にポンティックと呼ばれる歯冠だけの人工歯が配置されることから、噛む力は両隣の歯が受けて止める形となります。支えとなる歯には大きな負担がかかるため、その分、歯の寿命も短くなりがちです。

比較⑦違和感

インプラント

インプラント治療では、顎の骨に埋め込んだ人工歯根が上部構造をしっかりと支えるため、食事や会話中にズレたり、外れたりすることはありません。装着感も良好です。

ブリッジ

ブリッジもインプラントと同様、固定式の装置なので、入れ歯のような使用感の悪さはありません。ただし、人工歯を複数連結した形態のブリッジは、インプラントよりも装置による違和感が生じやすいといえます。

比較⑧審美性

インプラント

インプラントは、天然歯とほぼ同じ構造の装置であることから、審美性は極めて高いです。ただし、上部構造に銀歯を選択した場合は、インプラントでも見た目は悪くなります。

ブリッジ

人工歯を複数連結するブリッジは、審美性においてインプラントよりやや劣ります。人工歯の材料として金属を選択した場合は、見た目がさらに悪くなります。

比較➈平均寿命

インプラント

一般的には10年以上持つものと考えられています。いわゆる10年生存率は、90%以上です。

ブリッジ

10年生存率は、50~70%程度にとどまります。保険のブリッジは7~8年で寿命を迎えることが多いです。

比較➉メインテナンス方法

インプラントもブリッジも、歯科医院でクリーニングやスケーリング(歯石除去)を受けることで、良好な状態を維持できます。インプラントに関しては、上部構造を取り外してクリーニングするなど、少し特殊なメインテナンスも行われます。

比較⑪費用

インプラント

保険が適用されず、費用はやや高いです。

ブリッジ

保険と自費のどちらかを選択することができるため、治療にかかる費用を抑えることは可能です。

比較⑫治療期間

インプラント

インプラント治療には、人工歯根と顎の骨の結合を待つ治癒期間があるため、全体としては6~12ヵ月程度の期間を要します。

ブリッジ

一般的な症例では3~4週間で治療が完了します。

インプラントがおすすめな人

インプラント①他の歯を削りたくない人

健康な歯を一切削りたくないという人には、インプラント治療がおすすめです。インプラントは人工歯根が土台となるため、周りの歯を削る必要がありません。当然ですが、インプラントを埋め込む部位の歯は、抜歯する必要があります。これはブリッジや入れ歯も同じです。いわゆる補綴治療というのは、失った歯を補うために行うものなので、歯根だけでも残っていたら処置を進めることができなくなります。

インプラント②他の歯に負担をかけたくない人

インプラントは、噛んだ時の力を人工歯根と顎の骨で受けとめることができます。ブリッジのように両隣の歯に大きな負担をかける必要がなく、お口全体の健康維持にも寄与します。

インプラント③再治療・メインテナンスを簡単に済ませたい人

インプラントは、独立して存在している装置です。メンテナンスを行う時や再治療を行う時にも、他の歯に影響を与えることがありません。これは、インプラント治療における極めて大きなメリットといえます。

ブリッジがおすすめな人

ブリッジ①外科手術に抵抗がある人

ブリッジ治療は、歯茎をメスで切開したり、顎の骨にドリルで穴を開けたりする外科手術が不要です。通常の被せ物治療と同じような手順で失った歯の機能・審美性を回復させたい人には、インプラントよりブリッジの方がおすすめといえます。

ブリッジ②治療期間を短くしたい人

ブリッジは、インプラントよりも治療期間が短いです。これは手術が不要であるからです。標準的な症例なら3~4週間で治療が完了します。抜歯を伴う場合は、治癒期間も含めると1ヵ月以上の期間を要します。少なくとも、治療期間が半年以上はかかるインプラントとは大きく異なります。

ブリッジ③費用を抑えたい人

ブリッジを保険診療で受けた場合は、治療費を20,000円程度に抑えられます。1本当たり300,000~400,000円の費用がかかるインプラントと比較すると、かなりリーズナブルといえるでしょう。

ブリッジ④歯を削りたくない人

ブリッジは、両隣の歯を大きく削る必要性のある治療法ですが、前歯に関しては例外的なケースもあります。それは「接着性ブリッジ」と呼ばれる手法です。前歯をほんの少しだけ削ってブリッジを貼り付ける方法なので、通常のブリッジ治療よりも残った歯への負担が少なくなります。

まとめ

今回は、失った歯の治療法として、インプラントとブリッジを比較しました。かなり細かい部分まで解説したので、治療選択の際の参考になるかと思います。大切なのは治療に何を求めるかです。絶対的に優れている治療法というのは存在しないため、ご自身にとって最善といえるものを選ぶことが重要となるでしょう。

インプラントと入れ歯どっちがいい?それぞれのメリット・デメリット等を解説

歯を丸ごと1本、もしくは複数本失った人は、何らかの方法で欠損部を補わなければなりません。その際、選択肢として挙がるのが「インプラント」と「入れ歯」です。この2つの治療法で悩まれている方も多いことでしょう。今回はそんなインプラントと入れ歯の違いについて、それぞれのメリット・デメリットを比較しながらわかりやすく解説します。

インプラントとは

インプラントとは、失った歯の「第3の治療法」とも呼ばれるもので、ブリッジや入れ歯よりも歴史が浅いです。歯科医院によっては対応していないところもあり、歯科医師にはそれ相応の知識や技術、経験が求められる治療法といえます。

インプラントの最大の特徴は、歯の頭の部分である歯冠(しかん)だけではなく、歯根まで回復できる点です。顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込む手術を行い、しっかりと固定をすることで人工歯の強固な土台となります。外科手術が必須という点で、患者さまの心身にかかる負担がやや大きくなりますが、天然歯に限りなく近い見た目、噛み心地を再現することが可能です。

入れ歯とは

失った歯の治療法としては、最も有名な装置です。おそらく、皆さんも「入れ歯」と聞いてすぐに具体的なイメージが頭に浮かぶかと思います。入れ歯には、1本から複数本の欠損を補う「部分入れ歯」とすべての歯を失った症例に適応できる「総入れ歯」の2種類があります。つまり、入れ歯はすべての症例に適応できる治療法なのです。

また、入れ歯治療では、インプラントのような外科手術が必要となることはありません。入れ歯をお口の中に固定するためのパーツの設置部分を少し削ることはありますが、外科手術とは程遠い処置といえます。歯科医院に通う回数もそれほど多くはなく、短期間で欠損部を補えます。

ただし、入れ歯には人工歯根がなく、取り外し式の装置でもあるため、インプラントのようにしっかり噛むことはできません。見た目もあまり良くないのが難点です。

インプラントと入れ歯どっちがいいか悩む要素

インプラントと入れ歯で悩む要素としては、以下の3点が挙げられます。

要素①費用

インプラントと入れ歯では、費用の面で大きな違いが見られます。インプラント治療には原則として保険適用されないため、費用は全額自己負担となります。自由診療なので歯科医院によって料金設定も大きく異なりますが、インプラント1本当たり400,000円前後の費用がかかるのが一般的です。
一方、入れ歯には保険適用されることから、費用負担は1~3割となります。そもそも入れ歯に使用する素材は原材料費が安価であり、3割負担の場合は5,000~15,000円程度で製作できます。
こうした治療にかかる費用の違いという観点で、入れ歯を選んだ方がよいのか、機能性に勝るインプラントを選んだ方がよいのか悩む方が多いのでしょう。

要素②手入れ

お手入れの方法においても、インプラントと入れ歯には大きな違いが見られます。顎の骨に人工歯根を埋め込んで固定するインプラントは、天然歯とほぼ同じ構造を採っており、特別なお手入れは必要ありません。天然歯と同じ方法でブラッシングすれば、きれいな状態を保てます。

取り外し式の装置である入れ歯は、お手入れの方法がインプラントと根本的に異なります。お手入れする際にはお口の中から外して、義歯ブラシという入れ歯専用の歯ブラシでやさしくブラッシングします。1日1回は、入れ歯洗浄剤を使った化学的洗浄も必要となります。つまり、装置のお手入れという観点においては、入れ歯の方が維持費がかかる可能性もあります。

要素③健康

インプラントと入れ歯で悩む大きなポイントに「健康」があります。インプラント治療には外科手術が伴うため、「心身に大きな負担がかかってしまうのでは」という不安があるようなのです。確かに、重度の高血圧症や糖尿病などを患っている方は、インプラントの手術で深刻なトラブルが生じるリスクもありますが、ほとんどの方は問題ありません。

「手術」と言っても、全身麻酔下で行うような大掛かりなものではなく、どちらかというと親知らずの抜歯に近いスケールの処置となることから、失敗するリスクは極めて少ないのです。人工歯根を埋め込む処置自体は1本あたり15分程度で終わります。もちろん、健康上の大きな問題がある場合は、手術が必要ない入れ歯を選択した方が良いと言えます。この点は、かかりつけの医師や歯科医師としっかり相談することが大切です。

インプラントと入れ歯のメリット

メリット①インプラント

インプラントは唯一「人工歯根」がある装置です。顎の骨に根差した歯根があることから、天然歯と同等の咀嚼(そしゃく)機能が手に入ります。硬い食べ物を噛んでも装置がズレたり、外れたりすることはありません。また、噛んだ時の力が顎の骨にしっかりと伝わるため、「顎の骨が痩せる」現象を最小限に抑えられます。見た目も天然歯そっくりなので、現状の歯列に自然と調和することでしょう。さらに、装置の寿命も長く、治療後のメンテナンスを十分に行えていれば、半永久的に使い続けることも不可能ではありません。過去には、インプラント治療を受けてからお亡くなりになるまで、40年以上使い続けられたケースもあります。

メリット②入れ歯

入れ歯は、外科手術が必要ないため、健康状態が良くなかったとしても治療を受けることができます。保険が適用される点も大きなメリットのひとつです。治療にかかる期間が短く、手軽に作れる装置であることは、インプラントにはない入れ歯の魅力と言えるでしょう。

インプラントと入れ歯のデメリット

デメリット①インプラント

インプラントは、失った歯の本数が多いほど、費用も高くなっていきます。例えば、3本の歯を失った場合は、基本的に3本の人工歯根を埋め込むことになるため、費用も1,000,000円を超えるのが一般的です。同時に、外科手術による心身への負担も大きくなります。その他、インプラントには治療期間が長いというデメリットもあります。インプラントでは、人工歯根が顎の骨に定着するまで数ヵ月待つ必要があるからです。

デメリット②入れ歯

費用が安くて治療期間が短く、手術を行わずに手軽に作れる入れ歯には、それ相応のデメリットを伴います。
まず、入れ歯は比較的大型の装置となるため、見た目の違和感が大きいです。金属製のバネ(=クラスプ)や歯茎を覆う義歯床(ぎししょう)などが付随することから、装着感もあまり良くありません。また入れ歯は、人工歯根によって強固に固定されるインプラントとは異なり、残った歯に引っ掛けたり、粘膜に吸着させたりすることで固定するので、安定感が良くないというデメリットもあります。ちなみに、保険診療で作った入れ歯の寿命は、4~5年程度と言われています。

インプラントと入れ歯どっちにするかの決め手

ここまでは、インプラントと入れ歯の特徴についてそれぞれ解説してきましたが、最終的な決め手となるポイントも知りたいですよね。

決め手①費用の安さ・手入れのしやすさなら「入れ歯」

インプラントは、実に優れた装置ではありますが、費用の安さと手入れのしやすさに重きを置くのであれば、入れ歯が推奨されます。まず、費用に関しては保険適用される時点で、入れ歯に軍配が上がりますよね。原則として自費診療となるインプラントは、1本当たり400,000円程度かかるのに対し、入れ歯ならすべての歯を失った症例でも20,000円程度の出費で済みます。この点は、比較にならないほどの違いが見られます。

次に、お手入れのしやすさという観点ですが、これには2つの考え方があります。例えば、インプラントは固定式の装置であり、天然歯と同じようなお手入れで済むのですが、治療後のメンテナンスは欠かせません。セルフケアとプロフェッショナルケアを一生涯、しっかり継続することで正常な状態を維持できます。入れ歯は取り外し式の装置であり、毎日自分の手で触りながらケアを徹底することが可能です。定期的な歯科医院への通院は必要ですが、お手入れのしやすさという面においても、入れ歯が優れていると考える人も多いことでしょう。

決め手②健康面重視なら「インプラント」

健康面を重視するのであれば、間違いなくインプラントが適しています。インプラント治療では、手術で顎の骨に人工歯根を埋め込むため、硬い食べ物でもしっかり噛めるようになり、顎の骨が痩せていく現象もほとんど起こりません。お口全体の機能回復にも大きく寄与し、食べる・飲み込む・しゃべる・呼吸することを自然に行えるようになります。インプラント治療による仕上がりは、歯科医師の技術や歯科医院の設備によって大きく左右されますが、信頼できる歯医者を見つけることができれば、健康面においても入れ歯より良い結果が得られやすいでしょう。インプラント治療ができる・できない等の条件はありますが、歯科医師に相談することで、解決できる可能性はあります。

インプラント治療ができないケース

失った歯の治療法として、健康面を重視した場合はインプラントが推奨されますが、ケースによっては適応できないこともあります。

◎重症度の高い全身疾患がある

次に挙げるような全身疾患は、軽度から中等度であればとくに問題はありませんが、重症度が高い場合は、インプラント治療できないことがあります。

  • 高血圧症
  • 心疾患
  • 糖尿病
  • 骨粗しょう症
  • 呼吸器疾患

重症度が高い場合でも症状が薬剤などでしっかりコントロールされていれば、インプラント手術が可能となることもあります。その場合には、かかりつけの医師と歯科医師で連携を取りながら、慎重に判断していくことになります。

◎歯周病にかかっている

歯周病は、インプラント治療の天敵とも呼ばれている病気です。進行した歯周病では、インプラントを埋め込み、支えるための顎骨が破壊されていってしまうからです。そのため歯周病にかかっている人は、あらかじめ歯周病を治療していただくこととなります。歯周病の症状がなくなれば、インプラント治療を受けられるようになります。

まとめ

このように、インプラントと入れ歯にはそれぞれに強みがあって、どちらかが絶対的に優れているとは言い切れません。経済面を優先するのであれば入れ歯、健康面を重視するのであればインプラント。もちろん、他にもいろいろな視点から比較して、選択することも可能なので、インプラントと入れ歯でお悩みの方は、お気軽に当院までご相談ください。

オールオン4のメリット・デメリット:総入れ歯やインプラントと比較して解説

インプラントには、「オールオン4」という特別な治療法があることをご存知でしょうか?オールオン4とは、すべての歯を失った症例に適応されるインプラント治療であり、総入れ歯や標準的なインプラントとは異なるメリット・デメリットがあります。ここでは、そんなオールオン4のメリット・デメリットについて詳しく解説します。

総入れ歯と比較した場合

総入れ歯と比較した場合のオールオン4には、次のようなメリット・デメリットがあります。

メリット

メリット①天然歯に近い噛み心地を得られる

オールオン4では、顎の骨に人工歯根であるインプラント体を埋め込むため、天然歯に近い噛み心地が得られます。噛んだ時の力を顎の骨がしっかり受け止めてくれます。人工歯にセラミックを選択することで、耐久性も高められます。

メリット②発音への影響が少ない

総入れ歯は取り外し式の装置なので、しゃべるときにズレたり外れたりしますが、固定式のオールオン4ではそのようなトラブルは起こりません。また、入れ歯のような違和感もほとんどないので、発音への悪影響を最小限に抑えられます。

メリット③痛みが起こらない

合わない入れ歯は、歯茎を傷めたり、頬の内側の粘膜に刺激を与えたりするなど、使っていく中で痛みを感じることもあります。一方、4本の人工歯根によってしっかり固定されたオールオン4では、痛みを伴うようなトラブルは起こりにくいです。

メリット④外れない

総入れ歯は安定性に乏しく、食事や会話の際に外れることがありますが、固定式のオールオン4が外れることはまずありません。

メリット⑤早期に装着出来る

オールオン4は、インプラント体を埋入する手術直後に入れ歯に当たる上部構造を装着できます。一方、総入れ歯は装着するまでにそれなりの期間を要します。

メリット⑥若々しさをキープ出来る

4本の人工歯根を土台とするオールオン4では、噛んだ時の力を顎の骨に伝達することができます。つまり、本物の歯と同様のメカニズムで咀嚼(そしゃく)運動を行うことができるため、顎の骨が瘦せていく現象を最小限に抑えられます。
一方、総入れ歯は、噛んだ時の力を歯茎で受け止める装置なので、顎の骨に加わる刺激が少なくなります。その結果、顎の骨が痩せていき、口元の老化が進んでいくことになるのです。お口周りの筋肉が弛緩することも総入れ歯が「老けて見える」原因の一つといえるでしょう。

デメリット

デメリット①手術が必要

オールオン4には必ず外科手術を伴います。人工歯根であるインプラント体を顎の骨に埋め込まなければならないため、全身状態が良くない人にとってはそれなりのリスクを伴う治療となります。

デメリット②適用出来ないケースがある

オールオン4は大変優れた治療法ですが、顎の骨や全身の健康状態によっては、その他の治療法が第一選択となる可能性も十分あります。その点、総入れ歯はすべての歯を失っている、あるいは抜歯予定であれば、適用できないケースは皆無に等しいです。

デメリット③治療費用が高い

保険適用される総入れ歯は、治療にかかる費用も自ずと安くなります。一方、オールオン4には原則として保険が適用されず、治療にかかった費用は全額自己負担となります。実際にどのくらいの費用がかかるかは、患者さまのお口の状態などによって大きく変動します。

インプラントと比較した場合

次に、オールオン4と標準的なインプラントとの比較です。

メリット

メリット①身体への負担が少ない

オールオン4では、基本的にインプラントを4本だけ埋め込めば、総入れ歯に相当する上部構造を支えることができます。顎や全身への負担を最小限に抑えられ、手術後のリスクも最小限に抑えられます。

メリット②治療費用を抑えられる

インプラントにかかる費用は、1本あたり300,000~400,000円が全国的な相場です。失った歯の本数だけインプラントを埋め込むと、大変な額の費用が発生することになります。その点、オールオン4では、人工歯根の埋入本数が4本なので、治療にかかる費用を大幅に抑えられます。

メリット③審美性に長けている

標準的なインプラントとオールオン4を比較した場合、上部構造の自由度は後者の方が高くなっています。オールオン4なら、理想的な歯並びが実現できます。
また、失った歯茎を人工的に回復させることができるので、お口の張りも取り戻すことができ、審美性においても標準的なインプラントに優っているといえます。

メリット④早期に装着出来る

標準的なインプラントは、人工歯根を埋入してから3~6ヵ月程度、待機する必要があります。その間は仮の歯を設置することも可能ですが、しっかりと噛むことはできません。一方、オールオン4は人工歯根を埋入した当日に上部構造を装着することが可能です。歯がない状態や噛めない状態が短い点もオールオン4のメリットといえるでしょう。

デメリット

デメリット①すべての歯を抜かなければならない

オールオン4は、歯が1本もない「無歯顎(むしがく)」の症例が対象となります。歯が残っている場合は、手術を行う前にすべて抜かなければなりません。標準的なインプラント治療は、歯を失った部位にだけ適応できるので、状態の良い天然歯を保存できるというメリットがあります。

デメリット②治療を受けられる歯科医院が限られる

オールオン4は、極めて専門性の高い歯科治療であり、対応している歯科医院は全国的にも一部に限られます。ですから、ケースによっては県をまたいで遠方まで通院する必要が出てきます。一方、標準的なインプラントに対応している歯科医院は数が多く、近隣で見つけるのも難しくないでしょう。

まとめ

今回は、4本のインプラントで上部構造(総入れ歯)を支えるオールオン4について解説しました。オールオン4は、標準的な総入れ歯やインプラントと比較しても優れた部分が多々あり、無歯顎の方には広くおすすめできる治療法ですが、デメリットも伴う点にご注意ください。そんなオールオン4について、さらに詳しく知りたい方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。

インプラントにまつわる様々な種類:構造から材質まで徹底解説

インプラントは失った歯を補う「補綴装置(ほてつそうち)」ですが、従来のブリッジや入れ歯とは大きく異なる点が多々あります。種類もいくつかあり、構造から材質までバリエーションが豊富であることから、それぞれどのような特徴があるのか知りたい方も多いのではないでしょうか。今回はそんなインプラントにまつわるさまざまな種類や構造について詳しく解説します。

インプラントの基本的な構造

インプラントの構造

インプラントは基本的に、上部構造アバットメントインプラント体の3つから構成されています。

構造①上部構造(人工歯)

インプラントの上部構造

インプラントの上部構造とは、ブリッジや入れ歯における「人工歯」に相当します。インプラントの構造の中では唯一、口腔に露出するパーツであるため審美性に優れたセラミックを使用することが多いです。いわゆる“オールセラミック”なら、天然歯の色調や光沢、透明感を忠実に再現できることから、治療後は天然歯列と自然に調和します。何よりインプラントには「人工歯根」という天然歯とほぼ同じ土台が存在しており、ブリッジや入れ歯よりも自然に仕上げることが可能となっています。

構造②アバットメント

インプラントのアバットメント

アバットメントは、人工歯根と上部構造を連結するためのパーツです。とても小さく、連結したあとは人工歯根および上部構造と一体化します。アバットメントは他にも上部構造の高さや角度を調節する役割も担っていますが、元からインプラント体を一体化しているタイプもあるため、種類によって期待できる効果も変わってくるのが現実です。ちなみに、インプラント体とアバットメントが一体化しているものを「ワンピースタイプ」と呼んでいて、標準的な「ツーピースタイプ」よりも価格が安くなっています。

構造③インプラント体

インプラント体

インプラント体は、この治療法の要となる「人工歯根」です。専門的には「フィクスチャー」と呼ばれることもあります。基本的にはネジのような形をしており、専用のドライバーを使って顎の骨に埋め込みます。材質はチタンまたはチタン合金がスタンダードで、インプラント体の直径は3~5mm、長さは6~18mm程度が目安となります。患者さまの顎の状態などを考慮して最適なサイズのインプラント体を選択します。チタンやチタン合金が使われる理由は、身体への安全性です。チタンは金属アレルギーが起こりにくい材料なので、古くから人工関節や心臓のペースメーカーの素材として広く活用されています。腐食も起こりにくいため、顎の骨に埋め込んでもトラブルが起こることはほとんどありません。さらにチタンは、顎の骨と結合する現象が確認されており、噛んだ時の力を支える人工歯根の材質としてはうってつけといえるでしょう。

インプラント体の形状

人工歯根であるインプラント体の形状は、スクリュータイプ・シリンダータイプ・バスケットタイプの3つに分けられます。

形状①スクリュータイプ

スクリュータイプはネジのような形状のインプラント体で、現在のインプラント治療の主流となっています。板にネジを埋め込むのと同じ要領で顎骨へと埋入できることから、固定しやすく、安定性が高いのが特徴です。特別な理由がなければ、スクリュータイプを選択するのが一般的です。

形状②シリンダータイプ

シリンダータイプとは、文字通り円筒(シリンダー)状の人工歯根でスクリュータイプのようならせん状の切れ込みは入っていません。顎に埋め込む際にはハンマーのような器具で打ちつけるため、埋入処置自体はとてもシンプルです。ただ、スクリュータイプと比べると表面積が小さく、顎骨との結合も弱くなるというデメリットを伴います。現在でも一部の症例で使われているインプラント体です。

形状③バスケットタイプ

バスケットタイプとは、中心部に空洞が存在しているインプラント体です。空洞には骨の一部を埋め入れることが可能であり、理論上は他のインプラント体よりも強固な結合が得られます。ただし、高度な技術を要するため実用的ではなく、現在はほとんど使用されていないインプラント体となっています。

インプラントのタイプ

インプラントの構造には、ワンピースタイプとツーピースタイプの2つがあります。

タイプ①ワンピースタイプ

ワンピースタイプとは、人工歯根であるインプラント体と連結装置であるアバットメントが一体化しているインプラントです。手術が1回で済むため、患者さまの心身にかかる負担を最小限に抑えられます。ただ、ワンピースタイプは、顎の骨の状態が良くなければ適応できませんし、アバットメントが故障した際はインプラント体ごと撤去しなければならないというデメリットを伴う点に注意しなければなりません。特別な理由がない限り、基本的にはツーピースタイプを選択した方が良いといえます。

タイプ②ツーピースタイプ

ツーピースタイプは、インプラント体とアバットメントが分離しているインプラントです。ツーピースタイプでは原則として2回の手術が必要となりますが、アバットメントが故障してもインプラント体は残せたり、患者さまの歯並びやお口の状態に合わせて、最善といえるパーツを選択することが可能であったりするため、現状はツーピースタイプが主流となっています。

治療回数によって採用するタイプが異なる

インプラントのタイプは、治療回数によって決定することがあります。手術を1回だけ行う「1回法」では、人工歯根とアバットメントが一体化したワンピースタイプが適しており、手術を2回に分ける「2回法」は2つのパーツに分離したツーピースタイプが適しています。ちなみに、ツーピースタイプは原則として2回法に適応されますが、1回法で使用することも可能です。

どちらを選択するかは、精密検査の結果をもとに、歯科医師が判断します。ワンピースタイプとツーピースタイプでは、審美性や顎の骨への結合という観点で大きな違いは見られないため、安全面や機能面を重視して決定が下されます。上部構造や費用の面で検討するケースは稀といえるでしょう。

インプラントに使用される材質

インプラントを構成する各パーツには、それぞれ以下のような材質が使用されます。

上部構造に使用される材質

人工歯にあたる上部構造には、オールセラミック・ジルコニアセラミック・ハイブリッドセラミックのいずれかを使用するのが一般的です。材料はすべてセラミックで、白い歯を装着できることに変わりはありませんが、特徴はそれぞれで少しずつ異なります。

オールセラミック

歯科治療で用いる材質の中で最も美しいと言っても過言ではなく、高い審美性が要求される前歯のインプラントに最適です。天然歯の色調や質感、光沢まで忠実に再現できることから、治療後はどの部位にインプラントを入れたのかわからなくなるくらいです。ただ、強度においてはジルコニアセラミックに劣るため、歯ぎしりや食いしばりの習慣があったり、噛む力がもともと強かったりする場合は、ジルコニアの方が適しています。

ジルコニアセラミック

人工ダイヤモンドとも呼ばれるセラミックで、金属に匹敵するほどの強度を誇ります。噛む力が強い方にも問題なく適応できます。ジルコニアセラミックも白くてきれいな材料なのですが、透明度が低く、前歯に適応すると違和感が生じてしまうことも珍しくありません。ですから、審美性を追求するのであれば、オールセラミックの方が適しています。

ハイブリッドセラミック

歯科用プラスチックであるレジンとセラミックを混ぜ合わせた材料で、オールセラミックやジルコニアセラミックよりも安価である点が最大のメリットです。その一方、審美性や強度は標準的なセラミックに劣ります。また、純粋なセラミックよりも汚れが付着しやすく、歯茎の粘膜に炎症を起こしやすいという欠点があります。

これらはすべてセラミックでできているため、極端に強い力がかかると割れることがあります。歯ぎしり・食いしばりなどの悪習癖がなおらない患者さまで、ジルコニアセラミックでも対応できない場合は、金属材料を使うこともあります。

アバットメントに使用される材質

連結装置であるアバットメントの材質は、その他のパーツと比べてバリエーションが豊富です。一般的には、純チタン・チタン合金・金合金・セラミックの中から選択することになりますが、インプラント体と同じメーカーの同じ規格でなければなりません。
なお、1回法の手術に使われるワンピースタイプの場合は、インプラント体とアバットメントが一体化しているので、材質は同じです。

インプラント体に使用される材質

インプラント体に使用される材料としては、主に純チタンとチタン合金の2種類が挙げられます。
昨今、ハイドロキシアパタイト(骨や歯を構成する物質)を使用したインプラント体も普及し始めていますが、これはチタンの表面をハイドロキシアパタイトでコーティングしたものです。

純チタンやチタン合金の他に、金属アレルギーの心配がある方にお勧めされているのがジルコニア製のインプラントです。
ジルコニアインプラントは文字通りジルコニアで作られており、正真正銘のメタルフリーインプラントではありますが、適応の範囲が狭かったり、装置としての歴史が浅かったりするため、普及するにはまだ時間がかかることでしょう。そもそも、ジルコニアインプラントはまだ国内で承認されておらず、対応している歯科医院もごく一部に限られます。

インプラントの治療法

インプラントは、顎の骨に人工歯根を埋め込むという点において共通していますが、治療法によって上部構造の種類や装着の仕方、噛めるようになるタイミングが異なります。

治療法①即時荷重法

即時荷重法(そくじかじゅうほう)とは、人工歯根を埋め込んだ直後に仮歯を装着する治療法です。標準的なインプラント治療では、人工歯根と顎の骨が結合するまで3~6ヵ月程度待機するため、治療した部位で噛めるようになるには数ヵ月を要するのですが、即時荷重法なら手術したその日からインプラントに荷重をかけることができます。ただし、装着するのはあくまで仮歯であり、人工歯根の状態も万全ではありません。その点も考慮した上で、ものを噛んだ際の負荷が大きくなりすぎないように注意が必要です。また、即時荷重法は顎の骨がしっかりしている症例のみに適応可能となっています。

治療法②All-on-4(オールオンフォー)

All-on-4(オールオンフォー)とは、すべての歯を失った症例に適応されるインプラントで、その名の通りすべての人工歯(オール)を4本の人工歯根で支える(オンフォー)治療法です。通常、インプラントは1本の喪失歯に対して1本の人工歯根を埋め込むことから、すべての歯を失った症例にその理論を適応すると、治療にかかる費用や患者さまのお口にかかる負担は極めて大きくなります。オールオンフォーであれば基本的には4本の人工歯根の埋入で済むため、患者さまの心身および経済的負担を大幅に減らすことが可能となります。ただし、顎の骨の状態が悪い場合はオールオンフォーを適応できなかったり、必要となる人工歯根の数が増えたりするため、最終的な治療方針は精密検査を実施してみなければお伝えすることができません。

治療法③人工歯の直接接続

インプラントには、人工歯根と上部構造を直接接続する治療法もあります。つまり、連結装置であるアバットメントを使用せず、歯科用接着剤やスクリューを用いることで上部構造を固定するのです。上部構造と人工歯根が一体化するため、その結果、トラブルが生じた際の処置方法の選択肢が狭まるという大きなデメリットを伴います。ですから、現状は人工歯の直接接続を行うケースは極めて稀といえます。

表面加工処理の方法

最後は、人工歯根の表面加工処理についてです。チタン製の人工歯根の表面にさまざまな加工を加えることで、顎の骨に固定しやすくなります。

表面加工処理①機械研磨

機械研磨とは、専用の機械を使って人工歯根の表面を滑らかに研磨する方法です。人工歯根の表面に不要な凹凸があると、骨に対して悪影響を及ぼすことがあるため、事前にならしておきます。現在では主に人工歯根のネックの部分のみ研磨します。

表面加工処理②酸エッチング

酸エッチングとは、塩酸や硫酸、フッ化水素酸などを用いて人工歯根に粗い面を付与する方法です。適切な部位に凹凸が形成されることで、骨としっかり結合するようになります。

表面加工処理③サンドブラスト

サンドブラストも酸エッチングと同様、人工歯根の表面を粗くする処理ですが、使用するのは酸ではなく細かい砂のような物質です。チタン表面に砂を高圧で噴き付けることで、酸化膜を消失させ、骨との結合を高めます。

表面加工処理④ハイドロキシアパタイト

ハイドロキシアパタイトは、骨や歯を構成する物質です。人工歯根の表面にハイドロキシアパタイトの粉末を噴き付けてコーティングします。その結果、生化学的にかなり早い段階で、人工歯根と骨が強く結合されます。

まとめ

このように、一言でインプラントと言っても人工歯根の形状や材質、上部構造に用いられる素材にはバリエーションがあります。標準的なケースでは自ずと選択肢も絞られてきますが、それぞれのニーズに合った治療法や材質を選ぶことも十分に可能です。そんなインプラントの種類や構造、材質についてもっと詳しく知りたいという方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。インプラント治療の診療実績が豊富な歯科医師がわかりやすくご説明します。

差し歯の特徴や費用:保険適用と保険適用外に分けて解説

歯の頭の部分である歯冠(しかん)を大きく損ねるようなことがあったら、差し歯を作らなければなりません。
専門的にはクラウンと呼ばれる装置で、実にたくさんの種類が用意されています。
ここではそんな差し歯の種類や特徴、費用を保険適用と保険適用外に分けてわかりやすく解説します。

保険適用の差し歯と保険適用外の差し歯の違い

保険適用の差し歯と保険適用外の差し歯には、費用・仕上がり・保証という3点において違いが見られます。

違い①治療にかかる費用

差し歯の治療にかかる費用は、当然ですが保険適用の方が安いです。保険適用の診療では、患者さんの負担が1~3割となっています。一方、全額自己負担となる保険適用外の診療は自ずと支払う費用も高くなります。ですから、経済面を重視するのであれば、保険適用の差し歯の方が適しているといえます。

違い②仕上がり

保険適用の差し歯は、使用できる材料や治療にかけられる時間・期間にも制限が加わるため、保険適用外の差し歯ほど仕上がりは良くありません。差し歯の見た目や噛み心地の良さなどを追求したいのであれば、保険適用外の差し歯の方が良いです。

自費診療ではセラミックやジルコニアなど、審美性・機能性に優れた材料を自由に使うことができます。とくに前歯の変色や欠損を補うのであれば、審美性の高いセラミックが推奨されます。保険診療では基本、レジンや銀歯しか使用できないので、審美性も自ずと低くなります。ただ、奥歯の治療であれば、レジンや銀歯でもそれほど気にならないことが多いです。

違い③保証

保険診療では、差し歯の費用の中に「補綴物維持管理料」が含まれており、治療後2年間は無料で修理をしてもらえます。一方、保険適用外の差し歯は、歯科医院によって保証の有無が異なります。差し歯の故障に対して無償で対応してくれるところもあれば、再度、費用が発生するところもあります。その点は、治療を開始する前にきちんと確認しておきましょう。セラミック性の差し歯は1本でもかなり高額な費用がかかりますので、保証の有無はとても重要なポイントとなります。

保険適用の差し歯

保険の銀歯

保険適用の差し歯としては、次の4つが挙げられます。

保険適用①銀歯

歯科用合金で作られた差し歯で、見た目も金属色をしています。強度が高く、壊れにくくはあるのですが、見た目が良くなかったり、金属アレルギーや歯ぐきの変色であるメタルタトゥーのリスクがあったりするなど、デメリットも目立ちます。歯質との適合性もセラミックほどは高くないので、虫歯の再発リスクも存在します。ちなみに、銀歯は奥歯に適応されるもので、保険診療であっても前歯は白い材料を用いることができます。

保険適用②硬質レジン前装冠

金属の土台に硬質レジンという素材を貼り付けた差し歯です。表側からは白い歯に見えますが、裏側は金属色がむき出しとなっています。主に前歯の治療に用いられる差し歯で、銀歯よりも審美性が高いです。ただし、ベースは金属なので金属アレルギーやメタルタトゥーのリスクは存在します。

保険適用③硬質レジンジャケット冠

硬質レジンで作られた差し歯です。硬質レジン前装冠とは異なり、金属の部分が存在していません。そのため、金属アレルギーやメタルタトゥーのリスクもなくなります。歯ぐきの部分に金属色が透けて見えることもなく、審美面において非常に優れた治療法といえます。ただ、保険適用されるのは前歯の治療のみです。また、銀歯や硬質レジン前装冠ほど丈夫ではないというデメリットもあります。

保険適用④CAD/CAM冠

CAD/CAMとは、コンピューター上で差し歯を設計し、専用の機械でブロックを削り出すシステムです。保険適用では純粋なセラミックではなく、少し硬めのレジンが用いられます。現状では、前歯から奥歯まで、ほぼすべての歯に適応することができます。その他、白くて本物の歯のように見える、シリコーン印象材による不快な型取りが不要、その日に差し歯が出来上がるなどのメリットがあります。保険適用なので費用は安いです。

保険適用外の差し歯

自由診療の差し歯

保険適用外の差し歯には、次のような種類があります。

保険適用外①メタルボンド

メタルボンドとは、金属の土台にセラミックを盛り付けた差し歯です。表側からはセラミック歯に見えるため、銀歯とは異なり見た目は良好です。金属の部分は強度が高く、壊れにくいですが、セラミックの部分は強い衝撃などで壊れるおそれがあります。高い審美性が要求される前歯に使われることの多い差し歯といえます。

保険適用外②ジルコニアセラミッククラウン

ジルコニアセラミッククラウンとは、極めて高い強度を誇るジルコニアと、一般的なセラミックを併用した差し歯です。中心部がジルコニアで構成されており、表面にセラミックを焼き付けます。そのため、高い強度と審美性を兼ね備えた人工歯を装着することができます。金属は一切使用しないため、金属アレルギーや歯ぐき変色であるメタルタトゥーは起こりません。ちなみに、ジルコニアはとても硬い素材なので、強い力がかかりやすい奥歯にも使用することができます。

保険適用外③ゴールドクラウン

ゴールドクラウンとは、金(ゴールド)を使った差し歯です。見た目は金色をしているので目立ちやすく、前歯の治療にはあまり向かない。セラミックと比較して虫歯や歯周病リスクが高まるというデメリットがあります。ただ、ゴールドは金属アレルギーが起こりにくく、歯ぐきの変色を招きにくいというメリットがあります。もちろん、強度も極めて高いです。

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保険適用外④オールセラミック

オールセラミッククラウンは、土台も表側もすべてセラミックで構成された差し歯です。保険適用外の差し歯の中で最も美しい部類に入ります。ただし、強い衝撃で割れやすいというデメリットがあり、奥歯の治療にはあまり向いていません。基本的には、高い審美性が要求される前歯の治療に用いられます。

保険適用外⑤ハイブリッドセラミック

ハイブリッドセラミックとは、セラミックとレジンを掛け合わせた素材です。レジンよりも美しく丈夫ではあるものの、純粋なセラミックにはいろいろな面で劣ります。保険のクラウンよりも虫歯や歯周病リスクが少なく、オールセラミックやジルコニアセラミックよりも費用が安くなるというメリットが得られます。

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保険適用外⑥フルジルコニアクラウン

フルジルコニアクラウンとは、その名の通りジルコニアのみを使用した差し歯です。保険適用外の治療の中で最も強度に優れた差し歯といえるでしょう。保険のクラウンよりも虫歯や歯周病リスクが低いのも特徴です。ただし、オールセラミッククラウンやジルコニアセラミッククラウンと比較すると、審美性に劣ります。

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見栄えが気になる前歯には保険外の差し歯がオススメ

前歯の差し歯

前歯の差し歯の治療は、機能性はもちろんのこと、審美性も追求する必要があります。

例えば、保険適用の前歯の治療では、使用できる素材に限りがあるため、審美性の追求にも限界があります。
その点、保険適用外の治療であれば、オールセラミッククラウンやジルコニアセラミッククラウンやジルコニアセラミッククラウンなど、審美性をとことんまで追求した前歯の差し歯治療が可能となります。
ですから、見栄えが気になる前歯には、保険外の差し歯がおすすめといえます。

差し歯の治療前にすること

今現在、差し歯を入れようと考えている方は、治療を選択する前に必ず以下の3点を行いましょう。

治療前①カウンセリングを受ける

差し歯の治療は選択肢が多く、どれがご自身にとって最善といえるかはわかりにくいです。そこでまずはカウンセリングでわからないことや知りたいことを質問しましょう。そうして不安な点や疑問点を解消しておくことが大切です。

治療前②保証を確認する

保険適用の差し歯には「補綴物維持管理料」含まれているため、2年間は無償で修理等を受けられます。一方、保険適用外の差し歯は歯科医院のよって保証内容が異なりますので、その点はしっかり確認しておきましょう。

治療前③差し歯治療の実績を見せてもらう

差し歯治療は、歯科医師の技術力によって結果も大きく変わってきます。過去の実績をみせてもらうことで、どの程度の差し歯を作ってもらえるのかもチェックできます。当然ですが、できるだけ実績豊富な歯科医師に治療を任せる方が良いといえます。

まとめ

このように、差し歯の治療は保険適用か保険適用外かによって、装置の選択肢も大きく変わってきます。それぞれの差し歯に異なるメリット・デメリットがありますので、まずはその概要を知っておきましょう。その上で、ご自身にとって最善といえる差し歯治療を選択することが大切です。