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インプラントのアバットメントとは?種類・役割・装着のタイミング等を解説

インプラントには「アバットメント」という部品が存在しています。一般的な詰め物や被せ物はもちろん、インプラントと同じ“失った歯を補う装置”であるブリッジや入れ歯にも見られないパーツなので、どのような役割があるのか気になっている方も多いことでしょう。

インプラント治療を成功させ、正常に機能させるために必須となるパーツ。それがアバットメントです。ここではアバットメントの種類や役割、装着のタイミングなどを詳しく解説します。

インプラントの構造

失った歯を補うインプラントは、以下に挙げる3つの部品で構成されています。

  • 上部構造
  • アバットメント
  • インプラント体

上部構造は人工歯、インプラント体は人工歯根としての役割を果たします。それらを連結するのがアバットメントです。インプラントには数多くのメーカーが存在しており、それぞれに異なるシステムや製品を提供しているのですが、基本となる構造は共通しています。ですので、インプラントを理解する上では、まず上部構造・アバットメント・インプラント体という3つの部品の存在について知っておく必要があります。インプラント治療ではどうしてもチタン製の人工歯根やセラミック製の人工歯根に意識が行きがちですが、実際には、これらを連結するアバットメントも非常に重要な役割を果たす部品です。

【関連記事】インプラントにまつわる様々な種類:構造から材質まで徹底解説

アバットメントとは

アバットメントは、人工歯根であるインプラント体の上に装着する部品です。上部構造の土台は、インプラントにアバットメントを装着することによって、ようやく完成にすることになります。つまり、人工歯根にあたるインプラント体と人工歯に当たる上部構造を直接、連結することはできないのです。

インプラントの2回法では、2回目の手術でアバットメントを装着し、歯茎の中に埋め込まれた状態となります。アバットメントと上部構造は、ネジで固定するタイプとセメントで固定するタイプの2種類があり、それぞれに異なるメリットとデメリットがあることから、どちらかが絶対的に優れているとは言い難いです。

例えば、ネジで固定するタイプは、専用のドライバーがあれば自由に取り外せますが、審美性がやや低いのが欠点といえます。それはネジの部分をレジンなどでカバーしなければならないからです。

一方、セメントで固定するタイプは審美性に優れているものの、上部構造やアバットメントに不具合が生じた際の修理が難しくなります。いざアバットメントが故障して修理する必要性が出てきた場合は、上部構造を壊さなければならなくなることも珍しくありません。ちなみに、ワンピーススタイプと呼ばれるインプラントは、アバットメントとインプラント体が一体となっているため、手術を2回で終わらせることが可能です。

アバットメントの種類

種類①チタン合金

チタンやアルミニウムなどから構成されたチタン合金を使ったアバットメントです。強度や耐食性に優れるというチタンの特長を残しつつ、耐久性の高さも追求することができる材料です。金属としての性能が高いため、角度をつけたアバットメントの製作にも向いています。費用に関しては、純チタンよりもやや高くなります。

種類②金合金

金(ゴールド)は、生体親和性と展延性(てんえんせい)に優れた金属です。展延性とは、材料を柔軟に伸ばせる性質で、アバットメントの適合性を高めることができます。その一方で、金合金のアバットメントは、上部構造との連結部分で金属色が目立ちやすかったり、費用が高くなったりするなどのデメリットを伴います。

種類③ジルコニア

酸化ジルコニウムで構成されたジルコニアは、金属に匹敵する硬さを備えたセラミックです。詰め物や被せ物などにも使用される白色の材料で、アバットメントに使用する場合も高い審美性を確保できるというメリットがあります。金属アレルギーのリスクをなくす目的で、インプラント体とアバットメントの両方をジルコニアで製作することも可能です。

種類④純チタン

純チタンは、99%程度がチタンで占められている材料です。費用はチタン合金よりも比較的安く、加工もしやすいというメリットがある反面、チタン合金よりも耐食性や強度に劣るというデメリットも伴います。このように、同じチタン材料でもチタン合金とは違いが見られることから、インプラント体を純チタンで作っている場合は、アバットメントも純チタン製のものを選択するのが望ましいといえます。具体的には、同じ組成の金属で合わせることで、ひずみなどの異常が生じにくく、装置としての寿命も延ばしやすくなります。

アバットメントの役割

インプラントのアバットメントには、以下に挙げる5つの役割があります。

役割➀インプラント体を目立ちにくくする

人工歯根であるインプラント体はチタン製のものが一般的です。つまり、金属色がむき出しとなっているのです。歯周病で歯茎が下がったりしてその一部が露出すると、口元の審美性が大きく低下します。アバットメントに目立ちにくい材料を使用すれば、そうした審美性の低下を防ぐことが可能となります。

役割②人工歯とインプラント体を連結する

人工歯である上部構造とインプラント体の連結は、アバットメントが担う最も重要な役割です。上部構造とインプラント体の間にアバットメントが介在することで、高さの微調整が可能となります。アバットメントがインプラント体と一体となっているワンピースタイプだと、上部構造が破損した際に、インプラント体まで大きなダメージを負うことがありますが、ツーピースタイプならそうしたリスクを最小限に抑えられます。

役割➂上部構造の傾きを補正する

患者さんの顎の骨の状態によっては、チタン製のネジであるインプラント体を真っすぐ埋め込めないことがあります。インプラント体に角度をつけて埋入することになるため、そのままの状態では上部構造も傾斜してしまいます。そんな時に有用なのがアバットメントです。アバットメントの形態を調整すれば、上部構造の傾きを補正することができます。その結果、審美性も機能性も正常な仕上がりが期待できるでしょう。

役割④噛み合わせの高さを調整する

上部構造の高さは、インプラント体だけではなく、その他の歯にも大きな影響を与えます。例えば、上部構造の噛み合わせが高すぎる場合は、インプラント体に過剰な負担がかかり、顎骨との結合が失われてしまうことがあるのです。その前に上部構造が欠けたり、外れたりすることもあります。逆に、上部構造の噛み合わせが低すぎると、周りの歯に大きな負担がかかることになります。そうしたインプラントの噛み合わせは、アバットメントである程度、調整することが可能です。もちろん、アバットメントだけでなく、上部構造で噛み合わせの高さを調整することもできます。どちらで調整するかはケースによって変わってきます。

役割⑤インプラントの強度を高める

人工歯根と上部構造の間にアバットメントが介在することで、インプラントの強度を高めることができます。これはアバットメントがクッションのような役割を果たすからです。インプラント体とアバットメントが一体となっているワンピースタイプでは、そうした効果は期待できません。アバットメントの部分が破損した時点で、インプラント体も撤去しなければならなくなります。どちらかというとワンピースタイプの方が天然歯の構造に近いのですが、人工的な装置であるインプラントの場合は、歯を3つの部品に分けて装着した方が予後も良くなりやすいのです。

アバットメントを装着するタイミング

人工歯と人工歯根の連結装置ともいえるアバットメントは、インプラントの2回法における2回目の手術で装着することになります。

1回目の手術では、歯茎をメスで切開し、顎の骨にドリルで穴を開けて人工歯根であるインプラント体を埋め込みます。手術の最後には傷口を縫合して、3~6ヵ月程度、待機します。この期間にチタン製の人工歯根と顎の骨が結合する「オッセオインテグレーション」が起こるのです。

オッセオインテグレーションが正常に起こったことを確認したら、2回目の手術で改めて歯茎を切開して、インプラント体の上にヒーリングアバットメントを装着します。これはあくまで仮のアバットメントで、歯茎の状態が落ち着いてきたら、最終的なアバットメントを装着することになります。

アバットメントの装着で起こるトラブル

アバットメントは、インプラント体と上部構造をつなぐ部品ですが、その装着によってトラブルが起こることもあります。一般的には、以下の3つのトラブルが考えられます。

トラブル➀噛み合わせが悪くなる

アバットメントの装着に不具合があると、噛み合わせが悪くなる場合があります。そのためアバットメントの装着は適切に行う必要があるのです。噛み合わせが悪い状態は、上部構造やアバットメント、インプラント体に過剰な圧力がかかるため、早期に改善しなければなりません。ですからアバットメントと上部構造の装着が完了したとしても、噛み合わせの不快感などの症状が現れた場合は、早急に主治医へ相談しましょう。多くのケースでは、アバットメントや上部構造を調整することで、不具合を取り除けます。

トラブル②痛みが生じる

アバットメントの装着後に痛みを感じる場合は注意が必要です。
装置のどこかに何らかの異常があって、顎の骨にダメージが及んでいる可能性が高いからです。多くのケースでは、アバットメントの緩みが原因となって痛みが生じています。アバットメントが緩んでいると、噛み合わせが悪くなって人工歯根や顎の骨に大きな負担がかかるからです。その状態で噛み続けていると、上部構造やインプラント体が壊れたり、顎の骨に炎症が起こったりします。ちなみに、アバットメントの緩みは専用の器具を使うことで容易に改善できます。

トラブル➂インプラント体の脱落が起こる

アバットメント装着後に起こる最も深刻なトラブルは、インプラント体の脱落です。
顎の骨に埋入したチタン製の人工歯根が抜け落ちる現象で、インプラント治療そのものが失敗に終わったことを意味します。こうしたトラブルは、アバットメントの緩みや破損などが原因となりやすいです。やはり、連結装置であるアバットメントに何らかの異常が生じると、それが上部構造や人工歯根へと波及していってしまうのです。インプラント治療におけるアバットメントは、それくらい重要な部品であるということを知っておいてください。

まとめ

今回は、インプラント治療で使用するアバットメントという部品の種類や役割、装着のタイミングなどを解説しました。アバットメントは、上部構造とインプラント体とをつなぐ連結装置で、それらを守る役割も果たしています。本文でも解説した通り、アバットメントに不具合が生じると、それが人工歯根や顎の骨にまで深刻な悪影響を及ぼしかねないため、十分な注意が必要といえます。

これからインプラント治療を受ける人はもちろん、すでに治療を終えている人も、アバットメントの重要性についてはしっかり理解しておくようにしてください。インプラント治療後に上部構造やアバットメントの不具合が生じたら、できるだけ早く主治医に相談することが大切です。当然ですが定期的なメンテナンスも必ず受けるようにしてください。

インプラントと差し歯の違いとは?各々のメリット・デメリット・治療の流れも解説

人工歯を被せる治療法には、インプラントと差し歯があります。この2つは混同されやすいですが、実際はまったく異なる治療法と言っても間違いではありません。
ここではそんなインプラントと差し歯の違いやそれぞれのメリット・デメリット、治療の流れなどを詳しく解説します。

インプラント治療と差し歯治療

インプラント治療とは

インプラント治療とは、何らかの理由で失った歯を歯根から再生する治療方法です。歯が抜けた部分に、フィクスチャーと呼ばれるチタン製の人工歯根を埋め込みます。最後は上部構造と呼ばれる人工歯を装着することから、天然歯そっくりに仕上げることが可能です。

差し歯治療とは

差し歯治療は、天然の歯に被せ物やクラウンなどとも呼ばれる人工歯を装着する治療方法です。インプラント治療とは異なり、最低でも天然の歯根が残っていなければなりません。つまり、天然の歯根に差し込んで装着することから、差し歯と呼ばれるようになったのです。差し歯の素材は、レジンやセラミック、金属など、いろいろなものが用いられます。

インプラントと差し歯の違い

違い①費用

費用面においては、インプラントと差し歯で大きな違いが見られます。そもそもインプラントには保険が適用されず、自由診療となりますのでその点はご注意ください。一方、差し歯には保険適用されるため、費用を比較的安く抑えられるのです。それぞれの費用相場は以下の通りです。

インプラントの費用相場

インプラント治療は、1本あたり300,000~500,000円程度が一般的な費用です。これは世界的にもメジャーなインプラントシステムの費用なので、マイナーなインプラントを選んだ場合はもう少し安くなることがあります。ただし、費用の安いインプラントは、実績が乏しく、安全性や確実性が保証されていないことから、広く推奨できるものではありません。

差し歯の費用相場

差し歯治療を保険適用で受けた場合は、1本あたり3,000~8,000円程度の負担にとどまります。これは保険の3割負担を想定した場合に患者さんが実際に支払う金額です。差し歯で自由診療を選択した場合は、1本あたり50,000~200,000円程度の費用がかかります。費用相場に大きな幅があるのは、人工歯の素材で値段が大きく変わるからです。

【関連記事】
差し歯の特徴や費用:保険適用と保険適用外に分けて解説
インプラント治療はいくら?1本当たりの費用相場や高額な理由等を解説

違い②治療期間

インプラントには、人工歯根(インプラント体)を顎の骨に埋め込む外科手術を伴うため、治療期間が比較的長くなっています。標準的なインプラント治療を想定した場合は、3~6ヵ月程度の期間を要します。不足している骨を補う骨造成などを伴う場合は、全体で1年程度の期間を要することも珍しくありません。一方、差し歯治療は、1~2ヵ月で終わるのが一般的です。もともと天然の歯根が残っている差し歯治療は、人工歯を被せるだけなので、それほど長い期間がかからないのです。

【関連記事】インプラントの治療期間は平均どれくらい?治療の流れ等も解説

違い③寿命

寿命という観点では、差し歯よりもインプラントの方が優れています。ただし、自由診療で装着した差し歯の場合は、インプラントの寿命と大差はないことでしょう。それぞれの装置の寿命の目安いは以下の通りです。

  • インプラント:10~15年以上
  • 差し歯(保険):6~8年程度
  • 差し歯(自費):10~15年程度

インプラントに関しては、治療後のメンテナンスとセルフケアをしっかりと継続させていけば、15年以上使い続けることも難しくはありません。実際、過去には40年程度、インプラントを使い続けた症例があるのです。

【関連記事】
インプラントの寿命はどれくらい?縮める原因や延ばす対策等を解説
インプラントの寿命がきたらどうする?平均寿命やそれを短くする原因等も解説

違い④メンテナンス

インプラントは、メンテナンスが必須の治療法です。治療後のメンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎にかかったり、装置が故障したりするため十分な注意が必要といえます。差し歯は、天然の歯根に人工歯を被せるシンプルな治療法なので、インプラントほど、きめの細かいケアやメンテナンスは必要ありません。

【関連記事】
インプラントのメンテナンスの費用相場・寿命・必要な理由等を解説
インプラントのメンテナンス方法:歯科医院とセルフケアに分けて解説

違い⑤見た目

インプラントと差し歯の見た目は、人工歯の素材によって変わります。インプラントではほとんどのケースでジルコニアやセラミックを用いることから、見た目は天然歯そっくりです。保険適用の差し歯では、レジンや金属などを用いるため、見た目はインプラントに劣ります。自由診療の場合は、インプラントと同じような素材を使用できるので、見た目に大きな違いはないといえるでしょう。

インプラントのメリット・デメリット

インプラント治療には、次に挙げるようなメリットとデメリットを伴います。

メリット
  • 見た目が自然で美しい
  • 天然歯のようにしっかり噛める
  • 周りの歯を削る必要がない

インプラントは、失った歯を歯根から再生できる治療法です。そのため、歯根のない入れ歯やブリッジよりも見た目が自然で美しいです。噛み心地も天然歯に近いといえるでしょう。周りの歯を削ったり、残った歯に大きな負担をかけたりするようなこともありません。

デメリット
  • 治療にかかる費用が高い
  • 治療にかかる期間が長い
  • 外科手術が必要
  • メンテナンスを怠ると装置の寿命が縮まる

インプラント治療には、チタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込む外科手術が必須です。そのため、費用が高く、治療期間も長くなるというデメリットを伴うのです。また、インプラントは歯根から歯冠まですべてが人工物で構成されていることから、治療後の定期的なメンテナンスを欠かせないというデメリットも伴います。

【関連記事】インプラントのメリットとデメリットとは?それぞれ解説

差し歯のメリット・デメリット

差し歯治療には、次に挙げるようなメリットとデメリットを伴います。

メリット
  • 治療期間が比較的短い
  • 治療費が安い
  • 外科手術が不要

差し歯治療にかかる期間は、短ければ2~3週間、長くても1~2ヵ月程度となっています。保険診療を選択すれば、数千円の負担で差し歯を作れます。差し歯治療では、天然歯の歯根が残っていることが前提であることから、人工歯根を埋め込む外科手術も不要です。

デメリット
  • 保険の差し歯は見た目が良くない
  • 自費の差し歯は費用が高い

差し歯は、保険適用を選択した場合にデメリットが目立つようになります。なぜなら保険の差し歯では、主に歯科用プラスチックであるレジンや銀色の金銀パラジウム合金を使うことになるからです。これらは自由診療で使用できるセラミックより審美性が低くなっています。もちろん、自由診療を選択することで審美面のデメリットは解消できますが、その場合は費用が高くなってしまいます。素材によっては差し歯1本あたり200,000円程度の費用がかかる場合もあるのです。

インプラント治療と差し歯治療の流れ

インプラント治療と差し歯治療は、治療の流れも大きく異なります。それぞれの治療の流れは以下の通りです。

インプラント治療の流れ

  1. カウンセリング
  2. 検査・診断
  3. 前処置・事前治療
  4. 人工歯根の埋入手術(1次手術)
  5. 治癒期間
  6. アバットメントの装着(2次手術)
  7. 人工歯(上部構造)の装着
  8. メンテナンス

インプラントでは、施術する部位の周囲に虫歯や歯周病などの異常が見つかった場合、先にそれらの治療を行うことがあります。これが上記の前処置・事前治療に該当します。骨が足りない場合の骨造成もこれに含まれます。1回目の外科手術では人工歯根であるフィクスチャーを埋め込み、3~6ヵ月の間、顎骨と結合するのを待ちます。2回目の外科手術では、上部構造の土台となるアバットメントを装着します。最後は人工歯を装着して治療は終了です。

差し歯治療の流れ

  1. 虫歯になっている歯質を削る
  2. 歯の神経を抜いて根管内を無菌化する
  3. 差し歯の土台を作る
  4. 差し歯を装着する

差し歯の治療では、はじめに必ず虫歯菌に侵された歯質を削ります。歯の神経まで感染が広がっていない場合は、そのまま差し歯の製作・装着へと進むことができます。歯の神経まで感染が広がっているケースでは、抜髄(ばつずい)と根管治療が必要となります。根管治療が終わったら、差し歯を装着して終わりです。

まとめ

今回は、インプラントと差し歯の違いについて解説しました。インプラントは、歯を丸ごと1本失った症例が対象となる治療法なので、天然歯の歯根が残っている歯が対象となる差し歯とは根本的に異なります。本文でも比較したように、費用、治療期間、寿命、メンテナンス、見た目という5つの観点からも大きな違いが見られる治療法なので、その点は正しく理解しておく必要があります。ごく稀にではありますが、インプラントと差し歯のどちらにすべきか迷うケースも存在しています。そうしたケースでは、それぞれの治療実績が豊富な歯科医師に相談することが大切です。

インプラントのオールオン4と総入れ歯では費用・寿命はどう違う?各々のメリット・デメリット等も解説

インプラントは、すべての歯を失った症例にも適応することができますが、人工歯根を埋め込む本数が多くなるというデメリットを伴います。具体的には、片側の顎だけでも8~14本の人工歯根を埋め込まなければならず、経済面はもちろんのこと、心身への負担も相応に大きくなります。

そうした通常のインプラントの欠点を解消できる方法が「オールオン4」です。ここではオールオン4の特徴やメリット・デメリットを、総入れ歯と比較しながら詳しく解説をします。

インプラントのオールオン4とは

オールオン4とは、4本のインプラント体(人工歯根)を使用して、総入れ歯のような形をした上部構造を装着する治療法です。人工歯根の埋入本数はケースによって少し変動することがあるため、厳密には4~6本のインプラント体で上部構造を支えます。すべての歯を失った場合の通常のインプラント治療と比較すると、人工歯根の埋入本数を極端に少なくすることが可能です。その結果、患者さんの心身および経済面の負担を大きく減らせるでしょう。

オールオン4のメリット・デメリット

オールオン4は、保険診療の総入れ歯と比較すると、以下のメリット・デメリットが考えられます。

オールオン4のメリット
  • 天然歯に近い咬合力を獲得できる
  • 顎の骨が痩せにくい
  • 装置がズレたり、外れたりしない
  • 見た目が自然で美しい
  • 装置が長持ちしやすい
  • 口元や顔貌の印象が若くなる

オールオン4では、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋入することから、硬い食べ物でもしっかり噛めるようになります。噛んだ時の力が顎に伝わり、骨も健康に保たれることが期待されます。
固定式の装置であるオールオン4は、食事や会話の際にズレたり、外れたりすることもありません。また、総入れ歯と比較すると装置が小型であるため、見た目が自然で美しく、若々しい印象を与えます。

オールオン4のデメリット
  • 治療期間が長い
  • 外科手術が必須となる
  • 保険が適用されず、費用が高い

保険診療の総入れ歯は1~2ヵ月で治療が完了しますが、オールオン4の場合は外科手術が必要となるため、治療期間は半年程度に及びます。また、保険が適用されないことから、総入れ歯よりも費用は高くなります。

【関連記事】オールオン4のメリット・デメリット:総入れ歯やインプラントと比較して解説

総入れ歯とは

総入れ歯とは、すべての歯を失った症例に適応される入れ歯です。おそらく、皆さんが「入れ歯」と聞いて頭にイメージする装置が総入れ歯です。義歯床(ぎししょう)というレジンで作られた土台の部分と人工歯で構成されており、すべての歯がきれいに並んだ状態で装着できます。部分入れ歯と比較すると装置が大きくなりますが、設計がシンプルで取り扱いやすいというメリットもあります。

総入れ歯のメリット・デメリット

総入れ歯は、インプラントのオールオン4と比較すると、次に挙げるようなメリット・デメリットを伴います。

総入れ歯のメリット
  • 保険が適用されて費用が安い
  • 外科手術が必要ない
  • 治療が早く終わる

総入れ歯は、保険が適用される代表的な装置です。1~3割負担で装置を作れることから、治療費が安く、経済面におけるメリットが得られやすい治療法といえるでしょう。また、総入れ歯ではオールオン4で行うような外科手術が不要となっているため、心身への負担を軽減できます。治療期間も自ずと短くなります。

総入れ歯のデメリット
  • 見た目があまり良くない
  • 咬合力の再現性は高くはない
  • 噛んだ時にズレたり、外れたりする
  • 装置の寿命が比較的短い
  • 装着する手間がかかる

総入れ歯を装着してみてまず感じやすいのが装置の違和感です。総入れ歯は、お口の粘膜に吸着させて固定するため、装置が大きくなる傾向にあるからです。この点はオールオン4のスリムな上部構造との大きな違いといえるでしょう。また、総入れ歯はオールオン4のような固定式ではなく着脱式なので、噛む力の再現性はあまり高くありません。噛んだ時にズレたり、外れたりすることもあります。総入れ歯は装置の寿命が比較的短いというデメリットも伴います。

オールオン4と総入れ歯の違い

ここからは、オールオン4と総入れ歯を「費用」と「寿命」という観点から比較していきます。

違い①費用

インプラント治療の一種であるオールオン4と総入れ歯では、費用面に決定的な違いが見られます。

まず、オールオン4に関してですが、保険が適用されないことから、治療にかかった費用は全額自己負担となります。全国的な相場としては片側の顎で2,000,000~4,000,000円程度かかるのがオールオン4です。保険が適用されない、手術が必要、特別な材料を使用する、専門的な知識・技術・設備が必須である、という多くの理由から、治療費が高額になっています。

一方、保険が適用される総入れ歯は、片側の顎で5,000~15,000円程度で作れます。保険の総入れ歯は義歯床も人工歯も歯科用プラスチックであるレジンで作られているため、このような安価で作成できるのです。ただし、総入れ歯は寿命が短く、経年的に劣化が起こりやすいため、数ヵ月ごとの調整や数年ごとの作り直しが必要となります。その点も踏まえると、総入れ歯がオールオン4よりも極端に安いというわけではないことがわかります。

【関連記事】オールオン4 の治療費:相場や費用が抑えられる理由等を解説

違い②寿命

オールオン4と総入れ歯には、寿命という面でも大きな違いが見られます。顎の骨に人工歯根を埋め込むオールオン4の寿命は、標準的なインプラントと大差はなく、10~15年程度、持つものと考えられています。もちろん、治療後のケアとメンテナンスをしっかり継続すれば一生涯使い続けることも難しくはありません。

一方、保険診療で作った総入れ歯の寿命は、一般的に3~4年程度といわれています。総入れ歯はお口の中に装着するだけの装置なので、年月が経過するとともに合わなくなってくるのです。それはお口と装置の両方に変化が見られるからです。そういう意味でまったく同じ症例であっても、オールオン4と総入れ歯とでは、装置の寿命に大きな違いが表れますので、その点にはご注意ください。

オールオン4と総入れ歯のケア

オールオン4は固定式で、総入れ歯は着脱式の装置であることから、ケアの方法にも違いが見られます。

ケア➀オールオン4

オールオン4は、少し特殊な形をしている装置ですので、毎食後10~15分程度かけてしっかりケアするようにしましょう。その際、硬い歯ブラシを使うと人工歯を傷つける恐れがあるため、ふつうかやわらかめの歯ブラシで、やさしくブラッシングするよう心がけてください。

また、オールオン4は歯科医院でのメンテナンス・クリーニングが必須ですので、3~4ヵ月に1回は定期検診を受けるようにしてください。治療から2年以上経過してオールオン4の状態が安定している場合、定期検診の頻度を半年に1回程度にしても問題ありません。

ケア②総入れ歯

総入れ歯は、必ず装置をお口から外した状態でケアするようにしましょう。使用するのは水道水と入れ歯専用の歯ブラシ(義歯ブラシ)です。熱湯で煮沸消毒すると、総入れ歯が変形してしまうため、絶対に避けてください。夜眠る前に「入れ歯洗浄剤」を使うことで、ブラッシングでは落としきれない汚れを化学的に除去できます。

入れ歯は、一見するとあまり汚れていないように見えるかもしれませんが、お口に入れた時点で細菌が付着しています。歯と同じように歯垢や歯石も堆積することから、天然歯と同様、あるいはそれ以上のきめ細やかなケアが必須となります。不潔な入れ歯を使い続けると、義歯性口内炎や口腔カンジダ症といったお口の粘膜の病気を引き起こしてしまうため、十分にご注意ください。

まとめ

今回は、オールオン4と総入れ歯の違いについて、費用や寿命の観点から比較しました。両者は似たような装置に見えますが、さまざまな点で違いがあります。どちらにしようか迷われている方は、ぜひ当院までお気軽にご相談ください。費用や寿命以外の面についても、両者の違いをわかりやすくご説明します。当院はオールオン4と総入れ歯の両方に対応している歯科医院ですので、患者さんに最適な治療法をご提案いたします。

インプラント・ブリッジ・入れ歯の違いとは?おすすめの人も併せて解説

歯科治療といえば、虫歯になった歯を削ってコンポジットレジンを詰めたり、詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)などを装着したり治療が思い浮かびますが、もうひとつ段階が進むと「欠損補綴(けっそんほてつ)」が必要となります。

欠損補綴とは、虫歯や歯周病などによって歯を失った場合に必要となる治療で、選択肢としては現状、インプラント・ブリッジ・入れ歯の3種類が存在しています。これからそんな欠損補綴を受ける人は、どの治療法にしたら良いのか真剣に悩まれていることかと思いますので、治療選択の指針となるような情報を提供できたら幸いです。

インプラントとブリッジと入れ歯

冒頭でも述べたように、失った歯の治療法としては、インプラント・ブリッジ・入れ歯の3つが挙げられます。ここではまず各治療法の特徴をかんたんにご説明します。

インプラントとは

インプラントは、顎の骨にインプラント体と呼ばれるチタン製の人工歯根を埋め込む治療法で、失った歯の治療として急速に人気が高まっています。現状、失った歯を歯根から回復できるのはインプラントのみです。人工歯は人工歯根に固定されるため、安定性が極めて高い装置といえます。インプラントは、歯を1本失った症例からすべての歯を失った症例まで、幅広く適応できます。外科手術を伴う点に不安を感じる方が多いのですが、全身の病気やケガで受ける手術室でのオペとは異なり、心身への負担はそれほど大きくはありません。

ブリッジとは

ブリッジもインプラントと同じ固定式の装置です。失った歯の両隣の歯を削って支台歯(しだいし)とします。支台歯はインプラントにおける人工歯根のような存在で、人工歯を固定するための土台となります。ブリッジは治療の性質上、適応範囲が狭くなっています。基本的には歯を1~2本失った症例に適応されます。喪失歯の本数が増えてくると、ブリッジのたわみも大きくなることから、耐久性や安定性に難が生じます。そのためブリッジでは多くても3本程度の欠損症例までが適応範囲となっています。歯がない部分が連続していない場合は、適応の幅がもう少し広がります。

入れ歯とは

入れ歯は昔からある補綴治療で、部分入れ歯と総入れ歯の2つに大別できます。部分入れ歯は文字通り歯列内の欠損を部分的に補うもので、歯を1本失った症例から適応可能です。すべての歯を失った場合は、必然的に総入れ歯を選択することになります。入れ歯は義歯(ぎし)と呼ばれることもある装置で、保険が適用されるのですが、着脱式であることから見た目にやや難があると言わざるを得ません。とくに部分入れ歯はクラスプという金属製のフックが付随するため、見た目があまり良くないのです。装着時の違和感も他の治療より大きいといえるでしょう。

インプラント・ブリッジ・入れ歯の違い

ここからは、3種類の補綴治療の違いを7つの視点から比較していきたいと思います。インプラント・ブリッジ・入れ歯のどれにしようか迷っている人は、是非とも参考にしてみてください。

違い①治療方法

  • インプラント:外科手術が必須で、顎の骨や全身の健康状態が重要となる
  • ブリッジ:失った歯の両隣の歯を削って人工歯を装着する
  • 入れ歯:残った歯にフックを引っ掛ける方法で、手術や歯を削る処置は不要

この3つの治療法は、治療方法に大きな違いが見られます。まず、インプラントは顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込むため、外科手術が必須となっています。これはブリッジ・入れ歯にはない特徴であり、失った歯を歯根から回復できる点も従来法との大きな違いといえます。ブリッジも固定式の装置ですが外科手術は不要で、残った歯を削って土台とします。入れ歯は唯一、着脱式の装置で残った歯に大きく手を加えたり、外科手術を行ったりすることはありません。歯型取りをして、今現在の歯列の状態に合った装置を作るのが入れ歯の治療法としての特徴です。

違い②審美性

  • インプラント:見た目が自然で美しい
  • ブリッジ:美しいけれどもインプラントと比較するとやや不自然
  • 入れ歯:色や形、構造が特徴的で、見た目はあまり良くない

審美性は、間違いなくインプラントが最も美しいです。インプラントには人工歯根があることから、本物の歯と同じような人工歯(上部構造)だけが口腔内に露出しているからです。ブリッジも基本的には人工歯だけで構成されていますが、少なくとも3つ以上の歯が連結されていることもあり、インプラントよりは審美性に劣ります。入れ歯はそもそも金属製のクラスプやプラスチック製の義歯床(ぎししょう)などが付随するため、目立ちやすく、違和感が生じやすい装置と言わざるを得ないでしょう。

違い③機能性

  • インプラント:本物の歯と同じように噛めて、発音障害も現れにくい
  • ブリッジ:噛む機能は本物の歯に近いけれどインプラントには劣る
  • 入れ歯:噛む、発音する機能に障害が現れやすい

インプラントの最大のメリットは、本物の歯と同じようにしっかり噛めることです。顎の骨にしっかりと根差した人工歯根があるため、硬いものでも不自由なく咀嚼できます。インプラントは構造まで天然歯に酷似していることから、入れ歯のような発音障害が現れることはまずないでしょう。ブリッジは、インプラントと入れ歯の中間的な機能性を持った装置といえます。

違い④健康性

  • インプラント:顎の骨は痩せにくいが歯周病のリスクは高い
  • ブリッジ:顎の骨は痩せやすく、支台歯の寿命は大きく縮まる
  • 入れ歯:顎の骨がやせやすく、残った歯に大きな負担がかかる

歯を失ったことで避けられないのは「骨の吸収」です。欠損部に噛んだ時の力が加わらなくなることから、時間の経過とともに顎骨が痩せていってしまうのです。人工歯根があるインプラントはそんな骨吸収が起こりにくく、従来法は起こりやすいという違いがあります。また、ブリッジ・入れ歯は、残った歯を大きく削ったり、噛んだ時の力を負担してもらったりしないといけないため、残存歯の寿命を縮める原因にもなりかねません。

違い⑤寿命

  • インプラント:10~15年
  • ブリッジ:7~8年程度
  • 入れ歯:4~5年

寿命に関しても、インプラントが圧倒的に優れているといえます。多くのインプラントメーカーは10年保証を付与していますが、それは少なくともインプラントが10年持つことが予想されるからです。治療後のセルフケアとメンテナンスを適切に継続させれば、インプラントの寿命を15年、20年と延ばすことも難しくはありません。一方、保険診療で作った入れ歯は4~5年、ブリッジは7~8年程度で寿命を迎えるといわれています。

違い⑥治療期間

  • インプラント:6~12ヵ月程度
  • ブリッジ:1~2ヵ月程度
  • 入れ歯:1~3ヵ月程度

保険診療のブリッジや入れ歯は、比較的短い期間で治療が完了します。失った歯の数や装置の設計、お口の中の状態によっても変わりますが、一般的には1~3ヵ月程度で治療が終わることでしょう。インプラント治療には、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込む処置を伴うことから、2~3ヵ月で終わることはまずありません。どのようなケースでも治療全体では半年程度かかります。骨造成を伴ったり、たくさんのインプラントを埋め込んだりするようなケースでは、治療期間が1年程度に及ぶこともあります。

違い⑦費用

  • インプラント:300,000~500,000円
  • ブリッジ:10,000~20,000円(保険)
  • 入れ歯:8,000~20,000円(保険)

治療にかかる費用も保険診療のブリッジ・入れ歯と自費診療のインプラントでは大きく異なります。失った歯の治療方法としてブリッジを選択した場合は、高くても20,000円くらいです。入れ歯には、部分入れ歯と総入れ歯があるため、費用の幅も比較的広く放っていますがブリッジと同様、高くても20,000円程度で作れます。インプラントの場合は、保険が適用されず、使用する材料が高価であったり、高度な技術が必要であったりするため、1本あたり300,000~500,000円程度の費用がかかります。

インプラントがおすすめの人

インプラントがおすすめな人は、次に挙げるようなケースに当てはまる場合です。

  • 残った天然歯を犠牲にしたくない
  • 硬い食べ物もしっかり噛みたい
  • 審美性の高い人工歯がほしい
  • お口の健康を維持しやすい治療法がいい
  • 寿命が長い装置を希望している
  • 残存歯に負担をかけたくない
  • 装着時の違和感、異物感を少なくしたい

インプラントは、人工歯根があることから、天然歯のようにしっかり噛めます。それだけではなく、見た目も自然で美しいです。さらには、顎の骨も痩せにくいため、お口全体の健康維持・増進に寄与する治療といえます。一般的な義歯(入れ歯)と比べると、治療期間が長くはなりますが、そのデメリットを補って余りあるほどのメリットが得られることでしょう。

ブリッジがおすすめの人

ブリッジがおすすめな人は、次に挙げるようなケースに当てはまる場合です。

  • 保険適用される治療法を希望している
  • 外科手術を受けたくない
  • 寿命が短すぎる装置は嫌だ
  • 治療期間が短い方法がいい
  • 審美性が低い入れ歯は避けたい

ブリッジには、残った歯を少なくとも2本は大きく削らなければなりません。その代わり一般的な義歯(入れ歯)よりも審美性や安定性、機能性が高い人工歯が手に入ります。寿命に関しても入れ歯より長くなるのが一般的です。保険が適用されるため費用も安く、経済的負担を最小限に抑えられる治療といえます。

入れ歯がおすすめの人

入れ歯がおすすめな人は、次に挙げるようなケースに当てはまる場合です。

  • 保険内で治療を受けたい
  • 外科手術を伴わない治療法がいい
  • 短期間で治療を終えたい
  • たくさんの歯を失っている

義歯(入れ歯)には、保険が適用されるため、費用を安く抑えられます。審美性や耐久性、寿命という面ではブリッジ・インプラントに劣りますが、手軽に作れるというメリットは大きな魅力といえるでしょう。また、入れ歯にはたくさんの歯を失っているケースでも問題なく適応できるというメリットもあります。

まとめ

今回は、失った歯の治療法であるインプラント・ブリッジ・入れ歯の違いについて解説しました。インプラントは、先進医療の一種ともいえる治療法なので、言うまでもなくたくさんのメリットを伴います。だからといってインプラントが万能な治療法であるわけではないのです。従来法のブリッジ・入れ歯にも、それぞれに異なるメリットがあることから、ご自身に合った治療法を選ぶことが重要となります。今現在、失った歯の治療法で悩んでいる方は、このコラムを参考していただけたら幸いです。

インプラント治療中の仮歯はいつから入れる?期間・役割・注意点等も解説

一般的な被せ物治療では、仮歯の期間が存在しています。仮歯は、最終的な被せ物ほどきれいではなく、装着感もあまり良くないのですが、いろいろな役割を担っていることから軽視するわけにはいきません。それはインプラント治療も同様です。今回はそんなインプラント治療の仮歯の期間や役割、注意点などを詳しく解説していきます。
※仮歯の費用:3,300円(税込)

インプラント治療と仮歯

インプラント治療には、顎にチタン製の人工歯根を埋め込む外科手術を伴います。インプラント体もしくはフィクスチャーと呼ばれる人工歯根は、インプラント治療の“かなめ”ともいえるパーツです。その人工歯根が顎骨と結合するまでの数ヵ月間、装着するのが仮歯という人工歯です。いわゆる治癒期間を人工歯がない状態で過ごすことは、さまざまなデメリットを伴うことから、仮歯を装着する必要性が出てくるのです。

仮歯を入れる期間

インプラント治療において仮歯を入れる期間は、ケースによって変わってきます。一般的には、人工歯根であるインプラント体と顎の骨が結合するまで仮歯の状態で過ごします。この期間は、長ければ半年程度に及ぶ場合もありますが、その点は歯科医院の方針や患者さんのお口の状態、インプラント体を埋入した位置によって変動するため、気になる方は歯医者さんに質問してみましょう。

仮歯を入れるのはいつから?

インプラント治療で仮歯を入れるタイミングは、人工歯根にあたるインプラント体を顎の骨に埋め込んだ後です。といってもインプラント手術直後に仮歯を入れるのではなく、前歯や奥歯に出来た傷口の状態が良くなるまでは安静に過ごすことになります。ですので基本的には、傷口から糸を抜くまでは、仮歯を入れることはありません。

奥歯に関しては、そもそも仮歯を入れないでインプラント治療を進めていくこともありますので、その点は事前にしっかりと確認しておきましょう。ちなみに、インプラント治療の術式によっては、手術と同時に仮歯を入れることもできます。顎の骨の状態が良好であったり、かみ合わせが正常であったりする場合は、その日に仮歯を入れることも可能ですが、現状は例外的なケースといえるでしょう。

インプラント治療中に入れる仮歯の役割

インプラント治療の仮歯には、以下に挙げる6つの役割があります。

役割➀見た目を保つ

インプラントは、歯がない部位に人工歯根を埋め込む治療です。最終的な人工歯を装着するまでは、歯列内に欠損がある状態となるため、見た目があまり良くありません。そこで仮歯を装着して、自然な見た目を保つのです。とくに前歯の治療の場合は、仮歯が必須といえるくらい、審美面において重要な役割を果たします。前歯を3~6ヵ月も失った状態で過ごすことは、多くの方にとって苦痛であることは間違いありません。

役割②かみ合わせを維持して歯並びの歪みを防ぐ

歯というのは、お互いがお互いを支え合って機能しています。その中の1本でもなくなると、かみ合わせが崩れて特定の部位にだけ大きな負担がかかるようになるのです。その結果、全体の歯並びに歪みが生じます。人工歯根と顎の骨が結合するまでの数ヵ月間であったとしても、そうした歯並びの変化は生じうるため、仮歯で防止する必要があるのです。

役割➂細菌などから患部を保護する

お口の中には無数の細菌や真菌が存在しています。その数は数千億に及ぶともいわれています。インプラント手術を行った後は、患部が外からの刺激を受けやすくなっており、感染リスクも上昇している点に注意が必要です。仮歯を装着することで患部を保護できれば、治癒期間における感染リスクを下げられます。

役割④発音しやすくなる

私たちの歯は、そしゃくだけでなく、発音機能にも大きな影響を与えています。何らかの理由で歯を失った経験がある方ならわかるかと思いますが、歯列内に欠損部があると、発音や滑舌が悪くなってしまうものです。仮歯で欠損部を埋めることができれば、治癒期間中の発音障害も防止できます。

役割⑤顎骨や歯茎の状態を安定させる

人工歯根が定着するまでの治癒期間を歯がない状態で過ごすと、顎骨や歯茎もそれに適応していきます。そうなると最終的な人工歯を入れにくくなってしまうことから、仮歯で歯茎や顎の骨の状態を安定化させる必要があるのです。とくに歯茎の状態は手術後から数ヵ月で大きく変化することが予想されるため、仮歯を装着して理想に近い形態へと誘導することは極めて重要となります。これはインプラント治療の仮歯が担っている役割としては、盲点になりやすいポイントといえるでしょう。

役割⑥食事がとりやすくなる

仮歯はあくまで仮の歯なので、最終的な人工歯のようにしっかり噛むことはできません。着脱式の入れ歯とも少し異なる役割を担っているため、過信するのは良くないのですが、そしゃく機能をサポートしてくれることに間違いはありません。数ヵ月に及ぶ治癒期間中も仮歯があることで、食事がとりやすくなることでしょう。仮歯の期間中は硬い食べ物や粘着性の高い食べ物は極力避けることが前提となりますが、お粥やスープばかり食べる必要はありません。仮歯以外の部分であればしっかり噛むことができますので、栄養のあるものをバランスよくとるようにしてください。

インプラント治療中に仮歯を入れた場合の注意点       

インプラント治療で入れる仮歯には、以下に挙げるような4つの注意点があります。

注意点①仮歯への刺激を避ける

仮歯は、歯科用プラスチックで作るのが一般的です。かんたんに取り外せるように、接着も弱くなっている点にご注意ください。硬い食べ物を噛むと仮歯が割れることがありますし、粘着性の高い食べ物は仮歯の脱離につながります。こうした食事における注意点は、しっかりと守る必要があります。また、歯磨きの際に強圧でブラッシングすることも仮歯の破損を招くことがあるため、その点もご注意ください。普段から仮歯には刺激を与えないよう配慮することが大切です。

注意点②仮歯が外れたり欠けたりしたら放置しない

仮歯は“仮の歯”ではありますが、上段で説明したような重要な役割を担っています。何かの拍子に外れたり、欠けたりした場合は放置せず、主治医に連絡しましょう。次の診療が近ければ、そのまま様子を見ることもありますが、基本的には仮歯を付け直したり、作り直したりしなければなりません。仮歯が外れた状態で放置すると、歯並びやかみ合わせが乱れたり、審美障害や発音障害などが現れたりします。

注意点③仮歯の歯磨きも怠らない

仮歯は、本物の人工歯より不安定で脆いため、かための歯ブラシでゴシゴシ磨くのは推奨できません。だからといって歯磨きを怠ると汚れがたまった歯周病などを引き起こしてしまいます。ですから、仮歯も適切な方法でやさしくていねいにブラッシングする必要があります。

注意点④仮歯を入れた状態で治療を中断しない

仮歯は最終的な人工歯の代用品でしかありません。1年も経過すれば、摩耗や変色が進み、場合によっては脱離する可能性が高まります。プラスチック製の仮歯は汚れがたまりやすいことから、歯周病リスクも高くなるため、その状態で放置することだけはやめましょう。顎の骨とインプラント体が結合したら、予定通り最終的な人工歯を付けることが必須といえます。

まとめ

このように、インプラント治療では仮歯を装着する期間が存在しています。一般的なケースでは、人工歯根であるインプラント体を顎の骨に埋め込み、傷口が安定したタイミングで仮歯を入れます。本物の人工歯を入れるまでには数ヵ月を要するため、仮歯で過ごす期間もそれなりに長くなる点に注意しなければなりません。

しかもインプラント治療の仮歯には、「見た目を良くする」「かみ合わせを維持する」「患部を保護する」「発音障害を防止する」「歯茎の状態を安定化させる」「食事をしやすくする」といった重要な役割があるのです。そんなインプラント治療の仮歯についてもっと詳しく知りたい、疑問に思っていることがある、という方はいつでもお気軽に当院までご相談ください。一つひとつのご質問にわかりやすくお答えします。

インプラントは年を取ったらどうなる?寿命を縮める原因と延ばす方法等を解説

インプラントは、失った天然歯の見た目や機能を忠実に再現できる装置ではありますが「年を取ったらどうなるのだろう」という疑問が生じます。インプラントといえども本物の歯ではないため、いつかは寿命が訪れます。一般的にインプラントの寿命は10年以上といわれていますが、治療後のケアの仕方によって大きく変わる点に注意しなければなりません。ここではそんなインプラント治療の寿命やそれを縮める原因、延ばす方法などをわかりやすく解説します。失った歯の治療法としてインプラントを考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。

インプラントの平均寿命

ひと言でインプラントといっても、その種類は100以上にも及び、それぞれで使用する材料や術式が変わります。そのためインプラントの寿命を一概に語ることは難しいのですが、冒頭でも述べたように一般的には10年前後は持つものと考えられています。そもそも最近のメジャーなインプラントには「10年保証」が付けられており、適切なケアを実施していれば少なくとも10年持つものと考えて間違いはないでしょう。

ちなみに、インプラントの平均寿命を決めているのは、顎の骨に埋め込むチタン製の人工歯根だけではありません。人工歯にあたる上部構造の損耗や故障もインプラントの寿命を大きく左右します。ですから、インプラントの寿命を延ばすためには、人工歯根に加えて、上部構造の状態にも常に気を配る必要があるのです。しかしそれは、定期的なメンテナンスを受けることでほぼ達成されることでしょう。

日本口腔インプラント学会が公表したアンケート結果によると、インプラント治療から20年以上経過した患者さんの約7割が長期的に問題なく使えていると回答しています。この結果を踏まえた上でも、やはりインプラントの平均寿命は10年以上あるものと考えられます。

入れ歯・ブリッジの平均寿命

天然歯を失った場合の治療法として、インプラント以外にも入れ歯やブリッジが挙げられます。どちらも保険が適用される治療法で、外科手術も不要であることから、とりあえず入れ歯・ブリッジを入れてみようと考える方も多いことでしょう。そこで気になるのが入れ歯やブリッジの平均寿命ですよね。入れ歯の平均寿命は3~4年程度といわれています。インプラントと比較すると、寿命が1/3にまで低下します。また、ブリッジの平均寿命は7~8年で、入れ歯よりはかなり長くなっているもののインプラントには敵いません。つまり、安く作ることができる入れ歯・ブリッジには、寿命が短いという大きなデメリットを伴うのです。

インプラントの寿命を縮める主な原因

ここからはインプラントの寿命を縮める原因について考えていきましょう。何がインプラントに悪影響を及ぼすのかを知れば、自ずと寿命を延ばす方法も見えてきます。

【原因①】インプラント周囲炎の発症

インプラントの寿命を迎えた人の多くは、感染症にかかっています。それは歯周病菌によって引き起こされる「インプラント周囲炎」という感染症です。インプラント治療に伴う感染は、インプラント手術の最中や直後に起こることもありますが、歯周病の一種であるインプラント周囲炎は、年を取った時に発症するケースが多いです。それはインプラントの周りに汚れがたまり、歯垢・歯石が形成されることで歯周病菌が繁殖するからです。つまり、手術を受けた後だけでなく、すべての治療が完了した後もセルフケア・プロフェッショナルケアを怠ってはいけないのです。

【原因②】料金設定の安さで歯科医院を選択

インプラントは高額な費用がかかる治療法なだけに、料金の安い歯科医院を探しがちです。日用品や一般的なサービスであれば、そのような考え方でも悪くないのですが、インプラントはれっきとした医療です。適切な治療結果を得るには、インプラント1本あたり300,000~500,000円程度の費用がどうしてもかかってしまうのです。それにも関わらずインプラント1本100,000円程度に料金設定している歯科医院は、何らかの理由があると言わざるを得ません。

例えば、品質の良くない材料を使っていたり、経験の少ない歯科医師が手術を担当したりするなどの理由から、格安でインプラント治療を行っている歯科医院も存在しています。そうした格安インプラントを選んでしまうと、結果的にはデメリットの方が大きくなることが多いため、十分にご注意ください。

【原因③】歯ぎしり・食いしばり

歯ぎしりや食いしばりでは、歯や顎に最大で100kg程度の力が加わるといわれています。眠っている間に起こる歯ぎしりは、長時間、継続することもあるため、その分だけ天然歯やインプラントにかかる負担も大きくなります。適切な方法で埋入したインプラントでもそのような過酷な状況では、あっという間に寿命が縮まっていくことでしょう。

インプラントの寿命を延ばす方法

続いては、インプラントの寿命を延ばす方法についてです。インプラントを長持ちさせたい、できれば一生涯使い続けたいという方は、次に挙げる方法を実践してみてください。

【方法①】定期的にメンテナンスを受ける

インプラント治療が終わったら、メンテナンスを定期的に受けましょう。インプラントのメンテナンスは、少なくとも1年に2回以上受けましょう。治療の後のメンテナンスを怠るとインプラントの異常に気付くことができません。歯周病や周りの歯の虫歯もインプラントの寿命を縮める要因となることから、できれば3~4ヵ月に1回くらいの頻度で定期検診を受けると良いです。ちなみに、インプラントに付随する保証は、定期的なメンテナンスを受けることが前提となっています。

【方法②】歯ぎしり・食いしばりの改善

インプラント治療前だけでなく、インプラント治療後にも歯ぎしり・食いしばりが見られる場合は、早期に改善する必要があります。歯ぎしり・食いしばりを自分でとり除くことが出来ない場合は、歯科医院で治療を受けましょう。歯科医院では、歯ぎしりを改善するためのスプリント療法などを実施しています。

【方法③】喫煙回数を減らす

タバコを吸う習慣がある方は、喫煙の回数をできるだけ減らすようにしてください。タバコはインプラント周囲炎の主なリスクとなっています。喫煙回数が多い人は、それだけでインプラントの寿命を縮めてしまうのです。インプラントの寿命を延ばすために喫煙回数を減らすことは必須として、可能であれば禁煙に取り組んでみてください。タバコはお口と全身の健康を脅かす厄介な嗜好品なので、早期にやめることが望ましいです。

インプラントが寿命を迎えた場合は再手術が可能

インプラントが寿命を迎えた場合は、いくつかの選択肢が用意されています。第一に挙げられるのは「再手術」です。顎の骨に大きな問題がなければ、再び人工歯根を埋め込む手術を行います。治療後のケアやメンテナンスの状況が良ければ、その後もまた10年以上インプラントを使い続けることも難しくありません。ただ、歯科医院での定期的なメンテナンスを受けておらず、顎の骨の状態が悪かった場合は、再び手術を行うことが不可能なケースもあります。そうしたケースでは、従来の治療法であるブリッジや入れ歯で対応する必要があります。その点も含めて、インプラント治療後のメンテナンスはしっかり行っていくに越したことはないのです。

まとめ

今回は、年を取ったらインプラントはどうなるのか、インプラントの寿命を縮める原因や延ばす方法について解説しました。インプラントの寿命は10年程度といわれていますが、しっかりとケアすれば年を取っても問題なく使い続けることが可能です。仮にインプラントが寿命を迎えたとしても、再手術という選択肢が残されていることも忘れないでください。

インプラントの寿命を延ばすだけでなく、再手術という選択肢を残すためにも、治療後のセルフケアと歯科医院のメンテナンス・プロフェッショナルは、しっかり両立させるようにしてください。そうすれば美しく、よく噛める人工歯根+人工歯をいつまでも使い続けることができます。それはあなたにとって極めて大きなメリットとなります。

10年後の前歯のインプラントはどんな状態?長持ちさせるコツ等を解説

インプラントは、比較的高額な費用がかかる治療法なので、可能な限り長持ちさせたいものです。
例えば、前歯のインプラント治療を行った場合、10年後にはどのような状態にあるのかは気になることかと思います。
ここではそんな10年後の前歯のインプラントの状態や長持ちさせるコツなどをわかりやすく解説します。

インプラントの寿命は10年前後

始めに、インプラントの平均的な寿命についてです。インプラントは、従来のブリッジ・入れ歯と比較すると寿命が長い装置として有名です。適切な方法で手術を行い、治療後のケアをしっかり行っていれば10年前後は持ちます。インプラントの全国的な寿命も10年前後といえるでしょう。

メーカーの保証期間も一般的に10年

標準的なインプラントには、メーカーによる保証期間が設けられています。5年保証や10年保証と呼ばれるもので、多くのメーカーのインプラントには後者が付随します。つまり、メーカーとしてもインプラントは少なくとも10年持つものと考えているのです。これはインプラントの寿命を考える上で、とてもわかりやすい指標となるかと思います。単純に比較することはあまり良くありませんが、家電の保証もそれぞれの製品の寿命に応じた期間を設定していますよね。つまり、製品やサービスの寿命が保証期間を大きく下回るケースは稀といえるのです。

メンテナンスを行えば10年以上持つ

上段でふれたインプラントの寿命は、あくまで目安です。適切なセルフケアと定期的なプロフェッショナルケアを継続していけば、インプラントを10年以上持たせることは難しくありません。インプラントの技術は年々進歩しており、長持ちさせやすくなっているのも事実です。ただし、年に2~3回のメンテナンスを怠ると話は大きく変わります。セルフケアでは取り除けない汚れや気付きにくい故障などを放置することになるため、寿命も徐々に縮まっていきます。ですので、そもそも適切な頻度でメンテナンスを受けていないと、トラブルが起きた際の保証も受けられなくなってしまいますので十分にご注意ください。

40年以上持つ場合もある

インプラント治療にはもうすでに半世紀以上の歴史があります。これまで数えきれないほどの人が失った歯をインプラントで補ってきましたが、その中には治療後からお亡くなりになるまで、40年以上使い続けたケースもあります。若い頃に装着した装置を一生涯使い続けることができるのは、他の治療法ではありえないですよね。インプラントならそれが可能なのです。

前歯のインプラント治療が難しい理由

今回のテーマである「前歯のインプラント」は、奥歯よりも難易度が高くなることが多いです。それは次に挙げる2つの理由からです。

理由①上あごの骨の厚さが一定以上必要のため

私たちのあごは、部位によって厚みが大きく異なります。奥歯の部分はとても分厚いのですが、前歯の部分は比較的薄いです。鏡でチェックするだけでもその違いはわかります。ですから、前歯のインプラント治療を行う前提として、まずは上あごの骨の厚さが一定以上必要となります。上あごの骨の厚みが足りていない場合は、骨を作ったり、人為的に厚みを出したりする外科処置で対応できる場合もありますが、そもそもインプラントが適応外となる可能性も否定できません。

理由②前の歯茎が年齢とともに痩せやすいため

前歯の部分の歯茎は、加齢によって痩せていきます。仮に上あごの骨の厚みが十分にあったとしても、歯茎の状態が悪い場合は、インプラント治療の仕上がりに大きな問題が出てきます。もちろん、歯茎が痩せているケースでも外科処置で改善できる場合もありますが、前歯のインプラント治療の難易度が上がることは間違いありません。

前歯のインプラントの寿命

前歯のインプラント治療は難しいという話を聞くと、奥歯よりも寿命が短くなるように思えますが、実際はそうではありません。前歯のインプラント治療は難易度が高いですが、適切な方法で実施をすれば奥歯のインプラントと同等の寿命が期待できます。つまり、インプラントの寿命というのは、治療した部分によって大きく変わるものではないのです。どちらかというと、治療後のセルフケアや定期的なメンテナンスが寿命を大きく左右します。適切なケアを行えば、前歯も奥歯もインプラントを長持ちさせることは難しくありません。

インプラントの寿命が10年持たない原因

ここまで「インプラントは少なくとも10年は持たせることができますよ」というお話をしてきましたが、10年未満で寿命を迎えるケースも実際に存在しています。それは次に挙げるような原因があるからです。

原因①インプラント周囲炎

インプラントの寿命が10年持たない主な原因は「インプラント周囲炎」です。インプラント周囲炎は歯周病の一種で、インプラントを支えている歯茎や歯槽骨(しそうこつ)に炎症が起こる病気です。インプラント周囲炎は、通常の歯周病よりも進行が早く、顎の骨の破壊がどんどん進んで行きます。その結果、チタン製の人工歯根と歯槽骨との結合が失われ、インプラントが寿命を迎えるのです。

インプラントは見た目も構造も天然歯に限りなく近い装置となっていますが、歯根の表面に歯根膜(しこんまく)が存在していない点を忘れてはいけません。歯根膜は歯や骨に栄養や酸素、免疫細胞を供給する重要な組織なので、それがないインプラントは、細菌感染症である歯周病への抵抗力が低くなっているのです。

原因②喫煙

喫煙もインプラントの寿命を縮めるリスクファクターとして有名です。タバコの煙は全身の健康を害するだけではなく、お口の中にも極めて大きなダメージを与えるのです。具体的には、タバコの煙に含まれるニコチンや一酸化炭素が歯茎および顎の骨への栄養・酸素・免疫細胞の供給を滞らせます。

上段でも説明した通り、インプラントは歯根膜がないことで免疫機能が弱くなっています。そこに追い打ちをかけるような形で喫煙すると、歯周組織への負担が許容範囲を超えてしまいます。しかもタバコには、歯茎の腫れを隠す「マスキング効果」が見られることから、インプラント周囲炎にかかったことに気づきにくいというデメリットも伴うのです。

原因③歯ぎしり・食いしばり

歯をギリギリとこすり合わせる「歯ぎしり」や、強く噛みしめる「食いしばり」の習慣がある人は、インプラントの寿命が10年持たないかもしれません。なぜなら、歯ぎしりや食いしばりは、インプラントの上部構造や人工歯根に多大な負担をかけるからです。上部構造のセラミックが欠ける程度のトラブルであれば、作り直しによって対処できますが、顎骨に炎症が生じたり、人工歯根との結合が失われたりするようなことになれば、致命的な影響が生じます。

原因④他の歯の不調

インプラントの寿命は、その他の歯の状態にも大きく左右されます。例えば、残った歯の状態が悪く、そしゃく機能の一端を担えなくなると、インプラントに大きな負担がかかるようになります。インプラントと噛み合う歯が高すぎる場合も人工歯根にダメージが及びやすくなります。

前歯のインプラントを長持ちさせるコツ

ここからは前歯のインプラントを長持ちさせる方法について考えていきましょう。以下に挙げる4つのコツを知っているだけでも、インプラントは長持ちしやすくなります。

コツ①定期的なメンテナンス

インプラント治療が終わった後は、少なくとも年に2回くらいの頻度でメンテナンスを受ける必要があります。メンテナンスでは、上部構造やアバットメント、人工歯根に何らかの異常が生じていないかをていねいに調べてもらえます。上部構造と人工歯根を連結する装置であるアバットメントの緩みは、深刻なトラブルに発展する可能性があるにもかかわらず、歯科医院でしか改善できません。そうしたトラブルを未然に防ぐためにも、インプラントの定期的なメンテナンスは重要なのです。メンテナンスではその他にもインプラントのクリーニングやブラッシング指導なども受けられます。

コツ②毎日のセルフケア

インプラントを長持ちさせたいのであれば、毎日のセルフケアをしっかり行うことが何より重要です。毎食後に歯磨きを行うことは当然として、インプラントの周りに食べかすや歯垢、歯石などが停滞しないよう、デンタルフロスなどの補助的清掃器具も適宜、活用していきましょう。とくに歯茎とインプラントの境目に汚れがたまると、インプラント周囲炎のリスクが大きく上昇する点にご注意ください。インプラントはとても優れた補綴装置(ほてつそうち)ですが、本物の歯ではないということを忘れないようにしましょう。セルフケアが不十分だと、あっという間に歯周病を発症してしまいます。

コツ③禁煙・減煙

タバコを吸う習慣がある人は、禁煙することをおすすめします。タバコはインプラントの天敵ともいわれるくらい有害なものなので、喫煙習慣を継続することは基本的にNGといえます。これまで吸っていたタバコをいきなりゼロにすることが難しいという人は、減煙だけでもしっかり取り組みましょう。紙タバコを吸っている人はIQOS(アイコス)のような加熱式タバコに変えるだけでもインプラントへの悪影響を減らすことが可能です。

コツ④ナイトガード

・ボトックス注射歯ぎしりや食いしばりといった悪習癖がある人は、意識的に改善していくことが望ましいです。強いストレスや緊張が生じた場面では、歯を食いしばるのをグッと堪えてください。夜間の歯ぎしりは無意識の症状ですので、自分でコントロールすることは困難です。そのため、歯科医院で治療を受けることをおすすめします。

具体的には、「ナイトガード」というマウスピース型の装置を装着して、歯ぎしりの悪影響を軽減する「スプリント療法」があります。とりわけ前歯のインプラントは強い歯ぎしりがあると、セラミックの上部構造が割れたり、欠けたりするおそれがあります。何となく放置していると、取り返しのつかないトラブルを招くことから、ナイトガードによるスプリント療法を受けた方が良いケースが多いといえます。

また、ボトックス注射も歯ぎしりの治療法の一つとして挙げられます。ボトックス注射とは、ボツリヌス菌が産生する毒素を使って、筋肉の緊張を和らげる治療法です。歯科だけでなく、医科の治療でも広く普及している治療法で、安全性も保証されています。顎に直接、注射を打つため、少し怖いイメージがあるかと思いますが、歯ぎしり・食いしばりを根本からしっかり治すことができる治療法であり、多くの人が施術を受けています。

インプラント以外の前歯治療

ここまでは、前歯のインプラントは10年後どのような状態にあるのか、また10年以上長持ちさせるコツなどをお伝えしてきました。それを聞いて少し不安に感じた方もいらっしゃるかもしれませんね。ここではそんなインプラント以外の前歯の治療法についてご説明します。

治療➀ブリッジ

ブリッジは、インプラントと同じ「固定式」の装置です。失った歯を「ポンティック」と呼ばれる人工歯で補います。それだけを聞くとインプラントとまったく同じ装置に思えますが、決定的な違いが2つあります。それはブリッジに人工歯根がない点と残った歯を大きく削らなければならない点です。

まず、ポンティックに関してですが、これは通常、歯茎から浮いた状態で口腔内に設置されます。そのため欠損部の両隣の歯を支えとしなければならないのです。例えば、上の右側の前歯(中切歯)を1本失った場合は、左側の前歯(中切歯)と右側の前歯(側切歯)を支台歯とする必要が出てきます。審美性に大きな影響を与える前歯2本を大きく削って犠牲にしなければならないのです。これは患者様にとって極めて大きなデメリットとなります。

もちろん、ブリッジの場合は外科手術が不要であることから、治療に伴う心身への負担はインプラントよりも少ないです。それでも治療後10年、20年の経過を考えたら、外科手術をしてでもインプラントを埋入した方が良いケースは少なくないのです。

治療②入れ歯

入れ歯は、失った前歯を比較的簡単に治療できる方法です。入れ歯は着脱式の装置であるため、ブリッジにおける支台歯は必要ありません。残った前歯を大きく削らずに済むことは、それだけで大きなメリットとなります。当然、外科手術も不要なので、心身への負担も最小限に抑えられるでしょう。

ただし、前歯の部分入れ歯には、装置が目立ちやすいという致命的な欠点を伴います。部分入れ歯には金属製のクラスプが付随するだけではなく、義歯床(ぎししょう)と呼ばれる歯茎を覆う部分がとても目立ちやすいのです。それに加えて、部分入れ歯は残った歯にクラスプを引っ掛けて固定することから、会話や食事の際にずれる、外れるといったトラブルを招きやすくなっています。そうした治療後のデメリットを考えると、入れ歯が前歯の治療において最善であるといえるケースは限られるといえます。

前歯をインプラントにするメリット

失った前歯の治療法として、ブリッジや入れ歯ではなく、インプラントを選択するのであれば、どのようなメリットが得られるのかも気になることかと思います。前歯のインプラントには実にたくさんのメリットがありますが、ここでは3つに絞ってご紹介します。

メリット①審美性が高い

インプラントは、ブリッジや入れ歯よりも審美性が高い補綴装置(ほてつそうち)です。顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込むため、天然歯とほぼ同じ構造と見た目を手に入れることができるのです。前歯は最も高い審美性が求められる部位でもあるため、補綴装置の見た目が美しいという点は患者様にとって大きなメリットとなります。

前歯1本を失った症例でインプラント治療を実施した場合、治療後はどこに人工歯が入っているのかわからなくなるくらい自然と調和することでしょう。ですから、前歯の治療の審美性を追求するのであれば、入れ歯ではなくインプラントが推奨されます。おそらく、多くの歯科医師も前歯の治療でインプラントを第一に検討することかと思います。

メリット②発音がきれいになる

インプラントには、入れ歯におけるクラスプや義歯床は存在していません。ブリッジのような人工歯が複数連結した設計にもなっていないことから、発音に与える悪影響がほとんどありません。治療後も前歯があった時と同じように発音できます。インプラントによって歯の生え方や位置を修正できれば、治療前より発音がきれいになる場合もあります。

メリット③食べ物を噛みやすくなる

インプラントには顎の骨に根差した人工の歯根があるため、前歯のそしゃく能率をしっかり回復できます。前歯1本を部分入れ歯で治療した場合とは、比較にならないほど噛みやすくなることでしょう。前歯は食べ物を噛み切るという重要な機能を担った歯なので、人工歯根のある装置で治療する意義は極めて大きいです。しっかり噛めるということは、顎の骨の吸収も抑えられます。

前歯のインプラント治療は実績のある歯科医院がおすすめ

上でも述べたように、前歯のインプラント治療は奥歯よりも難易度がやや高いです。そのため高度な治療技術や専門的な知識、豊富な診療実績のある歯科医院に任せた方が賢明といえます。顎の厚みが足りない場合は、骨造成で対応できる歯科医院が望ましいです。
また、前歯のインプラント治療には審美的なセンスも必要となってくることから、そうした分野の治療実績が豊富な歯科医院を探してみてください。治療から10年後も問題なく使えて、美しい見た目も維持できる前歯のインプラントは、どこの歯科医院でも提供できるというものではないのです。

まとめ

今回は、10年後の前歯のインプラントの状態や長持ちさせるコツなどを解説しました。インプラントの寿命は10年前後といわれており、従来法と比較するとかなり長いです。しかもセルフケアとプロフェッショナルケアを両立させることで、15年、20年と寿命を延ばすことも難しくありません。それは前歯だけでなく、奥歯のインプラントにも共通していえることです。

その一方で治療後のケアを怠れば寿命も自ずと短くなります。前歯のインプラントを少しでも長持ちさせたい、できれば一生涯使い続けたいという場合は、本文でもご紹介した「前歯のインプラントを長持ちさせるコツ」を実践してみてください。前歯のインプラント治療を検討中の方はお気軽に当院までご相談ください。どんなご質問にもわかりやすくお答えします。

インプラントの寿命がきたらどうする?平均寿命やそれを短くする原因等も解説

インプラントは、外科手術を必要とする歯科治療です。従来法よりも手間や時間、お金がかかる分、装置としての寿命も比較的長いことで知られています。それでもやはり、インプラントにも寿命はやっていきます。寿命を迎えたインプラントを使い続けることはとても危険です。ここではそんなインプラントの平均寿命やそれ短くする原因、寿命がきた場合の対処法などを詳しく解説します。

インプラントの平均寿命

外科手術で顎の骨に人工歯根を埋め込むインプラントは、10~15年くらい持つのが一般的です。保険診療で作る入れ歯は3~4年、ブリッジは7~8年と言われていることを踏まえると、インプラントの平均寿命はかなり長いと言えます。そもそも、インプラントには「10年保証」が付いていることがほとんどであり、少なくとも10年は持つものと考えて良いでしょう。ただし、それはインプラント治療後のセルフケアと、プロフェッショナルケア(メンテナンス)を適切に続けることが前提となります。

インプラントの寿命を短くする原因

インプラントの寿命を短くする原因

上段で述べたように、インプラントの平均寿命はかなり長いですが、いくつかの理由で短くなることがあります。とりわけ以下に挙げる5つの原因には十分な注意が必要です。

原因①メンテナンスの不足

インプラント治療後には、歯科医院で定期的なメンテナンスを受ける必要があります。メンテナンスは人工歯根であるインプラント体や歯茎を始めとした歯周組織、上部構造の異常を早期発見する上で重要です。定期的なメンテナンスを怠ると、インプラントの異常に気付かないだけでなく、保証も受けられなくなるためご注意ください。そうしたプロフェッショナルケアを継続的に受けることで、インプラントを長持ちさせることが可能となります。

原因②インプラント周囲炎

インプラントの寿命を縮める主な原因は「インプラント周囲炎」です。インプラント体を埋め込んだ周りの歯茎や顎の骨に炎症が起こる病気で、一般的な歯周病よりも進行が早いのが特徴です。「インプラント周囲粘膜炎」という、通常の歯肉炎に当たる段階で治療を行えば、比較的容易に治せますが、インプラント周囲炎まで発展してしまうと、人工歯根が脱落するリスクも高まります。

原因③質が低いインプラントの使用

いわゆる“格安インプラント”では、質が低いインプラント体を使っていることが多いです。一見すると標準的なインプラントに見えたとしても、実際は劣化しやすい素材であったりします。質が低いインプラントはそもそも顎の骨との結合も悪く、早期に寿命を迎えることになるでしょう。

原因④歯ぎしり・食いしばり

インプラントは、見た目も噛み心地も天然歯にそっくりな装置といっても間違いではありませんが、あくまで人工物であることを忘れてはいけません。とくに顎の骨との結合に「歯根膜(しこんまく)」というクッションの役割を果たす組織が介在していない点には注意が必要です。インプラント治療後に歯ぎしりや食いしばりといった悪習癖が残っていると、顎の骨へ過剰な負担がかかって炎症を引き起こします。その結果、インプラントの定着が悪くなり、寿命が縮まります。

原因⑤喫煙

喫煙は、インプラントにトラブルを引き起こすリスク因子となります。タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は、インプラントを取り巻く歯周組織の血流を悪くし、感染症リスクを高めます。具体的には、インプラント周囲炎のリスクが大きく上昇するのです。喫煙習慣がある人がインプラント周囲炎を発症してしまうと、完治させることが極めて難しくなるため十分な注意が必要です。

インプラントの保証期間

標準的なインプラント治療には、5~10年の保証が付きます。メジャーなインプラントメーカーの場合は10年保証が付いていることが多いです。保証期間内であれば、再治療を無償で受けられます。ただし、インプラント体と上部構造では、保証期間や保証内容が異なる場合もあるため、事前にきちんと確認しておくことが大切です。

インプラントの寿命がきたらどうする?

インプラントに何らかのトラブルが発生して寿命を迎えた場合の対処法としては、3つの選択肢が存在しています。
それは「インプラント治療をもう一度行う」「入れ歯を作る」「ブリッジを装着する」の3つです。どの選択肢が最善であるかは患者さんのお口の中の状態によって変わります。顎の骨に大きな問題がなく、保証期間も過ぎていない場合は、インプラント治療を再度行った方が良いでしょう。

寿命が過ぎたインプラントを使い続けるリスク

寿命が過ぎたインプラントを使い続けるリスク

寿命を過ぎたインプラントは、適切な機能を発揮できなくなります。そのまま使い続けると、次にあげるようなリスクを伴うため十分な注意が必要です。

リスク①インプラントが脱落する

寿命を迎えたインプラントは、いつ脱落してもおかしくありません。脱落した際に、上部構造やインプラント体を飲み込んでしまうリスクが生じます。噛んだ時の力は周りの歯で支えなければならなくなり、残存歯の寿命まで縮めることになるのです。

リスク②痛みが生じる

インプラント周囲炎などが原因で寿命を迎えたインプラントは、そのまま使い続けると痛みが生じます。放置すると病巣が広がり、歯茎や歯槽骨といった歯周組織に深刻なダメージを与えることもあります。

リスク③再治療ができなくなる

寿命を迎えたインプラントは、歯茎や顎の骨に大きな負担をかけます。その結果、再治療が難しくなるほど、歯周組織が破壊されてしまうこともあるのです。インプラント治療を再び行うという選択肢を失わないためにも、早期に対処することが大切です。

リスク④隣接する歯に悪影響を及ぼす

インプラントは独立した装置ですが、寿命を迎えた場合は、隣接する歯に悪影響をもたらします。噛んだ時の力が隣の歯に集中したり、歯並び・噛み合わせを悪くしたりする場合もあります。

ポイント

インプラントの寿命を延ばすためのポイント

以下のポイントに留意することで、インプラントの寿命を延ばしやすくなります。

ポイント①セルフケアを丁寧に行う

インプラントの周りは、天然歯よりも汚れがたまりやすいです。毎日のセルフケアでは、丁寧にブラッシングすることを心がけましょう。そうすることで、インプラントの天敵である歯周病を予防できます。

ポイント②定期的にメンテナンスを受ける

インプラントの寿命を延ばす上で、定期的なメンテナンスはセルフケアと同じくらい重要となります。メンテナンスでは、インプラントの清掃や歯科医師による精密な検査などを受けることができます。当然ですが、定期的なメンテナンスはインプラント治療を受けた歯科医院を受診するようにしましょう。ひと言でインプラントといっても採用しているメーカーやシステムが異なりますし、そもそも治療過程がわかっているのとそうでないのとでは、メンテナンスの精度も大きく変わってきます。

ポイント③噛み合わせのチェックを受ける

インプラントの噛み合わせが悪くなっていると、顎の骨や人工歯根に過剰な負担がかかってしまいます。そうしたトラブルを未然に防ぐためにも噛み合わせのチェックは定期的に受けるようにしましょう。

ポイント④減煙・禁煙

喫煙習慣は、インプラントの寿命を確実に縮めます。ですから、インプラントの寿命を延ばすためにはタバコを吸う本数を減らしたり、完全に禁煙したりすることが大切です。

まとめ

今回は、インプラントの寿命や寿命がきたあとについて解説しました。インプラントの平均寿命は10~15年程度といわれていますが、治療後のケア次第で20年、25年と延ばすことは十分可能です。
それでもインプラントが寿命を迎えてしまったら、無理に使い続けることはせず、適切な治療を受けましょう。インプラントをもう一回埋め込む、ブリッジを装着する、入れ歯を入れるといった治療の選択肢が提示されるかと思いますので、ご自身のお口の環境や予算に合った最善といえる方法を選ぶようにしてください。

奥歯2本のインプラントの費用相場:歯科医院を選ぶ際のポイント等も併せて解説

奥歯は虫歯や歯周病などで失いやすい歯といえます。そのため奥歯のインプラント治療を希望される方は比較的多いです。
今回は奥歯2本をインプラントで治療する場合の費用相場や歯科医院を選ぶポイントなどを詳しく解説します。

インプラントとは

インプラントは、失った歯を補うための治療法です。植え付ける・移植するといった意味の「implant(インプラント)」という名前からも想像できるように、顎の骨にチタン製の人工歯根(インプラント体)を埋め込みます。歯を支えている歯茎や歯槽骨(しそうこつ)といった歯周組織の状態が極めて重要となる治療法です。インプラント体の上には、人工歯にあたる上部構造を装着して、見た目や噛む機能を回復させます。
インプラントは人工関節にも使われる言葉であるため、失った歯の治療法に関しては「デンタルインプラント」と区別して表現されることもあります。

奥歯2本のインプラントの費用相場

治療費

インプラントには、原則として保険が適用されません。いわゆる“自由診療”となることから、どのくらいの費用がかかるのか心配な方も多いことでしょう。
ここでは奥歯2本をインプラントで治療する場合の費用相場を簡単にご紹介します。

検査・診断料(20,000~50,000円程度)

インプラント治療では、歯科用CTも含めた精密検査が必要となります。診断料も合わせると20,000~50,000円程度になるのが一般的です。
インプラントは専門性の高い治療分野であり、検査や診断にもそれ相応の知識や技術が必須となります。そのため、検査・診断料も比較的高くなっています。

手術費用(300,000~700,000円程度)

奥歯2本のインプラント手術にかかる費用は300,000~700,000円程度です。相場に大きな幅があるのは自由診療だからです。
抜歯や骨を増やす処置、静脈内鎮静法などが必要なケースでは、手術費用もさらに高くなります。

人工歯の費用(100,000~400,000円程度)

人工歯にあたる上部構造は、セラミックで作るのが一般的です。
その他にもいろいろな材料を選択できることから、100,000~400,000円程度が費用相場となっています。

つまり、奥歯のインプラントを2本埋め込む治療の総額としては800,000~1,000,000円程度が相場といえます。かなり高額にはなりますが、高いコストをかけても余りあるほどのメリットが得られるのも事実です。

インプラントの費用を確認する上で押さえておきたいポイント

ポイント

内訳と総額を見る

インプラント治療にかかる費用を確認する際には、上段で解説した3点に着目しましょう。
具体的には、検査・診断料、インプラント手術の費用、人工歯の費用です。
この3点が内訳に含まれていない場合は、インプラント治療にかかる総額が提示されていないことになります。そのまま治療を開始すると、費用面でトラブルが生じかねませんので十分にご注意ください。

提示されている金額が税込であるかどうかもきちんと確認しましょう。標準的な治療に加えて、抜歯や骨造成、静脈内鎮静法などが必要となる場合は、それらの費用がいくらになるのかも正確に把握しておくことが大切です。カウンセリングの段階では相場しか提示されなかったり、「100,000円程度」といった曖昧な表現がなされたりするかもしれませんが、検査・診断が終わった段階では正確な金額も判明していることでしょう。

費用のみで歯科医院を選ぶとリスクがある

奥歯2本をインプラント治療する場合、総額としては800,000~1,000,000円程度かかるのが一般的です。それを「当院なら300,000円で行えます」と提案する歯科医院も中には存在しています。費用の面だけ考えると、間違いなくその歯科医院がおすすめといえますが、そこにはたくさんのリスクが潜んでいることを知っておいてください。

どんな医療やサービスでもそうですが、費用の相場にはそれなりの意味があります。そもそもインプラントは原材料費の高い部品を使うため、一定以上のコストは必ずかかるものなのです。いわゆる「格安インプラント」と呼ばれるものは、そうした原材料にかかる費用を無理に削ったり、安全性や確実性が保証されてないマイナーなインプラントシステムを採用したりしているものです。その他、インプラントの経験が浅い歯科医師が治療を担当する、歯科医院に十分な設備が整っていないなど、値段が極端に安いインプラントにはさまざまなデメリット・リスクを伴うことがある点にご注意ください。

歯科医院を選ぶ際のポイント

歯科医の解説

インプラント治療を任せる歯科医院を選ぶ際には、次に2点に着目してください。

インフォームドコンセントを徹底している

インプラント治療では外科手術が必須となっているため、さまざまなリスクを伴います。全体の診療プロセスも通常の歯科治療と異なる点が多く、事前の説明が極めて重要となります。インプラントに伴うメリットだけでなく、デメリットもきちんと説明した上で治療の同意を求めるような歯科医院を選ぶようにしてください。とくに検査・診断の結果説明をていねいに行ってくれる歯科医院が望ましいです。

注:「インフォームドコンセント」とは、「医療側からの十分な説明を受けて患者側が納得した上での同意」という意味

歯科医師のインプラント手術の経験が豊富

医療技術は経験を重ねるごとに高くなっていきます。とりわけ、インプラントのような専門性の高い治療技術は、経験が豊富であるほど精度も高まることでしょう。インプラント手術は人工歯根を埋入する位置が1mmでズレてしまうと結果に大きな悪影響が及びます。そこで歯科医院のホームページ等で、以下の点をチェックすることをおすすめします。

  • 日本口腔インプラント学会の専門医や指導医の資格を持っている
  • インプラント治療を行う診療科での勤務経験が長い

この2つに当てはまるのであれば、インプラント手術が経験豊富な歯科医師であることに間違いはありません。それに加えて、歯科医院の設備も十分に整っているかどうかも確認してください。歯科用CTが完備されていることは必須条件です。インプラント手術を安全に行える診療環境かあるかどうかもチェックしましょう。

インプラントの費用を抑える方法

ここまでは奥歯2本をインプラントで治療する場合の費用について解説してきましたが、比較的高額であることから、なかなか一歩踏み出せないという方もいらっしゃるかもしれません。そんな方に向けてインプラントの費用を抑える方法をご紹介します。

医療費控除を利用する

医療費控除とは、1年間に支払った医療費の総額が100,000円を超えた場合に、還付金という形でその一部が戻ってくるという制度です。インプラントは自由診療ではあるものの、歯列矯正やセラミック治療と同じように、医療費控除の対象となります。その他に支払った医療費と併せて、総額で数万円から数十万円戻ってくることも珍しくありませんので、インプラント治療を受けた際には積極的にこの制度を活用しましょう。

高額療養費制度を利用する

高額療養費制度とは、月の始めから終わりまでに一定以上の医療費を自己負担した場合に払い戻しを受けられる制度です。この制度は医療費控除とは異なり、原則として保険診療が対象となります。そのため自由診療でインプラント治療を受けた場合は、対象外となる点に注意が必要です。インプラント治療は一部のケースで例外的に保険が適用される場合があり、その際に高額療養費制度を利用することが可能となります。

まとめ

今回は、奥歯2本のインプラントの費用相場と歯科医院選びのポイントについて解説しました。奥歯2本のインプラント治療を受ける場合は、総額で800,000~1,000,000円程度が全国的な費用相場となっています。信頼できる歯科医院を選ぶ際のポイントは、「インフォームドコンセントを徹底している」「歯科医師のインプラント手術の経験が豊富」であることです。費用相場よりも極端に安い価格でインプラント治療を提供している場合は注意が必要です。奥歯2本のインプラントというのは、あなたの人生を大きく変える重要な治療となることから、歯科医院選びは慎重に行うようにしてください。

インプラントのメリットとデメリットとは?それぞれ解説

外傷や虫歯などが原因で歯を丸ごと失ってしまうと、日常のさまざまな場面で不都合が生じることになります。私たちの歯というのは、それくらい重要な役割を担っています。昨今、喪失歯の治療法としては、インプラントに注目が集まっています。

人工歯根を顎の骨に埋め込む治療法で、入れ歯やブリッジにはない特長があります。その有用性については、皆さんの耳にもすでに入っていることでしょう。ここではそんなインプラントのメリットとデメリットを専門家の立場から詳しく解説します。

インプラントのメリット

まずはインプラントのメリットからご紹介しましょう。この治療法には、従来法にはないメリットが驚くほどたくさんあります。

入れ歯よりも咀嚼能力に優れている

インプラントや入れ歯といった補綴装置(ほてつそうち)は、失った歯の“噛む機能”を回復させるのが主な役割です。入れ歯は短期間で安価に作れる装置ですが、噛んだ時にずれたり、外れたりすることがあります。これは着脱式の装置の宿命ともいえる難点です。一方、顎の骨にチタン製の人工歯根をしっかりと埋め込む固定式のインプラントは、硬いものでもしっかり噛むことができます。入れ歯のみならず、ブリッジと比較した場合も、インプラントの方が咀嚼能力に優れているといえるでしょう。

審美性が高い

インプラントは、入れ歯やブリッジよりも高い審美性が期待できます。人工歯根があるインプラントは、天然の歯とほぼ同じ構造を採ることができるため、余計なパーツを付随させる必要がないからです。ブリッジもシンプルな構造ではあるものの、人工歯を複数連結させなければならず、インプラントよりも見た目の違和感が大きくなりがちです。

他の健康の歯に負担がかからない

失った歯をブリッジで治療する場合は、両隣の歯を大きく削らなければなりません。支えとなる歯を削る量は、一般的な被せ物治療と同等なので、かなりの歯質を失います。治療後も噛んだ時の力を、支えとなる歯が受けとめなければならず、残存歯の寿命は自ずと短くなります。入れ歯も、クラスプやレストといったパーツを当てる部分に切削処置を施したり、噛んだ時の力を残存歯と歯茎が支えなければならかったりするため、お口全体の健康維持には不利であると言わざるを得えません。その点、インプラントは独立した状態でお口の中に設置できることから、残った歯に大きな負担がかかることはありません。

骨が痩せるのを防ぐことができる

何らかの理由で失った歯を放置すると、その部分だけ徐々に骨が痩せていきます。これは私たちの身体の性質上、避けては通れない変化です。仮に、入れ歯やブリッジで失った歯を補ったとしても、この現象を抑えることは難しいでしょう。なぜなら、入れ歯やブリッジには人工歯根がなく、欠損部のあごに噛んだ時の力が加わることがないからです。あごの骨としっかり結合した人工歯根が手に入る治療法なら、そのリスクを最小限に抑えられます。つまり、インプラント治療では、骨の退化現象を抑制することが可能なのです。

健康と精神の両面にプラスにはたらく

インプラントによる治療を受ければ、食べ物をしっかり噛めるようになります。歯を失う前と同じように、好きなものを好きなだけ食べることができるのは、健康と精神の両面に良い影響をもたらしてくれるでしょう。しかも、インプラントは天然の歯とそっくりな見た目に仕上げられるため、笑顔に自信が持てて、物事にも積極的に取り組めるようになります。人と会話をしたり、食事をしたりすることが楽しくなるのは、この上ない幸せと言えます。つまり、インプラントはQOL(Quality of Life=人生の質)を大きく向上してくれる治療法でもあるのです。

インプラントのデメリット 

ここまでは、インプラントのメリットについて解説してきましたが、この治療も決して万能ではありません。その他の治療法と同様、デメリットも伴います。

治療費が高額

インプラント治療は、原則として自費診療となります。治療にかかった費用は全額自己負担となるため、保険診療のブリッジや入れ歯よりも経済的負担が大きくなります。また、インプラント治療には手術が必要であったり、高度な技術や先進の医療設備が必須であったりすることもあり、治療費はそれなりに高くなる点に注意しなければなりません。ですから、経済性を最重要視する場合は、インプラントではなく、保険診療の入れ歯やブリッジが推奨されます。

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治療期間が長い

保険診療の入れ歯やブリッジは、1~2ヵ月程度で治療が完了します。一方、インプラント治療では、チタン製の人工歯根と顎の骨が結合するまでに数ヵ月を要することから、一般的には半年以上の治療期間が必要となります。ただし、インプラントはその他の治療法と比較すると、装置の寿命が極めて長く、お口全体の健康維持にも大きく寄与するため、治療期間が長いという点だけに着目するのは賢明ではないといえるでしょう。

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手術が必要になる

繰り返しになりますが、インプラント治療には外科手術が必須となります。この点だけは避けることができません。とはいえ、インプラント治療の外科手術に伴う痛みや術後のリスクというのは、親知らずの抜歯と大差はないので、過剰に心配しすぎるのも良くないでしょう。手術時の不安や恐怖心を和らげる方法も複数用意されていますし、そもそも手術が失敗するリスクも極めて低くなっているのが現実です。

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術後のメンテナンスが必要になる

インプラントは術後のメンテナンスが重要となる治療法です。インプラント手術が無事に終わったからといって、メンテナンスを怠っていると、歯周組織に炎症が生じる「インプラント周囲炎」を発症してしまいます。その他、上部構造が欠けたり、アバットメントが緩んだりするなどのトラブルも想定されることから、術後も定期的に歯科へ通う必要があります。ちなみに、インプラントには5年保証や10年保証が付くのが一般的ですが、術後のメンテナンスを継続的に受けることが必須条件として課されています。

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感染症のリスクがある

インプラントは、術中・術後・すべての処置が終わった後にも感染症のリスクを伴います。これはあごの骨に人工歯根を埋め込む治療ならではのリスクといえます。とくに治療が終わった後のインプラント周囲炎には十分に気を付けなければなりません。なぜなら、インプラント周囲炎はインプラントの寿命を縮める、あるいは終わらせる主な原因となっているからです。

まとめ

このように、インプラントには従来法にはないメリットとデメリットがあります。素晴らしい結果が得られる治療法だけに、それなりのデメリットを伴うことも正しく理解しておく必要があります。そんなインプラントの特徴についてもっと詳しく知りたい、カウンセリングを受けてみたいという方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。当院は、インプラントに力を入れている歯科医院です。

インプラント治療で歯がない期間はある?その期間や仮歯を入れる理由等を解説

インプラント治療には、従来法とは異なる点が多々あります。その中でも治療期間の違いに関しては、不安を感じる方が多いようです。標準的な症例でも半年以上の期間を要するため、その分、歯がない期間も長くなります。ここではそんなインプラント治療で歯がない期間や仮歯を入れる理由などを詳しく解説します。

インプラント治療中に歯がない期間はある?

冒頭でも触れたように、インプラント治療には歯がない期間が存在します。それは人工歯根である「インプラント体」を顎の骨に埋め込むという処置が必要だからです。チタン製のインプラント体が顎の骨と結合するまでにはそれ相応の期間が必要であり、その間は仮歯で過ごすこととなります。きちんと噛める歯がない状態が続くため、治療中は不便さを感じる場面も多くなりますが、最終的には綺麗な人工歯(上部構造)を装着できますのでご安心ください。

インプラント治療の流れ

インプラント治療全体の流れを理解すると、歯がない期間がどのプロセスに当たるのかもわかりやすくなります。ここではインプラント治療の大まかな流れをご紹介します。

流れ①カウンセリング

インプラント治療もはじめはカウンセリングからスタートします。インプラント手術に伴うリスクや治療期間、入れ歯やブリッジとの違いなど、気になることがあれば何でも質問しましょう。カウンセリングの段階で、インプラントへの疑問や不安を解消しておくと、その後の治療もスムーズに進めることができます。治療にかかる費用の内訳も詳細に確認しておきましょう。

流れ②精密検査

口腔内検査やレントゲン撮影、CT撮影などを行って、お口の中や歯周組織、顎の骨の状態を精密に調べます。その上でインプラント治療が適しているかどうかを判断します。インプラント治療が行えるケースであれば、治療計画を立案して、患者さんに説明します。この段階でもいろいろな質問を行えますので、気になることがあれば尋ねてください。精密検査および治療計画の立案が終わったからといって、インプラント治療を必ずスタートさせなければならないということではありません。最も重要なのは患者さんの意志です。

流れ③インプラント手術

お口の中や顎の骨に問題がなければ、インプラント体を顎の骨に埋め込む手術を実施します。歯茎をメスで切開して視野を確保し、顎の骨にドリルで穴を開けます。その中にチタン製のインプラント体を埋め込みます。手術を2回に分ける「2回法」の場合は、歯茎を縫合して手術を終えます。現状は、この方法が主流となっています。

流れ④待機期間

顎の骨に埋め込んだインプラント体は、ゆっくりと時間をかけて顎骨と結合します。この現象を「オッセオインテグレーション」と呼び、一般的に2~6ヵ月程度、待つ必要があります。待機期間中は、今回のテーマである「歯がない状態」となります。

流れ⑤2回目のインプラント手術(2回法の場合)

インプラント体と顎の骨が結合したら、連結装置であるアバットメントを装着する手術を行います。1回目の手術で縫合した部分を再び開いてインプラント体を露出させ、アバットメントを装着します。2回目の手術は比較的シンプルで、心身にかかる負担も少なくなっています。

流れ⑥被せ物の型取り・装着

アバットメントと歯茎の状態が安定したら、最後に被せ物の型取りを行って、上部構造を製作します。いよいよ本番の人工歯の登場です。インプラントの被せ物は、セラミックで作ることがほとんどで、天然歯にそっくりな見た目に仕上げられます。仮歯との違いに驚かれることでしょう。このように、インプラントでは治療の最終段階になるまでは、歯がない状態もしくは仮歯を着けている状態が続くと言えます。

歯がない期間はどれくらい?

インプラント治療で歯がない期間は、2~6ヵ月程度です。つまり、人工歯根を埋め込むインプラント手術後から、上部構造を装着するまでの期間が「歯がない状態」となります。ただし、これはあくまで目安であり、ケースによっては仮歯の期間がもっと長くなることも珍しくありません。とくに骨の状態が悪くて「骨造成」を行ったり、インプラント体を埋入する本数が多かったりする場合は、歯がない期間も比較的長くなると言えるでしょう。

歯がない期間に仮歯を入れる理由

インプラント手術後の歯がない期間中は、基本的に仮歯を入れることになります。それは次に挙げるような理由からです。

理由①審美性・発音を保つため

仮歯を入れる理由として最もわかりやすいのは、審美性の維持です。歯列というのは、完全に埋まっている状態が正常なので、1本でも欠損があるとものすごく目立ちます。そうした見た目の悪い状態で数ヵ月過ごすのは良くありませんよね。また、前歯のインプラント治療では、歯がない状態を放置すると発音に悪影響が出やすいということもあり、仮歯を着けるようにしています。もちろん、奥歯の場合も審美性の維持・発音障害の回避という観点から、仮歯を入れます。

理由②歯並び・噛み合わせを変化させないため

歯列内に歯がない部分があると、その周りの歯がすき間を埋めるように移動を始めます。それに伴い全体の噛み合わせも変化することから、手術を終えた後には仮歯でスペースを塞ぐ必要があります。待機期間中に歯並び・噛み合わせが変化すると、その後の処置を適切に進められなくなるリスクが生じるため、十分な注意が必要です。具体的には、スペースが狭くなって適切な大きさ・形の上部構造を装着できなくなるかもしれません。あるいは、噛み合わせが変化することでインプラントに過剰な負担がかかる状態にもなりかねないのです。

理由③傷口への刺激を防ぐため

インプラント手術を実施した部位は、傷口を負った状態となります。もちろん、そのままでもきれいに治癒させることは可能ですが、仮歯を装着することで、傷口への刺激を最小限に抑えられます。その結果、歯茎が守られて次のプロセスへと移行しやすくなるのです。ただ、仮歯があるからといって、普段通りに生活して良いということにはなりませんので、その点はご注意ください。次の章でもご説明する通り、治療中はいくつかの注意点があります。

仮歯を入れている期間中の注意点

インプラントの仮歯を入れている期間中は、次の2点にご注意ください。

注意点①仮歯に強い力をかけ過ぎない

インプラントの仮歯は、あくまで“仮の歯”です。一般的な被せ物とは強度や使用目的が大きく異なります。仮歯に対して強い力をかけすぎると、脱落するリスクが生じます。また、仮歯の期間中は、インプラント体が顎の骨に定着しておらず、不安定な状態となっていることから、強い力をかけると骨との結合が上手く進まなくなってしまいます。その結果、インプラント治療自体が失敗に終わる可能性も出てきますので、十分にご注意ください。

注意点②仮歯の周囲に汚れを溜めない

インプラントの仮歯は、歯科用プラスチックであるレジンで作られています。それもかなり質が低く、表面も粗造であるため、汚れが付きやすくなっている点に注意しなければなりません。仮歯の周囲に汚れを溜めると、歯茎に炎症が起こったり、傷口に細菌感染が生じたりします。そうなるとインプラント治療が失敗に終わる可能性も高まります。だからといって極端に強い力で磨くと歯茎などに過剰な負担がかかってしまいます。インプラント治療中の口腔ケア方法については、歯科医師および歯科衛生士のアドバイスを参考にして、上手に行うことが大切です。

まとめ

このように、インプラント治療では歯がない期間があります。それは人工歯根であるインプラント体が顎の骨に定着し、上部構造を装着するまでの期間です。一般的には2~6ヵ月程度の期間は仮歯で過ごすことになります。仮歯の期間が長い治療法なので、不安に感じることも多いかと思いますが、そこは歯科医師・歯科衛生士と一緒に頑張って乗り切りましょう。歯がない期間中に心配なことが出てきたら、すぐに歯科医院に相談すると良いでしょう。

インプラントをやめたほうがいいと言われる理由とは?

失った歯の治療法としては、ブリッジ・入れ歯・インプラントの3つが挙げられます。
この中で「人工歯根」があるのはインプラントだけです。従来法にはないたくさんのメリットを享受できることから、多くの人に選ばれています。しかし、一方では「インプラントはやめたほうがいい」という声もよく耳にします。
今回はそんな「インプラントはやめたほうがいい」と言われる理由について、詳しく解説をします。

インプラントはやめたほうがいいと言われる理由

理由①外科手術が必要

インプラント治療では、外科手術が必須となっています。顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込むことがこの治療法の要となるため、「外科手術は絶対に受けたくない」という人にはおすすめできません。これは「インプラントはやめたほうがいいと言われる」主な理由です。とはいえ、インプラント手術はみなさんが想像する病院での外科手術とは異なり、もっと小規模です。人工歯根を埋め込む処置自体は15分程度で終わり、全体でも1時間程度で手術が完了します。

理由②顎の骨が少ないと治療の対象外になる

インプラントはすべての人に開かれた歯科治療ですが、顎の骨が少ないと治療の対象外になる場合があります。ただし、不足した骨は「骨造成(こつぞうせい)」と呼ばれる方法で補えば、インプラント治療が可能となることがあります。

理由③全身疾患がある方は治療の対象外になる

手術中に全身状態が急変するような病気を患っている場合は、インプラント治療の対象外となることがあります。具体的には、重度の高血圧症や糖尿病にかかっていたり、過去に脳梗塞や心筋梗塞を発症して、血液が固まりにくくなる薬剤を服用していたりすると、外科手術を安全に遂行できない可能性が出てきます。この点は、かかりつけ医と相談しながらインプラント治療の可否を決定することになります。

理由④治療費が高い

インプラントは原則として自費診療となるため、保険が適用される従来法よりも治療費が高くなります。使用する素材の原価も高く、高度な技術を要する治療でもあることから、1本あたり300,000~500,000円程度の費用がかかるのが一般的です。ただ、インプラントはブリッジや入れ歯よりも寿命が圧倒的に長く、お口の健康維持・増進にも寄与します。その点も考慮すると、作り替えや頻繁に通院する必要のあるブリッジや入れ歯と比べて、単純に「治療費が高い」とは言い切れません。

理由⑤治療期間が長い

ブリッジや入れ歯のように、治療を1~2ヵ月で終わらせたいという方には、インプラント治療はおすすめできません。インプラント治療では、チタン製の人工歯根と顎骨が結合するまでに、下顎の場合は3ヵ月以上、上顎の場合は6ヵ月以上かかるのが一般的です。その他、連結装置であるアバットメントの装着や上部構造の製作期間も加わることから、全体で6~12ヵ月程度の治療期間を要します。ただし、通院する回数はそれほど多くはありません。

理由⑥治療後のメンテナンスが必要

インプラント治療後には、定期にメンテナンスを受ける必要があります。3~6ヵ月に1回くらいのペースで通院していれば、インプラントを10年、20年と使い続けていくことも難しくなくなります。大切にケアすれば、一生涯使うことも不可能ではないでしょう。

理由⑦強く噛みすぎてしまう

インプラントは見た目も構造も天然歯そっくりではありますが、歯根の部分に違いが見られます。それは「歯根膜(しこんまく)」の有無です。インプラントには噛んだ時の圧力を調整したり緩和したりする歯根膜が存在していないため、強く噛みすぎてしまうことがあります。その結果、インプラントや顎の骨に過剰な力がかかり、装置の破損および顎骨の炎症を引き起こすリスクが生じます。とはいえ、どのくらいの強さで噛めば良いのかは、インプラント治療から1週間も経過すれば判断できるようになります。強く噛みすぎてインプラントをダメにしてしまうケースは極めて稀といえるでしょう。

理由⑧金属アレルギー

人工歯根であるインプラント体には「チタン」という金属が使われます。チタンは生体安全性の高い金属で、心臓のペースメーカーや人工関節にも使われているのですが、金属アレルギーのリスクがゼロというわけではありません。その限りなくゼロに近いリスクが怖いという方には、標準的なインプラントはおすすめできません。セラミックの一種である「ジルコニア」を使ったインプラント治療なら、金属アレルギーのリスクをゼロにできます。

理由➈再治療が困難

手術の失敗や外傷、細菌感染などによって人工歯根が脱落した場合は、インプラントで再治療を行うのは困難です。もちろん、顎の骨の状態が良ければインプラントで再治療可能なこともありますが、多くのケースではブリッジや入れ歯による治療へと移行します。人工歯である上部構造や連結装置のアバットメントが破損・故障した場合は、比較的簡単に再治療できます。

理由➉感染症のリスクがある

インプラント治療では、手術中と手術後に感染症のリスクが生じます。感染対策をしっかり行っている歯科医院であれば、手術中の感染リスクを最小限に抑えられます。手術後の感染リスクは、患者さんご自身でコントロールしなければなりません。とくにインプラントの歯周病である「インプラント周囲炎」は、インプラント治療が失敗する主な原因となっているため十分な注意が必要です。

インプラント治療を受けるかどうかを判断するポイント

ここまでは、インプラントに伴うリスクやデメリットについて解説してきましたが、実際に治療を受けるかどうかは以下の3点を考慮して判断すると良いでしょう。

ポイント①自分が求めていることがインプラントで叶う

失った歯の治療法に、見た目の美しさ、天然歯に近い噛み心地、お手入れのしやすさなどを求めているのであれば、インプラントがおすすめです。それらは、従来法であるブリッジ・入れ歯で叶えることが難しいからです。

ポイント②インプラントのデメリットを受け入れられる

前段でも述べたように、インプラントには外科手術が必要、費用が高い、治療後もメンテナンスを定期的に受けなければならない、といったデメリットを伴います。また、治療を担当する歯科医師によって仕上がりが大きく変わってきます。そうしたインプラントの欠点を受け入れられるのであれば、ブリッジ・入れ歯を選ぶ必要性は低いといえます。

ポイント③受診した歯科医院で適切な治療が受けられる

インプラントに伴う多くのリスクは、適切な治療を行える歯科医院・歯科医師を選ぶことで解消できます。ですから、インプラント治療の歯科医院選びは慎重に行う必要があるのです。インプラントのカウンセリングを受けた段階で不安や疑問を感じるようなことがあれば、その他の歯科医院も受診してみると良いでしょう。もうすでに精密検査と診断を受けている場合でも、セカンドオピニオンを受けることを推奨します。

インプラント治療を避けた方がよい人の特徴

特徴➀ホームケアを行う習慣がない

インプラントは、見た目も構造も天然歯そっくりな装置ですが、あくまで人工物です。天然歯よりも汚れがたまりやすい部分があり、適切なホームケアを行えていないとインプラント周囲炎のような歯周疾患にかかってしまいます。普段からホームケアを行う習慣がない場合は、今すぐインプラント治療を受けるのはおすすめできません。ホームケアを適切に行えるようになってから、インプラント治療を検討しましょう。

特徴②定期的なメンテナンスに通えない

仕事や勉強が忙しくて、定期的なメンテナンスに通えるか不安という方は、インプラント治療を避けた方が良いです。インプラント治療では、3~6ヵ月に1回のメンテナンスが必須となっており、それを怠るとさまざまなリスクが生じます。仕事や勉強が落ち着いてメンテナンスに通える環境が整ったら、改めてインプラント治療を検討すると良いでしょう。

特徴③手術に対する恐怖・不安を払拭できない

外科手術に対して恐怖心や不安感を抱かない人は皆無に等しいです。自分の体が傷付くことは、誰にとっても怖いものです。ただ、その恐怖心や不安感が極端に強い場合は、インプラント治療をいったん保留にしましょう。そのままの状態でインプラント手術に臨むと、良くない結果を招くことがあります。

ただ、インプラント手術への恐怖心や不安感は、カウンセリングを丁寧に受けることで軽減されていきます。また、笑気麻酔や静脈内鎮静法を併用さすることで、怖いという気持ちを直接的に軽くできます。その点も含めカウンセリングで相談してみましょう。

まとめ

このように、「インプラントはやめたほうがいい」と言われる理由はさまざまですが、そのほとんどは解決できます。インプラント治療で必須となっている外科手術はそれほど大掛かりなものではなく、術中の恐怖心や不安感を取り除く方法もあります。手術中の感染リスクも適切な治療を実施できる歯科医院なら最小限に抑えられます。インプラント治療後に必要となるメンテナンスは3~6ヵ月に1回程度となっており、年間で計算すると2~4回程度なので、実際はそれほど大変ではありません。

ですから、インプラント治療を真剣に検討されている方は、まず信頼できる歯科医院に相談するのが良いでしょう。「インプラントはやめたほうがいい」というネガティブな意見だけに流されず、正しい情報を歯科医師から提供してもらうことが大切です。

インプラント治療で歯並びが悪いのは治せる?インプラントの基礎知識等を解説

インプラントは、天然歯にそっくりな見た目と噛み心地を手に入れられる治療法です。治療後はどこにインプラントを入れたのかわからないくらい自然な仕上がりが期待できるため、歯並びが悪い症状も治せそうだと思われることが多いようです。
そこで今回は、インプラントで悪い歯並びを治せるのかどうかや、この治療法の基礎知識についてわかりやすく解説をします。

インプラント治療は歯並びが悪いのを治す治療法ではない

結論からいうと、インプラント治療で歯並びが悪いのを根本から改善することはできません。なぜなら、インプラント治療は歯列矯正ではないからです。あくまで失った歯の審美性および機能性を回復させるための治療法であることから、悪い歯並びを治す目的でインプラントを選択しないようにしましょう。

もちろん、ケースによってはインプラントが矯正治療に相当するような結果をもたらしてくれる場合もありますが、歯並びの改善は副次的な効果とお考えください。インプラント治療によって歯周組織の状態も良くなるため、お口全体の見た目も改善することは間違いありません。

インプラント治療と外科手術

インプラント治療は、歯を失った部分にチタン製の人工歯根を埋め込むことで、天然歯に近い人工の歯を手に入れられます。これはブリッジや入れ歯といった従来法にはないプロセスであり、外科手術が必要となります。そのため歯茎や歯槽骨(しそうこつ)といった歯周組織だけでなく、全身状態も良好でなければなりません。とくに重篤な全身疾患を患っている場合は要注意です。

インプラント治療ができない人

次に挙げる病気や条件に当てはまる人は、インプラント治療ができないこともあります。

  • 糖尿病
  • 白血病
  • 血友病
  • 高血圧症
  • 骨粗しょう症
  • 重症度の高い歯周病
  • 免疫機能に深刻な異常がある
  • 妊娠している
  • 未成年
  • 喫煙習慣がある
  • チタンアレルギーがある

上記に当てはまるものがあったとしても、それぞれ対処する方法が用意されていますので、不安な方はまずカウンセリングで相談しましょう。
ただし、妊娠中の女性や未成年の方は、原則としてインプラント治療を行うことができません。妊婦さんは出産してから、お子さんは成人してから改めてインプラント治療を検討するようにしてください。

歯並びを整えるためのインプラント治療は避けた方がよい

インプラントには人工歯根があるため、ブリッジや入れ歯よりも噛む力が強いです。例えば、天然歯の噛む力を100%とすると、入れ歯は30%程度、ブリッジは60%程度まで回復できると言われています。第2の永久歯とも呼ばれるインプラントは、70~85%程度まで噛む力を回復させることが可能であると考えられています。その上、歯並びを整える治療法としても活用できたら言うことはありませんが、現実としてインプラントには歯列矯正の効果を期待することはできません。インプラントは歯並びを整えるためではなく、失った歯を回復させる治療法として選択することが重要です。

矯正治療で歯並びの改善ができる

出っ歯や受け口、乱ぐい歯といった歯並びの問題は、矯正治療で改善することができます。マルチブラケット装置やマウスピース型矯正装置を使い、歯を物理的に動かすことで、歯並びのコンプレックスを解消できます。歯並びの重症度が高いと、矯正に抜歯が必要となる場合もありますが、正常な歯並び・噛み合わせを手に入れるために受け入れましょう。悪い歯並びを根本から解決できる治療法として、歯列矯正は極めて有用です。

インプラント治療と矯正治療の違い

繰り返しになりますが、インプラント治療で歯並びが悪い症状を改善することは難しいため、出っ歯や受け口などを治すのであれば、矯正治療を選択しましょう。インプラント治療と矯正治療には、以下のような違いが見られます。

治療目的

インプラントは、虫歯や歯周病、外傷などで失った歯を回復させるための治療法です。治療対象となる歯は1本とは限らず、複数本に及ぶこともありますが、歯列全体の歯並びを改善するために行う方法ではありません。インプラントの治療期間は、下顎の場合で6ヵ月程度、上顎の場合は1年程度かかります。

矯正治療は文字通り歯並びの乱れを矯正するための治療法です。当然ですが、失った歯の機能や審美性を回復させることはできません。マルチブラケット装置やマウスピース型矯正装置を1~3年くらい装着して、歯を動かします。

治療方法

インプラントは、チタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込みます。人工歯根と顎骨が結合するまで数ヵ月待機して、その後は連結装置であるアバットメントと人工歯に当たる上部構造を装着します。

矯正治療は、ワイヤー矯正とマウスピース矯正の2つに分けられます。ワイヤー矯正は、ブラケットとワイヤーを歯列に固定する方法で、幅広い症例に適応できます。マウスピース矯正は、透明なマウスピースを装着して歯を動かす方法で、歯並びの矯正を快適に進めることが可能です。

治療にかかる費用

インプラントは、1本当たり300,000~500,000円くらいの費用がかかるのが一般的です。矯正はワイヤー矯正で1,000,000円前後、マウスピース矯正の場合は800,000円前後の費用がかかります。インプラント治療も矯正治療も原則として保険が適用されないため、治療にかかった費用は全額自己負担となります。これは一般的な歯周病治療や虫歯治療との大きな違いといえるでしょう。

適応条件

インプラントは、前段でご紹介した「インプラントができない人」に当てはまらないのであれば、誰でも受けることができます。矯正治療も原則としてすべての人に適応できます。ただし、小児矯正は子どもの時期にしか受けられません。また、歯や顎の骨に深刻な症状を抱えている場合も矯正治療を適応できないことがありますので、その点はカウンセリングで確認する必要があります。とはいえ、よほどの理由がない限り、矯正治療が適応外となることはないでしょう。

終わりに

このように、インプラント治療は失った歯の機能性と審美性を回復させるための治療法なので、歯並びの問題を解決する矯正治療とは分けて考える必要があります。また、「歯の色をきれいにしたい」「歯の形がいびつで嫌だ」「前歯が1本だけ小さいことがコンプレックスになっている」といった悩みもインプラント治療で解決するのは賢明ではありません。

もちろん、インプラント治療を実施することで歯の色や形、大きさまできれいにできるのですが、そのためには天然歯を抜かなければなりません。それならもっと負担の軽いホワイトニングやラミネートベニア、セラミッククラウンによる被せ物治療などで対応した方がメリットも大きくなります。いずれにせよ、歯に関するお悩みを抱えているのであれば、まず歯科医院に相談しましょう。当院であれば、インプラントを始めとしたほぼすべての歯科治療に対応しておりますので、患者様お一人おひとりに最善といえる方法をご提案することができます。

インプラントができない人とは?その対処法と難しい症例に有効な治療法も併せて紹介

インプラントは、失った歯を歯根から回復できる優れた治療法です。近年はブリッジや入れ歯といった従来法ではなく、インプラントを選ぶ人が増えてきていますが、それはこの治療法によって得られるメリットがあまりにも大きいからです。

ただ、そんなインプラントも決して万能ではなく、適応できないあるいは適応が難しい症例というものも存在しています。今回はそんなインプラントできない人の特徴や対処法、インプラントが難しい症例に有効な治療法について詳しく解説します。

インプラントができない人

できない➀骨が薄い(骨粗鬆症である)

骨が薄かったり、骨密度が低かったりする場合は、インプラントできない可能性が高いです。インプラント治療には、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込む外科処置を伴います。人工歯根は長さが10mm程度あり、周囲に健全な骨が十分に存在していないと適切に埋入することができません。とくに骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を患っている場合は要注意です。骨粗鬆症は、骨の密度が低下してスカスカになる病気なので、重症度が高い場合はインプラントできません。

対処法:骨造成術を行う

加齢や骨粗鬆症などで歯槽骨が薄くなっている場合は、骨造成術で症状の改善をはかります。GBRソケットリフトサイナスリフトなどを実施することで、インプラント治療が可能となる場合もあります。

できない②年齢が低い

インプラント治療は、一部の例外を除いて未成年に適応することができません。成長期にチタン製の人工歯根を埋め込んでしまうと、顎の発育を阻害する可能性があるからです。

ただし、先天性の病気を患っていたり、事故で大きな外傷を負ったりした際には、年齢が低くてもインプラントすることもあります。また、インプラント治療の年齢は厳密に制限されているわけではなく、歯科医院によっても「18歳以下」や「20歳未満」といった異なる形で区切りをつけているのが現実です。

対処法:顎骨の成長が止まるのを待つ

インプラント治療は、顎の骨の成長が止まってから開始するのが一般的です。そのタイミングは精密検査等を行ってみなければわからないため、気になる場合は歯科を受診しましょう。基本的には、顎の骨の成長が止まる大人になってから治療を始めることになります。

できない③歯周病や虫歯がある

重症度の高い歯周病や虫歯がある場合は、インプラントできないケースがほとんどです。とりわけ歯周病は、インプラントを失敗させる主な要因となっていることから、そのままの状態で治療をスタートさせる歯科医師は稀といえるでしょう。もちろん、歯周病が軽度であったり、インプラントを埋め込む部位とは近くなかったりする場合は、そのまま治療を行うこともありますが、その判断は歯科医師に委ねられます。

対処法:歯周病・虫歯の治療を先に終わらせる

歯周病や虫歯といった口腔疾患がある場合は、それらの治療を優先します。歯や歯茎を健全にした状態で、インプラント治療を開始します。

できない④糖尿病を患っている

糖尿病にかかっていると、血糖値が上がりやすく、免疫力や抵抗力は低下します。そのため糖尿病患者さんは傷口の治りが遅かったり、歯周病にかかりやすかったりするのです。これは外科手術が必須となるインプラント治療において、非常に大きなリスクファクターとなることでしょう。仮にインプラント手術が成功したとしても、インプラント周囲炎という歯周病にかかってしまったら、治療そのものが失敗に終わります。

対処法:血糖値をコントロールする

糖尿病患者さんでインプラント治療を検討されている方は、まず内科の主治医に相談しましょう。病気の状態によっては、お薬などで血糖値を許容範囲内にコントロールする方法があります。インプラント手術はそこまで大掛かりな外科処置ではないことから、必ずしも糖尿病を完治させる必要はありません。インプラント手術可能な状態に血糖値をコントロールできれば、歯科医師もゴーサインを出すことでしょう。

できない⑤妊娠中である

妊娠中の女性は、インプラントできないことはありませんが、避けた方が望ましいです。インプラント治療には、レントゲン撮影・CT撮影・外科手術・投薬などを伴うだけでなく、治療期間が半年以上、長ければ1年近くかかることもあります。そうした治療を妊娠期間中に受けるのは賢明ではありません。そのため多くの歯科医院は、妊婦さんにインプラント治療をおすすめすることは少ないでしょう。

対処法:出産後にインプラント治療を受ける

妊娠中の女性は、出産後にインプラント治療を受けると良いでしょう。出産直後は、母子ともに不安定な状態となるため、いろいろな面で落ち着いてから歯科を受診するのがおすすめです。妊娠中は歯がないことで不便を感じる場面も多くなるかと思いますので、その間は着脱式の入れ歯で対応すると良いでしょう。入れ歯は妊娠中でも作れます。

できない⑥ヘビースモーカーである

タバコは、歯周病のリスクを大きく上昇させます。インプラントの天敵である歯周病にかかると、苦労して埋め込んだ人工歯根が脱落してしまうことから、ヘビースモーカーの人はインプラント治療を諦めた方が良いといえるでしょう。毎日たくさんのタバコを吸っている場合は、そもそも歯周組織の状態が悪くなっており、インプラント手術自体、失敗に終わることも珍しくありません。

対処法:禁煙する

ヘビースモーカーの人でインプラント治療を希望されているのであれば、今日からでも禁煙しましょう。タバコを吸う習慣を改善できない限り、インプラント治療を行うことは難しいと考えるべきでしょう。

できない⑦腎疾患があり血液透析を受けている

腎臓に病気にあって血液透析を受けている人は、基本的にインプラント治療できないといえます。重度の腎疾患を患っていると、免疫力が低下し、傷の治りも悪くなっているからです。細菌感染のリスクも高くなっており、インプラント手術に耐えることが難しいです。

対処法:他の治療法を検討する

血液透析を受けている腎疾患患者さんは、インプラント以外の治療法を検討すると良いでしょう。一方で、比較的軽度の腎疾患であれば、インプラント治療できるかもしれませんので、内科の主治医と相談してください。歯科医師と連携した上で、対処法を考案します。

できない⑧麻酔を使用したくない

注射に伴う痛みなどが不安で麻酔をしたくないという場合は、インプラント治療はできません。麻酔なしで外科手術を行うことは不可能だからです。

対処法:痛みの少ない麻酔法を選択する

歯科麻酔は、工夫次第で痛みを和らげられます。事前に表面麻酔を施すことで、注射による痛みは取り除けます。極細の針を使用したり、電動麻酔器で注入速度を一定に保ったりことでも麻酔処置に伴う痛みは軽減可能です。

できない⑨メンテナンスに通えない

仕事が忙しくて治療後のメンテナンスに通えないという人は、インプラントをおススメできません。インプラントには、3~6ヵ月に1回メンテナンスが必須となっているからです。治療後のメンテナンスを怠ると、装置の故障やインプラント周囲炎の発見が遅れるだけでなく、インプラントの保証も受けられなくなります。

対処法:頑張ってメンテナンスを受ける

インプラントのメンテナンスは、それほど高頻度に受けるものではないため、頑張って時間を作りましょう。メンテナンス自体は1時間程度で終わることがほとんどです。メンテナンスでは、インプラントのクリーニングを受けたり、正しいセルフケア方法を学んだりすることもできます。インプラントを長持ちさせるためにも、定期的なメンテナンスは欠かさないようにしてください。

難しい症例に有効な治療法

顎の骨が薄かったり、少なかったりするなどの難しい症例では、次のような処置を施すことでインプラント治療ができるようになります。

治療法ソケットリフト

上顎の奥歯に軽度の骨量不足が認められるケースで適応されます。骨が不足している部分に人工骨や補填剤を入れて、骨の再生をはかります。インプラントを埋め込む方向からアプローチします。骨造成のためだけに歯茎を切開したり、顎の骨に穴を開けたりする必要がないので、心身にかかる負担も比較的少ないです。

治療法サイナスリフト

ソケットリフトよりも骨の不足量が多いケースに適応される施術法です。顎の側面からアプローチする点は、ソケットと異なります。骨造成のために歯茎の切開などが必要となるため、心身への負担が大きくなります。ただ、重症度の高い症例でも骨をしっかりと再生できる点は、非常に大きなメリットといえます。骨の不足が大きくてインプラントは無理と断られた場合でも、サイナスリフトに対応している歯科医院なら、適応可能となるケースも珍しくありません。

治療法GBR(骨組織誘導再生法)

いろいろな部位の骨不足を解消できる治療法です。特殊な材料を不足部位に填入して、骨の再生をはかります。汎用性が高く、さまざまな症例に適応可能です。

治療法ソケットプリザベーション

歯を抜いた部分に人工骨や骨補填剤を填入する治療法です。身体への負担が少なく、抜歯後の骨吸収を防ぐこともできます。

治療法スプリットクレスト

前歯の顎の骨の厚みが不足している症例に適応される手術法です。顎の骨を分割してすき間を作り、そこにインプラントを埋め込み、骨補填材を填入します。その他の治療法と比較すると、心身への負担が軽いといえます。インプラントの埋入を骨造成と同時に行う点もやや特殊な施術法といえるでしょう。

治療法エクストルージョン

歯を引っ張り上げて、骨を増加させる方法です。一般的な歯科治療では、引っ張り上げた歯に被せ物を装着しますが、インプラント治療を行う場合は、顎の骨の状態が整ったら抜歯をして人工歯根を埋入します。もちろん、引っ張り上げた歯が十分に活用できるのであれば、インプラント治療を行う必要はありません。

¥110,000(調整料¥3,300/回)

治療法CTG(結合組織移植術)

加齢や歯周病などで歯茎が下がっている場合に適応される治療法です。お口の中から結合組織を採取して、歯茎が下がっている部分に貼り付けます。その結果、見た目が美しくなると同時に、インプラントを歯茎で支えることが可能となります。

まとめ

今回は、インプラントが出来ない人の特徴と難しい症例に有効な治療法について解説しました。今現在、インプラントできない状態であっても、適切な処置を施すことでインプラントできるようになることも珍しくありません。他院でインプラントできないと診断された方は、お気軽に当院までご相談ください。精密に検査した上で、最善といえる解決方法をご提案します。

インプラント治療が怖いといわれる理由とは?その恐怖心を軽減させる方法を解説

インプラントが優れた治療法であることはわかっていても、トラブルやリスク、痛みなどが怖くてなかなか一歩踏み出せない人も多いようです。確かにインプラント治療は、従来法の入れ歯・ブリッジとは異なる点が多々あるため、不安や恐怖心を抱いてしまう気持ちもよく理解できます。また、インプラント治療に対して、漠然とした恐怖心を持っている方もいらっしゃることでしょう。
そこで今回は、インプラント治療が怖いといわれる理由と、恐怖心を軽減させる方法について詳しく解説します。

インプラント治療が怖いといわれる理由

世間でインプラント治療が怖いといわれる理由としては、次の9点が挙げられます。

怖い➀外科手術がある

インプラント治療が怖いと感じる人の多くは、外科手術への不安感があります。顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込む手術では、歯茎をメスで切開したり、ドリルで骨に穴を開けたりするなどの処置が必要となります。そうした外科手術への不安感が恐怖心へと変わり、インプラント治療から遠ざけてしまっているようです。実際、外科手術に伴うリスクをゼロにすることは不可能なので、それに対する不安感や恐怖心も完全に拭うことはできません。ただし、静脈内鎮静法などを実施することで、不安感や恐怖心を軽減することは可能です。

怖い②インプラントに馴染みがない

インプラントは比較的新しい歯科治療です。近年、日本でもかなり普及してきてはいますが、まだインプラントに馴染みがないという方も多いことでしょう。馴染みのないものに対しては、誰しも不安感や恐怖心を持ってしまいます。ただ、インプラント治療が日本で始まったのが1983年なので、もうすでに半世紀近く経過していることを考えると、信頼できる歯科治療と捉えても良いのではないでしょうか。

怖い③歯科医院・医師に対するイメージがよくない

昔から歯科医院は「痛い思いをするところ」というイメージがあるため、歯科医師・歯医者と聞くだけでも拒絶反応を示してしまう人もいらっしゃいます。そこに、外科手術が必須となるインプラントのネガティブなイメージが重なると、より一層、怖いという感覚が強くなることでしょう。

怖い④年齢的な不安

インプラント治療で年齢的な不安を抱える人は、若年者と高齢者の2つに分けられます。若年者に関しては「若いうちからインプラントをするのは恥ずかしい」という感情が生まれ、高齢者は「手術に耐えられるか心配」という健康への不安からインプラント治療が怖いと感じるようです。現実的には、20歳前後や80歳を超えてからインプラント治療を受ける人はたくさんいらっしゃいます。

怖い⑤治療費が高くなりそう

インプラント治療は、費用面においても不安を感じる人が多いようです。保険が適用されず、専門性の高い処置が必要となる治療だけに、費用も高額になるイメージが強いのでしょう。実際、インプラント1本当たりの費用は300,000~400,000円が全国的な相場となっているため、従来のブリッジや入れ歯と比較した場合は、治療費が高くなります。

怖い⑥長持ちしなさそう

インプラントでは、さまざまなトラブルによって装置の寿命が縮まる場合があります。とはいえ、一般的な症例では少なくとも10年以上、長ければ40年以上持つこともあるくらいなので、インプラントは長持ちしなさそうというのは、少し偏った見方と言わざるを得ません。保険で作った入れ歯は4~5年で寿命を迎えるといわれていますから、インプラントだから装置が長持ちしないというのはまずありえないでしょう。ただし、治療後のメンテナンスを怠ると、保険の入れ歯やブリッジより長持ちしなくなることもありますので、その点はご注意ください。

怖い⑦手術の痛み・腫れ

インプラント手術後に現れる痛みや腫れが怖いというお気持ちはよく理解できます。術中は麻酔が効いているので痛みを感じることはありませんが、術後はそれなりの痛みと腫れが現れます。治療後の腫れがどのくらいになるからは、手術を担当した歯医者の腕や採用した治療法によっても大きく変わります。とはいえ、インプラント治療では必ず術後に痛み止めと腫れ止めが処方されますので、それらを歯医者の指示通りに服用すれば、極端な症状が現れることも少なくなります。

怖い⑧インターネット上の声

インターネット上の口コミや感想を読んで、インプラント治療が怖いと感じる人は意外に多いものです。インターネット上では、インプラント治療で失敗した体験談やトラブルなどが理由も含めて強調されていることもあり、ネガティブな印象を持ちやすくなっているのでしょう。経験者による感想を見聞きすることはとても大きなメリットとなりますが、偏った情報ばかり頭に入れてしまうと、適切な判断が下せなくなることもありますので、その点は十分にご注意ください。

怖い⑨実際に起きたトラブル

過去には、インプラント治療でトラブルが起きた例もいくつかあります。とくにメディアでも報道されるような大きなトラブルがあると、「インプラント治療は怖いもの・危険なもの」という認識が固定されてしまいますよね。現実として、不適切なインプラント治療を実施する歯科医院は少なからず存在していることから、歯医者選びは慎重に行う必要があるといえるでしょう。

インプラント治療に対する恐怖心を軽減させる方法

インプラント治療に対する恐怖心が強い人は、以下に挙げる9つの方法を実践してみてください。インプラントが怖いという気持ちが和らぐとともに、より精度の高い治療を受けることも可能となります。

方法①治療前にカウンセリングを受ける

インプラント治療に対する恐怖心や不安感がある人は、カウンセリングでそのことをしっかり伝えましょう。信頼できる歯医者なら、カウンセリングの段階でそうした心理面の不安要素をていねいに取り除いてくれます。インプラント治療に伴うリスクやデメリットもきちんと説明した上で、トラブルを回避する方法や痛みを軽減する手段も提案してくれることでしょう。

方法②インプラント治療の流れを把握する

前段で取り上げた「インプラントが怖いといわれる理由」の大半は、治療の流れを正確に把握するだけでも解消されます。インプラント治療にかかる期間や費用、手術内容などを知ると、漠然とした不安や恐怖心も嘘のように和らぐことでしょう。ちなみに、インプラント手術で人工歯根を埋入する処置自体は30分以内に終わり、施術全体でも1~2時間程度で完了します。手術の前後で入院する必要もないため、皆さんが想像しているよりも気軽に受けられる治療法なのです。

方法③静脈内鎮静法を検討する

インプラント手術中の痛みは、麻酔を作用させることで取り除くことができますが、それでも不安感が拭えない、手術がどうしても怖いという方は、静脈内鎮静法を検討されてみてはいかがでしょうか。静脈内鎮静法とは、腕の静脈から鎮静剤を投与する麻酔処置で、半分眠ったような気分のまま手術を受けられます。静脈内鎮静法を併用した治療に対応しているかどうかは歯科医院によっても異なりますが、インプラント手術へのネガティブなイメージが強い人にはおすすめですので、カウンセリングを受ける際に相談してみましょう。

方法④手術後もカウンセリングを受ける

インプラント治療のカウンセリングは、手術前だけでなく、手術後も受けることが大切です。インプラント手術後は、顎の腫れや痛みが生じるため、歯科医師の指示した通りに薬を飲み、安静に過ごす必要があります。チタン製の人工歯根と顎の骨とが結合するまでにはそれなりに長い期間を要するため、アバットメントや上部構造を取り付けるまでの間の過ごし方や注意点についても、きちんと聞いておかなければなりません。すべての処置が終わった後のメンテナンスも継続的に受けるようにしましょう。

方法⑤インターネット上の声を鵜呑みにしない

インターネット上に流れている情報は、必ずしも正しいとは限りません。インプラント治療では、辛い思いや怖い思いをした人の意見が強調されたような形で掲載されていることも珍しくないからです。もちろん、インプラントにもデメリットはありますが、術後のリスクや失敗する可能性などは、歯科医師の口から聞いた方が正確な情報が得られることでしょう。

方法⑥豊富な実績を持つ歯科医院を選ぶ

インプラントへの不安や恐怖は、ご自身にとって未知の治療法である点が大きく関係しています。インプラントがそもそも先進的な医療なので、そうした感情を抱くのも当然ですが、歯科医師まで経験が浅かったら、この治療法への不安や恐怖は解消されないでしょう。手術中に体調が悪くなったらどうなるのか。万が一、失敗したらこの歯科医院でリカバリーできるのかなど、不安要素を考え出したらきりがなくなります。これは従来法の入れ歯やブリッジには伴わない悩みですね。そんな時、豊富な実績を持つ歯科医院なら、インプラントに関するあらゆる疑問に答えてくれますし、万が一、トラブルが発生したとしても適切に対処してくれることでしょう。

方法⑦インプラント治療は特別なものではないと知る

インプラントは歯科治療で唯一、人工歯根から回復できる治療法であり、画期的な技術であることに間違いはないのですが、過剰に特別視する必要はありません。とくにインターネット上の信憑性に欠ける情報を鵜呑みにすると、インプラントという素晴らしい治療を受ける機会を逃してしまうこともあり得ます。ちなみに、インプラントには「10年生存率」という有名な統計データがあり、治療を受けた人の90%以上が10年経過してもインプラントを正常なまま使い続けていることが分かっています。

まとめ

今回は、インプラント治療が怖いと言われる理由や恐怖心を軽減させる方法について解説しました。本文でも述べたように、インプラント治療は決して特別なものではありません。適切な方法で実施すれば、ほとんどのケースで成功するどころか、従来法とは比較にならないほど、長い期間使い続けることも可能なのです。また、インプラント手術への不安感や恐怖心を取り除く方法もいろいろと用意されていますので、インプラントにネガティブなイメージを持っている人はまずカウンセリングを受けてみましょう。

奥歯をインプラントにするデメリットとは?メリットや歯科医院の選び方等も解説

インプラントは前歯にも奥歯にも適応できますが、それぞれでメリットとデメリットがどのように異なるのか気になりますよね。奥歯は強い力がかかる部分なので、何となくデメリットが大きいように感じている方も多いことでしょう。そこで今回は、奥歯をインプラントにするデメリット・メリットや歯科医院の選び方について詳しく解説します。

インプラントとは

虫歯や歯周病を重症化させると、歯そのものを失うリスクが高くなります。お口全体の健康を維持するため、抜歯することになるのですが、その後の治療法としてはこれまで「入れ歯」と「ブリッジ」という2つの選択肢しかありませんでした。どちらも保険が適用され、短期間に欠損部を補える優れた治療法ではあるものの、歯の頭の部分である歯冠(しかん)しか回復できないため、いろいろなリスクやデメリットを伴います。そこで登場したのが「インプラント」です。

インプラント治療では、歯冠だけでなく歯の根っこの部分である歯根(しこん)まで回復できることから、入れ歯やブリッジの欠点の多くを解消できます。歯科医院での外科手術が必須となりますが、審美性・機能性・耐久性に優れた人工歯+人工歯根を手に入れることができるので、近年ではインプラント治療を受ける人が増えています。

奥歯の範囲

私たちの歯は、前歯と奥歯の2つに大きく分けられます。前歯は食べ物を噛み切るための歯で、前から3番目までの歯が該当します。つまり、奥歯というのはそれ以降、7番目までの歯を指すことになります。厳密には4~5番目を「小臼歯(しょうきゅうし)」、6~7番目を「大臼歯(だいきゅうし)」と呼び、上下左右の合計で16本が奥歯に当たります。前歯の総数が12本ですので、奥歯の方がやや多いですね。ちなみに、一番奥に生えてくる“親知らず”は専門的に「第三大臼歯」と呼ばれており、これも奥歯に含める場合もあります。そうした奥歯の主な機能は、食べ物をすりつぶすことです。

奥歯をインプラントにするデメリット

奥歯をインプラントにする場合は、まずデメリットが気になる方が多いようです。インターネット上にも、奥歯のインプラント治療のデメリットに関する書き込みをよく目にします。ここでは、そんな奥歯のインプラント治療のデメリットについて、正しい情報を提供します。

デメリット①治療費用が全額自己負担

インプラント治療は、原則として全額自己負担となります。それは奥歯だけでなく、前歯も同様です。インプラントは1本当たり400,000円前後の費用がかかる治療法なので、保険が適用させてしまったら国の医療費も大きくかさんでしまいます。そもそも現状では、ブリッジや入れ歯といった必要最低限の見た目や機能を回復できる治療が保険で受けられることから、先進的なインプラント治療まで国で補助する必要はないと考えられているのでしょう。

デメリット②インプラント周囲炎を起こす可能性がある

インプラントは、歯冠から歯根まですべてがチタンやセラミックで構成されているので、どんなにケアを怠っても虫歯になることはありません。けれども、インプラント体やアバットメントの周りにあるのは生きた歯茎や歯槽骨(しそうこつ)なので、不潔になることで歯周病は発症します。とくにインプラントと歯茎の境目には汚れがたまりやすく、「インプラント周囲炎」というインプラント特有の歯周病が存在しているくらい、歯肉炎・歯周炎のリスクが高くなっています。このリスクは奥歯でも前歯でも変わりはありません。

手術によって顎に埋め込んだインプラント体(=人工歯根)は、歯茎や歯槽骨によって支えられていることから、インプラント周囲炎でそれらが破壊されると、装置が脱落してしまいます。それだけにインプラントでは歯周病を予防することが何よりも重要となるのです。

デメリット③顎の骨を増やさなければならない場合がある

インプラント治療の可否は、顎の骨の状態によって決まることが多いです。顎の骨が足りないとチタン製のネジを安全に埋め込めないからです。そのため歯科用CTによる精密検査で顎骨の不足が認められた場合は、「骨造成(こつぞうせい)」という手術を行う必要が出てきます。具体的には、GBR法、ソケットリフト、サイナスリフトなどを実施して、不足した骨を増やし、人工歯根を安全に埋め込める環境を整えます。

デメリット④治療期間が長い

インプラント治療には必ず「治癒期間」が設けられます。人工歯根と顎の骨が結合するまで待つ期間を指します。下の顎であれば3ヵ月くらい、上の顎の場合は6ヵ月くらい待つことになります。その後はアバットメントの装着や上部構造(=人工歯)の作製も行うため、全体としては6~12ヵ月程度の期間を要します。従来法のブリッジは3~4週間、入れ歯は1~2ヵ月で治療が完了することから、インプラントは治療期間が長くなる治療法と言わざるを得ません。

デメリット⑤コンディションが良好でないと治療を受けられない

インプラント治療には外科手術を伴うことから、患者様のコンディションが重要となります。高血圧症や糖尿病、心疾患など、全身状態が大きく変化しやすい病気を患っている場合は、投薬によるコントロールが必要となります。患者様のコンディションが手術前や手術中に大きく悪化した場合は、治療を中断せざるを得なくなります。

もともと大きな病気にかかっていなくても、手術への恐怖心や不安感が強いと治療が受けられなくなることもあります。いわゆる“歯科恐怖症”です。そうした精神面におけるコンディションの問題は、笑気麻酔や静脈内鎮静法で解決できます。歯科恐怖症ではない人でも、初めての外科手術が怖い場合は静脈内鎮静法で対応することも珍しくありません。

デメリット⑥治療後のメンテナンスが必須

上述したように、インプラントは歯周病リスクが高い治療法です。使用していく中で上部構造が破折したり、アバットメントのネジが緩んだりすることもあるため、治療後のメンテナンスが必須となっています。インプラント保証を受ける条件として、治療後のメンテナンスが課せられている場合も多いです。

デメリット⑦CT撮影が必須

ブリッジや入れ歯は、レントゲン撮影だけで治療を進めていくケースがほとんどです。どちらも肉眼で確認できる部分だけに処置を施す治療法あることから、歯科用CTによる精密検査までは必須となっていないのです。一方、顎の骨という肉眼では確認できない部分への処置がメインとなるインプラント治療では、歯科用CTによる精密検査が必須となっています。顎の骨の厚みや幅、密度などを正確に把握することで、インプラント手術を安全に行えるようになります。

奥歯をインプラントにするメリット

ここからは奥歯のインプラント治療のメリットに関する解説です。

メリット①残っている歯を傷つけずに機能を取り戻せる

ブリッジは、短期間かつ安価に欠損部を補える方法ですが、支えとなる歯を大きく削らなければなりません。入れ歯もクラスプを引っ掛ける部分やレストと呼ばれるパーツを設置する部分の歯質を一部削らなければならない場合もあります。そもそもこれらの装置には歯根がないため、噛んだ時の力を残った歯で受けとめなければならないのです。

その点、インプラントは歯根まで回復できる治療法であることから、残っている歯を削ったり、傷付けたりする必要はありません。噛んだ時の力もインプラントと顎の骨でしっかり支えることができます。

メリット②顎の骨が弱くなるのを防止できる

私たちの骨は使わなければ弱くなっていきます。骨折をしてギプスを巻き、松葉杖で歩いていると、折れた方の足がどんどん痩せていきますよね。それと同じ現象が顎の骨でも起こるのです。インプラントには、顎の骨に根差した人工歯根があることから、天然歯と同じような咀嚼(そしゃく)機能を発揮できます。その結果、顎の骨が弱くなるのを防止できるのです。これは目に見えてはっきりとわかるメリットではありませんが、お口の健康維持・増進という観点において極めて有益です。

メリット③噛み合わせを調整できる

残っている歯に引っ掛けたり、被せたりする入れ歯やブリッジは、装置の安定性や噛み合わせを精密に調整することはなかなか難しいです。その点、インプラントは、何もないまっさらな場所に人工歯根を埋め込んで、上部構造を装着する治療法なので、噛み合わせまでしっかり調整できます。

メリット④審美性に優れている

近年、過去に入れた入れ歯やブリッジをインプラントに代えたいと希望される患者様が増えています。これは従来法の見た目があまり良くないからです。いろいろなパーツが付随する入れ歯は言うまでもなく、複数の人工歯が連結しているブリッジも歯列に調和しにくい面が多々あります。装置に使用されている金属が目立つこともあるでしょう。一方、インプラントは天然歯とほぼ同じ構造であり、金属部分も目立ちにくいことから、従来法よりも審美性に優れているといえます。適切な方法で装着した人工歯根+上部構造なら、天然歯列と調和するため、どの部分を治療したのかわからなくなります。

メリット⑤食事を楽しめる

入れ歯は安定性が低く、食事の時にずれる・外れることがよくあります。ブリッジも歯根の部分がないため、天然歯のような噛み心地は再現できません。ここでもやはり重要となるのは「歯根」なのです。インプラントには顎の骨と結合した人工歯根が存在しており、食事中に装置がずれる・外れるリスクはゼロに近いです。硬い食べ物もしっかり噛むことができ、本物の歯があったときと同じように食事を楽しむことができます。

メリット⑥発音を維持できる

入れ歯やブリッジはその構造上、発音を邪魔することが多いです。とくに入れ歯はしゃべっている時にずれるため、発音しにくいと感じやすいことでしょう。繰り返しになりますが、インプラントは天然歯とほぼ同じ構造を採っており、しゃべっている時にずれることもないため、歯を失う前と同じ発音状態を維持することができます。

メリット⑦入れ歯・ブリッジより痛みを感じにくい

装置が不安定であったり、残った歯に大きな負担がかかったりする入れ歯やブリッジは、使っていく中で痛みを感じやすいです。それに対してインプラントは、複雑なパーツは付随しておらず、噛んだ時の力も人工歯根と顎の骨でしっかり支えられることから、日常的に痛みを感じることはまずありません。虫歯になるリスクもなく、歯を削ったりするような処置も必要となることはないでしよう。

インプラント治療のメリット・デメリットは奥歯も前歯も変わらない

ここまで奥歯のインプラント治療について解説してきましたが、ほぼすべての項目を前歯のインプラントの特徴やメリット・デメリットに置き換えることができます。つまり、インプラント治療におけるメリット・デメリットというのは、奥歯も前歯も大差はないのです。インターネット上には「奥歯のインプラントには危険が伴う」といった書き込みがあれば、「前歯のインプラントは失敗しやすい」といった表現でそのリスクを強調している文章も目にします。結局、どのような治療法にもメリット・デメリットを伴うため、ご自身にとって最善といえる方法を選ぶことが何よりも大切だといえます。

インプラント治療を受ける場合の歯科医院の選び方

インプラント治療は、外科手術を伴うという点において、従来法とは異なります。ブリッジや入れ歯より専門性の高い治療だけに、歯科医院選びには細心の注意を払う必要があるのです。そこで今現在、インプラントを検討中の方は、少なくとも以下の2点に着目して治療を任せる歯科医院を選ぶようにしましょう。

選び方①事前の説明を丁寧に行っているかどうか

インプラントは、多くの人にとって未知の治療法です。治療にどのような器具を使うのか、どのくらいの期間で治療が完了するのか。そもそも「インプラント」とは何なのか。そうしたインプラントに関する多くの疑問を解消するのが事前の説明の目的であり、歯科医師が果たすべき役割でもあります。その説明をおざなりにするような歯科医師は論外として、専門用語が多くて説明がわかりにくい、こちらの質問の意図を上手く汲み取ってくれないなど、カウンセリングの段階で相性の悪さを感じた場合も、慎重に考えた方が良いと言えます。インプラントはある意味で“一生もの”の治療なので、心から信頼できる歯科医師に任せるべきでしょう。

選び方②実績・知識が豊富かどうか

専門性の高い治療ほど、高度な技術や知識、豊富な経験が求められます。それは先進的な医療であるインプラントで顕著に見られる傾向です。これまで経験してきたインプラント治療の数や症例のバリエーションで、その歯科医師の知識・技術・実績をある程度、推測することができます。その他、カウンセリングでは歯科医院の設備についても確認しておくと良いでしょう。歯科用CTが完備されていることはもちろん、衛生管理が徹底された環境で、インプラント手術を行えることも必須条件といえます。

まとめ

今回は、奥歯をインプラントにするメリット・デメリットや歯科医院選びのポイントについて解説しました。本文でも述べたように、インプラント治療のメリット・デメリットは、奥歯も前歯も大した違いはありません。奥歯だから入れ歯の方が良いとか、前歯だからブリッジの方が良いということにもなりませんので、その点は正しく理解しておくことが大切です。インプラントの歯科医院選びについては、上記の2点を押さえておけば大きく失敗することもなくなるかと思います。
インプラント治療について、他の歯科医院で説明を受けたがよくわからないという方は、一度当院までご相談ください。当院は、インプラント治療の実績が豊富な歯科医院です。

インプラントかブリッジかどっちがいい?徹底比較とおすすめの人を解説

ケガや虫歯などで歯を失った場合は、インプラント・ブリッジ・入れ歯の3つから治療法を選ぶことになります。それぞれに異なる特徴があり、適した症例も違ってきますが、今回は比較的類似点の多いインプラントとブリッジの2つを比較しながら、それらの違いについて解説します。

インプラント治療は、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込み、その上にアバットメント(土台)と上部構造(人工歯)を装着する方法です。ブリッジ治療は、欠損部の両隣の歯を大きく削って土台とする装置で、3本以上からなる連結した被せ物を装着する方法です。どちらも固定式の治療方法ではありますが、異なる点も多々見受けられます。

インプラントとブリッジの比較早見表

インプラント

ブリッジ

歯を削るかどうか

削らない

削る

治療箇所の周囲の状態から受ける影響

あり

なし

外科処置の要否

必要

不要

トラブルの有無

外科手術に伴うトラブルあり

通常の歯科治療と同様のトラブルあり

最大咬合力と咀嚼能率

天然歯に限りなく近い

天然歯の60%程度

周囲の歯への負担

なし

あり

違和感

なし

なし

審美性

極めて自然で美しい

装置の設計によっては審美性が悪くなる

平均寿命

10年以上

7~8年(保険診療)

メインテナンス方法

少し特殊

天然歯とほぼ同じ

費用

やや高い(保険適用外)

安い(保険適用)

治療期間

最短でも6ヵ月以上

3~4週間

インプラントとブリッジの比較

比較①歯を削るかどうか

インプラント

顎の骨に埋め込む人工歯根が土台となり、被せ物の支えとなるため残った歯を削る必要はありません。

ブリッジ

欠損部の人工歯を橋渡しするために、両隣の歯を全周にわたって1.0~1.5mm程度削らなければなりません。失った歯の本数が増えるほど、削る歯の本数も増えていきます。

比較②治療箇所の周囲の状態から受ける影響

インプラント

顎の骨にチタン製のネジ(=人工歯根)を埋め込む必要があるため、骨の状態は良好であることが前提となります。治療箇所の周囲に分布する神経や血管の位置にも最新の注意を払わなければなりません。

ブリッジ

欠損部の両隣の歯が健康であれば適応可能です。周囲の骨や歯周組織、神経の状態などに影響を受けることはありません。

比較③外科処置の要否

インプラント

すべてのケースにおいて外科処置が必須となります。歯茎をメスで切開し、顎の骨にドリルで穴を開けるなどの処置を実施するため、重度の高血圧症や糖尿病などを患っている場合は、インプラント治療を適応できないことがあります。

ブリッジ

出血を伴うような外科処置は不要です。歯茎や顎の骨に手を加えることはまずありません。重篤な全身疾患を患っていたとしても、基本的には施術可能です。

比較④トラブルの有無

インプラント

人工歯根の埋入手術を行う際、重要な神経や血管を傷つけるリスクがあります。術前・術後に細菌感染を招いたり、人工歯根が顎の骨に定着しなかったりするなどのトラブルも起こり得ます。

ブリッジ

支えとなる歯を大きく削ることで、歯が脆くなる・歯の寿命が縮まる・虫歯のリスクが高まるといったトラブルが起こり得ます。

比較⑤最大咬合力と咀嚼能率

インプラント

インプラントには人工歯根があることから、食べ物を噛み砕く「咀嚼(そしゃく)能率」は、天然歯の80%程度まで回復できると言われています。噛む力の最大値(=最大咬合力)は、天然歯とほぼ同じです。

ブリッジ

ブリッジには人工歯根がなく、欠損部には歯の頭の部分である歯冠(しかん)だけが配置されるため、咀嚼能率は天然歯の60%程度にとどまります。最大咬合力は、天然歯とほぼ同じです。

比較⑥周囲の歯への負担

インプラント

失った歯を歯根から回復できるインプラントは、独立した補綴(ほてつ)装置であるため、周囲の歯に負担を強いることはありません。噛んだ時の力は、上部構造と人工歯根、顎の骨でしっかりと受け止めます。

ブリッジ

ブリッジ治療では、欠損部にポンティックと呼ばれる歯冠だけの人工歯が配置されることから、噛む力は両隣の歯が受けて止める形となります。支えとなる歯には大きな負担がかかるため、その分、歯の寿命も短くなりがちです。

比較⑦違和感

インプラント

インプラント治療では、顎の骨に埋め込んだ人工歯根が上部構造をしっかりと支えるため、食事や会話中にズレたり、外れたりすることはありません。装着感も良好です。

ブリッジ

ブリッジもインプラントと同様、固定式の装置なので、入れ歯のような使用感の悪さはありません。ただし、人工歯を複数連結した形態のブリッジは、インプラントよりも装置による違和感が生じやすいといえます。

比較⑧審美性

インプラント

インプラントは、天然歯とほぼ同じ構造の装置であることから、審美性は極めて高いです。ただし、上部構造に銀歯を選択した場合は、インプラントでも見た目は悪くなります。

ブリッジ

人工歯を複数連結するブリッジは、審美性においてインプラントよりやや劣ります。人工歯の材料として金属を選択した場合は、見た目がさらに悪くなります。

比較➈平均寿命

インプラント

一般的には10年以上持つものと考えられています。いわゆる10年生存率は、90%以上です。

ブリッジ

10年生存率は、50~70%程度にとどまります。保険のブリッジは7~8年で寿命を迎えることが多いです。

比較➉メインテナンス方法

インプラントもブリッジも、歯科医院でクリーニングやスケーリング(歯石除去)を受けることで、良好な状態を維持できます。インプラントに関しては、上部構造を取り外してクリーニングするなど、少し特殊なメインテナンスも行われます。

比較⑪費用

インプラント

保険が適用されず、費用はやや高いです。

ブリッジ

保険と自費のどちらかを選択することができるため、治療にかかる費用を抑えることは可能です。

比較⑫治療期間

インプラント

インプラント治療には、人工歯根と顎の骨の結合を待つ治癒期間があるため、全体としては6~12ヵ月程度の期間を要します。

ブリッジ

一般的な症例では3~4週間で治療が完了します。

インプラントがおすすめな人

インプラント①他の歯を削りたくない人

健康な歯を一切削りたくないという人には、インプラント治療がおすすめです。インプラントは人工歯根が土台となるため、周りの歯を削る必要がありません。当然ですが、インプラントを埋め込む部位の歯は、抜歯する必要があります。これはブリッジや入れ歯も同じです。いわゆる補綴治療というのは、失った歯を補うために行うものなので、歯根だけでも残っていたら処置を進めることができなくなります。

インプラント②他の歯に負担をかけたくない人

インプラントは、噛んだ時の力を人工歯根と顎の骨で受けとめることができます。ブリッジのように両隣の歯に大きな負担をかける必要がなく、お口全体の健康維持にも寄与します。

インプラント③再治療・メインテナンスを簡単に済ませたい人

インプラントは、独立して存在している装置です。メンテナンスを行う時や再治療を行う時にも、他の歯に影響を与えることがありません。これは、インプラント治療における極めて大きなメリットといえます。

ブリッジがおすすめな人

ブリッジ①外科手術に抵抗がある人

ブリッジ治療は、歯茎をメスで切開したり、顎の骨にドリルで穴を開けたりする外科手術が不要です。通常の被せ物治療と同じような手順で失った歯の機能・審美性を回復させたい人には、インプラントよりブリッジの方がおすすめといえます。

ブリッジ②治療期間を短くしたい人

ブリッジは、インプラントよりも治療期間が短いです。これは手術が不要であるからです。標準的な症例なら3~4週間で治療が完了します。抜歯を伴う場合は、治癒期間も含めると1ヵ月以上の期間を要します。少なくとも、治療期間が半年以上はかかるインプラントとは大きく異なります。

ブリッジ③費用を抑えたい人

ブリッジを保険診療で受けた場合は、治療費を20,000円程度に抑えられます。1本当たり300,000~400,000円の費用がかかるインプラントと比較すると、かなりリーズナブルといえるでしょう。

ブリッジ④歯を削りたくない人

ブリッジは、両隣の歯を大きく削る必要性のある治療法ですが、前歯に関しては例外的なケースもあります。それは「接着性ブリッジ」と呼ばれる手法です。前歯をほんの少しだけ削ってブリッジを貼り付ける方法なので、通常のブリッジ治療よりも残った歯への負担が少なくなります。

まとめ

今回は、失った歯の治療法として、インプラントとブリッジを比較しました。かなり細かい部分まで解説したので、治療選択の際の参考になるかと思います。大切なのは治療に何を求めるかです。絶対的に優れている治療法というのは存在しないため、ご自身にとって最善といえるものを選ぶことが重要となるでしょう。

インプラントと入れ歯どっちがいい?それぞれのメリット・デメリット等を解説

歯を丸ごと1本、もしくは複数本失った人は、何らかの方法で欠損部を補わなければなりません。その際、選択肢として挙がるのが「インプラント」と「入れ歯」です。この2つの治療法で悩まれている方も多いことでしょう。今回はそんなインプラントと入れ歯の違いについて、それぞれのメリット・デメリットを比較しながらわかりやすく解説します。

インプラントとは

インプラントとは、失った歯の「第3の治療法」とも呼ばれるもので、ブリッジや入れ歯よりも歴史が浅いです。歯科医院によっては対応していないところもあり、歯科医師にはそれ相応の知識や技術、経験が求められる治療法といえます。

インプラントの最大の特徴は、歯の頭の部分である歯冠(しかん)だけではなく、歯根まで回復できる点です。顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込む手術を行い、しっかりと固定をすることで人工歯の強固な土台となります。外科手術が必須という点で、患者さまの心身にかかる負担がやや大きくなりますが、天然歯に限りなく近い見た目、噛み心地を再現することが可能です。

入れ歯とは

失った歯の治療法としては、最も有名な装置です。おそらく、皆さんも「入れ歯」と聞いてすぐに具体的なイメージが頭に浮かぶかと思います。入れ歯には、1本から複数本の欠損を補う「部分入れ歯」とすべての歯を失った症例に適応できる「総入れ歯」の2種類があります。つまり、入れ歯はすべての症例に適応できる治療法なのです。

また、入れ歯治療では、インプラントのような外科手術が必要となることはありません。入れ歯をお口の中に固定するためのパーツの設置部分を少し削ることはありますが、外科手術とは程遠い処置といえます。歯科医院に通う回数もそれほど多くはなく、短期間で欠損部を補えます。

ただし、入れ歯には人工歯根がなく、取り外し式の装置でもあるため、インプラントのようにしっかり噛むことはできません。見た目もあまり良くないのが難点です。

インプラントと入れ歯どっちがいいか悩む要素

インプラントと入れ歯で悩む要素としては、以下の3点が挙げられます。

要素①費用

インプラントと入れ歯では、費用の面で大きな違いが見られます。インプラント治療には原則として保険適用されないため、費用は全額自己負担となります。自由診療なので歯科医院によって料金設定も大きく異なりますが、インプラント1本当たり400,000円前後の費用がかかるのが一般的です。
一方、入れ歯には保険適用されることから、費用負担は1~3割となります。そもそも入れ歯に使用する素材は原材料費が安価であり、3割負担の場合は5,000~15,000円程度で製作できます。
こうした治療にかかる費用の違いという観点で、入れ歯を選んだ方がよいのか、機能性に勝るインプラントを選んだ方がよいのか悩む方が多いのでしょう。

要素②手入れ

お手入れの方法においても、インプラントと入れ歯には大きな違いが見られます。顎の骨に人工歯根を埋め込んで固定するインプラントは、天然歯とほぼ同じ構造を採っており、特別なお手入れは必要ありません。天然歯と同じ方法でブラッシングすれば、きれいな状態を保てます。

取り外し式の装置である入れ歯は、お手入れの方法がインプラントと根本的に異なります。お手入れする際にはお口の中から外して、義歯ブラシという入れ歯専用の歯ブラシでやさしくブラッシングします。1日1回は、入れ歯洗浄剤を使った化学的洗浄も必要となります。つまり、装置のお手入れという観点においては、入れ歯の方が維持費がかかる可能性もあります。

要素③健康

インプラントと入れ歯で悩む大きなポイントに「健康」があります。インプラント治療には外科手術が伴うため、「心身に大きな負担がかかってしまうのでは」という不安があるようなのです。確かに、重度の高血圧症や糖尿病などを患っている方は、インプラントの手術で深刻なトラブルが生じるリスクもありますが、ほとんどの方は問題ありません。

「手術」と言っても、全身麻酔下で行うような大掛かりなものではなく、どちらかというと親知らずの抜歯に近いスケールの処置となることから、失敗するリスクは極めて少ないのです。人工歯根を埋め込む処置自体は1本あたり15分程度で終わります。もちろん、健康上の大きな問題がある場合は、手術が必要ない入れ歯を選択した方が良いと言えます。この点は、かかりつけの医師や歯科医師としっかり相談することが大切です。

インプラントと入れ歯のメリット

メリット①インプラント

インプラントは唯一「人工歯根」がある装置です。顎の骨に根差した歯根があることから、天然歯と同等の咀嚼(そしゃく)機能が手に入ります。硬い食べ物を噛んでも装置がズレたり、外れたりすることはありません。また、噛んだ時の力が顎の骨にしっかりと伝わるため、「顎の骨が痩せる」現象を最小限に抑えられます。見た目も天然歯そっくりなので、現状の歯列に自然と調和することでしょう。さらに、装置の寿命も長く、治療後のメンテナンスを十分に行えていれば、半永久的に使い続けることも不可能ではありません。過去には、インプラント治療を受けてからお亡くなりになるまで、40年以上使い続けられたケースもあります。

メリット②入れ歯

入れ歯は、外科手術が必要ないため、健康状態が良くなかったとしても治療を受けることができます。保険が適用される点も大きなメリットのひとつです。治療にかかる期間が短く、手軽に作れる装置であることは、インプラントにはない入れ歯の魅力と言えるでしょう。

インプラントと入れ歯のデメリット

デメリット①インプラント

インプラントは、失った歯の本数が多いほど、費用も高くなっていきます。例えば、3本の歯を失った場合は、基本的に3本の人工歯根を埋め込むことになるため、費用も1,000,000円を超えるのが一般的です。同時に、外科手術による心身への負担も大きくなります。その他、インプラントには治療期間が長いというデメリットもあります。インプラントでは、人工歯根が顎の骨に定着するまで数ヵ月待つ必要があるからです。

デメリット②入れ歯

費用が安くて治療期間が短く、手術を行わずに手軽に作れる入れ歯には、それ相応のデメリットを伴います。
まず、入れ歯は比較的大型の装置となるため、見た目の違和感が大きいです。金属製のバネ(=クラスプ)や歯茎を覆う義歯床(ぎししょう)などが付随することから、装着感もあまり良くありません。また入れ歯は、人工歯根によって強固に固定されるインプラントとは異なり、残った歯に引っ掛けたり、粘膜に吸着させたりすることで固定するので、安定感が良くないというデメリットもあります。ちなみに、保険診療で作った入れ歯の寿命は、4~5年程度と言われています。

インプラントと入れ歯どっちにするかの決め手

ここまでは、インプラントと入れ歯の特徴についてそれぞれ解説してきましたが、最終的な決め手となるポイントも知りたいですよね。

決め手①費用の安さ・手入れのしやすさなら「入れ歯」

インプラントは、実に優れた装置ではありますが、費用の安さと手入れのしやすさに重きを置くのであれば、入れ歯が推奨されます。まず、費用に関しては保険適用される時点で、入れ歯に軍配が上がりますよね。原則として自費診療となるインプラントは、1本当たり400,000円程度かかるのに対し、入れ歯ならすべての歯を失った症例でも20,000円程度の出費で済みます。この点は、比較にならないほどの違いが見られます。

次に、お手入れのしやすさという観点ですが、これには2つの考え方があります。例えば、インプラントは固定式の装置であり、天然歯と同じようなお手入れで済むのですが、治療後のメンテナンスは欠かせません。セルフケアとプロフェッショナルケアを一生涯、しっかり継続することで正常な状態を維持できます。入れ歯は取り外し式の装置であり、毎日自分の手で触りながらケアを徹底することが可能です。定期的な歯科医院への通院は必要ですが、お手入れのしやすさという面においても、入れ歯が優れていると考える人も多いことでしょう。

決め手②健康面重視なら「インプラント」

健康面を重視するのであれば、間違いなくインプラントが適しています。インプラント治療では、手術で顎の骨に人工歯根を埋め込むため、硬い食べ物でもしっかり噛めるようになり、顎の骨が痩せていく現象もほとんど起こりません。お口全体の機能回復にも大きく寄与し、食べる・飲み込む・しゃべる・呼吸することを自然に行えるようになります。インプラント治療による仕上がりは、歯科医師の技術や歯科医院の設備によって大きく左右されますが、信頼できる歯医者を見つけることができれば、健康面においても入れ歯より良い結果が得られやすいでしょう。インプラント治療ができる・できない等の条件はありますが、歯科医師に相談することで、解決できる可能性はあります。

インプラント治療ができないケース

失った歯の治療法として、健康面を重視した場合はインプラントが推奨されますが、ケースによっては適応できないこともあります。

◎重症度の高い全身疾患がある

次に挙げるような全身疾患は、軽度から中等度であればとくに問題はありませんが、重症度が高い場合は、インプラント治療できないことがあります。

  • 高血圧症
  • 心疾患
  • 糖尿病
  • 骨粗しょう症
  • 呼吸器疾患

重症度が高い場合でも症状が薬剤などでしっかりコントロールされていれば、インプラント手術が可能となることもあります。その場合には、かかりつけの医師と歯科医師で連携を取りながら、慎重に判断していくことになります。

◎歯周病にかかっている

歯周病は、インプラント治療の天敵とも呼ばれている病気です。進行した歯周病では、インプラントを埋め込み、支えるための顎骨が破壊されていってしまうからです。そのため歯周病にかかっている人は、あらかじめ歯周病を治療していただくこととなります。歯周病の症状がなくなれば、インプラント治療を受けられるようになります。

まとめ

このように、インプラントと入れ歯にはそれぞれに強みがあって、どちらかが絶対的に優れているとは言い切れません。経済面を優先するのであれば入れ歯、健康面を重視するのであればインプラント。もちろん、他にもいろいろな視点から比較して、選択することも可能なので、インプラントと入れ歯でお悩みの方は、お気軽に当院までご相談ください。

オールオン4 の治療費:相場や費用が抑えられる理由等を解説

オールオン4は、入れ歯の見た目や噛み心地の悪さ、使用している中でズレる・外れるといったトラブルをきれいに解消してくれる素晴らしい治療法ですが、費用がやや高くなります。歯科医院によっても費用が大きく異なるため、適正な価格がわからないという方も多いことでしょう。今回はそんなオールオン4の治療費の相場や費用が抑えられる理由などをわかりやすく解説します。

オールオン4の治療費の相場

オールオン4の治療費の相場は、1,500,000~4,000,000円程度となっています。これは上下どちらかのあごだけにオールオン4を入れた場合の費用であり、上下両方に入れる場合はおおよそ2倍となります。治療費の相場にかなりの開きがあるため、まずは参考程度にとどめてください。

オールオン4の治療費に差がある理由

オールオン4の治療費の相場は、最も安いところと高いところで2,500,000円ほどの差がありますが、それは以下のような理由があるからです。

経験や実績に差がある

オールオン4は、あごの骨にチタン製のインプラントを4本埋め込み、総入れ歯のような形をした上部構造を装着する治療法です。標準的なインプラント治療よりも少ない本数の人工歯根ですべての人工歯を支えることが可能であり、適切な処置を施すためにはそれ相応の経験・実績が必須となります。インプラント治療に対応していればどの歯科医院でも実施できるものではなく、経験や実績豊富な歯科医師が必要となるため、治療費も自ずと高くなります。

被せ物の材質が異なる

オールオン4の被せ物の材質は、セラミックやハイブリッドセラミックなどから好きなものを選択できます。ハイブリッドセラミックは、セラミックよりも耐久性・審美性・機能性に劣るというデメリットを伴いますが、治療費を下げることが可能となります。つまり、選択した材質によってもオールオン4の治療費は大きく変わってくるのです。

ケース別の治療費

冒頭でオールオン4の治療費は高いといいましたが、それは入れ歯と比較した場合の値段です。標準的なインプラント治療と比較した場合は、多くのケースでオールオン4の治療費の方が安くなります。

ケース①上下全てをインプラント治療

現実的に上下のあごのすべてにインプラントを埋め込むケースは稀であると言えますが、オールオン4との比較のために24本で計算します。
上下24本の歯をすべてインプラントで治療した場合は、1本当たり400,000円と仮定すると単純計算で9,600,000円となります。
また、骨を増やす手術が必要となった場合には、約150,000~400,000円の追加費用がかかります。

ケース②オールオン4

オールオン4の治療費は、手術と被せ物の費用を併せて片顎あたり2,000,000~2,500,000円程度に設定している歯科医院が多くを占めます。両方のあごを併せても4,000,000~5,000,000円程度に抑えられることから、標準的なインプラント治療の約半額で失った歯のすべてを補えます。
ちなみに、オールオン4では、片顎に4本のインプラントを入れることで、最大で12本分の上部構造を製作することが可能です。オールオン4の上部構造は、いわゆる総入れ歯に近い形ではありますが、余計なパーツが付随していないため、見た目を自然に仕上げられます。

オールオン4で治療費を抑えられる理由

さて、オールオン4は標準的なインプラントよりも治療費を安く抑えられますが、その理由についても知りたいですよね。

インプラントの本数が少ない

オールオン4で治療費を安く抑えられる主な理由は、あごの骨に埋入するインプラントの本数が少ないからです。標準的なインプラント治療では、失った歯1本に対して1本の人工歯根を埋め込まなければなりませんが、オールオン4の場合は片顎あたり4本だけで済みます。そもそもインプラントの治療費が高くなるのは、チタン製の人工歯根が高額であり、それを埋め込む手術自体も大きな手間がかかる点に起因しているのです。つまり、インプラントを埋め込む本数が1本でも少なくなればなるほど、治療にかかる費用も大きく下がっていくことになります。

骨造成するケースが少ない

一般の人には、なかなかイメージしにくい部分ではありますが、オールオン4の場合は標準的なインプラント治療よりも人工歯根を埋めやすくなっています。なぜなら、オールオン4では人工歯根を埋め込む位置や角度の自由度が高くなっているからです。標準的なインプラント治療では、人工歯根を埋め込む最適な位置が半ば自動的に決まってしまいますが、オールオン4の場合は、骨量の多い場所などを選んで埋入できます。その結果、骨造成をする必要性が低下し、治療費の抑制にもつながるのです。

手術の回数が少ない

手術の回数も治療費の総額に関係してきます。例えば、標準的なインプラント治療で人工歯根を12本埋め込む計画を立てた場合、それを一度の手術で実施することは不可能です。心身への負担も考慮して、2~3回に分けるのが一般的です。手術の回数が多くなるほど、感染のリスクなども上がるというデメリットを伴う点にも注意が必要です。一方、オールオン4の手術は原則的に1回で終わります。入れ歯に相当する上部構造もその日に装着できるケースが多いです。

オールオン4の治療費が安い場合に考えられること

オールオン4の治療費は、標準的なインプラント治療よりも安くなっていますが、極端に安い場合は注意が必要です。オールオン4にも適正な価格というものがあり、それを下回る場合は、以下のような理由が考えられます。

安い①マイナーなインプラントを使用している

インプラントには、驚くほど多くの種類があります。世界には100を超えるインプラントメーカーが存在しており、それぞれ異なるインプラントシステムを提供しているのです。日本で認可を受けているインプラントはその中のほんの一握りで、メジャーインプラントは極端に安くなることはまずありません。ですから、適正な価格を大きく下回るような治療費でインプラントを提供している場合は、マイナーなシステムである可能性が高いです。マイナーなインプラントは、安全性が確立されておらず、実績も乏しいことから、治療に伴うトラブルも多くなっています。

安い②インプラント手術を海外で行わなければならない

これは美容外科の手術でもよく耳にする手法です。実際の手術は日本で行わず、人件費などが安い海外で行うパターンのインプラント治療です。当然ですが安全性が保証されていないため、推奨することはできません。上下のインプラントを安く入れられるからといって安易に選択してしまうと、深刻なトラブルに巻き込まれかねないのです。

安い③一部の費用のみ表示されている

オールオン4の治療では、手術費用以外にも検査や上部構造の費用なども発生します。そのうちの一部しか表示しないことで、意図的に安いと誤解させるケースもあります。よって、事前に必ずトータルでの費用を確認しておくことが大切です。

オールオン4の治療費は保険適用されない

オールオン4の治療費は、原則として保険が適用されません。治療にかかった費用は全額自己負担となる点に注意しましょう。

オールオン4と医療費控除

オールオン4は、医療費控除の対象となります。

医療費控除とは

医療費控除とは、1年間に支払った医療費が100,000円を超えた場合に申請が可能となる制度で、税金の一部が還付されます。オールオン4の場合は、どのようなケースでも100,000円は超えるため、該当する人は必ず申請した方が良いと言えます。ちなみに、医療費控除の対象となるのは、オールオン4を受けた人の治療費だけではなく、ご家族や親族の方のために支払った医療費も含まれます。

医療費控除の条件

医療費控除の厳密な条件は以下の通りです。

  1. 納税者が自分や自分の家族・親族のために支払った医療費であること
  2. その年の1月1日から12月31日までの1年間で支払った医療費であること
  3. 支払った医療費の総額が100,000円を超えていること

医療費控除には、上記以外にも細かい規定などが設けられておりますので、詳細については当院の医療費控除ページもしくは税務署や国税庁のホームページでご確認ください。当院までご相談いただいた際には、カウンセリングにて医療費控除の詳細をご説明します。

まとめ

今回は、オールオン4 の治療費の相場や費用が抑えられる理由等を解説しました。オールオン4の全国的な費用相場は、片側のあごで1,500,000~4,000,000円程度となっています。人工歯根を埋め込む本数が少ない分、標準的なインプラント治療よりも費用を安く抑えられます。
そんなオールオン4による治療に関心のある方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。当院は、オールオン4の実績が豊富な歯科医院です。さまざまな症例に対応させていただきます。

喫煙によって引き起こされるインプラントへの悪影響とは?

喫煙は、お口の健康を著しく害します。とくに顎の骨に人工歯根を埋め込むインプラント治療においては、深刻な悪影響が及ぶため十分な注意が必要です。今回はそんな喫煙によって引き起こされるインプラントへの悪影響について詳しく解説します。

インプラントと喫煙

インプラントは、失った歯を歯根から回復できる治療法です。チタン製のネジを顎の骨に埋め込み、人工歯を装着することで、見た目も噛み心地も天然歯に近い状態にまで戻せます。ただし、人工歯根の周りには「歯根膜(しこんまく)」という血管や神経からなるやわらかい組織がないため、本物の歯よりも感染症などに弱くなっています。そこに喫煙という習慣が加わると、歯茎や顎の骨の感染リスクが大きく上昇します。その結果、顎の骨が破壊されてインプラントが脱落してしまうケースも珍しくありません。

実際、インプラント治療の失敗率は、非喫煙者よりも喫煙者の方が10パーセントほど高くなるというデータも存在しています。それくらいタバコの煙は、歯茎・顎の骨に多大な悪影響をもたらすことがあるため、今現在、喫煙をしていてインプラント治療を検討されているのであれば、積極的に禁煙した方が良いといえます。インプラント治療が失敗する原因は、少しでも減らしておきたいですからね。
では次に、喫煙によってどんな悪影響が及ばされるのか見ていきましょう。

喫煙によって引き起こされるインプラントへの悪影響

タバコを吸う習慣があると、インプラントの施術部位に以下のような悪影響が生じます。

悪影響①感染症のリスクが高くなる

タバコは、免疫力の主体となる白血球の働きを悪くします。その結果、細菌への抵抗力が低下し、感染症のリスクが高まります。インプラント治療の術中・術後の感染リスクを低減するためにも禁煙もしくは減煙が望まれます。感染症の種類によっては、単にインプラントの結合が失敗するだけでなく、全身に深刻な症状をもたらすこともあるため、十分な注意が必要です。

悪影響②歯周病やインプラント周囲炎になる可能性が高くなる

喫煙者であれば実感することかと思いますが、タバコを吸っているとお口の中が乾燥します。本来は唾液によって湿度が100パーセントに保たれている口腔は、乾燥すると細菌の活動が活発化します。これは唾液の減少によって抗菌作用・殺菌作用・自浄作用が弱まるからです。そうした中で歯周病菌が繁殖すると、歯茎や顎の骨に炎症をもたらす歯周病・インプラント周囲炎になる可能性が高まります。歯周病は、インプラント治療が失敗する主な原因となっているため、予防するに越したことはありません。

悪影響③インプラントと骨の結合が上手くいかなくなる

タバコの煙には、血管を収縮させるニコチンが含まれています。血管収縮によってインプラントを埋め込んだ周囲の骨の血行が悪くなると、チタン製のネジと顎骨の結合が上手くいかず、インプラント治療が失敗に終わることもあります。さらにタバコの煙には、顎の骨への酸素供給を妨げる一酸化炭素も含まれており、手術後の傷の治りも悪くするのです。

インプラント治療後に行った方がいいケア

インプラント治療後には、以下の2つのケアを実践するようにしましょう。

ケア①歯磨きの徹底

インプラントは、天然歯よりも汚れがたまりやすくなっているため、正しい方法で毎日歯磨きする必要があります。慣れるまでには少し時間がかかるかと思いますが、歯科医院で習ったブラッシング法で、プラークフリーな状態を維持するよう努めましょう。とくに人工歯である上部構造とアバットメントの境目付近は天然歯と異なる造りとなっており、徹底したセルフケアが必須となります。その部分に歯垢・歯石が堆積すると、歯周病菌が繁殖して歯茎・顎の骨に炎症をもたらします。

ケア②歯科医院で定期的なメンテナンス

インプラントを長持ちさせるためには、セルフケアの徹底だけでなく、プロフェッショナルケアを受けることも重要です。いわゆるインプラントのメンテナンスでは、専用の器具を使ったインプラント周囲の洗浄や消毒、クリーニングなどを受けられます。セルフケアでは取り除くことができない汚れを一掃しましょう。最初の年は3~4ヵ月に1回くらいの頻度でメンテナンスを受けると良いでしょう。定期的なメンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎のような歯周病にかかり、再度手術が必要となる可能性も出てきます。

まとめ

今回は、喫煙によって引き起こされるインプラントへの悪影響について解説しました。正直、喫煙習慣はインプラントを始めとしたお口全体の人工物、天然歯、口腔粘膜に悪い影響しかもたらさないため、可能な限り禁煙した方が良いといえます。現在は、保険診療で禁煙治療を受けることができますので、タバコをなかなかやめられないという方は、禁煙外来を受診しましょう。喫煙とインプラントの関係について、さらに詳しく知りたい方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。

インプラント治療のリスクとは?歯科医院を選ぶ際のポイント等を解説

インプラントには極めて多くのメリットがあり、歯を失った際には、歯科医師でも第一に選択したいと思える治療法です。なぜなら、従来の入れ歯やブリッジでは代替できない機能がインプラントにはあるからです。ただ、インプラント治療には外科的処置が必須となっていることから、いくつかのリスクを伴います。今回はそんなインプラント治療のリスクを解説した上で、信頼できる歯科医院選びのポイントをご紹介します。

インプラント治療のリスク

インプラント治療には、以下に挙げるようなリスクを伴います。

リスク①人為的ミス

これはインプラント治療に限らず、医療全般に言えることですが、不十分な検査・診察、担当医の経験不足などによって人為的なミスが起こる可能性があります。後段の「インプラント治療で歯科医院を選ぶ際のポイント」を読んでいただくことで、その可能性を限りなくゼロに近付けることはできます。

リスク②歯周病菌への感染

インプラントは見た目も噛み心地も天然歯に酷似していますが、あくまで人工物です。人工歯と人工歯根との境目は汚れがたまりやすく、細菌の温床となりやすいです。また、チタン製の人工歯根と顎の骨との間に「歯根膜(しこんまく)」という血管や神経などで構成された組織がないため、細菌感染が起こりやすくなっています。インプラントには「インプラント周囲炎」という特別な歯周病があるのはそのためです。インプラントを埋め込んでいる部分が歯周病菌に感染すると、装置そのものを維持することが難しくなり脱落を招きます。

リスク③抜け落ちと骨への突き抜け

インプラント治療では、顎の骨の状態が極めて重要な要素となります。骨密度が低いと人工歯根であるインプラント体が抜け落ちたり、骨量の不足で上顎洞(じょうがくどう)などに人工歯根の先端が突き抜けたりすることがあるため十分な注意が必要です。歯科用CTによる精密診断を行い、骨の状態を正確に把握することで、人工歯根の抜け落ちや上顎洞への突き抜けなどを回避することができます。

リスク④見た目に問題が起きる

インプラントは、噛んだ時の力を人工歯根と顎の骨で受けとめることができるため、歯を失った部分の骨の吸収(痩せる現象)が起こりにくくなります。しかし、骨が痩せる現象を完全に防止できるわけではないので、年月が経つにつれて徐々に骨量が減っていってしまいます。その結果、インプラントの人工歯が長く見えるようになったり、連結装置であるアバットメントが透けて見えるようになったりすることがあります。

リスク⑤骨との結合がうまくいかない

骨密度が低下する骨粗しょう症を患っていたり、不適切な手術で骨の細胞が死んでしまったりすると、チタン製の人工歯根と顎の骨との結合がうまくいきません。そのため、骨粗しょう症を患っている人は、内科医との連携が必須となります。骨の細胞が死んでしまう現象は、知識と経験が豊富な歯科医師が執刀することでリスクを軽減できます。具体的には、ドリルで人工歯根を埋め込む際に、しっかりと注水することで摩擦熱による骨細胞の死滅を防げます。

リスク⑥糖尿病に疾患していると感染しやすい

糖尿病を患っている人は、歯茎のような末梢組織の血流が悪くなっています。血行が悪いと酸素や栄養素、免疫細胞の供給が滞るため、歯周病菌の感染が起こりやすくなり、インプラント治療が失敗するリスクも高いといえます。ただ、糖尿病にかかっていたとしても、治療によって病態が安定していれば、インプラント治療も安全に行うことが可能です。

リスク⑦脳血管の疾患を抱えていると脳梗塞を発症する可能性がある

過去に、脳梗塞を発症した経験がある方は、血液が固まりにくくなる「抗凝固薬(こうぎょうこやく)」を服用していることが多く、手術中に出血が止まらなくなるリスクがあります。また、手術によるストレスが引き金で、再び脳梗塞を発症する可能性もあります。

リスク⑧チタンアレルギー持ちだと金属アレルギーの症状を起こす

インプラント治療であごに埋め込む人工歯根は「チタン」で作られています。チタンは金属アレルギーが起こりにくい金属として有名で、医科の分野でも古くから人工関節の材料として広く活用されています。それでも極まれに「チタンアレルギー」を持っている方もいるため、インプラント治療も金属アレルギーのリスクがゼロだとは言い切れないのです。特に人工歯根の材料が「純チタン」ではなく「チタン合金」の場合は、その他の金属も含まれている点に注意しなければなりません。

インプラント治療の手術で起こる可能性があるトラブル

インプラント治療の手術では、以下に挙げるようなトラブルが起こる可能性があります。

トラブル①インプラントが適切に埋め込まれていない

事前の検査・診断が適切に行われていないと、人工歯根を埋め込む位置・角度・深さを誤ってしまうことがあります。その結果、重要な血管や神経を傷付けてしまい、術中の大量出血や術後の神経麻痺を招いてしまうこともあるのです。

トラブル②手術中に体調が急変する

インプラント手術は、心身への負担が比較的少ない手術となりますが、患者さまの全身状態によっては手術中に体調が急変することもあります。高血圧症や心疾患などを患っている方は特に注意が必要です。

インプラント治療で歯科医院を選ぶ際のポイント

ここまで、インプラント治療に伴うリスクについて解説してきましたが、以下に挙げる6つのポイントに着目することで、信頼できる歯科医院を選びやすくなります。インプラント治療に伴うリスクも最小限に抑えられることでしょう。

ポイント①歯科用CTスキャンがあるかどうか

安全性の高い、精密なインプラント治療を実施するためには、歯科用CTによる画像診断が必須となります。歯科用CTを導入していない時点で選択肢から外しても良いくらい、重要なポイントといえるでしょう。なぜなら、レントゲンでは平面(2次元)的な画像しか得られないからです。チタン製の人工歯根をあごに埋めるインプラント治療では、骨の幅・深さ・奥行きを正確に把握する必要があり、立体(3次元)的な画像が得られるCT撮影でのみそれが可能となります。歯科用CTによる精密検査が行えない状態でインプラント治療を進めていくと、手術中に神経や血管を傷つけるリスクが大きく上昇します。

ポイント②衛生管理が徹底されているかどうか

インプラント治療を実施する手術室はもちろん、器材の滅菌やスタッフの衛生管理が徹底されているか確認しましょう。外科手術では感染リスクを排除できないため、衛生管理が徹底されていることも必須条件となります。

ポイント③料金が明確かどうか

インプラント治療は、料金体系が不明確となっていることが多いです。「インプラント1本10万円で治療します」という格安インプラントを謳っている歯科医院もありますが、実際は人工歯根の費用しか含まれておらず、総額として30~40万円かかることも珍しくありません。ですから、インプラント治療の料金を明確に提示してくれているかどうかも信頼できる歯科医院選びでは重要なポイントのひとつとなります。

ポイント④事前相談・カウンセリングがあるかどうか

インプラントは従来法の入れ歯やブリッジとは異なる点が多々あるため、事前相談やカウンセリングが重要となります。カウンセリングがていねいで、質問にしっかり答えてくれる歯科医院を選ぶようにしましょう。

ポイント⑤インプラント治療の実績があるかどうか

インプラントは極めて専門性の高い治療分野です。過去の症例が多いほど、治療の精度も高くなるため、インプラント治療の実績豊富な歯科医院を選ぶことが大切です。具体的な症例数を公開している歯科医院を選ぶのがよいでしょう。

ポイント⑥アフターケアが充実しているかどうか

インプラントは治療後のメンテナンスが必須となっています。適切なメンテナンスを継続的に受けることで、インプラントの寿命を10年、20年と延ばしていくことができます。そのため、長期的なメンテナンスも含めたアフターケアが充実している歯科医院は頼りになることでしょう。

まとめ

このように、インプラント治療にはさまざまなリスクを伴います。その多さに驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。ただ、上述したリスクはあくまでトラブルが起こる可能性であり、きちんとした対策を講じることで回避できます。その際、重要となるのが歯科医院選びの6つのポイントです。インプラント治療で失敗したくない、後悔したくないという方は、ぜひ参考にしてみてください。

インプラントのメンテナンスの費用相場・寿命・必要な理由等を解説

インプラントを長持ちさせるためには、治療が終わった後のメンテナンスをしっかり受ける必要があります。せっかく苦労して入れたインプラントですから、少しでも寿命を延ばして、快適に噛める状態を維持したいものです。そこで今回は、インプラントのメンテナンスが必要な理由や寿命、費用相場について、詳しく解説します。

インプラントのメンテナンスが必要な理由

インプラントでメンテナンスが必要な理由としては、以下の2つが挙げられます。

理由①長持ちさせるため

インプラントは、見た目も噛み心地も天然歯にそっくりな装置です。治療後は自分の歯が戻ったと感動される方も少なくありません。けれども、インプラントはあくまで人工物であり、本物の歯とまったく同じようなケアをしていては、さまざまな不具合が生じてしまいます。そうしたトラブルを回避して長持ちさせるためにも、定期的なメンテナンスが必要となっています。

理由②インプラント周囲炎の予防のため

インプラントは、人工歯である上部構造とアバットメントの境目付近に汚れがたまりやすくなっています。そこに歯垢・歯石が堆積すると、細菌が繁殖して「インプラント周囲炎」を発症します。インプラント周囲炎とは、インプラント特有の歯周病です。一般的な歯周病よりも進行が早く、顎の骨がどんどん破壊されていきます。その結果、人工歯根と顎骨との結合が失われ、インプラントが寿命を迎えてしまうのです。定期的なメンテナンスを受けていれば、インプラント周囲炎も効率よく予防できます。

インプラントの寿命

インプラントは、人工歯根を埋入してから10年経過しても、90~95%が問題なく使い続けられています。一般的な寿命としては、10~15年程度といわれていますが、メンテナンスをしっかり継続して歯茎や顎の骨の状態を良好に保てば、その寿命を20年、30年と延ばすことも難しくはありません。一方、保険診療で作る入れ歯は3~5年程度、ブリッジは7~8年程度で寿命を迎えると言われており、インプラントがいかに長持ちしやすい装置であるかをおわかりいただけるかと思います。

インプラントのメンテナンスの費用相場

インプラントのメンテナンスを定期的に受けるのは良いとしても、費用がどのくらいかかるのかが気になりますよね。インプラントは原則として自費診療となるため、メンテナンス費用も歯科医院のよってバラつきがありますが、全国的には1回あたり3,000~10,000円に設定しているところが大半を占めます。ちなみに、インプラントの「5年保証」や「10年保証」は、定期的なメンテナンスを受けていることが前提条件となっています。つまり、インプラントのメンテナンスを怠ると、トラブルに見舞われた際の費用が全額自己負担となってしまうので、注意が必要です。

医療費控除の対象になるメンテナンス費用

インプラント治療では、人工歯の埋入や上部構造の製作にかかった費用だけでなく、メンテナンス費用も医療費控除の対象となります。インプラントのメンテナンスは治療後も数年単位で続けていくものなので、翌年や翌々年も1年間で支払った医療費が100,000円を超える場合は、忘れずに申請しましょう。

インプラントのメンテナンスの頻度

インプラントのメンテナンスは、お口の中の状態によって通院頻度が変わっていきます。そのため、厳密な頻度は主治医と相談しながら決めていく必要がありますが、一般的には最初の年で3ヵ月に1回、翌年から4~6ヵ月に1回くらいの頻度でメンテナンスを受けることになります。毎月通院しなければならないことはまずありませんのでご安心ください。

インプラントのメンテナンスの流れ

インプラントのメンテナンスは、以下の流れで進行します。

流れ①お口の中の状態チェック

まずはお口の中のチェックです。インプラントの周囲はしっかり磨けているか、歯茎に腫れや出血などは認められないか、上部構造に破損は見られないか等を肉眼で診査します。異常が認められた場合は、治療が必要となることもあります。

流れ②噛み合わせの確認

インプラントの寿命を長持ちさせる上で、噛み合わせの状態は非常に重要となります。噛み合わせが高すぎると、インプラントに過剰な力が加わってしまうからです。そこで咬合紙という赤や青の色が付いたシートを噛んでいただき、適切な状態で噛めているかをチェックします。強く当たっている部位は色が濃く現れます。シートの塗料がまったく付着していない部位は、噛んでいないことを意味します。理想は歯列全体で均等に噛めている状態ですが、現実的にそれは難しいため、インプラントに過剰な力がかからない程度に調整を加えます。

流れ③レントゲン検査

肉眼では確認できない顎の骨や人工歯根の状態をレントゲン撮影で検査します。インプラント周囲炎や上顎洞炎などの深刻な症状も調べられます。レントゲン撮影に関しては、被ばくを心配される方も多いかと思いますが、年に数回のメンテナンス程度であれば、健康被害が及ぶリスクは皆無に等しいです。そもそも、歯科のレントゲンはお口だけにエックス線を照射するものなので、全身への影響も微々たるものとなっています。

流れ④ブラッシング指導

インプラント周囲の清掃状態をチェックした上で、磨き残しの多い部位のブラッシング方法をレクチャーします。自宅での歯磨きは、インプラントの寿命を延ばす基本となるため、正しい方法を身に付けることが大切です。インプラントは虫歯になることはありませんが、歯周病のリスクは天然歯より高いことを忘れてはいけません。

流れ⑤PMTC

インプラントのメンテナンスでは、PMTCという歯科のクリーニングを実施します。セルフケアでは落とせない歯石やバイオフィルムまで一掃できる処置なので、定期的に受ける価値は非常に高いです。スクリュー固定のインプラントでは、人工歯である上部構造を一時的に外してクリーニングすることもあります。いずれも歯科医院でなければ受けられない処置となっています。

まとめ

今回は、インプラントのメンテナンスが必要な理由や費用相場、寿命について解説しました。インプラントのメンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎や装置の破損に気付くのが遅れて、寿命を大きく縮めてしまうことも珍しくありません。また、メンテナンスを受けていないとインプラント保証が受けられなくなるため、十分にご注意ください。インプラントのメンテナンスは、最初の年でも3ヵ月に1回程度受ければ良いので、負担もそれほど大きくはないかと思います。翌年からは年に2~3回受ければ十分となりますよ。

おすすめのインプラントメーカーを紹介:メーカーの選び方等も解説

失った歯を歯根から回復させるインプラントには、たくさんの種類があることをご存知でしょうか?日本国内では30種類以上、世界では100種類以上のインプラントシステムが流通しており、各メーカーによって使用している素材や規格、メンテナンスの方法などが異なります。それだけにインプラントメーカー選びは慎重に行う必要があるといえます。ここではそんなインプラントメーカーの選び方やインプラントの種類について、わかりやすく解説します。

インプラントメーカーの選び方

インプラントメーカーを選ぶ際には、以下の2点に着目しましょう。

選び方①他の歯科医院でメンテナンスができるかどうか

インプラントは、寿命がとても長い装置です。保険診療の入れ歯は4~5年くらいしか持ちませんが、インプラントは10年以上使い続けられるケースがほとんどです。メンテナンスをしっかり受けることで、その寿命を15年、20年と延ばし続けることも難しくありません。

ただ、使用期間がそれだけ長期に及ぶと、患者さまのライフスタイルも大きく変わる場合もあるかもしれませんよね。例えば、仕事の都合で転居する方もいらっしゃるでしょう。そんな時に「転院しやすい」ことがインプラントメーカーを選択する上で重要なポイントとなります。つまり、全国的にも広く普及しているインプラントメーカーの方が転院先を見つけやすく、メンテナンスを継続しやすいといえるのです。

選び方②実績があるかどうか

今現在、世界で使用されているインプラントは、歴史が深いものから浅いものまでさまざまです。一見すると同じように見えても、治療によって得られる効果や仕上がりの良し悪しには雲泥の差が生まれることも珍しくありません。そこで是非とも着目していただきたいのが「実績」です。

最初に実用化されたインプラントは、もうすでに50年以上の歴史があります。その間、たくさんの実績を積み、改良に改良を重ねてきたインプラントシステムは、自ずと精度も高くなります。その結果、治療の安全性が高まると同時に、より美しく、噛みやすく、長持ちするインプラントを提供することが可能となるのです。そうした歴史の深い、実績のあるインプラントシステムなら、全国的にも広く普及しており、転居先での歯科医院探しに苦労することもなくなります。

広く普及しているおすすめのインプラントメーカー

インプラント治療で失敗しないためには、広く普及しているインプラントメーカーを選ぶことが大切です。ここでは、世界で長年トップシェアを誇っている「世界3大インプラントメーカー」をご紹介します。

おすすめ①ノーベルバイオケア社

ノーベルバイオケア

世界で初めてデンタルインプラントを実用化したのは、スウェーデンのブローネマルク教授です。最も有名なインプラントである「ブローネマルクシステム」は、インプラントの生みの親から名前をとっているのです。その歴史は50年以上にも及び、これまで積み重ねてきた実績は、他のインプラントメーカーを圧倒しています。
インプラントの構造や形状、表面処理の方法なども洗練されており、さまざまな症例に適応可能です。ノーベルバイオケア社のインプラント治療後には「ペイシェントカード」が発行され、充実したアフターケアを受けられる点も魅力のひとつです。ペイシェントカードには、インプラントのサイズやロットナンバーなどが記載されており、他院でメンテナンスや緊急的な処置を受ける際に役立ちます。

おすすめ②ストローマン社

ストローマン

ストローマン社は、ノーベルバイオケア社に次に歴史が深いインプラントメーカーです。世界的なシェアも高く、日本国内でも人気があります。それはストローマンインプラント(ITI)の表面に微細な凹凸があり、骨と結合しやすくなっているからです。日本人の顎の骨は海外の人と比較すると薄いため、インプラントの定着が悪いことが多いです。ストローマンインプラントは、そうした日本人の顎に向いているインプラントシステムといえます。

おすすめ③デンツプライ社

デンツプライ

デンツプライ社も世界3大インプラントに数えられるメーカーですが、他の2社と比較して、費用がやや安い点が特徴となっています。もちろん、歴史と実績があり、品質は折り紙付きです。そのため世界でも広く使用されており、これからも長く使い続けられることでしょう。

インプラントにまつわる様々な種類

ここまでは、おすすめの「インプラントメーカー」についてご紹介してきましたが、ここからは「インプラントの種類」についての解説となります。
メンテナンスや修理の際に、インプラントの構造が影響することがありますので、「構造」「材料」「表面処理」「形状」の4つの観点から、わかりやすくご説明します。

種類①構造

インプラントの構造は、「2ピースタイプ」と「1ピースタイプ」の2つに大きく分けられます。「2ピースタイプ」では、人工歯根であるインプラント体と連結装置であるアバットメントが別々になっています。それを治療の過程で連結します。「1ピースタイプ」は、それらが一体化しているもので、手術が単純化されるというメリットがある反面、アバットメントに不具合が生じた際には、インプラント体ごと撤去しなければならないというデメリットも伴います。2ピースタイプであれば、アバットメントのみを撤去して修理することが可能です。

種類②材料

人工歯根に当たるインプラント体(=フィクスチャー)に「チタン」が用いられているのは有名な話ですよね。ただ、ひと言でチタンと言っても、実際はいくつかの種類に分けられます。

◎純チタン

純チタンは、純粋なチタンであり、その他の金属材料が含まれていません。顎の骨との結合性が最も高く、インプラント体の素材として適性も高いです。

◎チタン合金

チタンをメインに、その他の金属を混合した材料です。純チタンと同様、顎の骨との結合性は高くなっています。

◎チタン・ニッケル合金

いわゆる“形状記憶合金”で、成形しやすいのが特徴です。純チタンやチタン合金と比較すると、顎の骨との結合性は劣ります。

種類③表面処理

インプラント体には、さまざまな表面処理が施されます。多くの場合は、いずれかひとつではなく、いくつかを組み合わせて仕上げます。

◎ブラスト処理

インプラント体表面の酸化膜を除去して粗面に加工する処理です。顎の骨との結合力を向上させます。

◎酸処理

ブラスト処理によって生じたブラスト材を洗浄するために行います。

◎酸化処理

インプラント体に「酸化チタン」を付与することで、表面に凹凸が形成され、骨との結合力を高めます。

◎機械研磨処理

機械的研磨によって余計な凹凸を取り除き、顎の骨と接触しやすい形状に整えます。

種類④形状

インプラント体の形状は、以下の4つに分けられます。

◎スクリュータイプ

最もスタンダードな形状のインプラント体です。ネジのような形態を採っており、ドリルで回転させながら顎の骨に埋め込みます。

◎シリンダータイプ

円筒形のインプラント体で、ネジのらせんがないため、顎の骨にはハンマーで槌打しながら埋め込みます。スクリュータイプほどではありませんが、現在でも広く使用されています。

◎バスケットタイプ

外観はスクリュータイプに似ていますが、中が空洞となっている点が大きく異なります。空洞に骨が入り込むことで高い結合力を発揮するものの、インプラント体の強度が低いことから折れやすく、現在はあまり使用されなくなっています。

◎ブレードタイプ

文字通りアイススケートのブレード(刃)のような形をしたインプラント体です。インプラント体の一部に力が集中しやすく、破損や骨吸収を招きやすいという欠点があり、現在ではほとんど使われていませんが、歯科医院には、過去にブレードタイプで治療した患者さまが来院されることはあります。

まとめ

今回は、インプラントメーカーやインプラントの種類について解説しました。極めて専門性の高い内容となっておりますので、さらに理解を深めたいという方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。実物や画像をお見せしながらわかりやすくご説明します。

インプラントの治療費でローンが組めるデンタルローンとは?メリットや審査等を解説

インプラントは、天然歯のようによく噛めて、見た目も美しい人工歯(+人工歯根)ですが、費用が高い点がネックとなってなかなか一歩踏み出せないという方も多いようです。確かに、1本あたり300,000~400,000円かかる費用を一括で支払うのは、家計に与える影響もかなり大きくなります。そこで、是非とも知っておいていただきたいのが「デンタルローン」というサービスです。インプラントの治療費でローンが組めるデンタルローンを利用すれば、治療のハードルも大きく下がることでしょう。今回はそんなデンタルローンの内容や利用するメリット、審査基準などをわかりやすく解説します。

インプラントの治療費で使えるデンタルローンとは

デンタルローンとは、歯科治療に特化した立替払いサービスです。金融機関に治療にかかったお金を立て替えてもらえるため、一括での支払いを回避できます。一般的なクレジットローンにはないメリットがたくさんあり、当院でもデンタルローンを利用して、インプラントや歯列矯正など、高額な費用がかかる歯科治療を受ける方が多くなっています。経済面がネックとなってインプラント治療を諦めかけている方には、有用なサービスだといえます。

デンタルローンのメリット

インプラント治療にも利用できるデンタルローンには、以下に挙げるようなメリットがあります。

メリット①手軽に手続きができる

一般的なローンは、銀行などの金融機関に足を運んで申請の手続きを進めなければなりません。銀行などは平日の15時までしか開いておらず、仕事が忙しい人はそもそも窓口を訪ねることすら難しくなります。その時点で、インプラント治療を諦め、安くて手軽に作れるブリッジや入れ歯に妥協してしまう人も少なくないのです。
一方、デンタルローンの窓口は歯科医院なので、わざわざ銀行などの金融機関に出向く必要はありません。治療を受ける前や受けた後に説明を受けたり、ローンの申し込みをしたりすることが可能です。間違って金融機関に行く方もいらっしゃいますが、デンタルローンは歯科医院で受付をしておりますので、その点は注意しましょう。何か気になる点があれば、遠慮なくスタッフにお尋ねください。

メリット②実質分割払いにできる

デンタルローンは、皆さんも利用する機会がある住宅ローンやマイカーローンなどと同じ「立替払いサービス」です。金融機関が治療費を全額立て替えてくれるため、インプラント治療を実質分割払いで受けることが可能となります。もちろん、一般的なローンと同様、事前の審査を通過する必要があり、返済時には金利も発生しますが、デンタルローンはいろいろな面で“緩く”なっています。そのため、住宅ローンやマイカーローンを組む時よりも明らかにハードルが低く、その点に驚かれる方も少なくないのです。これは歯科治療に特化したローンならではのメリットといえるでしょう。

メリット③最大84回の分割払いが可能

デンタルローンの分割払いは、最大84回まで設定可能です。つまり、インプラント治療にかかった費用を7年かけて少しずつ返済していくこともできるのです。例えば、インプラント治療で総額500,000円の費用がかかって、60回払いのデンタルローンを利用したケースでは、月々の返済は9,000円程度となります。インプラント治療を月々10,000円未満で受けることができるのは、患者さまにとって極めて大きなメリットとなります。デンタルローンの支払い回数は、最小では6回から設定することができますので、より短期間で返済したいという方のニーズにも合わせることが可能です。

メリット④利用額を設定できる

デンタルローンは、支払い回数の幅が広い(6~84回)だけでなく、利用額も自由に設定できます。インプラント治療で400,000円の費用がかかったら、自動的に400,000円のローンが組まれるわけではないのです。例えば、400,000円のうち100,000円は現金で支払って、残りの300,000円をデンタルローンで分割払いすることが可能となっています。
デンタルローンの金利は一般的な金融商品よりも低く、支払い回数を多く設定しても最終的な支払金額が大きく膨らむようなことはありませんが、それでもやはり出費は最小限に抑えたいものですよね。そんな時には許容できる範囲で利用額を抑制すると良いでしょう。

メリット⑤手元に資金がなくても利用できる

住宅ローンやマイカーを組む際には、いわゆる「頭金」というまとまった資金が必要となります。これもまたローンを組む上での大きなハードルとなっています。上述したように、デンタルローンでは頭金のような形で一定額を現金で支払い、残りの金額を立替払いサービスで分割払いすることも可能ですが、手元に資金がまったくなくても利用できます。インプラント治療は、総額で400,000~500,000円程度かかるのが標準的であり、頭金として数十万円支払うのも家計を圧迫しかねません。デンタルローンであれば、そうした頭金の心配もする必要がなくなります。手元にまとまったお金がない方でも、デンタルローンを利用して、インプラント治療を受けることができます。

メリット⑥インプラント治療以外の自費診療に利用できる

デンタルローンを利用できるのは、インプラント治療だけではありません。歯列矯正やセラミック治療など、比較的高額な費用がかかる自費診療では全般的にデンタルローンを利用できます。いずれも患者まさにとってメリットの大きい治療法なのですが、身体機能の回復が主な目的ではないため、現状は保険が適用されません。費用が全額自己負担となる点は、治療のハードルを大きく上げる要因にもなっています。デンタルローンを利用すれば、実質的な分割払いが可能となり、治療のハードルはぐっと下がります。ですから費用面で自費診療が選択肢から外れている場合は、デンタルローンに対応した歯科医院を選ぶと良いでしょう。

デンタルローンのデメリット

デンタルローンは、インプラント治療や歯列矯正などで利用する上で非常にメリットの多いサービスですが、デメリットも存在します。とくに以下の3点には注意が必要です。

デメリット①審査がある

デンタルローンは、歯科治療の費用に特化しているだけあって、患者さまに有利な点が多々あるものの、一般的なローンと同じく、申請時の審査があります。この審査に通らなければデンタルローンを利用することはできないため、誰でも100%使えるローンというわけではありません。デンタルローンの審査は、一般的なローンと比較して特別厳しいということはなく、借入額と収入額のバランスが良ければ問題なく通ります。借入額が多かったり、収入額が極端に少なかったりする場合は、金融機関に返済能力がないと判断され、審査に落とされる可能性もあります。
そうしたケースでは、比較的利用しやすい「フリーローン(個人向けローン)」を選択しても良いでしょう。フリーローンとは、用途を指定しない立替払いサービスで、手続きは患者さまご自身で行っていただくことになりますが、審査はやや緩くなります。金利に関しては、デンタルローンよりも高くなることが多く、全体の出費もかさむ点に注意が必要です。

デメリット②金利がかかる

デンタルローンは、歯科治療の費用に特化した立替払いサービスですが、ローンであることに変わりはありません。金融機関もボランティアで行っているわけではなく、「金利」という形で利益を得なければならないのです。ただ、デンタルローンの金利は、一般的なフリーローンと比較すると、金利がかなり低く設定されています。一般的なフリーローンの金利が5~15%であるのに対し、デンタルローンは、4~8%程度にとどまります。これはデンタルローンの大きなメリットなのですが、それでもやはり一括で支払った場合よりも医療費が高くなるため、見方によってはデメリットにもなります。

デメリット③すべての歯科医院で使えるとは限らない

デンタルローンは、すべての歯科医院で対応しているわけではありません。歯科医院によっては、銀行との取引がなく、現金払いかクレジットカード払いにだけ対応しているところも珍しくないのです。とはいえ、インプラント治療や歯列矯正、セラミック治療など、自費治療をしっかり行っている歯科医院であれば、そのほとんどはデンタルローンに対応しているものです。その点は、電話でも確認できますので、気になる場合は事前に問い合わせておきましょう。
ちなみに、デンタルローンではなく、クレジットカードで分割払いする場合は、金利が自ずと高くなります。一般的なクレジットカード会社では、分割払いの金利・手数料を15%程度に設定しており、デンタルローンと比較するとやはり割高感が否めません。また、指定できる回数の制限も厳しく、毎月の返済に困ってしまうことも多いようです。

デンタルローンと審査

ここまで、インプラント治療の費用をデンタルローンで分割払いするメリットとデメリットについて解説してきましたが、審査の方法や流れについても気になりますよね。歯科医院の窓口から気軽に申し込めるデンタルローンといえども、申請してすぐに借り入れができるわけではありません。また、申請の際に必要となる書類についてもあらかじめきちんと把握しておくことが大切です。

審査に必要な書類

デンタルローンで必要となる書類は金融機関によって異なりますが、基本的には「申込書」と歯科医師が作成する「見積書」の2つだけです。一般的なフリーローンのように、煩雑な手続きが不要な点は利用者としてありがたいですよね。また、金融機関の中には、歯科医師の見積書なしで審査のシミュレーションを行えるデンタルローンを提供している場合もあります。その審査に通ったからといってローンを組めるようになるわけではないのですが、不安な点がある方は事前に試しておいても良いかもしれません。事前審査を受けておくと、本審査に通りやすくなるという話もあります。

審査期間

デンタルローンの審査は、申し込みと同時に始まります。多くの金融機関では、申請した翌日に審査結果がわかります。休日などを挟むと、当然ですが審査がわかるまでの期間が長くなります。審査結果は、電話やメールなどで伝えられ、特に問題がなければいよいよ治療の開始です。

審査基準

デンタルローンの審査基準は、公表されておらず、正確に把握することはできません。仮に審査に通らなかったとしても、それはそれとして受け止める他ないのです。とはいえ、審査の際に見られる点は、「金融機関からの借入の残債や延滞の記録」が中心となるのは明らかです。お金への意識が問われる部分ですね。金融機関も営利目的でデンタルローンを提供しているため、返済能力に不安がある人には貸しにくいのが現実です。この点に問題がなく、収入も安定しているのであれば、デンタルローンの審査基準を満たすものと思われます。ちなみに、金利が低い金融商品ほど、審査基準は厳しくなります。

デンタルローンの審査に落ちやすい人

デンタルローンの利用を検討中の方は、やはり審査に落ちることが怖いですよね。そこであらかじめデンタルローンの審査に落ちやすい人の特徴を5つほど挙げておきます。これはあくまで“落ちやすい”だけであり、下記に該当するからといって必ず落ちるわけではありませんので、その点もご注意ください。

人①専業主婦

専業主婦は、文字通り家事を専門に行っている人です。配偶者が働いていたとしても、ご本人に安定した収入がなければ、デンタルローンに通りにくいと言わざるを得ません。ただし、主婦の方でもパートやアルバイトで一定の所得金額がある場合は、審査に通ることもあります。

人②学生

まず、未成年の学生は、原則としてデンタルローンを組むことができません。次に成人した学生に関しては、デンタルローンを組むことはできますが、社会人と比較すると審査に通りにくくなっています。とくに高額なデンタルローンを組む場合は、学生であることが不利に働きます。ですから、学生がデンタルローンを利用する場合は、ご両親の名義で申し込むのが良いでしょう。

人③アルバイト・フリーター

アルバイトやフリーターは、会社員のように身分保障があるわけではなく、収入も不安定になりがちです。人によってはアルバイトでも安定した収入を得ていることもありますが、社会的な信用には大きな差があります。そういう意味でアルバイトやフリーターの方は、デンタルローンの審査に落ちやすいといえます。

人④ローンが残っている人

デンタルローンへの申請時に、その他のローンの返済が残っている場合は、審査に通りにくくなります。借入総額が年収の1/3近くまである場合は要注意です。1/4~1/5程度であれば、それほど心配する必要はありません。

人⑤ブラックリストに載った人

以下に挙げるような金融事故を起こした場合、ブラックリストに載ることがあります。信用情報に傷が付いている状態であり、デンタルローンの審査にも通りにくくなります。

・家賃の滞納
・クレジットカード返済の滞納
・複数社からの同時借入
・債務整理を行った

一度ブラックリストに載ってしまうと、その記載が抹消されるまでに5~10年程度の期間を要します。もちろんそれは完済したことを前提としています。

デンタルローンの審査が通りやすくなる方法

デンタルローンの審査に落ちやすい方でも、以下の方法で審査が通りやすくなります。

方法①勤続年数を積む

勤続年数が長いことは、信用度の高さにつながります。実際、デンタルローンの申し込みに「勤続年数2年以上」という具体的な条件を設けている金融機関も珍しくありません。勤続年数が2年に満たないという方は、もう少し待ってから申請すると審査も通りやすくなります。

方法②ローンを完済する

上述したように、デンタルローンの申請時に他社からの借入がある場合は、審査が通りにくくなるため、あらかじめ完済しておくことをおすすめします。

方法③保証人や承諾書を用意する

「デンタルローンの審査に落ちやすい人」の特徴に当てはまる場合でも、保証人を立てたり、配偶者や親の承諾書を提出したりすることで、審査に通りやすくなります。

方法④親や配偶者の名義で申し込む

学生や安定した収入がない方は、親や配偶者の名義で申し込むことで、デンタルローンの審査に通りやすくなります。とくに治療費の金額が高い場合は有効です。

デンタルローンと医療費控除

デンタルローンを利用した場合、毎月の支払いが少額となることから、医療費控除の対象とはならないと思われがちです。もしくは、単純に医療費控除の申請を忘れてしまう方もいらっしゃるかもしれません。インプラント治療でデンタルローンを利用した場合も通常の治療と同様、医療費控除の対象となりますので、忘れずに申請するようにしましょう。毎月の支払いが少額でも、1年間で換算するとかなり高額になるかと思います。デンタルローンで支払った金額だけでなく、通院にかかった費用なども控除の対象となります。そんなインプラント治療におけるデンタルローンと医療費控除についてさらに詳しく知りたい方は、いつでも当院までご相談ください。わかりやすく丁寧にご説明します。

まとめ

このように、インプラント治療では「デンタルローン」と呼ばれる歯科治療に特化した立替払いサービスを利用できます。数十万円かかる費用もデンタルローンで分割することで、月々の返済を10,000円弱まで抑えられます。金融商品である以上、誰でも無条件で利用できるわけではありませんが、上述したポイントを押さえることで、審査も通りやすくなります。デンタルローンは金利が低く、申し込みも簡単で利用しやすい立替払いサービスとなっておりますので、インプラント治療において費用の面がネックとなっている方にはおすすめです。そんなデンタルローンについてさらに詳しく知りたい方は、いつでもお気軽に当院までご連絡ください。

前歯のインプラントが難しい理由とは?メリットや費用等も解説

インプラントは、失った歯を限りなく天然歯に近い形で回復できる治療法ですが、前歯に適応する場合には注意が必要です。なぜなら、前歯のインプラントは奥歯よりも難しくなることが多いからです。今回はそんな前歯のインプラントが難しい理由や治療に伴うメリット、費用などを詳しく解説します。

前歯のインプラント治療が難しい理由

前歯のインプラント治療が難しい理由としては、主に以下の3点が挙げられます。

難しい①顎の骨が薄い

私たちの顎は、部位によって厚みが大きく異なります。咀嚼の主体となる奥歯の部分は、顎の骨が厚く、幅も広いです。一方、食べ物を噛み切るための前歯の部分は、顎の骨も比較的薄くなっています。インプラント治療では必ずチタン製の人工歯根を顎に埋め込まなければならないため、骨が薄いと手術も自ずと難しくなります。しかも、前歯の顎の骨は加齢などで痩せていきやすいため、高齢になるほどインプラントが難しくなるといえるでしょう。

難しい②審美性に問題が起こる可能性がある

上述したように、前歯の骨は薄くて痩せやすいです。そうした制限のある部位に人工歯根を埋め込む場合は、機能面だけでなく、審美面でも問題が起こりやすくなります。
顎の骨が痩せるということは、歯茎が下がることを意味するため、人工歯根であるインプラント体の一部が露出することもありえます。歯茎から金属色が透けて見えるだけでも口元の見た目は悪くなるので、インプラント体やアバットメントがむき出しとなった場合は更に審美性に問題が出てくることでしょう。
そうした現象が手術からどのくらいの期間で現れるかはケースによって異なりますが、前歯のインプラント治療は奥歯よりもそのリスクが高いということを知っておく必要があります。もちろんこれはあくまで可能性であり、治療を担当する歯科医師の知識や経験が豊富であれば、回避することもできます。

難しい③治療費が高い

前歯のインプラント治療で、顎の骨が薄い、もしくは足りない場合は、骨を造る手術などを別途行う必要が出てきます。「GBR」や「スプリットクレスト」などの骨造成です。これらも当然、自費診療となるため、それなりの費用が発生します。また、インプラント治療自体の難易度も上がることから、標準的な料金よりも高くなる場合もあります。その結果、経済面で前歯のインプラント治療を諦めざるを得なくなる方も出てきます。

前歯を失った場合のインプラント以外の方法

経済面で前歯のインプラント治療が難しい場合は、従来法から選択することになります。前歯を失った際に適応される最も標準的な治療法は、「ブリッジ」と「入れ歯」です。

方法①ブリッジ

ブリッジは、インプラント治療と同じ固定式の装置です。残った歯を支えとして、人工歯が連結された装置を被せます。見た目や噛み心地は入れ歯よりも良く、安定性も高い点がメリットです。ただし、支えとなる歯を大きく削らなければならないため、残った歯に与えるダメージは比較的大きいと言わざるを得ません。また、ブリッジは失った歯の本数が1~2本、多くて3本までが適応しやすい装置なので、それ以上多くの歯が抜けている場合は、入れ歯かインプラントを選択した方が良いでしょう。ブリッジの構造を見ていただくとわかりますが、長すぎると途中で折れるリスクが高まるのです。

方法②入れ歯

入れ歯は、取り外し式の装置で、1本からすべての歯を失った症例まで適応できます。前歯だけを失った場合は「部分入れ歯」という人工歯と義歯床(ぎししょう)、金属製のクラスプ(留め具)から構成される装置を使います。残った歯にクラスプを引っ掛けて固定するため、健康な歯を削る必要はありません。壊れた際に修理がしやすいのも入れ歯のメリットのひとつとして挙げられます。しかし、寿命はブリッジよりも短く、保険適用の入れ歯は3~4年で使えなくなることが多いです。また、固定式の装置と比べて安定性が悪く、食事や会話をしている時に、装置がズレることがあるのも入れ歯のデメリットといえるでしょう。

前歯をインプラントにするメリット

ここまで、前歯のインプラント治療が難しい理由とその他の治療の選択肢について解説してきましたが、前歯をインプラントで治療するメリットについても知りたいですよね。主に以下の5点がメリットとして挙げられます。

メリット①審美性が高い

前歯をインプラントで治療するメリットとしては、審美性の高さが第一に挙げられます。インプラントにはその他の治療法にはない「人工歯根」があるため、装置の天然歯(自然歯)そっくりに仕上げることが可能です。人工歯の部分もセラミックで作ることで、歯を失う前と同じかそれ以上に回復できます。ですから、審美性を追求するのであれば、ブリッジや入れ歯ではなく、インプラントを選択した方が良いと言えます。

メリット②周辺の歯を傷つけずに治療できる

上述したように、ブリッジは両隣の歯を大きく削らなければならず、入れ歯も周囲の歯の支えを必要とします。一方、顎の骨に埋め込んだ人工歯根が土台となるインプラントでは、周囲の歯に支えを求める必要がありません。残った歯を傷つけることなく、美しくて健康的な人工歯が手に入るのです。特に前歯というのは見た目が気になる部分ですし、残った歯を傷つけたくないという方も多いことでしょう。インプラントであれば、そうした患者さまのご要望にもしっかり応えることができます。

メリット③噛む力が強い

前歯をインプラントで治療するメリットとしては、「噛む力が強い」という点も忘れてはいけません。そもそも歯というのは噛むために存在しているものです。当然ですが人工歯にも噛む力を回復させることが求められます。その時、重要となるのが何を支えとするかです。入れ歯の支えとなるとは「粘膜」です。歯が抜けた部分に義歯床(ぎししょう)というレジン製のプレートを設置して、噛んだ時の力を支えます。
ブリッジは「残った歯」に支えを求めるため、入れ歯よりは噛む力が強くなりますが、それでもインプラントにはかないません。なぜなら、インプラントには「人工歯根」が存在しているからです。顎の骨に埋め込まれたチタン製の人工歯根は、天然の歯の根っことほぼ同じ役割を果たすことから、噛む力も自ずと強くなります。インプラントは失った歯の噛む力を8~9割程度、回復できると言われています。
噛む力が強くなると、食事に制限がかからなくなります。また、顎の筋肉が発達し、いつまでも若々しい見た目を維持しやすくなります。さらには、歯茎や顎の骨が痩せていく現象も抑えられ、お口全体の健康維持・増進にも寄与することでしょう。

メリット④他の歯への負担が少ない

インプラントは、他の歯に負担をかけることがほとんどない治療法です。前歯を1本失った場合は、そこにチタン製の人工歯根を埋め込み、アバットメントと上部構造(人工歯)を装着することで治療が完了します。噛んだ時の力もインプラントおよび顎の骨が受けとめるため、周囲に過剰な負担をかけることがないのです。人工歯根がない入れ歯やブリッジとは大きく異なる点といえます。

メリット⑤寿命が長い

インプラントには、装置の寿命が長いというメリットもあります。装置の寿命は治療後のケアの状況によって大きく変わるため、一概に語るのは難しいものの、従来法と比較するとインプラントの寿命は明らかに長くなっています。
まず、保険診療で製作する入れ歯の寿命ですが、一般的には4~5年持てば良いと言われています。入れ歯は故障しやすく、経年的な変化も起こりやすいので、2~3年で新しいものに作り変えることも珍しくありません。歯列内に固定するブリッジは寿命も比較的長く、7~8年くらいは問題なく使い続けられます。
一方、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込むインプラントには、10年保証を付ける歯科医院が大半を占めます。つまりインプラントは10年持って当たり前というのが一般的な考え方なのです。実際、インプラント治療には「10年生存率」という有名なデータがあり、人工歯根を埋め込んでから10年経過しても問題なく使い続けていられているケースが9割を超えています。
ただし、治療後のメンテナンスをしっかり行っていることが前提条件となります。治療後のメンテナンスを怠ると、インプラントの歯周病である「インプラント周囲炎」のリスクが上がったり、装置が故障したりすることで寿命を迎えてしまいます。逆に、治療後のメンテナンスを徹底していると、15年、20年とインプラントを長持ちさせることも難しくなくなります。

インプラントの治療期間

インプラントの治療期間は、一般的な歯科治療よりもやや長いです。それは人工歯根である「インプラント体」を顎の骨に埋め込まなければならないからです。人工歯根を埋入する1次手術を行ったら、少なくも2~3ヵ月は経過を見なければなりません。チタン製の人工歯根と顎の骨が結合する現象にはそれくらい長い期間を要するのです。
2次手術は、「アバットメント」という連結装置を装着するためのもので、1次手術ほど長い治癒期間を設ける必要はありません。手術から数週間後には、人工歯である上部構造の製作および装着へと移行できます。そうしたインプラント治療全体の期間としては、3~6ヵ月程度を目安としておくと良いでしょう。インプラントを埋め込む本数が多かったり、歯茎や顎の骨を再生する手術を必要とする状態であったりする場合は、治療期間も自ずと長くなりますので、その点は歯科医院にお問合せください。

1本当たりのインプラントの費用

インプラントは自費診療なので、歯科医院によって料金設定も大きく異なります。インプラントメーカーによっても費用に差が出てきます。それでも全国的な費用相場というものがあり、現状は奥歯と変わらず、インプラント1本あたり300,000~400,000円前後となっています。これはあくまで標準的なインプラント治療の費用であり、骨を造る手術などを実施した場合はさらに高くなります。

インプラントの治療費が保険適用されるケース

インプラントは、高額な費用がかかる治療法なので、保険が適用されたら助かりますよね。3割負担と10割負担では、家計に与える影響に雲泥の差が出ます。しかし、インプラントに保険が適用されるケースは極めて稀であるので、基本的には全額自己負担で受けることを前提として考えた方が良いでしょう。
例外的に、インプラントで保険が適用されるのは、先天的な病気や事故で多くの歯や顎の骨を失い、正常に噛むことができないようなケースです。また、保険診療でインプラント治療を実施できる医療施設も一部に限られます。それらの条件を満たしている場合は、前歯でも奥歯でもインプラント治療を保険診療で受けることができます。

まとめ

このように、前歯のインプラント治療は、いくつかの理由で奥歯よりも難しくなっています。それでも受けるメリットは大きいことから、たくさんの人が入れ歯やブリッジではなくインプラントを選択しているのが現実です。そんな前歯のインプラント治療についてもっと詳しく知りたい、信頼のできる歯科医院に相談したいという方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。当院はインプラント治療の実績が豊富な歯科医院です。

インプラントと歯列矯正はどっちを先に始めた方がいい?

失った歯の治療である「インプラント」と歯並びの治療である「歯列矯正」の両方を検討中の場合は、どっちを先に始めた方が良いのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。歯科治療を行う順番というのは、患者さまの症状やご要望によってその都度、大きく変わるものですが、治療の性質を踏まえると推奨される順序は自ずと決まってきます。そこで今回はインプラントと歯列矯正を行う順番について詳しく解説します。

インプラント治療の特徴

インプラントと歯列矯正は、目的も施術方法もまったく異なる治療法です。冒頭でも述べたように、インプラントは失った歯を回復させるために行うもので、基本的には歯列の一部分だけが治療対象となります。もっともスタンダードなのは、虫歯や歯周病、外傷などで失った歯を補うケースで、顎の骨にチタン製の「人工歯根」を埋め込むケースです。その上にセラミックで作られた「上部構造」を装着して、失った天然歯の見た目や機能を回復させます。その結果、噛んだ時の力を顎の骨で受けとめられるようになり、硬い物でもしっかり噛めて食事が楽しくなります。
ですから、インプラントの比較対象となるのは、歯列矯正ではなく、入れ歯やブリッジなどの補綴装置であるといえます。ただ、インプラントでもすべての歯を失った症例に適応される「オールオンフォー」や「インプラントオーバーデンチャー」などがあり、歯列全体を治療することも可能です。そうした治療法であれば、当然ですが歯列矯正は不要となります。

歯列矯正の特徴

歯列矯正は、今存在している歯の並び方や噛み合わせを改善するための治療です。出っ歯や受け口、乱ぐい歯といった歯並びの乱れに悩まされている方が治療を希望して来院されます。
ワイヤー矯正やマウスピース矯正など、いくつかある治療法の中からひとつ、あるいは複数を組み合わせて歯並びを改善していきます。歯列矯正は極めて専門性の高い分野なので、知識や実績豊富な歯科医師に治療を任せると良いです。矯正の専門家であれば、歯並びの見た目だけではなく、噛み合わせまでしっかり治してくれることでしょう。そうすることで、咀嚼能率も上がり、お口や全身の健康維持・増進にも寄与します。

インプラントと歯科矯正

インプラントは、1本あたりで高額な費用がかかる治療法であり、本数が多くなるほど経済的な負担が大きくなります。外科手術を伴うことから、心身にかかる負担もそれなりに大きいため、可能な限り埋入する本数を減らしたいものです。
実は、患者さまのお口の状態によっては、歯列矯正を併用することでインプラントを埋入する本数を減らしたり、より美しく、健康的に仕上げたりすることが可能となります。そこで重要となるのが今回のテーマでもある「インプラントと歯列矯正の順番」です。
両方の治療に対応している歯科医院であれば、主治医の判断に委ねることができますが、別々の歯科医院を受診する場合は、まずご自身で考える必要が出てきます。“何となく”で治療の順番を決めてしまうと、最終的な結果に大きな悪影響が生じることもありますので、そこは慎重に進めていきましょう。
一般的には、歯列矯正を先に始めた方が良いといえます。

歯列矯正を先に始めた方がいい理由

インプラントは、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込み、固定させる治療法なので、それ以降は動かすことができません。天然歯の歯とは構造が少し異なるため、歯列矯正によって位置の調節を行えないのです。
また、歯列矯正を先に始めることで、不要なすき間を埋めたり、歯を適切な位置に移動したりすることで、インプラントを埋めやすい環境に整えることができます。
先に始めるのが歯列矯正であっても、どのタイミングでインプラントを行うかはケースによって異なります。場合によっては、歯列矯正の真っ只中でインプラント治療を実施して、人工歯根が埋入された状態で奥歯や前歯の歯並びを調整していくこともあるでしょう。
歯列矯正が完全に終了した時点でインプラント治療を行うこともあり、タイミングの見極めは非常に難しくなります。どちらが患者さまにとって有利となるかはケースによって変わるからです。いずれにせよ歯列矯正を先に行う点においては共通しています。

既にインプラントが入っていても歯列矯正が先

過去にインプラント治療を受けていて、もう既に人工歯根が顎の骨に埋入されている場合でも、原則として歯列矯正を先に始めることになります。歯科医師もインプラントが入った状態で検査・治療計画の立案を行っていくことから、苦労する場面も多々あることかと思いますが、遠慮せずに相談することが大切です。今後もインプラントを追加することもしっかり伝えた上で、最善といえる歯列矯正の方法を提案してもらいましょう。
ちなみに、インプラントは顎の骨と強固に結合しており、状態が良ければ、ある特定の歯だけを動かす際の固定源として活用できます。

例外的にインプラント治療を先に始めるケース

あくまで例外的ではありますが、歯列矯正よりも先にインプラント治療を始めるケースもあります。これは歯を失った状態を長く放置できないような場合です。そのままの状態で数ヵ月過ごすと、「食べ物が噛めない」「言葉をきちんとしゃべれない」「呼吸がしにくい」などの症状に悩まされる場合は、先にインプラント治療を行って、失った歯を回復させます。
もちろん、こうした方法を採るのは、歯列矯正で不利に働かないケースに限られます。また、上述したように、インプラントは状態が良ければ歯を動かす際の固定源となることから、歯列矯正に有利に働く面もあります。
とはいえ、インプラント治療を先に始める場合は、極めて難易度の高い歯列矯正となるため、インプラント治療を担当する歯科医師と歯列矯正を担当する歯科医師の密な連携が必須となることでしょう。連携が上手くいっていないと、期待するような結果が得られなくなります。その点も踏まえた上で、治療を任せる歯科医院選びは慎重に行うようにしてください。
インプラント治療を任せた歯科医師におすすめの矯正医を紹介してもらうと連携もスムーズに進みやすいでしょう。インプラント治療の実績豊富な歯科医師であれば、歯列矯正を併用するケースも経験しており、連携しやすい矯正医ともつながっていることが多いからです。

終わりに

このように、歯列矯正とインプラントは目的も治療法もまったく異なるものであり、両方受ける場合は「順番」が大切になります。治療を受ける順番を間違えると、経済的な負担が大きくなるだけでなく、最終的な仕上がりに大きな悪影響が及ぶことも珍しくありません。どちらも治療を終えるまでにたくさんの苦労をしなければならないものなので、思い描いていた結果が得られなかったら残念ですよね。
そうした悲しい思いをしないためにも、歯列矯正とインプラントを受ける歯科医院選びは慎重に行うようにしましょう。最善といえるのは、両方に対応した歯科医院ですが、どちらも専門医レベルの治療を提供できる場所は極めて稀といえます。ですから、現実的には歯列矯正とインプラントは別々の歯科医院を受診し、それぞれで治療計画を立案することになります。お口や歯並びの状態によって治療期間も大きく変わるため、2つの歯科医院での連携も重要になってくる点にもご注意ください。

インプラント治療の主な失敗例4選:原因も併せて解説

インプラントは高度な歯科治療であり、従来法にはないメリットをたくさんもたらしてくれますが、失敗するリスクも伴います。とくに外科手術を伴う点に不安を感じている方が多く、過去に起きた医療事故についても気になる方も多いようです。今回はそんなインプラント治療の失敗例を4つ取り上げ、原因も併せて解説します。

インプラント治療の主な失敗例4選

①インプラントが骨に固定されていない

インプラント治療の失敗例としてはまず「人工歯根(インプラント体)が顎の骨に固定されない」ケースが挙げられます。インプラント治療の要である人工歯根が定着していないので、明らかな失敗と判断できます。

【原因1】適切に埋め込まれていない

人工歯根であるインプラント体は、適切な位置・角度・深さに埋め込まなければ、顎の骨に固定されません。手術を担当する歯科医師の技術が未熟で埋入処置が不適切だと、顎の骨から人工歯根がはみ出るなどして治療が失敗に終わります。

【原因2】ドリルで骨にダメージを与えた

チタン製の人工歯根は、専用のドリルで埋め込みます。その際、ドリリングの速度が速すぎたり、冷却のための注水を怠ったりすると、摩擦熱で顎の骨が火傷を起こし、ダメージを負います。その結果、骨の細胞が死んでしまい、人工歯根と顎骨との結合がうまくできなくなります。

②インプラント周囲炎を起こす

インプラント周囲炎は、インプラント特有の歯周病です。インプラントを支える歯茎や顎の骨に炎症が起こり、組織の破壊をもたらします。インプラント周囲炎が進行するとインプラントを支えきれなくなるため、治療も失敗に終わります。

【原因1】メンテナンスが不十分

インプラント周囲炎の主な原因は、不十分なメンテナンスです。インプラントでは治療が終わった後も定期的にメンテナンスを受ける必要がありますが、それを怠ると人工歯やアバットメントの周囲に汚れが溜まるようになり、歯周病を発症します。

【原因2】歯周病の治療が不十分

もうすでに歯周病を発症している人は、適切な治療を受けるようにしましょう。歯周病は、痛みなどの強い症状が現れるまでに時間がかかるため、気付いた頃には重症化していることも珍しくありません。歯周病の治療が不十分だと、インプラント周囲炎が進行し、人工歯根の脱落という最悪の結果を招いてしまいます。

【原因3】治療室の衛生管理が不徹底

インプラント周囲炎は、歯科医院の治療室が不衛生である場合も原因となり得ます。術中の感染対策を徹底し、治療室の衛生管理が行き届いている歯科医院を選ぶことが大切です。

③痛みや腫れが長期間にわたって続く

インプラント治療の痛みや腫れは、手術から2~3日をピークに1週間程度で治まります。痛みや腫れ、しびれなどが2~3週間経っても治まらない場合は何らかの異常が疑われます。

【原因1】適切に埋め込まれていない

インプラントが適切に埋め込まれておらず、神経を損傷しているようなケースでは、痛みや腫れ、しびれなどが長期にわたって続くことがあります。

【原因2】細菌に感染している

インプラントを埋入した部位に細菌感染が起こっている場合も痛みなどの症状が長引きやすいです。細菌感染は術中・術後の両方にリスクがある点に注意しなければなりません。

④人工歯が破損あるいは外れる

上部構造である人工歯の破損・脱落もインプラントの失敗例のひとつとして挙げられます。

【原因1】嚙み合わせが適切でない

人工歯の高さが高すぎたり、低すぎたりするなどの理由で噛み合わせが合っていないと、噛んだ時の力が過剰にかかり、破損や脱落を招きます。

【原因2】アパットメントの締め付けが不十分

人工歯根と人工歯を連結するアバットメントは、ネジによって固定されています。そのネジの締め付けが不十分だと人工歯が不安定な状態となり、破損や脱落を招きます。

インプラント治療で起きた死亡事故

葬儀のイメージ

インプラント手術では過去に死亡事故が起こっています。
メディアでも広く報道されたため、「インプラントは怖い治療」というネガティブなイメージを持たれた方も多いことでしょう。
2007年東京都の歯科医院で起こった死亡事故は、オトガイ下動脈や舌下動脈の位置を歯科用CTで正確に把握していなかったことが原因となっています。その結果、手術中に動脈を損傷。大量出血を招き、患者さんは窒息して亡くなられました。

インプラント治療には、こうしたリスクを伴うことを理解しておく必要はありますが、極めて稀な例であることは間違いありません。多くの歯科医院は、事前の画像診断を精密に行い、手術中のリスクも限りなくゼロに近付けるよう努力しているものなのです。

まとめ

今回は、インプラント治療の主な失敗例4選をご紹介しました。いずれもインプラント治療には必ず伴うリスクではありますので、詳細について正確に理解しておくことが大切です。
ただし、それらはあくまでリスクであり、適切な医療を提供している歯科医院であれば、10年、15年と正常にインプラントを使い続けられるケースの方が圧倒的に多いといえます。
それだけに、インプラント治療を受ける歯科医院選びは慎重に行う必要があるでしょう。

老後のインプラント治療:デメリットを踏まえてもオススメ!

インプラントには「人工歯根」があるため、本物の歯のようにしっかり噛むことができます。見た目も美しいため、その人気は年々上昇しているのですが、老後に治療を受けるかどうか迷われる方も多いようです。そこで今回は、インプラントの利点を入れ歯と比較した上で、老後にインプラント治療を受けるメリットとデメリットをわかりやすく解説します。

入れ歯と比較した場合のインプラントの利点

入れ歯

入れ歯と比較したインプラントの利点としては、以下の4つが挙げられます。

利点①食べ物をしっかり味わえる

入れ歯には「義歯床」というレジンもしくは金属製のプレートが歯茎と接するため、食事の温度や味が感じにくくなります。インプラントには人工歯根が存在していることから、義歯床のようなパーツは不要であるため、本物の歯と同じように食べ物をしっかり味わうことができます。

利点②管理しやすい

入れ歯は着脱式の装置であるため、お口の中と装置の両方を清掃しなければなりません。外した時に、紛失したり損傷するリスクもあります。インプラントは顎の骨と一体化する装置なので、清掃や管理する方法もシンプルです。

利点③誤嚥性肺炎を予防できる

大型の装置である入れ歯には、汚れがたまりやすく、細菌の温床となりがちです。その一部が唾液と一緒に気管へと流れ込むと「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」を引き起こすことがあります。小型の部分入れ歯の場合は、装置そのものを気管に誤嚥するリスクを伴います。

利点④強く噛める

入れ歯によって回復できる噛む力は、本物の歯の3~5割程度と言われています。顎の骨に根差したインプラントは、噛む力を本物の歯の8~9割程度まで回復できるため、食べ物を強く、しっかり噛めるようになります。

老後にインプラント治療を行うメリット

インプラントには入れ歯にはない利点がたくさんあることをおわかりいただけたかと思いますが、老後にインプラント治療を受けるメリットについても知りたいですよね。ここでは、50~60代以上の方がインプラント治療を受けるメリットを4つほどご紹介します。

メリット①身体機能の維持に繋がる

インプラントで食べ物をしっかり噛めるようになると、咀嚼力が維持され、たくさんの栄養分を摂取できます。その結果、免疫機能や足腰の機能、内臓の機能を正常に維持しやすくなり、全身の健康維持・増進にも寄与します。

メリット②認知症のリスクを軽減できる

平成22年に厚生労働省は「咀嚼機能が低い人は認知症のリスクが高くなる」という研究結果を報告しました。たくさんの歯を失った人は、自分の歯が20本以上残っている人に比べて、認知症のリスクが1.9倍にもなることが研究によって明らかになったのです。インプラントは本物の歯に匹敵する機能を発揮することから、老後にインプラント治療を受けることで認知症のリスクを軽減することができます。

メリット③会話を楽しめる

今現在、入れ歯を装着している方は「会話がしにくい」点に不満を感じているかもしれません。入れ歯は会話している時にズレたり外れたりすることが多々あります。発音しにくい言葉もいくつかあり、ストレスを感じる場面が多いです。本物の歯と構造や機能がほぼ同じインプラントであれば、そのような不便を感じることはなく、ご家族やご友人との会話も楽しむことができます。

メリット④若々しさをキープできる

インプラントは、入れ歯に付属しているクラスプや義歯床などがなく、その構造は天然歯そっくりなので見た目が自然です。人工歯である上部構造も患者さまご自身の歯の色に近付けることができ、若々しさをキープしやすいというメリットがあります。インプラントと同じ固定式のブリッジも比較的美しい治療法ではありますが、やはり人工歯が連結された構造はやや不自然な印象を与えてしまいます。

老後にインプラント治療を行うデメリット

ここまでは、インプラントの良い面にスポットを当てて解説してきましたが、ここからはインプラントの負の側面です。老後にインプラント治療を受けると以下に挙げるようなデメリットを伴います。

デメリット①細菌感染のリスクがある

インプラント治療には必ず外科手術を伴います。歯茎をメスで切開し、顎の骨にドリルで穴を開けるため、手術中・手術後に細菌感染が起こるリスクは避けられません。とくに年齢が高くなると全身の免疫力が低下することから、感染リスクは若年者よりも上昇します。

デメリット②インプラントと骨が結合しづらい

50~60代になると、全身の代謝機能が衰え、傷の治りが遅くなります。チタン製の人工歯根と骨との結合も起こりにくくなり、インプラントの安定性が得られないこともあり得ます。

デメリット③治療を受けられない場合がある

インプラントの手術はそれほど大掛かりなものではありませんが、体力が極端に低下していたり、重症度の高い全身の病気を患っていたりなど、健康状態が悪い場合はインプラント治療そのものが適応外となることもあります。

デメリット④費用が高く治療期間が長い

保険診療のブリッジや入れ歯は長くても2~3ヵ月程度で治療が終わりますが、インプラントの場合は少なくとも半年はかかります。費用も比較的高く、患者さまの心身および経済面における負担が大きくなる点は、インプラント治療の大きなデメリットのひとつとして挙げられます。治療期間は、インプラントを埋め込む本数や部位、患者さまの顎の骨の状態などによって大きく変わるため、一概に語るのは難しいです。

デメリット⑤メンテナンスが必要になる

インプラント治療は歯科医院での定期的なメンテナンスが必要です。メンテナンスを怠ると「インプラント周囲炎」という、インプラント特有の歯周病にかかるリスクが高まります。インプラント周囲炎は、歯茎だけではなく、顎の骨まで破壊する怖い病気で、インプラント治療が失敗に終わる主な原因にもなっています。また、年齢を重ねた方は、虫歯や歯周病などのリスクが高いため、お口の中を清潔に保つことが大切です。

デメリットを踏まえても老後のインプラントはおすすめ

上述したように、インプラントにもそれなりのデメリットを伴うため、老後に受けるには不安に感じた方もいらっしゃるかもしれません。そこで改めて、前半で述べたインプラントのメリットを確認してみてください。全身はもちろん、お口の機能も加齢とともに衰えていきますが、インプラント治療によってその速度を遅らせることができるのは確かです。80~90歳で寝たきりになったとしても、要介護の現場で扱いやすいのは間違いなく入れ歯ではなくインプラントです。

そうした長期的な観点に立つと、インプラントの優れた点がさらに浮彫となります。もちろん、患者さまそれぞれのお口の中の状態や生活環境などを考慮して最善といえる治療法を選択した方が良いですが、現状、インプラントに優る人工歯+人工歯根は、存在しておらず、デメリットを踏まえたとしても老後に推奨できる装置といえます。

老後にインプラント治療を受ける前に知っておくべきこと

老後にインプラント治療を検討中の方は、以下の3点について知っておいてください。

知る①毎日手入れが必要

インプラントは天然歯と同じような見た目をしていますが、歯茎との境目に汚れがたまりやすく、インプラント周囲炎という歯周病のリスクが高くなっています。そのため本物の歯以上にしっかりケアする必要があります。

知る②顎の骨が少ないと対応可能な歯科医院が限られる

インプラント治療では、顎の骨の量と質が重要となります。顎の骨が不足している症例では、「骨造成(こつぞうせい)」などでインプラント治療を適応可能にできますが、そうした高度な治療法に対応している歯科医院は一部に限られます。

知る③持病のリスクが高まる

糖尿病や高血圧症、骨粗しょう症などの持病をお持ちの方は、病状を安定させた上でインプラント治療を受けなければなりません。また、インプラント治療を受けた後も持病が悪化するリスクを伴うことから、治療後のメンテナンスをしっかり継続していくことが大切です。

まとめ

今回は、老後にインプラント治療を受けるメリットとデメリットについて解説しました。お口の中や全身に大きな問題がなければ、老後においてもインプラント治療が推奨されます。インプラントは老後の生活を豊かにしてくれる素晴らしい治療法なので、50~60代で失った歯の治療を控えている方は、ひとつの選択肢として検討されてみてはいかがでしょうか。

インプラント治療が可能になる骨造成のメリット・デメリット・種類を解説

インプラントは、誰でも受けることができる治療ですが、顎の骨の状態が悪いと適応が難しくなります。けれども、「骨造成」という特別な処置を行える歯科医院であれば、インプラント治療が可能となることもあるのです。今回はそんなインプラント治療における骨造成が必要になるケースや施術に伴うメリット・デメリットをわかりやすく解説します。

骨造成とは

骨造成とは、その名の通り「骨を造る」処置です。何らかの理由で溶けたり、退化したりした骨を高度な医療技術を使って再生させます。インプラント治療においては顎の骨の状態が何より重要となることから、さまざまな理由で失われた顎の骨を人工骨や専用の薬剤を使って再生させ、人工歯根(インプラント体)を安全に埋め込める状態を作ります。骨造成は、インプラント手術と同時に行うこともあれば、事前に行うこともあります。

インプラント治療の際に骨造成が必要なケース

インプラント治療で骨造成が必要となるケースは、以下のような理由から顎の骨の量が不足している場合です。

ケース①歯周病が進行している

歯周病は「歯肉炎」と「歯周炎」に分けられます。歯周炎まで進行すると、歯茎だけでなく顎の骨にまで炎症が広がり、歯を支える骨が溶けてしまいます。重症化した歯周病では歯がグラグラと動き始めるのはそのためです。天然歯を支えることが難しくなるのですから、人工歯根であるインプラント体はより不安定となることでしょう。そうしたケースでは根本的な原因となっている歯周病をまず治療して、病態が安定したら骨造成を行います。

ケース②歯が抜けた所を治療せずに放置している

骨折した時に足の筋肉や骨が痩せていくのと同じように、歯が抜けたところを治療せず放置していると顎の骨が吸収されていきます。顎の骨は噛んだ時の力が加わらないと、どんどん退化していってしまうのです。そうしたケースにも骨造成は有効です。

ケース③合わない入れ歯を長年使っている

適合の悪い入れ歯を使っている場合も顎の骨に適切な刺激が加わらず、徐々に痩せていきます。とくに「入れ歯安定剤」を長期に渡って使用しているケースでは、顎の状態が悪くなりがちです。入れ歯安定剤というのは、あくまで一時的に使用するものであり、常用するものではありませんのでその点はご注意ください。これからインプラント治療を受けようかどうか検討している方は、今お使いの入れ歯が合っているか、改めて確認してみてください。

骨造成のメリット

インプラント治療における骨造成には、以下に挙げるようなメリットがあります。

メリット①インプラント治療のリスクを軽減できる

顎の骨の厚みや深さが不足した状態でインプラント手術を実施すると、インプラント体が骨や歯茎から露出した状態となるリスクがあります。また、インプラント体と骨との結合が上手く進まず、治療そのものが失敗に終わる可能性も出てきますので、骨造成を行う必要があります。骨造成によって十分な骨の量が確保できれば、そうしたリスクを軽減することができます。

メリット②インプラントの安定性が高くなる

インプラントの人工歯根も骨の量が少ない環境では、安定性を維持することが難しくなりますが、骨造成によって足りない骨を補填するこができれば、自ずとインプラント体の安定性も高まります。
合わせて、定期的なメンテナンスを行うことで、安定したインプラントを長期間維持することができます。

メリット③歯茎の審美性が高くなる

骨造成は、インプラントの審美性の向上にもつながります。なぜなら、美しい歯茎というのは健全な骨がなければ成り立たないからです。骨造成によって顎の骨がしっかりすると、その周りを覆う歯茎の形も美しく、健康的になります。その結果、より自然な仕上がりが期待できるようになるのです。

骨造成のデメリット

骨造成は、とても素晴らしい施術法ですが、以下に挙げるようなデメリットを伴うことも忘れてはいけません。

デメリット①治療期間が長期にわたる

インプラント手術の前に骨造成を行う場合は、治療期間が長くなる点に注意が必要です。患者さまの顎の骨の状態にもよりますが、顎の骨が再生するまでには4~6ヵ月、場合よっては1年以上かかることもあります。ただし、インプラント手術と骨造成を同時に行う場合は、治療期間が極端に長くなることはありません。
仕事や生活に合わせて、治療を検討する必要があるでしょう。

デメリット②痛みや腫れが生じる場合がある

骨造成は、いわゆる外科手術の一種です。歯肉をメスで切開したり、必要に応じて他の部位から骨を採取したりするため、術後にはある程度の痛みや腫れが生じます。もちろん、術中は局所麻酔が効いているので不快な症状が現れることはありませんが、術後にダウンタイムがある点に注意しなければなりません。また、外科処置に伴う感染リスクも骨造成のデメリットのひとつとして理解しておく必要があります。

骨造成の主な種類

歯科医の解説

骨造成には、いろいろな種類があります。ここではインプラント治療で実施される骨造成の種類を5つ取り上げ、それぞれの特徴などを詳しく解説します。

種類①ソケットリフト法

上顎の奥歯の部分の骨が足りない場合は、上顎洞挙上術(じょうがくどうきょじょうじゅつ)と呼ばれる方法で骨を造ります。上顎洞挙上術には、ソケットリフトとサイナスリフトの2種類があり、前者のソケットリフト法は、骨の高さが3~5mm以上あるケースに適応されます。インプラント体を埋め込む方向から専用の器具を使って骨補填剤を注入して、骨の再生を促します。手術から4ヵ月程度経過すると、インプラント手術を安全に行えるだけの骨が再生されます。

種類②サイナスリフト法

サイナスリフト法も上顎洞挙上術の一種であり、上の奥歯の部分の骨が足りない場合に実施されます。顎の骨の高さが3~5mmに満たない場合に、ソケットリフトではなくサイナスリフトが適応されます。サイナスリフトは、ソケットリフトよりも多くの骨を再生させなければならないため、インプラント体を埋め込む方向からではなく、側面からアプローチします。具体的には、歯肉を切開して骨を造るためのスペースを作り、骨補填剤を注入します。ソケットリフトより負担の大きい術式ですが、骨を広範囲で造成することができます。

種類③GBR法

GBR(Guided Bone Regeneration)法とは、日本語で「骨誘導再生法」と呼ばれる術式で、インプラント体の埋入と同時に実施するのが一般的です。インプラント体を埋入して、骨が不足している部分に自家骨や人工骨、骨補填剤を注入します。仕上げに「メンブレン」と呼ばれる特殊な膜を設置することで、骨の再生が誘導されていきます。骨が再生されるまでには4~6ヵ月程度を要しますが、インプラント体(人工歯根)の埋入も同時に行うため、治療期間が大幅に延びるようなことはほとんどありません。

種類④遊離骨移植

遊離骨移植とは、患者さまご自身の骨をブロック状に採取して、骨が不足している部位に移植する方法です。自家骨移植となるため、拒絶反応が起こるリスクは極めて低くなっています。4~6ヵ月程度で骨が生着し、インプラント治療を安全に行えるようになります。

種類⑤ソケットプリザベーション

ソケットプリザベーションとは、抜歯後の骨の吸収を防ぐために行う方法です。抜歯した穴に骨補填剤などを入れ、骨の再生を促します。4~9ヵ月程度経過すると、抜歯後の穴が硬い骨で埋まるので、適切な時期にインプラントを埋入します。

まとめ

今回は、骨が不足していてもインプラント治療が可能となる「骨造成」について解説しました。ひと言で骨造成と言ってもその種類はさまざまで、それぞれに異なる特徴があります。また、骨造成にはメリットだけでなくデメリットも伴う点にも注意が必要です。そんなインプラント治療における骨造成についてさらに詳しく知りたい方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。

インプラント治療後にMRI検査はできない?その真相を解説

インプラント治療では、顎の骨に金属(チタン)製の人工歯根を埋め込みます。そのためインプラント治療を受けてしまうと、MRI検査を受けられないという話を耳にすることがあります。MRI検査は全身の健康状態を調べる上でとても重要なものなので、それが受けられなくなることは極めて大きなデメリットとなりますが、実際のところはどうなのでしょうか。

MRI検査とは

MRIイメージ

MRI検査とは、レントゲン検査やCT検査と同じように「画像診断」のために実施される検査です。正確には「Magnetic Resonance Imaging」と呼ばれるもので、強力な磁石と電波を使って磁場を発生させる装置を用います。レントゲンやCTは、どちらかというと骨のような硬い組織を検査するのに有用なのですが、MRIは内臓などのやわらかい組織の異常を調べるのに有用です。

一般的な画像検査とは異なり、MRIでは放射線を使用しません。被ばくする可能性がないというのは、患者さまにとって極めて大きなメリットといえます。ただ、磁石を使った検査なので、撮影室内に金属類を持ち込むことができません。検査の前に必ず説明があるかと思いますが、金属類を身につけたままMRI検査を受けると、装置にそれらが引き寄せられてしまいます。検査結果にも悪い影響を与えるため、ペースメーカーや人工内耳などの医療機器を体に埋め込んでいる人は、原則としてMRI検査が受けられないのです。

インプラント治療後はMRI検査ができないと言われる理由

結論からいうと、インプラント治療後もMRI検査は問題なく受けられます。実際、当院でインプラントの埋入処置を実施した患者さまの中にも治療後にMRI検査を受けた方はいらっしゃいます。これは当院に限らず全国的にもいえることです。それならなぜ「インプラント治療後はMRI検査ができない」と言われるようになったのか。それは「インプラント」という名称が歯科治療だけに使われているわけではないからです。

いろいろな分野の「インプラント」

失った歯を補うために埋め込む人工歯根は「デンタルインプラント」です。世間ではインプラント=デンタルインプラントというイメージが定着していますが、医療の分野ではその他にも異なるインプラントがたくさん存在しています。以下に挙げる医療機器もインプラントの一種であり、MRI検査が受けられません。

  • 心臓ペースメーカー
  • 人工内耳
  • 神経刺激装置

こうした精密機器は、MRI撮影の画像を乱すだけでなく、患者さまの体にまで深刻な悪影響を及ぼします。ちなみに、これらの機器に用いられる金属は磁気に反応しますが、デンタルインプラントや人工関節、結合プレートなどに用いられるのは非磁性金属であり、強力な磁場にさらされても影響を受けることはありません。

インプラント治療後でもMRI検査はできる

デンタルインプラントにもいくつかの種類があり、一概に語るのは難しいですが、インプラント治療後でもほとんどのケースでMRI検査を受けることができます。一般の歯科医院で実施している標準的なインプラント治療であれば、まず問題なくMRI検査を受けられることでしょう。というのも、インプラントで使用する「チタン」という金属には磁力がなく、磁石と電波によって強力な磁場を発生する装置に近づいても大した影響を受けないからです。

病院の現場では、この点をよくわかっていない医療スタッフの方もいるため、ちょっとした混乱や問題が起きたりすることもあります。ただし、今現在流通しているインプラントのすべてが「チタン」で作られているわけではありません。

MRI検査ができない可能性があるインプラントの種類

インプラントにもMRI検査できないケースがあります。とりわけ次の2つに関しては十分な注意が必要です。

  • インプラントオーバーデンチャー
  • 医療用インプラント

インプラントオーバーデンチャー

インプラントオーバーデンチャーとは、入れ歯のような取り外し式の上部構造を装着するタイプのインプラントです。入れ歯とインプラントは、磁石によって固定するパターンが一般的です。磁性体をMRI室に持ち込むと、装置の故障を招くことがあるため、原則として禁止されています。ただ、インプラントオーバーデンチャーの中には、磁石を使用しないパターンもあります。そのためインプラントオーバーデンチャーを装着している人でMRI検査を受ける必要が出てきた場合は、歯科医院に装置の構造などをきちんと聞いておくことが大切です。インプラント治療で磁石が用いられていなければ、インプラントオーバーデンチャーでも問題なくMRI検査が受けられます。

医療用インプラント

上記の装置はいわゆる歯科に用いられる「デンタルインプラント」ですが、心臓・整形・美容外科などでは、さまざまな装置を体の中に埋め込むことがあり、それらを「医療用インプラント」と総称することがあります。具体的には心臓ペースメーカーや人工関節などです。これらは使用している金属や装置の構造などによって、MRI検査を受けられるかどうかが決まります。人工関節のように金属が使われていても、MRI装置や検査自体に影響がないものもありますので、心当たりのある方は、主治医に問い合わせておきましょう。

チタンとMRI検査

ここまでチタンを用いた標準的なデンタルインプラントは、MRI検査を受けられることをご説明してきました。チタンも立派な金属のひとつではあるのですが、磁性体ではないため、磁力を用いるMRI検査に悪影響を及ぼすことがありません。さらにチタンには次のような特徴があることから、デンタルインプラントの素材として広く活用されるようになりました。

・顎の骨と結合しやすい
・人体に馴染みやすく安全性が高い
・金属アレルギーのリスクが極めて低い
・耐久性が高い

チタンは生体親和性の高い金属であり、古くから人工関節の素材として使われてきましたが、金属アレルギーのリスクがゼロではありません。ごく稀にチタンアレルギーを持っている方もいらっしゃいますので、万全を期すのなら事前にパッチテストなどの検査を受けておくことが推奨されます。いずれにせよチタン製のインプラントなら、MRI検査で問題が起こることはほとんどないため、よほどのことがない限り検査を拒否されることもないでしょう。

インプラントが原因でMRI検査を断られた場合の対処法

上でも述べたように、デンタルインプラントに対する理解がない医療スタッフも存在するため、病院によってはMRI検査を断られる場合もあります。そのような場合には、次のように対処しましょう。

対処法①上部構造のみを外す

骨に埋まっているインプラント本体が、チタンなどの磁力を持たない金属である場合、事前に被せ物の部分の上部構造のみを外すことでMRI検査が受けられます。磁石を使わないタイプのインプラントオーバーデンチャーも同様です。
もちろんこれはスクリュー固定式のインプラントに限られます。当然ですがセメント固定式のインプラントは上部構造を外すことはできません。

インプラントを外すよう指示された場合には、インプラント治療を受けた歯科医院で上部構造のみを外してもらいましょう。

対処法②インプラントがチタン製であることを伝える

デンタルインプラントが金属製であることを指摘された場合は、それが「チタン」であることをスタッフに伝えましょう。医師はもちろんのこと、画像検査にかかわる医療スタッフであれば、チタン製の医療機器がMRIに悪影響をもたらさないことを知っています。人工関節に用いられている素材と同じであることを伝えれば納得してくれることでしょう。

対処法③インプラント治療を受けた歯科医師に相談する

上述した対処法で解決しない場合は、インプラント治療を受けた歯科医院・歯科医師に相談してみましょう。使用したインプラントに問題がなければ、その安全性などを担当の先生に伝えてくれるはずです。
また、MRI検査を受ける前に、トラブルを防ぐためにも、自己判断だけでなく、事前に歯科医師に相談することも大切です。

インプラント治療後でもCT検査はできる

身体の状態を精密に調べる方法として、MRI検査以外にもCT検査というものがあります。一般の方からすると、MRIもCTも同じようなものに見えているかもしれませんが、厳密には大きく異なる点がいくつかあります。

まずMRIでは放射線を使用しないため、被ばくのリスクがありませんがCTにはあります。ただ、健康被害が生じるほどの被ばくを伴うことはありませんので、その点はご安心ください。撮影の際には、放射線を遮断する鉛製のエプロンを着用しますし、歯科用CTでの撮影ではエックス線の照射部位が口腔周囲に限定されるため、身体への影響を最小限に抑えられます。

次に、金属が検査に及ぼす影響についてですが、CTではMRIのような磁場を発生する必要がないため、身体に金属が埋め込まれていても問題なく撮影できます。つまり、チタン製の人工歯根を埋め込むインプラント治療を受けたからといって、CT撮影を断われることはないのです。もちろん、インプラントの安全性の問題で不安を感じることがあれば、事前に歯科の先生に相談しておくと良いでしょう。

まとめ

今回は、インプラント治療後にMRI検査を受けられるのかどうかについて解説しました。
インプラント治療後にMRI検査を受けることはできない、という話も巷には広まっていますが、少なくとも標準的なデンタルインプラントは問題なく受けることができます。
ひと言でインプラントと言っても、医療分野には複数該当するケースがあるため、現場でも混乱している部分があるのでしょう。

デンタルインプラントを受けた方でMRI検査を断られた場合は、今回ご紹介した方法で対処してみてください。歯科のインプラントとMRI検査の関係についてさらに詳しく知りたい方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。当院はインプラント治療に力を入れている歯科医院です。

インプラント治療は痛い?手術中と手術後に分けて解説

インプラント治療は外科手術を伴うことから、痛みに不安を感じている方が多いようです。そこで今回は、インプラント治療の痛みについて、手術中と手術後に分けて詳しく解説します。

【手法別】インプラント手術中の痛み

インプラント手術では、原則として始めに「局所麻酔」を施します。虫歯治療でも用いられる麻酔で、歯茎などの感覚が麻痺するため、手術中に痛みを感じることはほとんどなくなります。局所麻酔で注射を刺す痛みも「表面麻酔」によって軽減でき、術前から術中の痛みは皆無に等しいと言っても過言ではないでしょう。それでも不安な方には、鎮静剤を使った麻酔処置もご用意しておりますので、遠慮なくお申しつけください。

手術中の痛みはほとんどないとはいえ、インプラント治療では歯茎をメスで切開し、顎の骨にドリルで穴を開けるという手術を実施するので、麻酔が切れた後はそれなりの痛みが生じる点に注意が必要です。治療の手法によって痛みが異なるため、それぞれの手法別の痛みについてこちらでは解説します。
もちろん、術後には痛み止めや腫れ止めなどを処方いたしますので、麻酔が切れた後の痛みや腫れをコントロールすることは可能です。

手法①骨の移植

インプラントは、チタン製の人工歯根と顎の骨とを結合させる治療法なので、骨の状態が悪い場合は事前の処置が必要となります。専門的には「骨移植」と呼ばれる方法で、足りない骨を補います。
骨移植には、自分の骨を移植する「自家骨移植」と人工骨を移植する「人工骨移植」の2つの方法があります。前者の場合は自分の体の別の部位から骨を採取しなければならず、傷口も2か所になり、痛みが生じる部位も多くなります。

手法②歯茎の移植

歯茎の状態が悪い場合も、別の部分の歯茎から組織片を採取し、移植するという事前の処置が必要です。この場合も結果として傷口が2つになるので、痛む部位も増えます。
ちなみに、痛みは歯茎を採取した部位の方が強くなる傾向にあります。

手法③骨造成手術

骨の厚みが不足している部分に“骨を造る”方法です。ソケットリフトサイナスリフトGBRなどが代表的で、通常のインプラント手術よりも侵襲が大きくなることから、術後の痛みも比較的強くなります。

手法④無切開無痛手術

フラップレス手術とも言われる術式で、その名の通り歯茎をメスで大きく切開する必要がありません。インプラントを埋め込む部位には、専用のパンチで小さな穴を開けるだけなので、傷口が小さく、術後の痛みも弱くなっています。抜糸が不要になる点も大きなメリットといえます。

インプラント手術と静脈内鎮静法

インプラント手術の痛みは、虫歯治療でも使われる局所麻酔でコントロール可能ですが、それでも不安な方には「静脈内鎮静法」がおすすめです。
腕の血管から鎮静剤を投与することで、半分眠ったような状態となります。少し特殊な麻酔なのですべての歯科医院が対応しているわけではない点に注意が必要です。

静脈内鎮静法には「健忘効果(けんぼうこうか)」という、その時の記憶が残りにくくなる効果も期待でき、手術が終わった後には何をしていたのかを忘れてしまう人も珍しくありません。また、手術に伴う怖い記憶も残らない人も多いです。

インプラントの手術後の痛み

痛み・腫れが続く期間

上述したように、インプラント手術には歯茎の切開や骨に穴を開ける処置を伴うことから、手術後に相応の痛みや腫れが生じます。手術のために施した局所麻酔の効果が切れた時点で痛みがやってきますので、適切なタイミングで痛み止めを飲むようにしましょう。
手術した部位は、痛みだけでなく腫れも伴うため、手術後に処方された腫れ止めも歯科医師の指示通りに飲むことが大切です。インプラント手術後の痛みや腫れは、2~3日でピークに達するのが一般的で、長くても1~2週間程度しか継続しません。それ以上痛みや腫れが続く場合は何らかの異常が疑われるため、主治医に診てもらう必要が出てきます。

手術後の感染症リスク

インプラントの人工歯根には、生体親和性の高いチタンが使われていますが、天然歯と比較すると粘膜との結合が弱く、感染症リスクもやや高くなっています。とくに「インプラント周囲炎」というインプラント特有の歯周病には十分に注意しなければなりません。インプラントした部位の歯茎が腫れている、インプラントがグラグラ動くようになった場合は、インプラント周囲炎になった可能性が考えられますので、早急に歯科を受診しましょう。インプラント周囲炎を重症化させると顎の骨が破壊され、最終的には人工歯根が脱落してしまいます。

インプラントの手術後の痛みをできる限り抑える方法

歯科医の解説

次に挙げる3つの点に気を付けると、インプラント手術後の痛みを軽減しやすくなります。

方法①飲食物を制限する

インプラント手術後は、まだ麻酔が効いている状態なので、冷たいものや熱いものを感じ分けることができません。極端に冷たい物や熱いものを口にすると、口腔粘膜を傷めてしまうため、しばらくは水だけ飲むようにしましょう。数時間もすると麻酔の効果が切れますが、それでもお口の中は傷を負った状態と同じであり、刺激物は避ける必要があります。少なくとも手術から2~3日はあまり噛まずに飲み込めるお粥などで栄養を摂り、飲酒も控えるようにしてください。

方法②お風呂を制限する

熱い湯船に浸かると、全身の血行が良くなり、傷口が開いてしまいます。止血した部位から再び出血してしまうこともありますので、インプラント手術後1~2日はシャワーだけで済ませるようにしてください。シャワーも熱いお湯ではなく、ぬるいお湯で体を洗うことが大切です。熱いお湯を浴びると代謝が上がり、腫れがひどくなるここともあるため十分な注意が必要です。

方法③運動を制限する

運動も傷口を開き、治りを悪くする原因となるため、インプラント手術後1週間は控えるようにしてください。軽いジョギング程度であれば手術後2~3日から始めても問題ありませんが、万全を期すのであれば1週間は安静に過ごしましょう。
お仕事に関しても体を激しく動かす業務は、1週間程度休んだ方がいいでしょう。この点は事前に歯科医師と相談しながら決めていくのが良いです。デスクワーク中心のお仕事であれば、とくに問題はありません。

手術後にこのような痛みがある場合は要注意

注意点

インプラント手術後に以下のような症状が現れている場合は注意が必要ですので、歯科医院に連絡しましょう。

  • 痛み止めが効かないほど強い痛みが生じている
  • 1週間経っても症状が治まらず、むしろ痛みが強くなっている
  • 上顎のインプラント手術後に鼻から血や膿が出てきた
  • 下顎のインプラント手術後に唇がしびれたり、よだれが垂れたりするようになった

痛みは、人によって感じ方が大きく異なるため、何が正常で何が異常なのかを判断しにくいのが現実です。ただ、上述したような症状が認められる場合は、何らかの異常が生じている可能性が高いため、まずは歯科医院に相談しましょう。抜糸をした後に上記の症状が現れた場合も同様です。

まとめ

今回は、インプラント治療に関連した痛みについて解説しました。インプラントを埋め込む本数や部位、採用する術式などによって痛みの度合いは変わりますが、外科手術が必須である以上、ある程度の不快症状は避けられません。インプラント治療を検討中の方は、そうした手術後の痛みに関しても正しく理解しておくことが大切です。上述したように、インプラント手術後の痛みは、いくつかの点に配慮することで軽減することができます。
インプラント治療に不安を感じる方は、まずは当院にお気軽にご相談ください。

オールオン4のメリット・デメリット:総入れ歯やインプラントと比較して解説

インプラントには、「オールオン4」という特別な治療法があることをご存知でしょうか?オールオン4とは、すべての歯を失った症例に適応されるインプラント治療であり、総入れ歯や標準的なインプラントとは異なるメリット・デメリットがあります。ここでは、そんなオールオン4のメリット・デメリットについて詳しく解説します。

総入れ歯と比較した場合

総入れ歯と比較した場合のオールオン4には、次のようなメリット・デメリットがあります。

メリット

メリット①天然歯に近い噛み心地を得られる

オールオン4では、顎の骨に人工歯根であるインプラント体を埋め込むため、天然歯に近い噛み心地が得られます。噛んだ時の力を顎の骨がしっかり受け止めてくれます。人工歯にセラミックを選択することで、耐久性も高められます。

メリット②発音への影響が少ない

総入れ歯は取り外し式の装置なので、しゃべるときにズレたり外れたりしますが、固定式のオールオン4ではそのようなトラブルは起こりません。また、入れ歯のような違和感もほとんどないので、発音への悪影響を最小限に抑えられます。

メリット③痛みが起こらない

合わない入れ歯は、歯茎を傷めたり、頬の内側の粘膜に刺激を与えたりするなど、使っていく中で痛みを感じることもあります。一方、4本の人工歯根によってしっかり固定されたオールオン4では、痛みを伴うようなトラブルは起こりにくいです。

メリット④外れない

総入れ歯は安定性に乏しく、食事や会話の際に外れることがありますが、固定式のオールオン4が外れることはまずありません。

メリット⑤早期に装着出来る

オールオン4は、インプラント体を埋入する手術直後に入れ歯に当たる上部構造を装着できます。一方、総入れ歯は装着するまでにそれなりの期間を要します。

メリット⑥若々しさをキープ出来る

4本の人工歯根を土台とするオールオン4では、噛んだ時の力を顎の骨に伝達することができます。つまり、本物の歯と同様のメカニズムで咀嚼(そしゃく)運動を行うことができるため、顎の骨が瘦せていく現象を最小限に抑えられます。
一方、総入れ歯は、噛んだ時の力を歯茎で受け止める装置なので、顎の骨に加わる刺激が少なくなります。その結果、顎の骨が痩せていき、口元の老化が進んでいくことになるのです。お口周りの筋肉が弛緩することも総入れ歯が「老けて見える」原因の一つといえるでしょう。

デメリット

デメリット①手術が必要

オールオン4には必ず外科手術を伴います。人工歯根であるインプラント体を顎の骨に埋め込まなければならないため、全身状態が良くない人にとってはそれなりのリスクを伴う治療となります。

デメリット②適用出来ないケースがある

オールオン4は大変優れた治療法ですが、顎の骨や全身の健康状態によっては、その他の治療法が第一選択となる可能性も十分あります。その点、総入れ歯はすべての歯を失っている、あるいは抜歯予定であれば、適用できないケースは皆無に等しいです。

デメリット③治療費用が高い

保険適用される総入れ歯は、治療にかかる費用も自ずと安くなります。一方、オールオン4には原則として保険が適用されず、治療にかかった費用は全額自己負担となります。実際にどのくらいの費用がかかるかは、患者さまのお口の状態などによって大きく変動します。

インプラントと比較した場合

次に、オールオン4と標準的なインプラントとの比較です。

メリット

メリット①身体への負担が少ない

オールオン4では、基本的にインプラントを4本だけ埋め込めば、総入れ歯に相当する上部構造を支えることができます。顎や全身への負担を最小限に抑えられ、手術後のリスクも最小限に抑えられます。

メリット②治療費用を抑えられる

インプラントにかかる費用は、1本あたり300,000~400,000円が全国的な相場です。失った歯の本数だけインプラントを埋め込むと、大変な額の費用が発生することになります。その点、オールオン4では、人工歯根の埋入本数が4本なので、治療にかかる費用を大幅に抑えられます。

メリット③審美性に長けている

標準的なインプラントとオールオン4を比較した場合、上部構造の自由度は後者の方が高くなっています。オールオン4なら、理想的な歯並びが実現できます。
また、失った歯茎を人工的に回復させることができるので、お口の張りも取り戻すことができ、審美性においても標準的なインプラントに優っているといえます。

メリット④早期に装着出来る

標準的なインプラントは、人工歯根を埋入してから3~6ヵ月程度、待機する必要があります。その間は仮の歯を設置することも可能ですが、しっかりと噛むことはできません。一方、オールオン4は人工歯根を埋入した当日に上部構造を装着することが可能です。歯がない状態や噛めない状態が短い点もオールオン4のメリットといえるでしょう。

デメリット

デメリット①すべての歯を抜かなければならない

オールオン4は、歯が1本もない「無歯顎(むしがく)」の症例が対象となります。歯が残っている場合は、手術を行う前にすべて抜かなければなりません。標準的なインプラント治療は、歯を失った部位にだけ適応できるので、状態の良い天然歯を保存できるというメリットがあります。

デメリット②治療を受けられる歯科医院が限られる

オールオン4は、極めて専門性の高い歯科治療であり、対応している歯科医院は全国的にも一部に限られます。ですから、ケースによっては県をまたいで遠方まで通院する必要が出てきます。一方、標準的なインプラントに対応している歯科医院は数が多く、近隣で見つけるのも難しくないでしょう。

まとめ

今回は、4本のインプラントで上部構造(総入れ歯)を支えるオールオン4について解説しました。オールオン4は、標準的な総入れ歯やインプラントと比較しても優れた部分が多々あり、無歯顎の方には広くおすすめできる治療法ですが、デメリットも伴う点にご注意ください。そんなオールオン4について、さらに詳しく知りたい方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。

インプラントにまつわる様々な種類:構造から材質まで徹底解説

インプラントは失った歯を補う「補綴装置(ほてつそうち)」ですが、従来のブリッジや入れ歯とは大きく異なる点が多々あります。種類もいくつかあり、構造から材質までバリエーションが豊富であることから、それぞれどのような特徴があるのか知りたい方も多いのではないでしょうか。今回はそんなインプラントにまつわるさまざまな種類や構造について詳しく解説します。

インプラントの基本的な構造

インプラントの構造

インプラントは基本的に、上部構造アバットメントインプラント体の3つから構成されています。

構造①上部構造(人工歯)

インプラントの上部構造

インプラントの上部構造とは、ブリッジや入れ歯における「人工歯」に相当します。インプラントの構造の中では唯一、口腔に露出するパーツであるため審美性に優れたセラミックを使用することが多いです。いわゆる“オールセラミック”なら、天然歯の色調や光沢、透明感を忠実に再現できることから、治療後は天然歯列と自然に調和します。何よりインプラントには「人工歯根」という天然歯とほぼ同じ土台が存在しており、ブリッジや入れ歯よりも自然に仕上げることが可能となっています。

構造②アバットメント

インプラントのアバットメント

アバットメントは、人工歯根と上部構造を連結するためのパーツです。とても小さく、連結したあとは人工歯根および上部構造と一体化します。アバットメントは他にも上部構造の高さや角度を調節する役割も担っていますが、元からインプラント体を一体化しているタイプもあるため、種類によって期待できる効果も変わってくるのが現実です。ちなみに、インプラント体とアバットメントが一体化しているものを「ワンピースタイプ」と呼んでいて、標準的な「ツーピースタイプ」よりも価格が安くなっています。

構造③インプラント体

インプラント体

インプラント体は、この治療法の要となる「人工歯根」です。専門的には「フィクスチャー」と呼ばれることもあります。基本的にはネジのような形をしており、専用のドライバーを使って顎の骨に埋め込みます。材質はチタンまたはチタン合金がスタンダードで、インプラント体の直径は3~5mm、長さは6~18mm程度が目安となります。患者さまの顎の状態などを考慮して最適なサイズのインプラント体を選択します。チタンやチタン合金が使われる理由は、身体への安全性です。チタンは金属アレルギーが起こりにくい材料なので、古くから人工関節や心臓のペースメーカーの素材として広く活用されています。腐食も起こりにくいため、顎の骨に埋め込んでもトラブルが起こることはほとんどありません。さらにチタンは、顎の骨と結合する現象が確認されており、噛んだ時の力を支える人工歯根の材質としてはうってつけといえるでしょう。

インプラント体の形状

人工歯根であるインプラント体の形状は、スクリュータイプ・シリンダータイプ・バスケットタイプの3つに分けられます。

形状①スクリュータイプ

スクリュータイプはネジのような形状のインプラント体で、現在のインプラント治療の主流となっています。板にネジを埋め込むのと同じ要領で顎骨へと埋入できることから、固定しやすく、安定性が高いのが特徴です。特別な理由がなければ、スクリュータイプを選択するのが一般的です。

形状②シリンダータイプ

シリンダータイプとは、文字通り円筒(シリンダー)状の人工歯根でスクリュータイプのようならせん状の切れ込みは入っていません。顎に埋め込む際にはハンマーのような器具で打ちつけるため、埋入処置自体はとてもシンプルです。ただ、スクリュータイプと比べると表面積が小さく、顎骨との結合も弱くなるというデメリットを伴います。現在でも一部の症例で使われているインプラント体です。

形状③バスケットタイプ

バスケットタイプとは、中心部に空洞が存在しているインプラント体です。空洞には骨の一部を埋め入れることが可能であり、理論上は他のインプラント体よりも強固な結合が得られます。ただし、高度な技術を要するため実用的ではなく、現在はほとんど使用されていないインプラント体となっています。

インプラントのタイプ

インプラントの構造には、ワンピースタイプとツーピースタイプの2つがあります。

タイプ①ワンピースタイプ

ワンピースタイプとは、人工歯根であるインプラント体と連結装置であるアバットメントが一体化しているインプラントです。手術が1回で済むため、患者さまの心身にかかる負担を最小限に抑えられます。ただ、ワンピースタイプは、顎の骨の状態が良くなければ適応できませんし、アバットメントが故障した際はインプラント体ごと撤去しなければならないというデメリットを伴う点に注意しなければなりません。特別な理由がない限り、基本的にはツーピースタイプを選択した方が良いといえます。

タイプ②ツーピースタイプ

ツーピースタイプは、インプラント体とアバットメントが分離しているインプラントです。ツーピースタイプでは原則として2回の手術が必要となりますが、アバットメントが故障してもインプラント体は残せたり、患者さまの歯並びやお口の状態に合わせて、最善といえるパーツを選択することが可能であったりするため、現状はツーピースタイプが主流となっています。

治療回数によって採用するタイプが異なる

インプラントのタイプは、治療回数によって決定することがあります。手術を1回だけ行う「1回法」では、人工歯根とアバットメントが一体化したワンピースタイプが適しており、手術を2回に分ける「2回法」は2つのパーツに分離したツーピースタイプが適しています。ちなみに、ツーピースタイプは原則として2回法に適応されますが、1回法で使用することも可能です。

どちらを選択するかは、精密検査の結果をもとに、歯科医師が判断します。ワンピースタイプとツーピースタイプでは、審美性や顎の骨への結合という観点で大きな違いは見られないため、安全面や機能面を重視して決定が下されます。上部構造や費用の面で検討するケースは稀といえるでしょう。

インプラントに使用される材質

インプラントを構成する各パーツには、それぞれ以下のような材質が使用されます。

上部構造に使用される材質

人工歯にあたる上部構造には、オールセラミック・ジルコニアセラミック・ハイブリッドセラミックのいずれかを使用するのが一般的です。材料はすべてセラミックで、白い歯を装着できることに変わりはありませんが、特徴はそれぞれで少しずつ異なります。

オールセラミック

歯科治療で用いる材質の中で最も美しいと言っても過言ではなく、高い審美性が要求される前歯のインプラントに最適です。天然歯の色調や質感、光沢まで忠実に再現できることから、治療後はどの部位にインプラントを入れたのかわからなくなるくらいです。ただ、強度においてはジルコニアセラミックに劣るため、歯ぎしりや食いしばりの習慣があったり、噛む力がもともと強かったりする場合は、ジルコニアの方が適しています。

ジルコニアセラミック

人工ダイヤモンドとも呼ばれるセラミックで、金属に匹敵するほどの強度を誇ります。噛む力が強い方にも問題なく適応できます。ジルコニアセラミックも白くてきれいな材料なのですが、透明度が低く、前歯に適応すると違和感が生じてしまうことも珍しくありません。ですから、審美性を追求するのであれば、オールセラミックの方が適しています。

ハイブリッドセラミック

歯科用プラスチックであるレジンとセラミックを混ぜ合わせた材料で、オールセラミックやジルコニアセラミックよりも安価である点が最大のメリットです。その一方、審美性や強度は標準的なセラミックに劣ります。また、純粋なセラミックよりも汚れが付着しやすく、歯茎の粘膜に炎症を起こしやすいという欠点があります。

これらはすべてセラミックでできているため、極端に強い力がかかると割れることがあります。歯ぎしり・食いしばりなどの悪習癖がなおらない患者さまで、ジルコニアセラミックでも対応できない場合は、金属材料を使うこともあります。

アバットメントに使用される材質

連結装置であるアバットメントの材質は、その他のパーツと比べてバリエーションが豊富です。一般的には、純チタン・チタン合金・金合金・セラミックの中から選択することになりますが、インプラント体と同じメーカーの同じ規格でなければなりません。
なお、1回法の手術に使われるワンピースタイプの場合は、インプラント体とアバットメントが一体化しているので、材質は同じです。

インプラント体に使用される材質

インプラント体に使用される材料としては、主に純チタンとチタン合金の2種類が挙げられます。
昨今、ハイドロキシアパタイト(骨や歯を構成する物質)を使用したインプラント体も普及し始めていますが、これはチタンの表面をハイドロキシアパタイトでコーティングしたものです。

純チタンやチタン合金の他に、金属アレルギーの心配がある方にお勧めされているのがジルコニア製のインプラントです。
ジルコニアインプラントは文字通りジルコニアで作られており、正真正銘のメタルフリーインプラントではありますが、適応の範囲が狭かったり、装置としての歴史が浅かったりするため、普及するにはまだ時間がかかることでしょう。そもそも、ジルコニアインプラントはまだ国内で承認されておらず、対応している歯科医院もごく一部に限られます。

インプラントの治療法

インプラントは、顎の骨に人工歯根を埋め込むという点において共通していますが、治療法によって上部構造の種類や装着の仕方、噛めるようになるタイミングが異なります。

治療法①即時荷重法

即時荷重法(そくじかじゅうほう)とは、人工歯根を埋め込んだ直後に仮歯を装着する治療法です。標準的なインプラント治療では、人工歯根と顎の骨が結合するまで3~6ヵ月程度待機するため、治療した部位で噛めるようになるには数ヵ月を要するのですが、即時荷重法なら手術したその日からインプラントに荷重をかけることができます。ただし、装着するのはあくまで仮歯であり、人工歯根の状態も万全ではありません。その点も考慮した上で、ものを噛んだ際の負荷が大きくなりすぎないように注意が必要です。また、即時荷重法は顎の骨がしっかりしている症例のみに適応可能となっています。

治療法②All-on-4(オールオンフォー)

All-on-4(オールオンフォー)とは、すべての歯を失った症例に適応されるインプラントで、その名の通りすべての人工歯(オール)を4本の人工歯根で支える(オンフォー)治療法です。通常、インプラントは1本の喪失歯に対して1本の人工歯根を埋め込むことから、すべての歯を失った症例にその理論を適応すると、治療にかかる費用や患者さまのお口にかかる負担は極めて大きくなります。オールオンフォーであれば基本的には4本の人工歯根の埋入で済むため、患者さまの心身および経済的負担を大幅に減らすことが可能となります。ただし、顎の骨の状態が悪い場合はオールオンフォーを適応できなかったり、必要となる人工歯根の数が増えたりするため、最終的な治療方針は精密検査を実施してみなければお伝えすることができません。

治療法③人工歯の直接接続

インプラントには、人工歯根と上部構造を直接接続する治療法もあります。つまり、連結装置であるアバットメントを使用せず、歯科用接着剤やスクリューを用いることで上部構造を固定するのです。上部構造と人工歯根が一体化するため、その結果、トラブルが生じた際の処置方法の選択肢が狭まるという大きなデメリットを伴います。ですから、現状は人工歯の直接接続を行うケースは極めて稀といえます。

表面加工処理の方法

最後は、人工歯根の表面加工処理についてです。チタン製の人工歯根の表面にさまざまな加工を加えることで、顎の骨に固定しやすくなります。

表面加工処理①機械研磨

機械研磨とは、専用の機械を使って人工歯根の表面を滑らかに研磨する方法です。人工歯根の表面に不要な凹凸があると、骨に対して悪影響を及ぼすことがあるため、事前にならしておきます。現在では主に人工歯根のネックの部分のみ研磨します。

表面加工処理②酸エッチング

酸エッチングとは、塩酸や硫酸、フッ化水素酸などを用いて人工歯根に粗い面を付与する方法です。適切な部位に凹凸が形成されることで、骨としっかり結合するようになります。

表面加工処理③サンドブラスト

サンドブラストも酸エッチングと同様、人工歯根の表面を粗くする処理ですが、使用するのは酸ではなく細かい砂のような物質です。チタン表面に砂を高圧で噴き付けることで、酸化膜を消失させ、骨との結合を高めます。

表面加工処理④ハイドロキシアパタイト

ハイドロキシアパタイトは、骨や歯を構成する物質です。人工歯根の表面にハイドロキシアパタイトの粉末を噴き付けてコーティングします。その結果、生化学的にかなり早い段階で、人工歯根と骨が強く結合されます。

まとめ

このように、一言でインプラントと言っても人工歯根の形状や材質、上部構造に用いられる素材にはバリエーションがあります。標準的なケースでは自ずと選択肢も絞られてきますが、それぞれのニーズに合った治療法や材質を選ぶことも十分に可能です。そんなインプラントの種類や構造、材質についてもっと詳しく知りたいという方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。インプラント治療の診療実績が豊富な歯科医師がわかりやすくご説明します。

インプラントのメンテナンス方法:歯科医院とセルフケアに分けて解説

インプラントは、失った歯を歯根から回復できる素晴らしい治療法です。見た目が自然で、噛み心地も天然歯に近いため、自分自身の歯と思い込んでしまう方もいらっしゃいますが、そこは注意が必要です。インプラントはあくまで人工物であり、治療後のメンテナンスを怠るとさまざまなトラブルに見舞われます。今回はそんなインプラントのメンテナンスについて詳しく解説します。

インプラントのメンテナンスを行うメリット

インプラント治療後のメンテナンスを行うと、次に挙げるようなメリットが得られます。

メリット①インプラント周囲炎を予防出来る

インプラントのメンテナンスを受けると、装置の周囲にたまった歯垢や歯石などを一掃することができます。その結果、歯周病菌の繁殖が抑えられ、インプラント周囲炎の発症を予防することが可能となります。インプラント周囲炎は、インプラントが脱落する主な原因であり、それを予防できることは非常に大きなメリットといえます。

メリット②他の歯の寿命を延ばせる

インプラントが汚れていると、隣の歯が虫歯になってしまうこともあります。インプラントは虫歯になるリスクがゼロであるため、患者さまも油断しがちなのですが、周囲の天然歯は虫歯になるということを忘れてはいけません。歯科医院での定期メンテナンスで受けられるプロフェッショナルケアは、こうしたトラブルを回避し、他の歯の寿命を延ばすことにつながります。

メリット③メーカー保証を受けられる可能性が高くなる

インプラントには、メーカー保証が付いています。「5年保証」や「10年保証」と呼ばれるもので、その期間内のトラブルであれば無償で再治療を受けられます。ただし、条件が細かく定められており、その中のひとつに「メンテナンスの受診」が含まれているのです。つまり、定期的なメンテナンスの受診を怠ると、インプラント保証が受けられなくなることがあるため、十分に注意しましょう。

歯科医院で行うインプラントのメンテナンス方法

スケーリング

歯科医院で行うインプラントのメンテナンスでは、主に次のような処置を受けられます。

歯科医院①定期的なお口の状態チェック

◎お口全体のチェック

歯科医院のメンテナンスではまず始めに、お口の中全体をチェックします。インプラントは独立して機能しているわけではなく、全体の歯並び・噛み合わせの中のひとつの歯車として存在しているからです。そのため、インプラントのメンテナンスだからといって、インプラントだけを診査するわけではなく、お口の中全体をチェックします。当然、その他の歯に虫歯や歯周病が見つかれば、それらの治療を優先することになります。ですから、インプラントの定期的なメンテナンスを受けることは、お口全体の健康維持にもつながるといえます。

◎インプラントのチェック

続いて、インプラントのチェックを行います。具体的には、次のようなポイントに着目して診査を進めます。

・インプラントの衛生状態
・歯茎の腫れや炎症
・歯周ポケットの深さ
・上部構造の破損、ネジの緩み
・噛み合わせの状態
・インプラントの動揺度(ぐらぐらしないか)
・歯ぎしりや食いしばりの有無

歯科医院②歯磨き指導

インプラントや周囲の歯に異常がなければ、歯磨き指導に入ります。磨き残しが多い部位を指摘し、効率よく汚れを落とすブラッシング法をご提案します。インプラントは歯茎との境目が特殊な構造をしており、汚れがたまりやすくなっているので、歯ブラシやデンタルフロスの上手な使い方を身につけることが大切です。必要に応じて歯間ブラシなども活用していただきます。この時、歯磨き指導させていただくのはインプラントだけではありません。天然歯も含めた歯列全体のブラッシング法をお伝えしますので、虫歯・歯周病予防にお役立てください。

歯科医院③スケーリング

インプラントのメンテナンスでは、歯石を除去する「スケーリング」も受けられます。歯石は、歯垢が石のように固まった物質で、セルフケアでのブラッシングでは取り除けません。しかも、インプラントの天敵である歯周病菌の温床となることから、定期的に歯石ゼロの状態とすることが何よりも重要といえます。

歯石を取り除くためのスケーラーは、薬局などで販売していることもありますが、一般の人が取り扱うとインプラントや歯茎を傷付けるリスクが高まります。ケースによっては、深刻な外傷を負うこともありますので、スケーリングはプロフェッショナルに任せるようにしましょう。歯科医院のメンテナンスであれば、安全な形でインプラント周囲の歯石を取り除くことができ、インプラント周囲炎の予防にもつながります。

歯科医院④バイオフィルムや着色の除去

自宅でのセルフケアで落とせない汚れとしては、歯石以外にもバイオフィルムや着色(ステイン)などが挙げられます。バイオフィルムとは、歯周病などの細菌の集合体を指し、プラーク(歯垢のかたまり)もバイオフィルムの1種です。
これらも歯ブラシを使った歯磨きで除去することは難しいため、歯科医院のプロフェッショナルケアに任せましょう。インプラントのクリーニングで、しつこい汚れも安全に取り除けます。その結果、インプラントの衛生状態が良好に保たれ、人工歯根の寿命を延ばすことにもつながります。

通院頻度と費用

医療費

◎メンテナンスを受ける頻度

インプラントのメンテナンスは、年に2~4回程度受けるのが一般的です。つまり、3~6ヵ月に1回くらいの頻度で通うのが最適といえます。これは通常のメンテナンスの通院頻度とほぼ同じです。3~6ヵ月というと、期間にかなりの幅が見られますが、基本的には患者さまのお口の状態によって頻度が決まります。お口の衛生状態があまり良くなく、歯周病のリスクが高いようなケースでは3ヵ月に1回程度の通院が適しています。お口の衛生状態が良好で、歯周病のリスクも低い方は、6ヵ月に1回程度の通院でも十分であることが多いです。その点は主治医と相談した上で決めましょう。

◎メンテナンスの費用

インプラントのメンテナンスにかかる費用は、歯科医院によって大きく異なります。全国的な相場としては、1回あたり5,000~10,000円程度となっています。お口の中の状態が悪かったり、メンテナンスの内容が異なったりする場合は、同じ歯科医院内でも費用にばらつきが生じることがあります。

セルフで行うインプラントのメンテナンス方法

デンタルケアグッズ

インプラントのメンテナンスは、歯科医院だけでなく自宅でも行うことが大切です。以下の4つの清掃器具を正しく使って、自宅でのセルフケアを充実させましょう。

セルフ①歯ブラシ

インプラントのセルフケアに使う歯ブラシは「やわらかめ」を選んでください。かたい歯ブラシを使うと、インプラントを傷付けてしまうことがあります。上部構造の表面はもちろんのこと、歯茎との境目もしっかり歯磨きして、歯垢がたまらないようにしましょう。ちなみに、インプラントをブラッシングする際には、歯磨き粉を使っても良いのですが、研磨剤が入っていないものを選ぶようにしてください。ホワイトニング効果のある研磨剤入りの歯磨き粉は、汚れの除去効果は高いものの、インプラントを傷付ける恐れがあります。

セルフ②歯間ブラシ

インプラントと隣の歯との間に広いすき間がある場合は、歯間ブラシをご活用ください。先端がブラシ状になっている小さな清掃器具で、歯間部の汚れを効率よく取り除けます。

セルフ③デンタルフロス

インプラントと隣の歯との間にすき間がなく、歯間ブラシが入らないような場合はデンタルフロスを活用しましょう。糸状の清掃器具なので、すき間が狭い歯間部にも挿入することが可能です。歯間部に歯垢がたまるとインプラント周囲炎のリスクが高まるため、毎日しっかりフロスを通すようにしてください。

セルフ④タフトブラシ

タフトブラシとは、毛先が一束しかない小さな清掃器具です。標準的な歯ブラシよりも小回りが利くため、インプラント周囲の仕上げ磨きにおすすめのブラシです。

インプラントのメンテナンスを怠るとどうなる?

インプラントのトラブル

ここまで、インプラントのメンテナンスを受けるメリットや具体的な方法について解説してきました。おそらく、インプラントのメンテナンスの重要性については、ご理解いただけたかと思いますが、適切なケアを怠った場合のリスクも知っておきたいですよね。

◎インプラント周囲炎の発症

インプラントのメンテナンスを怠ると、インプラント周囲炎の発症リスクが高まります。インプラントの周りの歯茎や歯槽骨が感染し、炎症反応によって徐々に破壊されていきます。その結果、歯周組織がインプラントを支えきれなくなって人工歯根が脱落します。ですから、インプラント治療後にはメンテナンスを定期的に受けて、歯周病菌の温床となる歯垢や歯石がたまらないようにする必要があるのです。

◎噛み合う天然歯にダメージを与える

インプラントは、一見すると天然歯そのものですが、歯根と歯冠をアバットメントでつないだ複雑な構造を呈しています。それぞれの連結部分に異常が生じると、噛み合わせが高くなるなどのトラブルが起こり、噛み合う天然歯にダメージを与えることがあります。上部構造が破損している場合も要注意です。そうしたインプラントを構成するパーツの修理は、メンテナンスでなければ行えません。

まとめ

今回は、インプラントのメンテナンスの方法について、プロフェッショナルケアとセルフケアに分けて解説しました。インプラントの寿命を長く保つために、歯科医院での定期メンテナンスや、毎日のセルフメンテナンスはとても大切です。
インプラントをこれから受ける方やもうすでに受けた方は、治療後のケア方法として参考にしていただけたら幸いです。そんなインプラントのメンテナンスについてさらに詳しく知りたい方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。

インプラントの寿命はどれくらい?縮める原因や延ばす対策等を解説

インプラントは見た目が良く、噛み心地も天然歯に近い装置ですが、寿命がどのくらいなのかも気になりますよね。ここではインプラントの寿命の長さや縮める原因、延ばす方法などを詳しく解説します。

インプラントの平均寿命

インプラント体のイメージ

インプラントは、従来の装置よりも長持ちすることで有名ですが、寿命としては10~15年くらいが平均とされています。そもそもインプラントには10年保証がついているケースがほとんどで、治療後に適切なケアを継続することで少なくとも10年は持たせることが可能です。ただし、これはあくまで平均寿命であり、ケアの状況によって、5年で寿命を迎えることもあれば、20年経っても問題なく使い続けられていることもあります。実際、過去には、患者さんがお亡くなりになるまで40年間、インプラントを使い続けたという事例もあるくらいですので、インプラントの寿命はやり方次第でいくらでも延ばせるといえます。

インプラントと入れ歯とブリッジの平均寿命を比較

歯を丸ごと1本失った場合は、インプラント入れ歯ブリッジの3つの選択肢からひとつを選ぶことになります。従来は入れ歯かブリッジの2択だったのですが、第3の選択肢であるインプラントが加わったことで、より自分に合った治療法を選べるようになりました。特に寿命という観点においてこの3つには明確な違いがあります。

インプラント

インプラント

まず、インプラントは上述したように平均寿命が10~15年と最も長く、再治療の必要性が低い装置といえます。インプラントは費用が高かったり、治療期間が長かったりするのですが、その分、長期にわたって使用できることから、コストパフォーマンスに優れた治療法といえます。

ブリッジ

ブリッジ

次に平均寿命が長いのはブリッジで、だいたい7~8年すると使用するのが難しくなります。ブリッジは支えとなる両隣の歯を大きく削らなければならず、ある意味で“後戻りのできない”治療ですので、7~8年という寿命は決して長いとはいえないでしょう。

入れ歯

入れ歯

平均寿命が最も短いのは入れ歯で、4~5年すると新しいものに作り替えるのが一般的です。この中で唯一、着脱式の装置である入れ歯は、安定性や装着感、使用感に劣ることから、寿命を迎える4~5年の間にも調整を繰り返していく必要があります。

インプラントの寿命を縮める原因

インプラントは、次に挙げるような原因によって寿命が短くなります。

原因①格安インプラントを使っている

インプラント治療にかかる費用は、1本あたり300,000~400,000円が全国的な相場となっています。それを1本あたり100,000円程度で治療する「格安インプラント」は、使用している材料が粗悪であったり、執刀する歯科医師の経験が浅かったりするなどの理由で、寿命が短くなりがちです。

原因②インプラント歯周炎

インプラントの寿命を縮める主な原因は「インプラント歯周炎」の発症です。インプラントは歯冠から歯根まですべてが人工物で構成されているので虫歯になるリスクはゼロなのですが、歯周病にはかかります。インプラント体には歯根膜(しこんまく)と呼ばれる重要な組織がないことから、一度歯周病を発症してしまうと治りが悪く、歯茎や顎の骨がどんどん破壊されていきます。その結果、歯周組織が人工歯根を支えきれなくなって、インプラントの脱落を招くのです。

原因③喫煙

タバコの煙には、歯茎の血流を悪くする成分が含まれています。具体的には、ニコチンが歯茎の血管を収縮させて、酸素や栄養素、免疫細胞の供給を滞らせます。そうなると歯茎の元気がなくなって歯周病などの感染症になり、インプラント体を支えきれなくなるのです。

原因④歯ぎしり・食いしばり

歯ぎしりや食いしばりの習慣があると、インプラント体やセラミック製の上部構造に過剰な負担がかかり、装置の寿命を縮めます。ですから、治療前はもちろんのこと、治療後に歯ぎしりや食いしばりをするようになった場合も、できるだけ早く改善した方が良いといえます。自力で改善するのが難しければ、歯科医院で歯ぎしりの治療を受けましょう。

インプラントの寿命を延ばす対策

対策①定期メンテナンスを受ける

インプラントの寿命を延ばす最も有効な方法は、メンテナンスを受けることです。定期的なメンテナンスを受けることで、装置の破損や異常を早期に発見できます。インプラントの脱落につながるインプラント歯周炎も予防しやすくなることでしょう。

対策②喫煙回数を減らす

喫煙習慣がある方は、タバコを吸う本数を可能な限り減らしてください。もちろん、禁煙するのがベストですが、それが難しければ減煙しましょう。

対策③歯ぎしり・食いしばりに対処する

歯ぎしり・食いしばりは、インプラントだけでなくその他の歯や顎の関節にまで大きな悪影響を与えるため、早期に改善するのが望ましいです。歯科医院を受診すれば、ナイトガードというマウスピースを用いた治療を受けることができます。

対策④正しいケアを行う

プロフェッショナルケアである「メンテナンス」と同じくらい重要なものに、ご自宅での「セルフケア」があります。毎日の歯磨きをしっかり行うことで歯周病のリスクを軽減でき、装置としての寿命を1年、また1年と伸ばしていくことが可能となります。正しいケア方法に関しては、メンテナンスのブラッシング指導で身につけることができます。

インプラントが寿命を迎えたら再手術を受けられる

インプラントは寿命を迎えてしまったとしても、再手術を受けることが可能です。顎の状態が正常であれば、改めてチタン製のインプラント体を埋め込めますし、人工歯の再治療も行えます。ちなみに、定期的なメンテナンスをしっかり受けていることが前提ではありますが、インプラント体の脱落が保証期間内であれば無償で再手術を受けられるケースも珍しくありません。もちろん、すべてのケースで再手術の費用がかからないわけではありませんので、その点はご注意ください。当然ですが、歯科医院が提示した保証の条件を満たす必要があります。

まとめ

今回は、インプラントの寿命について解説しました。インプラントの寿命を縮める原因と寿命を延ばす方法の両方を熟知していれば、15年、20年と長持ちさせることも難しくなくなります。そんなインプラント治療についてさらに詳しく知りたい方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。

芸能人はなぜインプラントにする?理由とセラミックとの違いも解説

テレビやインターネット、雑誌などでよく目にする芸能人は、みな一様に歯がきれいですよね。生まれながらにしてそのような美しい歯・歯並びを持った方もいらっしゃるかとも思いますが、実際は歯科医院で審美的な治療を受けている人の方が多いといえます。特にインプラント治療は、審美的にも、歯としての機能としても満足が得られやすい治療法であり、その人気は衰えることを知りません。今回はそんな芸能人がインプラントにする理由やセラミック治療との違いについて詳しく解説します。

芸能人がインプラント治療をする理由

【理由】自然な見た目

多くの人がインプラント治療を選択する最大の理由は「自然な見た目」です。インプラントは、従来のブリッジや入れ歯のような大きな装置ではなく、その構造は天然歯と同じように骨の中で支えられます。そのため仕上がりも自然で美しいため、カメラなどで接写されても治療を受けたことに気付く人はまずいないでしょう。一目で装着していることがわかる入れ歯は、仕事柄、選択することは難しい方の多いのが実際です。

【理由】発声・発音への影響が少ない

芸能人は人前で話す機会も多い職業です。とくに情報番組のコメンテーターや役者をしている芸能人は、滑舌の良さが重要となります。従来の装置は、発声や発音への障害が比較的現れやすいため、芸能人にとって第一選択にしたくないと考える方も多いです。

【理由】歯列矯正より治療期間が短い

インプラントは、悪い歯並びを改善する目的で行われることもあります。歯並びの乱れは基本的に歯列矯正でなければ改善が難しいものの、歯根から埋め込むことができるインプラントなら根本的に治療することも可能です。しかも歯列矯正は装置が目立ちやすいだけでなく、治療にかかる期間も数年に及びます。その間、芸能人としての仕事を休業するわけにもいかず、それなら比較的短い期間で悪い歯並びを根本から改善できるインプラントが選択肢として上がってくるのです。

もちろん、インビザラインに代表されるマウスピース矯正であれば、口元の審美性を害することなく歯並びの治療を行なうことが可能ですが、それでもやはり日常生活で制限がかかる部分が多いです。マウスピースを付けている時は水しか飲めませんし、装着時間を守らないと適切な治療効果が得られません。また、マウスピースは透明ではあるものの、近くで見ると装着していることがわかってしまいます。そうしたことも含め、マウスピース矯正で数年間、矯正治療を行うよりは、短期間で終わるインプラントを選択する芸能人も少なくないのです。

【理由】費用対効果が高い

インプラントは原則として自費診療となるため、治療にかかる費用は比較的高いです。ただ、数年かけて歯並びを良くする歯列矯正は、総額で1,000,000円前後かかるのが一般的であり、数ヶ月で美しく健康的で、しっかり噛める歯が手に入るのであれば、インプラントの方が費用対効果も高いといえるでしょう。インプラントは適切なメンテナンスを継続することで、一生涯使い続けることも難しくない装置である点も忘れてはいけません。こうした特徴がある方法だからこそ、芸能人にも根強い人気があるのです。

歯が白く歯並びがきれいな芸能人はみんなインプラント?

歯が白い芸能人のイメージ

歯の色や歯並びがキレイな芸能人は、インプラント治療を行なっている人も少なくありません。ただ、そのすべてがインプラント治療を行なっているかというとそうではなく、セラミック治療で歯の色や歯並びをキレイにしている人もかなりの数いらっしゃいます。そもそも健全な歯冠や歯根が残っている状態でインプラントを選択することはまずありません。とくに口元の審美性を大きく左右する前歯は、奥歯ほど虫歯などでボロボロになることはほとんどありませんよね。もちろん、外傷などによって前歯が折れたり、抜けたりしたケースは例外ですが、基本的には健全な歯根が残っているのが普通です。

つまり、芸能人の白くて美しい前歯の歯並びは、インプラント治療ではなく、セラミックで整えられたものが大半を占めるといえるのです。実際、セラミック治療にはいろいろな選択肢があり、ほとんどのケースに対応することができます。前歯のエナメル質を一層(0.5mm程度)削ってセラミック製のチップを貼り付けるラミネートベニアは、歯にかかる負担を最小限に抑えながらも、歯の色から形、ちょっとした歯並びの乱れまで容易に治すことが可能です。
セラミック製の被せ物を装着する治療なら、さらに幅広い症例に適応でき、歯列矯正を受けたかのような美しさを実現することもできます。当然、セラミック製の被せ物を装着するとなると、かなりの量の歯質を削ることになりますが、歯を丸ごと1本抜かなければならないインプラント治療と比較したら、許容できる範囲である人が多いといえます。

インプラントとセラミックの違い

インプラントは、失った歯を天然歯に限りなく近い状態まで回復させることができる治療法であり、いわゆる“セラミック治療”と混同されることが多いです。確かに、インプラント治療でも最終的にはセラミック製の上部構造(=差し歯)を装着するため、広い意味ではセラミック治療と呼べるかもしれませんが、一般的な意味でのセラミック治療とは厳密には異なります。なぜなら、セラミック治療が適応されるケースでは、天然の歯根が残っているからです。

セラミック製の差し歯を被せることで、見た目が美しい白い歯に仕上げるのが標準的なセラミック治療であり、抜歯をして人工歯根を埋め込み、その上に差し歯を装着するインプラント治療とは全く異なる治療法です。ただし、天然の歯根が残っていてもそのままの状態では歯並びが改善できない場合は、あえて抜歯をしてインプラントを埋入するという選択もできます。そうした治療の選択は、歯科医院で精密検査を受け、歯科医師としっかり相談した上で決めることが大切です。

まとめ

今回は、芸能人がなぜインプラントにするのか、その理由について解説しました。インプラントには人工歯根があり、歯や歯並びの見た目を根本から改善することが可能です。セラミック治療では期待できない効果も多々あることから、芸能人の多くがインプラントを選択しますが、あくまで歯を失ったケースに限られます。歯が残っている場合は、セラミックを始めとしたその他の治療法の方が適していることも多いです。
大切なのは、信頼できる歯科医師に相談した上で、ご自身のお口の状態にとって最善といえる治療方法を選択することです。そんな芸能人のような白くて美しい歯に憧れている方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。まずは丁寧にカウンセリングいたします。

インプラントを安くする方法はある?格安インプラントをおすすめしない理由も解説

失った歯は何らかの装置で補う必要がありますが、その際、インプラントを選択するメリットは極めて大きいです。従来法にはない「人工歯根」があることは、見た目はもちろんのこと、「噛む」という歯が持つ本来の機能においても有利に働くからです。ただ、インプラントには「費用が高い」というデメリットも伴うため、なかなか一歩踏み出せないという方も多いでしょう。そこで今回は、インプラントを安くする方法について詳しく解説します。

インプラント1本当たりの治療費用の目安

インプラント治療では、カウンセリング・検査・診断から始まり、人工歯根を埋入する手術、人工歯に当たる上部構造の製作までが一連のプロセスとなります。
それぞれの行程でかかる費用の目安は以下の通りです。

カウンセリング 0~5,000円程度
検査・診断 30,000~50,000円
インプラント手術 150,000~400,000円(1本当たり)
上部構造 50,000~200,000円

このように、インプラント治療が高額になるのは、1本当たりの手術費用が高いからです。上部構造に関しては、一般的なセラミック治療と大差はありません。ちなみに、インプラントでは治療後もメンテナンスを受ける必要があり、その都度、数千円の費用がかかります。

基本的にインプラントの治療費を安くする方法はない

インプラント体のイメージ

インプラントの治療費を安くする方法は、基本的にありません。それは次の理由からです。

原則として保険が適用されない

インプラント治療は、一部の症例を除いて、原則的に保険適用されません。そのため治療にかかった費用は、患者さまが10割負担することとなります。これは国が定めたルールであり、治療費を安くする余地はないといえます。今後、インプラントにも保険が適用されるようになるかもしれませんが、現状は原則、自費診療となっており、歯科医院によって設定している料金にも違いが見られます。

原材料費が高い

インプラント治療に欠かせない人工歯根は、純度の高いチタンで作られています。とても貴重な金属であり、質の高い人工歯根を作るとなると、原材料費も自ずと高くなります。

設備投資が必要

インプラント治療の安全性や確実性を確保するためには、それ相応の設備が必要となります。具体的には歯科用CTや衛生管理が徹底したオペ室、デジタルシミュレーションが可能なソフトやインプラントオペに必要となる専用器具などです。こうした設備を整えるためにはかなり高額な投資が必要となります。

技術料

インプラントは、歯科医師であれば誰でも行うことができますが、熟練度に応じて治療の精度も大きく変わります。豊富な知識と経験がある歯科医師ほど技術力が高く、質の高い治療を提供できることから、インプラントの費用には技術料も含まれているものとお考えください。

結果的にインプラントの治療費を安くする方法

自由診療

インプラント治療の費用を安くする方法はありませんが、“結果的に”治療費が安くなることはあります。それは医療費控除と高額療養費制度を活用することです。

【方法①】医療費控除

医療費控除とは、1年間に支払った医療費の総額が100,000円を超えた場合に申請することができる制度で、所得に応じて一定額の税金の控除が受けられます。還付される金額もそれぞれのケースで異なるため、一概に語ることは難しいです。インプラントは医療費控除の対象であり、1本埋入しただけでもこの条件を満たすことから、治療を受けた方はこの制度をしっかり活用していきましょう。ちなみに、医療費控除の申告は「確定申告」と併せて行う必要がありますので、2月16日から3月15日の期間に税務署へ必要書類を提出しましょう。医療費控除は最大で過去5年まで遡って申告することが可能です。

【方法②】高額療養費制度

高額療養費制度とは、医療費の自己負担額が高額になる場合に利用できるもので、それぞれが加入している健康保険組合によって支払われる金額なども異なります。インプラント治療を受けた際には、健康保険組合に確認した上で、適切な手続きを踏むようにしてください。

例外的にインプラント治療に保険が適用されるケース

保険適用

インプラント治療は、一定の条件を満たすと保険が適用されることがあります。

【ケース①】生まれつきあごの骨が少ない

先天性の病気によって生まれつきあごの骨が部分的に欠けているようなケースでは、上下の歯で適切に噛むことができず、正常な日常生活を送ることが難しいです。そうした場合は、条件を満たした医療施設であれば、保険内でインプラント治療を受けられることがあります。

【ケース②】病気・事故によりあごの骨を失った

生まれたあとにかかった病気や遭遇した事故であっても、咀嚼(そしゃく)機能を大きく害するような顎骨の欠損が認められる場合は、インプラント治療を保険診療で受けられることがあります。自分の責任で事故を起こした場合は、通常と同じようにインプラント治療は保険適用外となります。

このように、インプラント治療が保険で受けられるケースというのは、極めて限定的です。虫歯や歯周病、外傷などによって歯を失った場合は、基本的に自費診療となります。

格安インプラントをおすすめしない理由

注意点

ここまで「インプラント治療の費用は安くならない」という現状について解説してきましたが、そうなるといわゆる“格安インプラント”の魅力が際立ってくることかと思います。そもそもインプラントは安くならないのになぜ価格を“格安”に設定できるのか、不思議に思われる方も多いことでしょう。

【理由①】未承認のインプラントが使用されている可能性がある

今現在、国内で受けることができるインプラントは、基本的に国の承認を受けた上で流通しています。一定水準以上の品質が保証されているため、費用もそれなりに高くなります。一方、極端に安い価格が設定されている格安インプラントは、海外で流通している品質の低いシステムである可能性が考えられます。国による承認が得られていないので、もしかしたらインプラントそのものに大きな欠陥があるかもしれません。

【理由②】歯科医師が高度な医療技術を持っていない

インプラント治療の価格が極端に安い場合は、担当する歯科医師の経験が未熟な可能性も考えられます。歯科医師になってまだ間もない場合や、インプラント治療の実績が浅い場合は、適切な治療結果が得られる保証もないため、適正な費用を請求するのも難しくなります。そうした未熟な歯科医師の診療実績を増やすために、あえてインプラント治療の価格を安く設定することもあります。

【理由③】トラブルが多い

マイナーなインプラントシステムを採用していて、治療後のトラブルが多い歯科医院は、患者さんを集めるために価格を安く設定している場合もあります。トラブルの内容は、費用に関することから、インプラント治療の失敗に至るまでさまざまです。

まとめ

今回は、インプラント治療を安く受ける方法について解説しました。上述したように、インプラント治療を直接的に安くする方法はありませんが、医療費控除や高額療養費制度を活用すると、結果として経済的負担を減らすことは可能です。日本でも流通している格安インプラントは、それなりの理由があって安く提供されているものなので、基本的にはおすすめすることはできません。インプラントは顎の骨に埋め込む“人工臓器”ともいえる装置であり、一生涯使い続けることも珍しくありません。そのような大切な治療において、経済面を最重要視することはあまり良くないといえるでしょう。

「インプラントは絶対にだめ」と言われる理由とは?

失った歯を補う装置としてインプラントが選ばれることが非常に多くなりました。それはインプラント治療にたくさんのメリットがあるからです。その一方で「インプラントは絶対だめ」という言葉も耳にすることがあるため、混乱してしまう方もいるでしょう。そこで今回は「インプラントは絶対だめ」と言われる理由を中心に、この治療法の特徴を詳しく解説します。

「インプラントは絶対にだめ」と言われる理由

インプラントには、次に挙げるようなデメリットを伴うことから、「インプラントは絶対だめ」と言われることがあります。

【理由①】外科手術のためリスクがある

失った歯の治療法としては、ブリッジ・入れ歯・インプラントの3つの選択肢が用意されていますが、この中で特に、外科手術が必要となるのはインプラントです。
インプラントでは、チタン製のネジである人工歯根を顎の骨に埋め込まなければならないからです。その際に、重要な血管や神経を損傷したり、細菌に感染したりするなどのリスクを伴います。ですから、重篤な病気を患っているなど、全身状態が悪い人にはあまりおすすめすることができない治療法といえます。

【理由②】あごの骨が弱い・少ないと手術が失敗する可能性がある

インプラント治療の要(かなめ)となるのは、人工歯根です。チタンで作られた人工歯根を顎の骨に埋め込むことで強固な土台を獲得することができ、天然歯と同じような噛み心地が得られます。ただし、顎の骨が弱い、もしくは少ないと人工歯根が定着せずに手術が失敗に終わることもあり得ます。インプラント治療が得意な歯科医院であれば、不足した骨を補う処置などを行えるため、本来であれば適応外となるケースでも、安全に手術を実施できることもあります。

【理由③】基礎疾患を持っていると手術を断られるケースがある

糖尿病や高血圧症、血液の病気などを患っていると、インプラントの手術を断られることがあります。そうした基礎疾患は術中に全身状態を悪くする恐れがあるからです。具体的には、血が止まりにくくなったり、傷の治りが遅くなったりする病気は、インプラント手術が難しくなります。もちろん、糖尿病や高血圧症を患っていたとしても、それらの症状をコントロールできている状態であれば問題なくインプラント手術を行えます。ですから、最終的な判断は、精密検査等を行ってからでなければ下せません。

【理由④】治療期間が長い

インプラントは、従来法と比較すると治療期間が長いというデメリットがあります。ブリッジや入れ歯なら1~2ヶ月程度で治療が完了するのですが、インプラントの場合は6~8ヶ月程度の期間を要します。ケースによっては10ヶ月以上かかることもあるでしょう。これはインプラント治療に人工歯根を埋め込むという処置が含まれるからです。

インプラントの手術自体は1時間程度で終わりますが、チタン性のネジが顎の骨に定着するまでには3~6ヶ月程度かかるため、全体としての治療期間が長くなるのです。つまり、インプラント治療の大半は「治癒期間」に使われることから、通院頻度はそれほど高くはありません。

【理由⑤】治療費が高い

インプラント治療は原則として保険が適用されません。費用を全額自己負担する自由診療となるため、従来法と比較すると治療費が自ずと高くなります。例えば、保険診療で入れ歯を作る場合は、5,000~15,000円程度の出費にとどまりますが、インプラントの場合は1本当たり300,000~400,000円程度かかります。
とはいえ、インプラント治療ではそもそも原材料費が高額な装置を使うだけでなく、極めて専門性の高い治療分野となっていることから、それに相応しい技術料等も発生してしまいます。そうした点も考慮すると、インプラント治療だけが極端に高い費用を設定しているわけではないことがわかります。

【理由⑥】治療後にメンテナンスが必要

インプラントは寿命の長い装置です。標準的な入れ歯が3~5年で使えなくなることが多いのに対し、インプラントはほとんどのケースで10年以上使い続けることが可能です。過去にはインプラントを40年以上使い続けたケースもあるくらいですが、治療後のメンテナンスを怠ると、寿命は大きく短縮されることでしょう。

インプラントは、見た目や噛み心地が天然歯にそっくりな装置ですが、あくまで人工物であり、さまざまなトラブルに見舞われる可能性もあります。とくに注意が必要なのが「インプラント周囲炎」と呼ばれる病気です。インプラントは天然歯よりも歯周病リスクが高く、周りの歯茎や顎の骨に炎症が起こりやすいのです。治療後のメンテナンスを怠っていると、そうした歯周組織の異常に気付くのが遅れてしまい、最終的にはインプラントが抜け落ちます。その他、上部構造である人工歯の破折やネジの緩みなどもメンテナンスで早期に発見し、適切に対処する必要があります。そのような治療後のメンテナンスを5年、10年、15年と続けていくことに不満を感じる方もいらっしゃることでしょう。

【理由⑦】金属アレルギーを起こす可能性がある

インプラントに用いる人工歯根は、チタンという金属で作られています。チタンは生体親和性が高く、金属アレルギーの原因となることは滅多にないのですが、そのリスクはゼロではありません。また、土台となるアバットメントや人工歯に相当する上部構造に金属を使った場合は、金属アレルギーのリスクが生じます。最近では人工歯根から上部構造まですべて金属ではない素材を用いるインプラント治療も開発されていますが、決して万能ではないので、金属アレルギーのリスクをゼロにしたいという方は、メタルフリーのブリッジや入れ歯がおすすめといえます。ちなみに、インプラント治療で用いるチタンは、心臓のペースメーカーや人工関節にも使われている素材であり、その安全性は古くから保証されています。

【理由⑧】再治療が難しい

すべての医療行為に共通して言えるのは、必ず失敗するリスクも伴うということです。それは優れた治療結果が得られるインプラントも例外ではありません。そして、インプラントの場合は、術中や術後のトラブルに見舞われ、顎の骨に人工歯根を定着させることができなかった場合の再治療が難しいというデメリットも伴います。これは繰り返し装置を作り直せる入れ歯とは大きく異なる点です。

インプラント治療が失敗する主な原因は、顎の骨の状態が悪くなることです。インプラント周囲炎などを患って人工歯根が脱落してしまうと、再びもとに戻すのは困難といえます。ケースによっては再生医療などを組み合わせることで再治療が可能となることもありますが、基本的には入れ歯治療などに切り替えることになるでしょう。これもまたインプラントが絶対だめと言われる理由の一つです。

インプラントのメリット

ここまで、インプラント治療のデメリットに焦点を当てて解説してきましたが、メリットについてもいくつかご紹介しておきます。

【メリット①】根元から歯を取り戻すことが出来る

歯は、お口の中に見えている歯冠(しかん)の部分だけに意識が行きがちですが、歯茎の中に埋まっている歯根(しこん)も同等、もしくはそれ以上に重要といえます。なぜなら、歯根さえしっかり残っていれば、歯冠がボロボロになっても被せ物を装着して歯としての機能を継続させることが可能だからです。インプラントでは、歯冠はもちろんのこと、歯根まで回復できる点が従来の治療法とは大きく異なります。根元から歯を取り戻すことが出来るため、噛んだ時の力を顎の骨で支えられます。

【メリット②】周囲の歯への負担が少ない

従来法である入れ歯やブリッジには人工歯根がないことから、口腔内への固定は残った歯に頼らざるを得ません。とくにブリッジは両隣の歯を大きく削らなければならず、支えとなる歯の寿命は確実に短くなります。また、噛んだ時の力も残った歯で支えなければならないので、お口全体の健康維持という観点ではマイナスとなるポイントが非常に多いです。一方、インプラント治療には、人工歯根という強固な土台が存在しており、周囲の歯に頼る必要がありません。顎にも適度な力が加わることで、「顎骨が痩せる」という現象も抑えられます。歯科医院ではそうした点も踏まえて、インプラント治療をおすすめすることが多いです。

【メリット③】審美性に優れている

インプラントは、天然の歯列に自然と調和します。おそらく、多くの人は一見どこにインプラントを埋め込んだのかわからないことでしょう。これはインプラントに余計なパーツが付随しておらず、人工歯根と人工歯、それらをつなぐアバットメントだけで構成されているからです。その構造はほぼ天然歯と同じなので、治療後の見た目にも違和感が生じにくく、自分の歯と見分けがつかなくなります。一方、入れ歯には金属製の留め具であるクラスプや歯茎を覆う部分の義歯床(ぎししょう)などが付随していて、見た目があまり良くありませんよね。こうした点もインプラントのメリットの一つとして挙げられます。

インプラントにするかどうかを決める際の判断ポイント

インプラントに関するメリット・デメリットについては深くご理解いただけたかと思いますが、それだけでインプラント治療にするかどうかを決めるのはまだ早いです。今現在、インプラント治療を検討中の方は、次の2つのポイントにも着目した上で最終的な判断を下すようにしてください。

【ポイント①】インプラントと他の治療法を比較する

上述したように、失った歯の治療法としては、インプラント以外にブリッジや入れ歯が挙げられます。これらの治療法のメリット・デメリットについても詳しく知ることで、自分自身に最善と言える治療法が見つかることかと思います。

ブリッジのメリット・デメリット

ブリッジのメリットとしては、保険が適用される、外科手術が不要、固定式なのでお手入れが楽、噛み心地や見た目は入れ歯よりも良い、といった点が挙げられます。ブリッジのデメリットとしては、支えとなる両隣の歯を大きく削らなければならない、噛み心地や見た目はインプラントに劣る、歯を失った部分の骨は徐々に痩せていく、といった点が挙げられます。

入れ歯のメリット・デメリット

入れ歯には、保険が適用される、外科手術が不要、故障した時に修理しやすい、ほとんどの症例に対応できるといったメリットが挙げられます。入れ歯のデメリットとしては、噛んだ時にずれる・外れる、故障しやすい、見た目が良くない、装着時の違和感が大きい、口内炎ができやすい、顎の骨が痩せていく、残った歯に大きな負担がかかる、といった点が挙げられます。

このように、ブリッジや入れ歯にもそれぞれメリットがあり、すべてにおいてインプラントが優れているわけではないのです。つまりは、失った歯の治療に何を求めるかによっても、最善と言える方法が変わってくるといえます。

【ポイント方法②】インプラントが得意な歯科医院でカウンセリングを受ける

インプラントを検討している方は、インプラント治療が得意であったり、診療実績が豊富であったりする歯科医院のカウンセリングを受けるようにしてください。インプラントは歯科医師免許を持っていれば誰でも行うことができるものの、治療の質は歯科医院によって大きく変わります。それはインプラントの寿命にも直結するようなことなので、必ず意識するようにしてください。インプラント治療が得意な歯科医師がいるだけではなく、精度の高いインプラント治療を提供できる設備が整っていることも重要なポイントといえます。

まとめ

今回は、インプラントは絶対だめと言われる理由について解説しました。かなりたくさんのポイントを挙げたので理解するまでに時間がかかるかと思いますが、インプラント治療で失敗や後悔しないためにも参考にしていただけたら幸いです。当然ではありますが「インプラントは絶対にだめ」ということはなく、それぞれのお口の状態やニーズによって最善といえる治療法は変わってくるものです。

インプラントの歯科医師の選び方:その前に知るべきことについても解説

インプラントは、従来の治療法にはないメリットが多々あり、歯を失って困っている人には強く推奨できますが、注意すべきこともいくつかあります。特にインプラントの歯科医師選びは慎重に行う必要があるでしょう。
今回はそんなインプラント治療を任せる歯科医師選びで後悔や失敗しないために知っておくべきことを詳しく解説します。

インプラントの歯科医師を選ぶ前に知るべきこと

インプラント体のイメージ

インプラント治療を検討中の方は、次に挙げる3つのポイントを知っておいてください。

【知る①】インプラント未対応の歯科医師がいる

インプラント治療というのは、今でも先進的な医療といっても過言ではありません。大学の歯学部では、インプラントについて学ぶ時間も増えてきましたが、歯科医師の資格を取ってすぐに治療ができる人は皆無に等しいです。虫歯治療や歯周病治療とは比較にならないほど専門性が高いため、インプラント未対応の歯科医師はたくさんいます。
もちろん、歯科医師免許を持っていれば誰でもインプラント治療を行なうことが許されているのですが、実際にできるかどうかは別問題
なのです。

【知る②】「資格を持っている」=「技術が優れている」ではない

インプラントにも「認定医」や「専門医」、「指導医」といった資格が存在しています。
インプラントの学会に在籍して発表などを行い、数年間の臨床経験を積んだのち、試験で一定水準以上の点数を取ることで得られる資格なので、知識や実績の指標にはなりますが、それがそのまま「技術が優れている」ということにはつながりません。
どんなに経験を積んでいても、インプラント手術が下手な歯科医師は確実に存在しているからです。つまり、インプラント関連の資格を持っていることは、ある程度の保証にはなりますが、それだけで治療を任せる歯科医師を選ぶのは賢明ではない
ということです。

【知る③】他の治療に比べ治療期間が長い

インプラントには「人工歯根」があることから、入れ歯やブリッジでは実現できない噛み心地の良さ、見た目の美しさを手に入れられます。これは歯を失った人にとって何にも代えがたいメリットといえますが、従来法と比べて治療期間が長くなるという点も忘れてはいけません。

例えば、保険診療の入れ歯であれば1ヶ月程度で完成するのに対し、インプラントは6~8ヶ月程度かかるのが一般的です。顎の骨にチタン製のネジが結合するのを待たなければならない「治癒期間」が必要であることが治療期間の長さに影響しています。ですから、インプラント治療も通院回数はそれほど多くはないものの、少なくとも半年以上はかかるという点において、従来法とは大きく異なるといえます。

インプラントの歯科医師の選び方

歯科治療の説明イメージ

次に、インプラント治療を任せる歯科医師の選び方について解説します。より良い歯科医師を選ぶためには、次に挙げる6つのポイントに着目する必要があります。

【選び方①】治療前にカウンセリング・問診がある

インプラントは極めて専門性の高い歯科治療であり、詳細について知らない人が大半です。皆さんもインプラントに関する疑問や不安をたくさんお持ちのことでしょう。そうしたインプラントの心配事をきちんと解決する場を用意してくれることは、インプラントの歯科医師を選ぶ上で最低条件といえます。
治療前のカウンセリングや問診を丁寧に行い、インプラント治療への不安をしっかり解消してくれる歯科医師が望ましいです。皆さんもカウンセリングの段階で費用や治療期間、治療手順に関わる疑問を解決しておくようにしましょう。

【選び方②】治療についての事前説明が徹底されている

カウンセリングが終わり、精密検査や診断、治療計画の立案に移行した後も説明を徹底してくれる歯科医師は信頼できます。これらのプロセスは、一般の人にはわかりにくい面が多々含まれることから、かなり丁寧に説明してもらわなければ理解も進みません。何よりもインプラントには外科手術を伴うことから、患者さんご自身が治療の内容を正確に把握しなければならず、そのためには歯科医師による徹底された説明が不可欠
なのです。その段階で不安や疑問、歯科医師への不信感が生じてしまった場合は、セカンドオピニオンを求めることをおすすめします。

【選び方③】お口全体の治療に精通している

インプラントは、顎の骨にチタン製のネジを埋め込み、それを土台として人工歯である上部構造を装着する治療法です。従来法にはない治療プロセスが含まれるため、インプラント治療に特化した技術や知識、経験が必須となります。だからと言って、インプラント治療だけを行っている歯科医師が最も優れているわけではなく、お口全体の治療にも精通している必要があります。とりわけ歯周病に関する知識や治療実績は重要といえるでしょう。なぜなら、インプラントと歯周病は切っても切り離せない関係にあるからです。

インプラントは虫歯になるリスクがゼロの装置ですが、歯周病にはかかります。「インプラント周囲炎」という特別な病気があるように、インプラントは天然歯よりも歯周病リスクが高くなっているのです。しかも、歯周病は人工歯根を支える顎の骨まで破壊してしまう病気であり、その発症はインプラント治療の失敗へと直結します。それだけにインプラント治療を行なう歯科医師は、歯周病を始めとしたお口全体の治療にまで精通している必要があるといえるのです。

【選び方④】定期的に研修会等に参加している

インプラント治療の知識や技術は常に更新されています。3年前や5年前の知識のまま治療を続けていたのでは、最善といえる医療を提供することが難しいです。
そこで必要となるのが研修会や勉強会への定期的な参加です。そうしたセミナーは数万円から数十万円の参加費を支払う必要があるのですが、金額に見合った治療技術や知識が手に入るため、向上心のある歯科医師は定期的に参加しているものです。皆さんも常に知識や技術がアップデートされた歯科医師に、インプラント治療を実施してもらいたいものですよね。

【選び方⑤】検査設備が整っている

質の高いインプラント治療を受けるためには、歯科医師の技術・知識・経験だけでなく、医院の検査設備が整っていることも重要となります。その中でも特に着目していただきたいのが「3DCT」の有無
です。
インプラント治療では、顎の骨という限られたスペースに、長さが1センチ程度の人工歯根を埋め込まなければなりません。埋め込む位置を誤ると、顎骨との結合が上手くいかないだけでなく、重要な血管や神経を傷つけて深刻なトラブルを引き起こしてしまうリスクもあります。そうしたインプラント手術を二次元的な情報しか得られないレントゲン撮影だけで実施するのはあまりにも危険です。3DCTであれば、顎骨の三次元的な情報が得られ、傷つけてはいけない神経や血管の位置も正確に把握することが可能となります。

【選び方⑥】働いているスタッフの質がいい

インプラントはチームで遂行していく治療です。歯科医師だけが優秀であっても、治療をサポートする歯科衛生士や歯科助手の質が悪ければ治療の質も低下します。
ですから、インプラント治療を任せる歯科医師を探す際には、受付から歯科衛生士、歯科助手まで、スタッフ全員の応対や動きなどにも着目するようにしてください。歯科医師との連携がスムーズで、親身になって対応してくれるスタッフがいる医院の方が大切な治療を受ける場所としてふさわしいといえます。

まとめ

このように、インプラントを任せる歯科医師の選び方には、いくつかのポイントがあります。
また、事前に知っておくべきこともありますので、今回ご紹介した内容を参考にしていただけたら幸いです。
そんなインプラント治療についてさらに詳しく知りたい、疑問や質問に答えてほしいという方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。
当院はインプラント治療に力を入れている歯科医院です。

インプラント治療は医療費控除でいくら戻る?計算方法等を解説

インプラント治療は、比較的高額な費用がかかる点にデメリットを感じている方が多いでしょう。インプラントは原則として保険が適用されないこともあり、どうしても入れ歯やブリッジより高くなってしまいます。
そこで是非とも知っておいていただきたいのが「医療費控除」です。今回はインプラント治療で医療費控除を申請した場合、いくらくらい戻るのか、計算方法も含めて解説します。

医療費控除とは

医療費控除とは、1月1日から12月31日までの1年間で支払った医療費の金額が10万円を超えた場合に、税金(所得税・住民税)が一部還付される制度です。還付される税金は、所得や支払った医療費の費用によって大きく変わります。
医療費控除は、保険診療のみが対象となると思われがちですが、条件を満たせば保険外診療でも申請できます。ちなみに、歯科の保険外診療では、治療費が高額になりがちなインプラント治療や矯正治療、セラミック治療などで利用する方が多いです。歯科医院で支払った治療費だけでなく、薬代や交通費なども控除の対象となるため、その点は事前にしっかり確認しておきましょう。

医療費控除の条件

医療費控除は、誰でも対象となるわけではありません。基本的には以下の3つの条件を満たす必要があります。

  1. 納税者が自分自身、もしくは自分と生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費である
  2. 医療費はその年の1月1日から12月31日までの1年間に支払ったもの
  3. 支払った医療費の総額が10万円もしくは総所得金額の5%(*)を超えている
    *総所得金額が200万円に達しない場合

この3つの条件すべてに当てはまる場合は医療費控除を申請して、一定の所得控除を受けることができます。

医療費控除の計算方法

医療費控除によっていくら戻ってくるかを調べるためには、次の3つの計算式が必要になります。

計算方法①医療費控除の対象額を求める計算式

年収200万円以上の場合

医療費控除対象額(上限200万円)=支払った医療費の総額-医療保険による補填金(*)-10万円

*健康保険や生命保険から支給される保険金や給付金

年収200万円未満の場合

医療費控除対象額(上限200万円)=支払った医療費の総額-医療保険による補填金(*)-総所得金額の5%

計算方法②控除額(還付金)を求める計算式

「控除額」とは、医療費控除の対象額に、それぞれの所得に応じた税率(下表参照)をかけた金額です。還付金と呼ぶこともあります。所得が高い人ほど還付金が多くなるシステムとなっています。

控除額(還付金)=医療費控除額×所得税率

国税庁HPより抜粋 「No.2260 所得税の税率」)

計算方法③減額される住民税の計算式

医療費控除を申請すれば、所得税だけでなく住民税まで優遇措置が受けられます。具体的には、以下の計算方法で減額される住民税の額を導き出せます。

減額される住民税=医療費控除額×10%(*)

*住民税の還付金は、所得に関係なく一律10%となっています

インプラント治療費の相場だと医療費控除でいくら戻る?

ここまで、医療費控除の計算式について解説してきましたが、実際にどのくらい還付されるのかも知りたいですよね。
ここでは以下の条件を想定して、医療費控除の還付金を計算してみたいと思います。

  • 年収:500万円
  • 支払った医療費の総額:50万円(インプラント治療)
  • 保険金による補填:0円
  • 所得税率:20%
医療費控除額

50万円(支払った医療費の総額)-0円(保険金による補填額)-10万円40万円(医療費控除額)

控除額(還付金)

40万円(医療費控除額)×20%(所得税率)8万円(控除額(還付金額))

減額される住民税

40万円(医療費控除額)×10%4万円(減額される住民税)

年収500万円の人が50万円のインプラント治療を受けた場合、8万円の所得税が還付され、住民税が4万円減額されることになります。
1年間で支払った治療費の額を考えると、かなり優遇されることがわかります。

医療費控除のやり方

医療費控除を受けるためには、確定申告の際に申請書類を提出する必要があります。ここでは申告に必要なものや書類の作成方法、提出方法などを簡単にご説明します。

やり方①申告に必要なもの

医療費控除を申告する際には、次に挙げるものを用意する必要があります。

  • 医療費控除の明細書
  • 医療費のお知らせ(医療費通知)
  • 確定申告書
  • 源泉徴収票
  • マイナンバー
  • 印鑑
  • 還付金の振込口座(申請者名義)

*制度の改定によって医療費の領収書を提出する必要はなくなりましたが、税務署から問合せが来た際にすぐ提示できるよう、きちんと保管しておきましょう。また、通院にかかった交通費の金額もメモしておくことをおすすめします。

やり方②確定申告書の作成方法

国税庁のホームページや税務署の窓口で「確定申告書」「医療費控除の明細書」を入手して、必要事項を記入します。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」のサイトにアクセスして、作成することも可能です。記入方法の詳細については、お近くの税務署にお問合せください。

やり方③提出方法

確定申告書の提出方法は4通りあります。

  • 居住地を管轄する税務署の窓口に提出する
  • 居住地を管轄する税務署に郵送する
  • e-Tax[イータックス]を利用して書類を送信する(*)
  • 税理士などの代理人に提出を依頼する

*e-Tax[イータックス]を利用するためには、マイナンバーカードなどの電子証明書が必要です。事前の登録方法も含め、詳細は税務署にご確認ください。

やり方④提出期限

確定申告書の提出期限は、例年3月15日となっています。申告期限は社会状況に合わせて延長されることもありますので、事前に確認しておきましょう。医療費控除については、3月15日を過ぎても申請することが可能です。最大5年まで遡って申請することができますので、過去に受けた治療の費用で還付金をもらいたいという場合も対象となります。

まとめ

インプラント治療の費用は10万円を超えることが多く、インプラント治療を受けるほとんどの方が医療費控除の対象となるでしょう。
医療費控除のやり方は難しそうに見えるかもしれませんが、計算方法や必要書類の詳細を理解すれば、それほど煩雑でないことが分かります。
インプラント治療を検討するにあたり、その費用がネックになる方は、医療費控除で戻ってくる金額を先に把握しておくといいでしょう。

インプラント治療はいくら? 1本当たりの費用相場や高額な理由等を解説

インプラント治療には、“チタン製のネジを顎の骨に埋め込む”という特殊な処置を伴います。そのため治療費がやや高額になるのですが、インプラント1本当たりどのくらいの費用がかかるのか気になるところですよね。
ここではインプラント1本当たりの費用相場や高額になる理由などをわかりやすくご説明します。

インプラント治療の費用相場

インプラント治療の費用は、施術する部位や上部構造(=人工歯)の形態によって大きく変わります。ここでは「前歯」「奥歯」「全部の歯」の費用相場をご紹介します。

費用相場①奥歯1本当たり

奥歯に1本のインプラントを埋入する場合の費用相場は以下の通りです。

項目 費用
検査・診断料 15,000~50,000円
インプラントの手術費用 150,000~350,000円
上部構造(=人工歯)の費用 50,000~180,000円
合計 300,000~400,000円

それぞれの項目に費用相場の幅があるため、一概に語ることは難しいですが、奥歯のインプラント治療を受ける場合、1本当たり300,000~400,000円程度かかります。歯科医院によって料金設定が大きく異なる点にもご注意ください。

費用相場②前歯1本当たり

前歯1本をインプラントで治療する場合の費用相場は以下の通りです。

内容 費用
検査・診断料 15,000~50,000円
インプラントの手術費用 150,000~350,000円
上部構造(=人工歯)の費用 50,000~200,000円
合計 300,000~400,000円

前歯1本のインプラント治療は、奥歯1本の場合と費用相場に大差はありません。
インプラント治療全体で300,000~400,000円程度かかるのが一般的です。
前歯は口元の審美性を大きく左右する部位であるため、上部構造の製作費がやや高くなることが多いです。
また、治療結果は歯科医師の技量によって大きく変わる点にもご注意ください。前歯のインプラント治療は高度な技術が必要となります。

費用相場③全部の歯

インプラントは、すべての歯を失ったケースにも対応できます。「All-on-4(オールオンフォー)」と呼ばれる治療法を選んだ場合、以下のような費用がかかります。

内容 費用
検査・診断料 15,000~50,000円
インプラントの手術費用 1,200,000~1,800,000円
上部構造(=人工歯)の費用 60,000~1,800,000円
合計 2,000,000~2,500,000円

上記の費用相場は上下どちらか一方の顎を治療した場合であり、上下ともにAll-on-4で治療すると4,000,000~5,000,000円程度かかります。
ちなみに
All-on-4とは、4本のインプラントを埋入して、総入れ歯のような形をした上部構造を装着する治療法です。
インプラントを埋め込む本数を最小限に抑えられ、手術時間も短縮されます。全体の治療費も通常のインプラント治療(=失った歯の本数だけ人工歯根を埋め込む治療)より安くなります。

インプラント治療は基本的に保険適用されない

インプラント治療は原則として保険適用されません。
なぜなら従来法であるブリッジ(失った歯の両隣の歯を削り、その歯を土台として利用する被せ物のこと)や入れ歯でも失った歯の機能や審美性をある程度回復できるから
です。そうした人工歯の機能性や審美性を追求する歯科治療は現状、自費診療となっています。
ただし、インプラントでも一部例外的に保険が適用されるケースもあります。

このように、インプラント治療で保険適用されるケースはかなり特殊です。虫歯や歯周病などによって歯を失った場合には、基本的に保険は適用されません。

インプラント・ブリッジ・入れ歯の費用相場を比較

失った歯の治療法としては、インプラント・ブリッジ・入れ歯の3つが挙げられます。それぞれの費用相場は以下の通りです。

治療法 費用相場
インプラント 300,000~400,000円
ブリッジ 20,000~30,000円
入れ歯 5,000~20,000円

インプラントは、ブリッジや入れ歯と比較すると、費用相場が10倍程度になっています。
費用面を最も重視するのであれば、保険適用されるブリッジや入れ歯がおすすめといえます。
ただし、
インプラントは装置としての寿命が長く、ブリッジや入れ歯のように再治療が必要になりやすいわけではないので、長い目で見ると経済的であるとも考えられます。

インプラントの治療費が高額な理由

インプラントの治療費がその他の歯科治療より高額になる理由は以下の2点です。

理由①治療するための設備にお金がかかっている

安全性や確実性を確保した上でインプラント手術を行うためには、それ相応の設備が必要となります。とくに滅菌や感染予防のための設備には高いお金がかかっています。歯科用CTを導入したり、インプラント手術専用の機材などを揃えたりする必要もあります。

理由②インプラント本体が高価

現在、世界には100種類以上のインプラントシステムが存在しています。その中でも信頼できるインプラントメーカーの製品は、自ずと本体価格も高くなります。そうしたメジャーなインプラントメーカーの製品は、アフターフォローが充実している点も大きなメリットといえます。

インプラント治療の費用を安く抑える方法はない

上述したように、インプラント治療を行うためには、先進の医療設備を導入する必要があります。また、インプラントそのものが高額であり、保険も適用されないことから、インプラントの治療費を直接安くする方法は、残念ながら無いと言えます。
標準的なインプラント治療を受ける場合は、先にご紹介した費用相場くらいの治療費がかかります。
ただし、デンタルローンを活用して毎月の支払額を少なくしたり、医療費控除で税金の還付を受けたりすることは可能です。

インプラント治療の費用を分割払いする方法「デンタルローン」

デンタルローンとは、その名の通り歯科治療に特化した分割払いサービスです。信販会社が治療費を立て替えて、患者様は手数料を上乗せした形で毎月一定額を返済していきます。デンタルローンを活用すれば、まとまったお金がない方でもインプラント治療を受けることができます。
デンタルローンは歯科医院によって導入していないところがあるため、関心のある方は事前にしっかり確認しておく必要があります。歯科治療の内容や治療費の金額によってはデンタルローンを利用できないこともありますのでご注意ください。

インプラント治療の費用は医療費控除の対象になる

医療費控除とは、
1年間に支払った医療費の総額が「100,000円」を超えた場合に、税金の還付を受けられる制度
です。どのくらいの金額が戻ってくるかは、支払った医療費・治療費、それぞれの所得額によって大きく変わります。
インプラントの費用相場は300,000~400,000円となっていることから、数万円の還付が受けられるのが一般的です。皆さんもインプラント治療を受けた際には、医療費控除を申請するようにしましょう。ちなみに医療費控除は、確定申告の際に併せて申請します。最大5年前まで遡って申請できますので、過去に受けたインプラント治療も対象となります。

まとめ

インプラントは、ブリッジや入れ歯といった従来法と比較すると高額になりますが、審美性・機能性・耐久性などを追求できる点を踏まえると、適正な価格ともいえるでしょう。
インプラント治療についてさらに詳しく知りたい方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。丁寧にカウンセリングいたします。

インプラントの治療期間は平均どれくらい?治療の流れ等も解説

インプラントは、ブリッジ(失った歯の両隣の歯を削り、その歯を土台として利用する被せ物のこと)や入れ歯といった従来の治療法とは異なる点があるため、治療期間がどのくらいかかるのかイメージしにくいですよね。インプラントの治療期間は長いという話はよく耳にするものの、平均はどのくらいなのか知りたいことでしょう。

今回はそんなインプラントの治療期間の平均や治療の流れなどをわかりやすく解説します。

インプラントの治療期間の平均

インプラントは、歯を削って型取りをし、人工歯を装着するようなシンプルな治療ではありません。なぜなら、従来法にはない「人工歯根の埋入」というプロセスが入ってくるからです。
歯ぐきをメスで切開し、あごの骨に穴を開けてチタン製のネジを埋め込む手術を伴うため、自ずと治療期間も長くなります。しかも、人工歯根があごの骨と結合するまで数ヶ月待たなければならないのです。

3~12ヶ月が平均

上記の理由から、インプラント治療の治療期間は平均3~12ヶ月となっています。

治療期間の平均にかなりの幅があることに驚かれる方も多いことでしょう。これは人工歯根を埋め込む位置や本数、患者様の歯周組織の状態によって、治療法などが変わるからです。
歯槽骨が不足していると、事前に歯周組織再生療法などが必要となり、治療期間も長くなります。

インプラント治療の流れ

標準的なインプラント治療は、以下の流れで進行します。

流れ①治療計画と精密検査

まずは、カウンセリングにて患者様のご要望等をお伺いします。お口のことで困っていることなどもお話ください。続いて、種々の検査を実施して、歯ぐきやあごの骨の状態を精密に調べます。
インプラント治療で特に重要なのが歯科用CTによる撮影です。チタン製のネジを安全かつ確実に埋入するために、三次元的な情報を入手します。そうした精密検査の結果をもとに治療計画を立案して、患者様にご説明します。治療方法や治療費用など、疑問や不安に感じることは何でもお尋ねください。患者様に心からご納得いただけるまで治療は開始しません。

流れ②事前治療

検査の結果、歯周病などが見つかった場合は、それらの治療を優先します。歯ぐきの状態が正常にならないと、インプラント治療を行うことができないからです。お口の中に問題がなければ、事前治療は実施する必要はありません。

流れ③人工歯根埋入手術

あごの骨にチタン製の人工歯根を埋め込む手術です。インプラント手術には1回法と2回法があり、患者様のお口の状態によってどちらかを選択します。その名の通り手術の回数が変わることから、治療期間も選択した手術法で変動します。

2回法

インプラント手術の2回法は、1回目の手術で人工歯根のみを埋め込みます。傷口はいったん塞いで、
人工歯根とあごの骨が結合するのを3~6ヶ月程度待ちます。

その後、アバットメントを装着する2回目の手術を実施します。アバットメントとは、人工歯根と人工歯を連結させるための装置です。
インプラント治療では現状、2回法が標準となっています。

1回法

1回法は、
人工歯根の埋入とアバットメントの装着を1回の手術で行う方法です。通院回数や手術時間などを短縮できるため、患者様にとってはメリットの大きい手術法となります
が、一部の症例にしか適応できないのが現実です。
あごの骨の状態が良好な場合に限り、検討することができます。

流れ④インプラントの定着期間

インプラント治療では、チタン製のネジとあごの骨が結合する「オッセオインテグレーション」という現象を待たなければなりません。あごの骨が比較的しっかりしている下顎なら3ヶ月程度、上顎なら6ヶ月程度の期間を要します。
2回法の場合は、1回目の手術の後にインプラントの定着期間を設けます。このインプラントの定着期間はすべてのケースで必要となります。

流れ⑤人工歯のセット

人工歯根があごの骨に定着したら、人工歯を製作します。型取りを行って上部構造と呼ばれる人工歯を作り、アバットメントに装着します。最後に噛み合わせの調整を行って治療は完了です。
ちなみに、インプラントでは定期的なメンテナンスが必須となっておりますので、治療後も数ヶ月に一度の通院は継続しましょう。

インプラント治療中は歯がない期間がある?

インプラント治療では、人工歯根とあごの骨が結合するまでの期間がかなり長く、その間、歯がない状態が続くのか不安に感じている方も多いようです。その点はご安心ください。

例えば、インプラント手術の2回法では、人工歯根を埋めたあとに「仮歯」を装着しますので、口元の見た目が悪くなる現象を防げます。
ただし、仮歯はあくまでの“仮の歯”であり、入れ歯のように噛むことはできません。仮歯の状態で噛むと、歯周組織の傷口が開いたり、人工歯根とあごの骨の結合が妨げられたりするため注意が必要です。

治療後は定期的なメンテナンスが必要

ポイント

上述したように、インプラントは治療が終わったあともメンテナンスのために通院する必要があります。メンテナンスでは、歯ぐきやあごの骨、人工歯、インプラントの装着状態などを歯科医師がチェックします。メンテナンス自体はそれほど長い時間はかかりませんし、通院頻度も高くはありませんので、患者様の大きな負担になることも少ないかと思います。
しかし、インプラントのメンテナンスを怠ると、次のようなリスクが生じます。

インプラント周囲炎に要注意

インプラントは全てが人工物で構成されており、虫歯になる可能性はゼロです。しかし、その周りに存在している歯ぐきやあごの骨は生きた組織であり、歯周病にかかります。
とくに人工歯と人工歯根の境目には汚れがたまりやすく、「インプラント周囲炎」と呼ばれる歯周病リスクが高い点にご注意ください。メンテナンスを怠るとセルフケアでは取り除けない汚れが堆積し、インプラントの歯周病を発症してしまいます。

まとめ

インプラント治療は短ければ3ヶ月、長い場合は1年程度かかります
が、その分、得られるメリットも大きい治療法となっています。

失った歯の治療法を検討する際には、治療期間の長さだけに着目するのではなく、治療によって得られる結果まで見据えることが大切です。
もちろん、短期間で手軽に失った歯を治療したいのであれば、入れ歯の方がおすすめといえますので、まずはカウンセリングにてご要望をお聞かせください。
当院では患者様のご希望を第一に考えた診療を心がけております。

インプラント治療で後悔しないために知っておきたいこととは?

インプラント治療で後悔しないために知っておきたいこととは?

インプラントは失った歯を天然の歯に近い形で回復できる優れた治療ですが、「失敗するかもしれない」「後悔するかもしれない」などと不安に思う方も多いようです。
そこで、今回はインプラント治療で後悔しないために知っておくべきことをわかりやすく解説します。

インプラント治療で後悔しないために

インターネット上には、インプラント治療に関する情報がたくさん存在しており、その中には成功例や失敗例の情報も含まれています。
特に医療関係は失敗例に焦点が当たりやすく、一般の人はその部分だけに目が行きがちです。もちろん、インプラント治療も医療行為の一種であり、
失敗するリスクを必ず伴うため、メリットだけでなくデメリットまでしっかり把握することがとても重要
だと言えるでしょう。

ですから、インプラント治療を受ける歯科医院を探す際には、メリット・デメリットの両方を説明してくれるかどうかに着目しましょう。
できればカウンセリングの段階で、インプラント治療に対する不安や疑問を解消するのが望ましいです。

インプラント治療の方法

インプラントの構造

インプラント治療は、何らかの理由で失った歯、あるいは抜歯予定の歯を補うための治療法です。
欠損部をチタン製のネジ(=人工歯根)で埋めて土台とします。その上に上部構造と呼ばれる人工歯を装着することで、欠損部を天然歯に限りなく近い状態に回復させます。外科手術が必須となっている点は、少し特殊な歯科治療といえるでしょう。

インプラント治療の費用

自由診療

インプラント治療は、原則として自費診療となります。患者様の費用負担が10割となることから、入れ歯やブリッジと比較すると“高額な治療”というイメージをお持ちの方も多いでしょう。
ただ、インプラントで用いられる材料はそもそも原価が高く、また外科手術が必須である点を踏まえると、極端に費用が高いということはありません。一般の歯科医院ではインプラント1本あたり15~40万円程度の価格に設定しています。顎の骨が不足しているケースなどでは、再生医療などを併用する必要があるため、費用がもう少し高くなります。

インプラント治療で後悔するケース

注意点

ここからはインプラント治療が上手くいかず、後悔するケースを解説します。失敗の原因は、手術・歯科医院選び・術後の大きく3つに分けられます。

ケース①手術の失敗

インプラント治療における手術の失敗は、人工歯根の埋め込みのミスに関わるものがほとんどです。

  • 不適切な埋入位置、角度、深さ
  • ドリルの速度が速すぎて骨の細胞が死んでしまった
  • インプラントが顎の骨に固定されなかった

ケース②歯科医院選択の失敗

インプラント治療を失敗させないためには、歯科医院・歯科医師選びを慎重に行う必要があります。

  • カウンセリング、治療の説明が不十分だった
  • 歯周病を放置したまま手術に臨んだ
  • 質問しにくい環境の歯科医院だった

インプラント治療には必ず外科手術が伴うこともあり、信頼できる歯科医院・歯科医師を選ぶことが大切です。説明が不十分だったり、質問しにくい環境だったりすると、不安や疑問が残ったまま手術を受けることになり、後悔するでしょう。
また、今ある虫歯や歯周病を考慮せずにインプラント手術を実施すれば、当然ですが適切な治療効果は得られません。お口の環境が悪い状態での手術にはさまざまなリスクを伴います。

ケース③術後の失敗

インプラント手術では、手術中だけでなく手術後にリスクが存在しています。特に以下の3点にはご注意ください。

  • インプラント周囲炎にかかってしまった
  • 人工歯が壊れてしまった
  • 術後に痛みが続いている

インプラントは虫歯になることはありませんが、歯周病にかかるリスクは天然歯より高くなっています。手術後のケアを怠ると、インプラントの歯周病である「インプラント周囲炎」を発症してしまいます。
また、メンテナンスを受けないことで装置の異常に気付くのが遅れ、人工歯が破損することもあります。術後に痛みが続いている場合は、感染症が疑われます。

インプラントのメリット

インプラントと入れ歯・ブリッジを比較した場合、次のようなメリットが挙げられます。

メリット①しっかり噛める

インプラントは唯一、人工歯根がある装置です。天然の歯とほぼ同じ構造を採っていることから、固いものでもしっかり噛めます。噛んだ時にずれたり、外れたりするようなことはありません。また、噛んだ時の力を顎で受け止めることができるので“顎の骨が痩せる”現象も最小限に抑えられます。

メリット②長期間保てる

保険の入れ歯は3~4年、ブリッジは7~8年程度保てるのが一般的ですが、インプラントは10年以上使い続けられるケースがほとんどです。
そもそも10年保証の制度があるので、適切なケアやメンテナンスを継続していれば、15年、20年と使い続けることも難しくありません。長期間、良い状態を保てるよう念入りにお手入れしましょう。

インプラントのデメリット

インプラント治療で後悔しないためには、デメリットについても知っておくことが大切です。

デメリット①治療費用が高い

インプラントには原則として保険が適用されず、専門性も高い治療であることから、費用が高額になりがちです。歯科医院によって価格設定は異なるものの、従来法と比べるとやはり治療費用は高くなるでしょう。ただ、その分得られるメリットが多い点も忘れてはいけません。

デメリット②インプラント手術にリスクが伴う

インプラント手術には、大切な血管や神経を傷つけたり、細菌に感染したりするなどのリスクを伴います。埋入したインプラントが神経を圧迫することもあり得るでしょう。そうしたリスクは、精密な検査や診断を実施することで、限りなくゼロに近付けることが可能です。
また、インプラント治療の経験豊富な歯科医院を選ぶことで、手術の安全性は確保できるでしょう。治療方法も歯科医院によって異なることが多いため、必ず事前に確認しておきましょう。

デメリット③術後のケアに手間がかかる

インプラントは虫歯になることはありませんが、歯周病にはかかります。そのため、術後のケアやメンテナンスは、天然歯以上にしっかり行うことが大切です。特に人工歯と人工歯根の境目あたりは汚れがたまりやすいため要注意です。歯科医師や歯科衛生士がおすすめする清掃器具も積極的に活用するようにしてください。

歯科医院を選ぶ際のポイント

ポイント

ここまで、インプラント治療が失敗するリスクや後悔する原因などについて解説してきましたが、何よりも大切なのは「きちんと説明してくれる歯科医師」を選ぶこと
です。わからないことや不安に感じることをその都度、一つひとつ説明して安心させてくれる歯科医師が最善であるといえます。

歯科医院では珍しい外科手術が必要な治療なので、信頼できる歯科医師に任せるのが良いでしょう。ですから、
まずはカウンセリングで疑問点や不安に感じる点を伝えてみてください。そこで丁寧に説明してくれる歯科医師であるかどうかは、ある程度わかります。
メリットだけではなく、デメリットやリスクについて触れるかも着目すべきポイントです。

まとめ

インプラント治療は、手術の失敗や術後のケア不足などの要因で上手くいかないことがあるため、「後悔するかもしれない」と治療に踏み出すことができない方もいるでしょう。しかし、それは他の治療でも同じです。
インプラントに関しては外科手術を伴うこともあって、不安が大きくなりがちですが、信頼できる歯科医師を見つけることで安心できます。信頼できる歯科医師に治療を担当してもらうことは、インプラント治療を安全に進めていくことにも繋がるでしょう。
当院でもインプラント治療が可能ですので、まずは一度ご相談ください。

差し歯の特徴や費用:保険適用と保険適用外に分けて解説

歯の頭の部分である歯冠(しかん)を大きく損ねるようなことがあったら、差し歯を作らなければなりません。
専門的にはクラウンと呼ばれる装置で、実にたくさんの種類が用意されています。
ここではそんな差し歯の種類や特徴、費用を保険適用と保険適用外に分けてわかりやすく解説します。

保険適用の差し歯と保険適用外の差し歯の違い

保険適用の差し歯と保険適用外の差し歯には、費用・仕上がり・保証という3点において違いが見られます。

違い①治療にかかる費用

差し歯の治療にかかる費用は、当然ですが保険適用の方が安いです。保険適用の診療では、患者さんの負担が1~3割となっています。一方、全額自己負担となる保険適用外の診療は自ずと支払う費用も高くなります。ですから、経済面を重視するのであれば、保険適用の差し歯の方が適しているといえます。

違い②仕上がり

保険適用の差し歯は、使用できる材料や治療にかけられる時間・期間にも制限が加わるため、保険適用外の差し歯ほど仕上がりは良くありません。差し歯の見た目や噛み心地の良さなどを追求したいのであれば、保険適用外の差し歯の方が良いです。

自費診療ではセラミックやジルコニアなど、審美性・機能性に優れた材料を自由に使うことができます。とくに前歯の変色や欠損を補うのであれば、審美性の高いセラミックが推奨されます。保険診療では基本、レジンや銀歯しか使用できないので、審美性も自ずと低くなります。ただ、奥歯の治療であれば、レジンや銀歯でもそれほど気にならないことが多いです。

違い③保証

保険診療では、差し歯の費用の中に「補綴物維持管理料」が含まれており、治療後2年間は無料で修理をしてもらえます。一方、保険適用外の差し歯は、歯科医院によって保証の有無が異なります。差し歯の故障に対して無償で対応してくれるところもあれば、再度、費用が発生するところもあります。その点は、治療を開始する前にきちんと確認しておきましょう。セラミック性の差し歯は1本でもかなり高額な費用がかかりますので、保証の有無はとても重要なポイントとなります。

保険適用の差し歯

保険の銀歯

保険適用の差し歯としては、次の4つが挙げられます。

保険適用①銀歯

歯科用合金で作られた差し歯で、見た目も金属色をしています。強度が高く、壊れにくくはあるのですが、見た目が良くなかったり、金属アレルギーや歯ぐきの変色であるメタルタトゥーのリスクがあったりするなど、デメリットも目立ちます。歯質との適合性もセラミックほどは高くないので、虫歯の再発リスクも存在します。ちなみに、銀歯は奥歯に適応されるもので、保険診療であっても前歯は白い材料を用いることができます。

保険適用②硬質レジン前装冠

金属の土台に硬質レジンという素材を貼り付けた差し歯です。表側からは白い歯に見えますが、裏側は金属色がむき出しとなっています。主に前歯の治療に用いられる差し歯で、銀歯よりも審美性が高いです。ただし、ベースは金属なので金属アレルギーやメタルタトゥーのリスクは存在します。

保険適用③硬質レジンジャケット冠

硬質レジンで作られた差し歯です。硬質レジン前装冠とは異なり、金属の部分が存在していません。そのため、金属アレルギーやメタルタトゥーのリスクもなくなります。歯ぐきの部分に金属色が透けて見えることもなく、審美面において非常に優れた治療法といえます。ただ、保険適用されるのは前歯の治療のみです。また、銀歯や硬質レジン前装冠ほど丈夫ではないというデメリットもあります。

保険適用④CAD/CAM冠

CAD/CAMとは、コンピューター上で差し歯を設計し、専用の機械でブロックを削り出すシステムです。保険適用では純粋なセラミックではなく、少し硬めのレジンが用いられます。現状では、前歯から奥歯まで、ほぼすべての歯に適応することができます。その他、白くて本物の歯のように見える、シリコーン印象材による不快な型取りが不要、その日に差し歯が出来上がるなどのメリットがあります。保険適用なので費用は安いです。

保険適用外の差し歯

自由診療の差し歯

保険適用外の差し歯には、次のような種類があります。

保険適用外①メタルボンド

メタルボンドとは、金属の土台にセラミックを盛り付けた差し歯です。表側からはセラミック歯に見えるため、銀歯とは異なり見た目は良好です。金属の部分は強度が高く、壊れにくいですが、セラミックの部分は強い衝撃などで壊れるおそれがあります。高い審美性が要求される前歯に使われることの多い差し歯といえます。

保険適用外②ジルコニアセラミッククラウン

ジルコニアセラミッククラウンとは、極めて高い強度を誇るジルコニアと、一般的なセラミックを併用した差し歯です。中心部がジルコニアで構成されており、表面にセラミックを焼き付けます。そのため、高い強度と審美性を兼ね備えた人工歯を装着することができます。金属は一切使用しないため、金属アレルギーや歯ぐき変色であるメタルタトゥーは起こりません。ちなみに、ジルコニアはとても硬い素材なので、強い力がかかりやすい奥歯にも使用することができます。

保険適用外③ゴールドクラウン

ゴールドクラウンとは、金(ゴールド)を使った差し歯です。見た目は金色をしているので目立ちやすく、前歯の治療にはあまり向かない。セラミックと比較して虫歯や歯周病リスクが高まるというデメリットがあります。ただ、ゴールドは金属アレルギーが起こりにくく、歯ぐきの変色を招きにくいというメリットがあります。もちろん、強度も極めて高いです。

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保険適用外④オールセラミック

オールセラミッククラウンは、土台も表側もすべてセラミックで構成された差し歯です。保険適用外の差し歯の中で最も美しい部類に入ります。ただし、強い衝撃で割れやすいというデメリットがあり、奥歯の治療にはあまり向いていません。基本的には、高い審美性が要求される前歯の治療に用いられます。

保険適用外⑤ハイブリッドセラミック

ハイブリッドセラミックとは、セラミックとレジンを掛け合わせた素材です。レジンよりも美しく丈夫ではあるものの、純粋なセラミックにはいろいろな面で劣ります。保険のクラウンよりも虫歯や歯周病リスクが少なく、オールセラミックやジルコニアセラミックよりも費用が安くなるというメリットが得られます。

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保険適用外⑥フルジルコニアクラウン

フルジルコニアクラウンとは、その名の通りジルコニアのみを使用した差し歯です。保険適用外の治療の中で最も強度に優れた差し歯といえるでしょう。保険のクラウンよりも虫歯や歯周病リスクが低いのも特徴です。ただし、オールセラミッククラウンやジルコニアセラミッククラウンと比較すると、審美性に劣ります。

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見栄えが気になる前歯には保険外の差し歯がオススメ

前歯の差し歯

前歯の差し歯の治療は、機能性はもちろんのこと、審美性も追求する必要があります。

例えば、保険適用の前歯の治療では、使用できる素材に限りがあるため、審美性の追求にも限界があります。
その点、保険適用外の治療であれば、オールセラミッククラウンやジルコニアセラミッククラウンやジルコニアセラミッククラウンなど、審美性をとことんまで追求した前歯の差し歯治療が可能となります。
ですから、見栄えが気になる前歯には、保険外の差し歯がおすすめといえます。

差し歯の治療前にすること

今現在、差し歯を入れようと考えている方は、治療を選択する前に必ず以下の3点を行いましょう。

治療前①カウンセリングを受ける

差し歯の治療は選択肢が多く、どれがご自身にとって最善といえるかはわかりにくいです。そこでまずはカウンセリングでわからないことや知りたいことを質問しましょう。そうして不安な点や疑問点を解消しておくことが大切です。

治療前②保証を確認する

保険適用の差し歯には「補綴物維持管理料」含まれているため、2年間は無償で修理等を受けられます。一方、保険適用外の差し歯は歯科医院のよって保証内容が異なりますので、その点はしっかり確認しておきましょう。

治療前③差し歯治療の実績を見せてもらう

差し歯治療は、歯科医師の技術力によって結果も大きく変わってきます。過去の実績をみせてもらうことで、どの程度の差し歯を作ってもらえるのかもチェックできます。当然ですが、できるだけ実績豊富な歯科医師に治療を任せる方が良いといえます。

まとめ

このように、差し歯の治療は保険適用か保険適用外かによって、装置の選択肢も大きく変わってきます。それぞれの差し歯に異なるメリット・デメリットがありますので、まずはその概要を知っておきましょう。その上で、ご自身にとって最善といえる差し歯治療を選択することが大切です。