自力で歯並びを良くする方法はある?
歯並びの乱れというのは、とても目立ちやすく、コンプレックスとなりやすいことから、何とかして治したい、きれいに見せたいと感じるものです。その解決方法として第一に挙げられるのが矯正治療ですが、費用が高かったり、期間が長かったりするなど、ハードルとなる要素がたくさんあるため、なかなか一歩踏み出せない方も多いです。
それならいっそ自力で歯並びを良くしようと考える方もいらっしゃいますが、そもそも歯並びを自力で矯正するのは可能なのでしょうか?ここではそんな素朴な疑問にお答えすると同時に、より現実的な解決方法についても解説します。
自力で歯並びを良くすることはできません
結論からいうと、歯並びを自力で治すことはできません。これは歯がどのような状態で生えているのかを理解するとわかりやすいです。
歯は硬い顎の骨に埋まっている
私たちの歯は、歯槽骨(しそうこつ)と呼ばれる硬い顎の骨に1本1本しっかり埋まっています。これを自力で動かそうとするとより深刻なトラブルへと発展しかねないため、絶対に避けるようにしてください。そこで気になるのが歯科医院で受ける矯正治療ですよね。自力では治せない歯並びをどのような方法で治療しているのでしょうか。
成長に合わせた矯正が最も有効
矯正治療は、大人になってからでも受けられますが、子どもの頃に受けた方がより効率良歯く歯並びを改善できます。なぜなら、子どもの歯や顎の骨は発育途上にあり、その力を利用することで無理なく歯を移動できるからです。そのため、お子さんの歯並びで気になる部分がある場合は、早い段階で一度、歯科医院で診てもらう必要があります。
適切な矯正力を加えることで無理なく歯を移動できる
歯列矯正では、それぞれのケースに適した装置を用いて歯並びを整えてきます。その際かける矯正力は、専門家でなければ厳密にコントロールすることができません。そういう意味でも、一般の人が歯並びを自力で治すことは不可能といえます。
歯並びが悪くなる原因
次に、歯並びが悪くなる原因について考えていきましょう。
指しゃぶりなどの習癖に要注意
子どもの頃に指しゃぶりや舌を前方へと突き出す癖がなくならないと、歯並びが徐々に悪くなっていきます。具体的には出っ歯が誘発されることが多いです。
口呼吸も歯並びを悪くする
小さなお子さんによく見られる「お口ぽかん」の状態は、口呼吸している可能性が高いです。口呼吸をしていると、お口の中が乾燥しやすくなるだけでなく、お口周りの筋肉や骨の成長を遅らせることから、歯並びの乱れにもつながります。とりわけ上下の前歯が噛まない「開咬(かいこう)」には要注意です。
虫歯や歯周病で歯並びが悪くなることもある?
直接的ではないにしても、虫歯や歯周病を重症化させると、歯並びが悪くなることがあります。日本人が歯を失う原因の第一位が歯周病、第二位が虫歯であり、1本でも歯を失うと全体の歯並び・かみ合わせが乱れていきます。
歯並びの悪さにも種類がある
歯並びが悪い状態を歯列不正(しれつふせい)あるいは不正咬合(ふせいこうごう)といい、いくつかの種類に分けることができます。
出っ歯
出っ歯とは、上の前歯が前方へと傾いている、あるいは突出している歯並びです。専門的には上顎前突(じょうがくぜんとつ)と呼ばれるもので、上の顎の骨が成長しすぎているケースもあり得ます。
受け口
受け口とは、下の前歯や下の顎が前方へと突出している歯並びです。専門的には下顎前突(かがくぜんとつ)と呼ばれるもので、“顎がしゃくれている”と表現されることもあります。
乱ぐい歯
乱ぐい歯とは、歯並びがガタガタになっている状態です。専門的には叢生(そうせい)と呼ばれています。上の犬歯が飛び出している八重歯も叢生の一種に分類されます。清掃性が悪く、虫歯や歯周病のリスクが非常に高い歯列不正です。
開咬
開咬とは、口を閉じた際、奥歯はしっかり噛むのに前歯は噛まず、上下の歯列間にすき間が生じてしまっている歯並びです。口呼吸や舌を突き出す癖などが原因となりやすいです。子どもの頃にこの症状が認められる場合は、早急に診察を受けましょう。早期治療が必須となるケースも珍しくありません。
悪い歯並びは歯科医院で診断してもらいましょう
歯並びの種類には、それぞれ特徴的な症状が認められますが、一見すると正常に見えても、実は歯列不正や不正咬合が潜んでいるケースも珍しくありませんので、歯科医師による精密な診断を受けましょう。受診した際に、虫歯や歯周病が見つかることもあります。
歯並びが悪いと起こる症状
歯並びに乱れがあると、見た目が悪いという審美障害が第一に現れます。その他にも実は、より深刻な症状が現れることがあるため要注意です。
かみ合わせが悪くなる
悪い歯並びには、必ずといって良いほどかみ合わせの異常も伴います。さらに、悪い歯並びを放置すると、嚙み合わせがどんどん悪くなっていくため注意する必要があります。
お口周りの筋肉が衰える
歯並びが悪いと、上手に咀嚼(そしゃく)することが難しくなり、お口周りの筋肉が衰える、子どもであれば筋肉の発育が悪くなるといった症状が現れます。これもまた歯列不正を伴う大きなデメリットといえます。
歯並び矯正の種類
歯並びの乱れを改善する矯正治療・矯正装置には、以下に挙げるような種類があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットも踏まえて、わかりやすく解説します。歯科医院での矯正をご検討中の方は参考にしてください。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正とは、金属製のワイヤーとマルチブラケットを歯の表面に装着する矯正治療です。メリットとしては、ほとんどの症例に対応できる、という点が挙げられます。デメリットは、装置が目立ちやすく、お手入れが面倒な点です。とくに矯正中は念入りにケアしないと、虫歯や歯周病のリスクが大きく上昇します。治療期間は2~3年程度です。
マウスピース矯正
インビザラインに代表されるマウスピース型矯正装置は、透明なマウスピースで歯を移動させるため、装置が目立ちにくいです。前歯にブラケットなどを装着する必要もなく、周囲に気付かれずに歯並びを整えることも可能です。マウスピースは取り外し式の装置であり、お手入れしやすい点もメリットといえるでしょう。マウスピース矯正のデメリットとしては、ワイヤー矯正よりも適応範囲が狭い点が挙げられます。矯正の治療にかかる期間は、ワイヤー矯正同様2~3年程度です。
歯並び矯正にかかる費用
最後に、歯並び矯正にかかる費用について簡単にご紹介します。
ワイヤー矯正にかかる費用
ワイヤー矯正にかかる費用は、80~150万円程度です。費用に大きな開きがあるのは、そもそも歯科矯正が自由診療であり、歯科医院によって料金設定も大きく異なっているためです。また、選択した装置によってはオプション料として費用が加算されるため、場合によっては150万円以上かかることもあります。
マウスピース矯正にかかる費用
マウスピース矯正の代名詞ともいえるインビザラインは、80万円程度で受けられることが多いです。インビザラインは、矯正方法がシステム化されており、費用に関しても全国で共通していることが多いです。とはいえ最近では、部分矯正に対応したインビザラインなど、治療の選択肢も増えてきており、矯正にかかる費用もケースバイケースといえるでしょう。一般的には、ワイヤー矯正より安い費用で歯並び矯正できることが多いです。