歯茎のできものの正体とは?原因と治療法を解説
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健康な歯茎は、きれいなピンク色をしていますが、何らかの理由で白や赤色を帯びた“できもの”が生じることがあります。歯茎のできものといえば「口内炎」がまず頭に思い浮かぶかと思いますが、それはもしかしたら「フィステル」かもしれません。フィステルは口内炎よりも厄介なものなので、しっかりとした治療が必要となります。ここではそんな歯茎のできものの正体について、その原因や治療法まで詳しく解説します。
歯茎のできものの正体
歯茎にできものが認められたら、まずはその位置について確認してみてください。例えば、食事の際に食べ物が当たるような部位に生じたものなら、口内炎が疑われますが、歯根の先端付近に生じたニキビのようなできものは、フィステルの可能性が高いです。
フィステルとは、「サイナストラクト」「瘻孔(ろうこう)」とも呼ばれるもので、ニキビのように腫れるだけでなく、痛みを伴うこともあります。また、たまった膿が小さな穴から排出されているのもフィステルの特徴的な症状のひとつといえます。このフィステルは、口内炎と根本的に異なるものなのでご注意ください。
フィステルができる原因
フィステルができる原因は、次の4つに大きく分けられます。
原因①神経まで達した虫歯
虫歯がエナメル質から象牙質、さらには歯の神経にまで進行すると、歯髄(しずい)に感染が起こります。その結果、歯髄が腐り、汚染物質や細菌が歯根の先端の「根尖孔(こんせんこう)」という細い穴から漏れ出て、フィステルを形成することがあります。
原因②精度の低い根管治療
重症化した虫歯では、歯の根の中をきれいにお掃除する根管治療が必要となりますが、その処置の精度が低いと、病原体の取り残しが生じ、フィステルを形成する原因となることもあります。根管というのは、とても狭く、暗く、複雑な構造を呈しているため、勘に頼った盲目的治療になりがちです。歯科用ルーペやマイクロスコープなどを活用すると、根管治療の精度を高めることができます。
原因③外傷
スポーツをしている時や道端で転んだ拍子に歯を強打した際、後々フィステルが形成されることがあります。これは強い衝撃によって歯の神経に炎症が生じた結果です。一見すると、歯は何の損傷も受けていないのですが、神経と血管で構成されている歯髄(しずい)には炎症が起こり、何もせずそのまま放置することで、細菌感染が生じるケースもあります。そうすると、虫歯を重症化させた時と同じようなフィステルを歯茎に形成します。
原因④歯根破折
歯の根が折れる歯根破折(しこんはせつ)がフィステルの原因になることもあります。歯根が破折する原因としては外傷がまず挙げられますが、意外に多いのが「不適切な補綴物(ほてつぶつ)」です。とくに太いメタルコアなどを設置した被せ物では、歯根にくさび状の圧力が働きやすく、歯根破折のリスクが高まります。噛む力が強い、歯ぎしり・食いしばりの習慣がある、場合も歯根破折に要注意です。
フィステルを放置すると起こる症状
フィステルは、歯茎のできものであると同時に、瘻孔と呼ばれる穴でもあるので、たまった膿は定期的に排出されます。そのため、一時的に症状が自然と改善するので何もせず放置していると、症状がどんどん悪化していきます。なぜなら、フィステルの原因は膿が排泄されている部分ではなく、感染した根管やその周囲にあることがほとんどだからです。つまり、根本的な原因を取り除かずにフィステルを放置すると、痛みや腫れといった症状が強くなるだけでなく、最終的には原因となっている歯の抜歯を余儀なくされることも珍しくないのです。
フィステルの治療法
歯茎に膿が排出される穴を形成するフィステルは、次に挙げるような治療法で症状を改善できます。
治療法①根管治療
歯の神経にまで達した虫歯を治療する方法です。根管治療をしっかりと行えば、歯茎の腫れや炎症、フィステルの症状を改善、あるいは予防することも難しくありません。歯の根の治療を行った後は土台を作って被せ物を装着します。
治療法②感染根管治療
感染根管治療とは、文字通り細菌に感染した根管をきれいにお掃除する処置です。根管治療を行った後、再び感染を引き起こしたケースに適応されます。もうすでに根管治療を一度行っているので、難易度はさらに高まります。根管内を無菌化できれば、フィステルや炎症反応も自ずと消失していきます。
治療法③歯根端切除術
歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)とは、歯の根の方からアプローチして、フィステルの原因となっている細菌や汚染物質を取り除く治療法です。歯の頭の方からアプローチする根管治療が行えない、あるいは根管治療による効果が認められない場合に限り実施されます。歯茎をメスで切開して、歯根の先端と膿の塊を外科的に摘出します。
治療法④歯牙再植術
歯牙再移植(しがさいいしょく)も歯根端切除術と同様、重症例のフィステルや感染根管に適応される治療法です。そのままの状態では、通常の根管治療が行えないため、一度、歯を抜いて口腔外で根管内を無菌化します。その後、元の位置に歯を戻すことで、フィステルも自然消滅していきます。歯牙再移植はとても難易度の高い外科処置であり、適応されるのは一部の症例に限られます。治療の成功率もそれほど高くない点にご注意ください。
治療法⑤ヘミセクション
ヘミセクションとは、下顎大臼歯のような根っこが2本ある歯の片方だけを外科的に切除する方法です。切除する歯根は、根管治療でも治癒する傾向が見られないことが条件であり、処置の際には歯冠も半分、取り除くことになります。歯を丸ごと抜くのではなく、感染源となっている歯根側だけ切除するので、大臼歯としての機能をある程度、保存することができます。
フィステルと口内炎の違い
フィステルと口内炎には、成り立ちから具体的な症状に至るまで、さまざまな違いが見られます。上述したように、フィステルの原因は主に歯や歯茎の中に存在していますが、口内炎の多くは、歯茎の表面に細菌感染が生じたものです。鋭利な食べ物や入れ歯のパーツなどで歯茎を傷つけることで、口内炎が形成されます。そのため、口内炎では強い痛みが生じやすくなっていますが、傷が癒えるとそうした症状も消えていきます。もちろん、入れ歯や矯正装置による物理的な刺激が原因となっている場合は、それらを適切に調整しない限り、口内炎も再発し続けますのでご注意ください。
フィステルと歯周病の違い
実は、歯周組織の病気である歯周病でも、歯茎にできものが生じることがあります。歯槽膿漏(しそうのうろう)という言葉があるくらいですから、皆さんもよくご存知かと思います。そんな歯槽膿漏とフィステルの違いは、できものが生じる部位です。歯槽膿漏のできものは、歯周ポケット付近に形成されますが、フィステルのできものは歯根の先端付近です。また、根本的な原因となっているのが歯周病と虫歯という決定的な違いある点も知っておいてください。
まとめ
このように、フィステルは歯茎のできものとして認められますが、その原因は歯の中にあります。つまり、歯茎だけでなく、歯の病気でもあるため、歯科医院で根管治療などを受けなければ、症状を改善することは困難です。そんなフィステルの症状に悩まされている方は、お気軽に当院までご相談ください。フィステルを放置すると最終的には抜歯以外の選択肢がなくなることも多く、早期の受診が望まれます。かけがえのない天然歯を残すためにも、フィステルは早めに治しましょう。
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