インプラントをやめたほうがいいと言われる理由とは?

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歯科コラム/2023年7月25日

インプラントをやめたほうがいいと言われる理由とは?

失った歯の治療法としては、ブリッジ・入れ歯・インプラントの3つが挙げられます。
この中で「人工歯根」があるのはインプラントだけです。従来法にはないたくさんのメリットを享受できることから、多くの人に選ばれています。しかし、一方では「インプラントはやめたほうがいい」という声もよく耳にします。
今回はそんな「インプラントはやめたほうがいい」と言われる理由について、詳しく解説をします。

インプラントはやめたほうがいいと言われる理由

理由①外科手術が必要

インプラント治療では、外科手術が必須となっています。顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込むことがこの治療法の要となるため、「外科手術は絶対に受けたくない」という人にはおすすめできません。これは「インプラントはやめたほうがいいと言われる」主な理由です。とはいえ、インプラント手術はみなさんが想像する病院での外科手術とは異なり、もっと小規模です。人工歯根を埋め込む処置自体は15分程度で終わり、全体でも1時間程度で手術が完了します。

理由②顎の骨が少ないと治療の対象外になる

インプラントはすべての人に開かれた歯科治療ですが、顎の骨が少ないと治療の対象外になる場合があります。ただし、不足した骨は「骨造成(こつぞうせい)」と呼ばれる方法で補えば、インプラント治療が可能となることがあります。

理由③全身疾患がある方は治療の対象外になる

手術中に全身状態が急変するような病気を患っている場合は、インプラント治療の対象外となることがあります。具体的には、重度の高血圧症や糖尿病にかかっていたり、過去に脳梗塞や心筋梗塞を発症して、血液が固まりにくくなる薬剤を服用していたりすると、外科手術を安全に遂行できない可能性が出てきます。この点は、かかりつけ医と相談しながらインプラント治療の可否を決定することになります。

理由④治療費が高い

インプラントは原則として自費診療となるため、保険が適用される従来法よりも治療費が高くなります。使用する素材の原価も高く、高度な技術を要する治療でもあることから、1本あたり300,000~500,000円程度の費用がかかるのが一般的です。ただ、インプラントはブリッジや入れ歯よりも寿命が圧倒的に長く、お口の健康維持・増進にも寄与します。その点も考慮すると、作り替えや頻繁に通院する必要のあるブリッジや入れ歯と比べて、単純に「治療費が高い」とは言い切れません。

理由⑤治療期間が長い

ブリッジや入れ歯のように、治療を1~2ヵ月で終わらせたいという方には、インプラント治療はおすすめできません。インプラント治療では、チタン製の人工歯根と顎骨が結合するまでに、下顎の場合は3ヵ月以上、上顎の場合は6ヵ月以上かかるのが一般的です。その他、連結装置であるアバットメントの装着や上部構造の製作期間も加わることから、全体で6~12ヵ月程度の治療期間を要します。ただし、通院する回数はそれほど多くはありません。

理由⑥治療後のメンテナンスが必要

インプラント治療後には、定期にメンテナンスを受ける必要があります。3~6ヵ月に1回くらいのペースで通院していれば、インプラントを10年、20年と使い続けていくことも難しくなくなります。大切にケアすれば、一生涯使うことも不可能ではないでしょう。

理由⑦強く噛みすぎてしまう

インプラントは見た目も構造も天然歯そっくりではありますが、歯根の部分に違いが見られます。それは「歯根膜(しこんまく)」の有無です。インプラントには噛んだ時の圧力を調整したり緩和したりする歯根膜が存在していないため、強く噛みすぎてしまうことがあります。その結果、インプラントや顎の骨に過剰な力がかかり、装置の破損および顎骨の炎症を引き起こすリスクが生じます。とはいえ、どのくらいの強さで噛めば良いのかは、インプラント治療から1週間も経過すれば判断できるようになります。強く噛みすぎてインプラントをダメにしてしまうケースは極めて稀といえるでしょう。

理由⑧金属アレルギー

人工歯根であるインプラント体には「チタン」という金属が使われます。チタンは生体安全性の高い金属で、心臓のペースメーカーや人工関節にも使われているのですが、金属アレルギーのリスクがゼロというわけではありません。その限りなくゼロに近いリスクが怖いという方には、標準的なインプラントはおすすめできません。セラミックの一種である「ジルコニア」を使ったインプラント治療なら、金属アレルギーのリスクをゼロにできます。

理由➈再治療が困難

手術の失敗や外傷、細菌感染などによって人工歯根が脱落した場合は、インプラントで再治療を行うのは困難です。もちろん、顎の骨の状態が良ければインプラントで再治療可能なこともありますが、多くのケースではブリッジや入れ歯による治療へと移行します。人工歯である上部構造や連結装置のアバットメントが破損・故障した場合は、比較的簡単に再治療できます。

理由➉感染症のリスクがある

インプラント治療では、手術中と手術後に感染症のリスクが生じます。感染対策をしっかり行っている歯科医院であれば、手術中の感染リスクを最小限に抑えられます。手術後の感染リスクは、患者さんご自身でコントロールしなければなりません。とくにインプラントの歯周病である「インプラント周囲炎」は、インプラント治療が失敗する主な原因となっているため十分な注意が必要です。

インプラント治療を受けるかどうかを判断するポイント

ここまでは、インプラントに伴うリスクやデメリットについて解説してきましたが、実際に治療を受けるかどうかは以下の3点を考慮して判断すると良いでしょう。

ポイント①自分が求めていることがインプラントで叶う

失った歯の治療法に、見た目の美しさ、天然歯に近い噛み心地、お手入れのしやすさなどを求めているのであれば、インプラントがおすすめです。それらは、従来法であるブリッジ・入れ歯で叶えることが難しいからです。

ポイント②インプラントのデメリットを受け入れられる

前段でも述べたように、インプラントには外科手術が必要、費用が高い、治療後もメンテナンスを定期的に受けなければならない、といったデメリットを伴います。また、治療を担当する歯科医師によって仕上がりが大きく変わってきます。そうしたインプラントの欠点を受け入れられるのであれば、ブリッジ・入れ歯を選ぶ必要性は低いといえます。

ポイント③受診した歯科医院で適切な治療が受けられる

インプラントに伴う多くのリスクは、適切な治療を行える歯科医院・歯科医師を選ぶことで解消できます。ですから、インプラント治療の歯科医院選びは慎重に行う必要があるのです。インプラントのカウンセリングを受けた段階で不安や疑問を感じるようなことがあれば、その他の歯科医院も受診してみると良いでしょう。もうすでに精密検査と診断を受けている場合でも、セカンドオピニオンを受けることを推奨します。

インプラント治療を避けた方がよい人の特徴

特徴➀ホームケアを行う習慣がない

インプラントは、見た目も構造も天然歯そっくりな装置ですが、あくまで人工物です。天然歯よりも汚れがたまりやすい部分があり、適切なホームケアを行えていないとインプラント周囲炎のような歯周疾患にかかってしまいます。普段からホームケアを行う習慣がない場合は、今すぐインプラント治療を受けるのはおすすめできません。ホームケアを適切に行えるようになってから、インプラント治療を検討しましょう。

特徴②定期的なメンテナンスに通えない

仕事や勉強が忙しくて、定期的なメンテナンスに通えるか不安という方は、インプラント治療を避けた方が良いです。インプラント治療では、3~6ヵ月に1回のメンテナンスが必須となっており、それを怠るとさまざまなリスクが生じます。仕事や勉強が落ち着いてメンテナンスに通える環境が整ったら、改めてインプラント治療を検討すると良いでしょう。

特徴③手術に対する恐怖・不安を払拭できない

外科手術に対して恐怖心や不安感を抱かない人は皆無に等しいです。自分の体が傷付くことは、誰にとっても怖いものです。ただ、その恐怖心や不安感が極端に強い場合は、インプラント治療をいったん保留にしましょう。そのままの状態でインプラント手術に臨むと、良くない結果を招くことがあります。

ただ、インプラント手術への恐怖心や不安感は、カウンセリングを丁寧に受けることで軽減されていきます。また、笑気麻酔や静脈内鎮静法を併用さすることで、怖いという気持ちを直接的に軽くできます。その点も含めカウンセリングで相談してみましょう。

まとめ

このように、「インプラントはやめたほうがいい」と言われる理由はさまざまですが、そのほとんどは解決できます。インプラント治療で必須となっている外科手術はそれほど大掛かりなものではなく、術中の恐怖心や不安感を取り除く方法もあります。手術中の感染リスクも適切な治療を実施できる歯科医院なら最小限に抑えられます。インプラント治療後に必要となるメンテナンスは3~6ヵ月に1回程度となっており、年間で計算すると2~4回程度なので、実際はそれほど大変ではありません。

ですから、インプラント治療を真剣に検討されている方は、まず信頼できる歯科医院に相談するのが良いでしょう。「インプラントはやめたほうがいい」というネガティブな意見だけに流されず、正しい情報を歯科医師から提供してもらうことが大切です。